うざい提督とブラック鎮守府   作:あばずれ

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59. 短気な相手は煽れば案外チョロい

「テーイートークー助けてー」

「何やってんだお前ら」

 

 朝十時丁度。

 金剛が執務室に入ってきた。よく見ると様子が変だ。どこか疲れてるように見える。

 

「島風と比叡がくっついて離れないんデース」

「知るか。お前らで処理しろ」

 

 金剛の両脇に比叡と島風がくっついていた。蝉のように全く動じない。ただ黙って抱きついている。面倒臭い事に巻き込まれるのは嫌なので金剛に投げ出した。

 

「つか比叡とはもう仲が直ったのな」

「はい! ですがこれで許されたつもりはありません! 全力で見返すつもりです!」

「あ、あぁ……まぁやる気になってるのならこちらとしては文句は無いが……金剛はいいのか?」

 

 比叡は目が覚めるまで姉の金剛を蔑んだ記憶がある。あの戦闘後、比叡は金剛に必死に謝り続けていた。金剛自身は許しているが、比叡はそう思っておらず、鈴谷や加賀のように見返したいと心意気を語っている。妹の榛名や霧島とは完全に孤立し、今は部屋に一人で過ごしているとか。いつしか金剛と一緒の部屋になりたいという。

 

「大丈夫デース。問題ありませんヨ」

「なら構わん。というよりも島風、何故お前は金剛から離れない」

 

 比叡は良いとして島風が何故か離れない。頬を膨らませ、ずっと抱き締めている。

 

「速いから!!」

「あぁ……そう……」

「速いから!!」

「はいはい分かったから」

 

 島風の中では金剛はとても速い艦娘の仲間だと思っている。戦艦棲鬼との戦闘で圧倒的な速度で海を駆けていた金剛を見て興奮したのだろう。実際島風の目はキラキラとしている。

 

「速いから!!」

「分かったからさっさと早く出ていけェ!!」

 

 金剛達を執務室から追い出し、仕事を続ける提督。朝からうるさい艦娘達に頭を悩ませた。ここ最近やたらと艦娘が元気というか慣れ親しんでくる。正直面倒な所だ。

 

「提督も馴染んできたな、ここに」

「馬鹿言え、侵されているだけだ。自然と取り戻すよ」

「ま、あたしとしては提督が楽しければ何でも良いんだけどさ」

「楽しそうとかやめてくれ摩耶。俺はアイツらと馴染む気は一切無い」

 

 馴れ合うつもりも無い。必要な会話以外話す事は何も無いと提督は思っている。しかし摩耶にとってはあの時の日常が戻ってきたようで少し安心していた。馴染む気は無いと何回も言ってはいるが無意識に近いだろう。

 

「はい、こちら■■■鎮守府」

『あーもしもし、お前がここの責任者?』

 

 提督は通信環境を新しくしていた。執務机に電話機を設置。食堂にはテレビを設置し、外の世界に関心を持たせている。

 しかし■■の対策として艦娘にはインターネットの使用禁止。外出も容易には認めておらず、欲しい物があれば提督に申請され次第、許可が降りるように整備している。

 

「そうだが、何の用だ?」

『私は駿河鎮守府の■■少尉でーす。お前の艦隊と演習がしたいんだけど』

 

 駿河鎮守府の提督が電話で話し掛けてきた。提督が中将なのを知らないのか少し馴れ馴れしいところが分かる。敬語すらまともに使わない。

 

「……いいでしょう。日時は?」

『あー決めてなかったなー……まぁ勝手にそっちが決めてくれ。決まり次第連絡よろしくー』

 

 勝手に物事を決められ、勝手に切られる。提督は受話器をゆっくりと元の場所に戻し、静かに指を組んだ。

 あまりの失礼ぶりに摩耶は言葉を失う。恐る恐る提督の反応を確かめた。提督はマナーがなってない輩がこの世で一番大嫌いだ。このせいで何回か人を殴った事がある。

 

「……凄いマナーがなってなかったな、今の」

「あそこのクソ馬鹿は■■大将の馬鹿息子だ。馬鹿みたいに甘やかされて馬鹿みたいに世間の広さも知らずに馬鹿のように生きていたのだろう。マナーもなっていないとは馬鹿なのに随分とお偉くなったものだぁ、馬鹿なのに」

「演習は受けるのか?」

「全力で叩き潰す!! あの身の程知らずのクソガキを息の根も無く完膚無きまでにぶちのめすぞ!!」

「だと思ってたよ」

 

 提督の案の定の行動に摩耶は笑う。

 こうなれば提督は止まらない。嫌いな相手を容赦なく叩き潰すのが大好きな性格だ。ありとあらゆる手段を使って勝ちにいくだろう。先程まで古鷹の演習の編成に悩んでいたが即刻決めたようだ。

 決まった艦娘を呼び出し、執務室に入らせる。呼ばれたのは古鷹、加古、長門、雲龍、摩耶、翔鶴。

 

「って事で演習は古鷹、加古、長門、雲龍、摩耶、翔鶴になったからよろしくー」

「ふざけんな! 何で私まで入ってんだよ!!」

 

 勝手に演習のメンバーに決められ、物議を醸す加古。話なんて聞いてないと怒っている。提督からは古鷹が言っていたが実際はどうなのか。

 

「古鷹から許可が降りたと聞いているが?」

 

 古鷹に目線を移す。

 加古は古鷹を敵視し、鬼のように睨む。

 古鷹は目を逸らしつつ、手の平で顔を隠した。笑っているのか何考えているか分からない古鷹に加古は反対する。

 

「私は演習なんか出ねぇぞ!! コイツと組むなんて真っ平ごめんだ!!」

「と言ってるが古鷹」

「別に構いませんよ。だって私に越えられるのが怖い……みたいなので……」

「「(??????)」」

 

 古鷹は何故か涙を流して泣いていた。しかも今、若干煽ったような気がする。古鷹と加古以外の提督と摩耶達は頭の中ではてなマークを浮かべた。加古の反応を確かめる為、目線を加古に移す。

 

「……ちょっと待てよ……何つった今ァ!!」

「うっわ、チョロい」

 

 案の定加古は激怒する。古鷹の胸倉を掴んで睨みつけた。圧倒的チョロさに思わず提督が口に開いてしまう。

 

「そこまで言うなら格の違いを見せてやるよ!! 私が如何に強いって事をなァ!!」

 

 勢いよく執務室を出ていく加古。取り残された長門達と提督は惚けていた。

 

「なぁ長門。アイツ、あんなに扱いやすかったか?」

「いや、ただ単に古鷹がずる賢く……なっただけのような気がするぞ」

「……あー確かに、こりゃ計画通りって顔してるわ」

「勝手に人の顔を見ないでください!!」

 

 提督は古鷹の顔を覗き、どんな表情かを確かめる。古鷹は少しばかりニヤついていた。これは確信犯に近い。提督は頬を引き攣った。

 

「ま、取り敢えずだ。演習に関する情報は後で渡しておく。しばらく待っていてくれ」

「分かりました!」

 

 摩耶以外の艦娘達は執務室を去る。静かになったと落ち着き出した時、鳥海がある艦娘達を連れて執務室に入ってきた。

 

「提督、新たに艦娘が着任しました」

 

 入ってきたのは大和型戦艦の大和と武蔵。かつての戦争で日本海軍の切り札、世界最大の超弩級戦艦として君臨した最強の軍艦だ。艦娘としての戦闘能力も凄まじく、海軍から信頼されている存在。だがその戦闘能力故に資材消費も凄まじい。

 

「大和型戦艦、大和です! よろしくお願いします!」

「武蔵だ、よろしく頼む」

 

 身長は百九十近くはあるだろうか。提督より身長が高い。巨人を思わせる姿に普段は圧倒されやすいが提督は何の表情も変えずに近づき、握手を求めた。

 

「おーこちらこそよろしく頼むよぉ。何せ戦力が足りなかったからなぁ」

「この鎮守府は前に襲撃され、深海棲艦を追い返したと聞いていたが本当なのか?」

「あぁ本当だ。建物の瓦礫を見て分かるだろう?」

「確かにな」

 

 この二人も鎮守府襲撃の件については聞いているようだ。少し不安に思っているらしい。こちらとしてはどうでもいい事だが。

 

「あ、大和。艤装展開出来る?」

「は、はい、勿論……」

 

 何も無いところから重量感のある艤装が展開された。艤装に装備されている46cm砲が凛々しく見える。流石は大和型戦艦と言えるだろう。提督は大和の艤装の上に座り、心地良さを確かめた。

 

「うーむ良い座り心地だぁ。大和は重くないか?」

「いえ、重くありませんよ」

「ならばよし。移動する際に大和に乗っていけばめちゃめちゃ楽になるぞ……キシシシシ……!」

 

 変な笑い声を上げ、何か企んでいる。大和はニコニコと睦まじく眺めているが武蔵が少し驚いた表情をしていた。

 

「あーすまんな大和。コイツ、少し頭がイカれてんだ」

「イカれてるとは聞き捨てならんな!! 賢明な提督と言いたまえ!! こちとらここ数日間寝ていないんだ!! 少しぐらい楽したっていいだろう!!」

 

 提督は‪α‬について調べており、何日間か寝ていない。自身の所為じゃないのかと心の中で思いつつも武蔵は摩耶に問い掛ける。

 

「提督の言い分は通ってるが実際どうなんだ摩耶?」

「あーまぁ本当の事だよ。賢明な提督以外は」

「だったら提督よ、私の艤装に乗っても構わんぞ。少しは楽になれる」

「おーマジか! んじゃありがたく乗らせて……あれ?」

 

 大和が艤装を動かし、乗るのを避けるようにする。艤装に乗られたのが良かったのか独り占めしたいそうだ。

 

「私でも良いんですよ? 提督?」

「んーそうだな。じゃあこっちにするわ。武蔵は後で頼む」

「大和が言うなら仕方あるまい、提督の言う通りにしよう」

「提督、新しい艦娘がまた着任しました!」

 

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