うざい提督とブラック鎮守府   作:あばずれ

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6. しりとりで『ル』攻めする奴は人間じゃない

「暇だわ」

「分かる」

 

 全ての書類を書き終え、提督と摩耶は暇を持て余していた。天龍と木曾の話以降、話に来る艦娘は全く来ない。一時はどうしようかと悩んだが、結果オーライなのでどうでもいい状況だ。

 

「……しりとりする?」

「……」

 

 暇を潰す為にしりとりを持ち掛けた提督。しかし摩耶は全く乗らない。執務室に沈黙が漂う。

 

「……冗談だ――」「りんご」

「やるのォ!?」

 

 鐘が鳴り響き、昼食の時間を知らせた。提督と摩耶は事前に送ったインスタントラーメンを手に取り、お湯を入れる為に食堂へ向かった。

 

「何でお前、『ル』攻めしかしねぇの!? もうちょい言葉のバリエーション揃えろよ!!」

「『ス』攻めで自爆した人に言われる筋合いは無ぇ」

「違う! 偶然にも『ス』で終わる言葉が多かっただけだ!!」

「じゃあ、あたしも『ル』で終わる言葉が多かった」

「じゃあ、じゃねーよ!!」

 

 口喧嘩しながら視線を集めた二人は食堂の厨房へ向かう。厨房では鳳翔と間宮が艦娘全員分の料理を作っていた。カレーの美味しそうな匂いが漂う。食物を何処で仕入れているのかは別だが。

 

「あ、あの! 中に入るのは困ります!」

「いやいやお湯貰ってくだけだからさ! すまんね!」

 

 そう言って二人はお湯を入れ、蓋をする。鳳翔と間宮はそれをただ見る事しか出来なかった。

 

「何だ反抗しないのか?」

「は、はい……」

「そうか、じゃあな。悪かったよ」

 

 よく見れば二人共手を握り絞めている。反抗したい気持ちは無い訳では無さそうだ。ただ行動に移せないだけの話。勿論提督は何も言わない、何もしない。

 そこに――、

 

「待ってください!!」

 

 暖簾を潜ろうとしたその時、誰かが提督を呼び止めた。振り向くと呼び止めたのは軽空母の鳳翔。身体を震わせ、必死に話した。

 

「あ、あの! もうこの鎮守府の食料の備蓄は……あと少しだけなんです! だ、だから……」

「だから?」

「だから……しょ、食料の調達を……お、お願いします!!」

 

 頭を下げて震えた声で必死に頼む鳳翔。間宮も深く頭を下げた。この鎮守府の食料は前任の提督の時に僅かながらに貯蓄していた。

 提督が着任する前まではその貯蓄していた食料を使って生きながらえているのだろう。勿論、提督はこの事を把握済みである。

 

「……オッケー! 有能な俺に任せときな!!」

 

 親指をあげ、了解を得た鳳翔。不安から抜け出したのか腰を抜かしてしまった。間宮も駆け寄り、これで安心と安堵している。

 

「あ、言い忘れてたけどー!」

「は、はい!!」

「インスタントラーメンを食う時はここのお湯、貰うからー! んじゃあねー!」

「は、はぁ……」

 

 執務室でインスタントラーメンを食べる提督と摩耶。書き終わった書類を端に寄せ、食べるスペースを作っている。

 

「仕事が増えたな提督」

「別に構わんぞ? むしろ大歓迎だ、イヒヒヒヒ」

「そうか。では提督、あたしは午後からお先に抜け出すよ」

「はいよー……俺も休みたい」

「馬鹿か休めないだろ」

 

 摩耶に断言され、少し残念な気持ちの提督。午後は工廠の訪問を予定している。少し面倒臭いと思っていた提督は抜け出したい気分だったらしい。それを知っている摩耶は敢えて提督の前で杭を打つ。

 インスタントラーメンを食べ終え、摩耶は一足先に帰った。提督は一人で鳳翔に頼まれた食料の調達書類を高速で書いている。自分が必要な物だけ頼む事にした。やがて書類を書き終え、休憩した提督は工廠へ向かう。

 

「疲れたわー……身体中ポキポキ言いやがる。さて……工廠に到着!」

 

 工廠に辿り着くも、固く扉が施錠されている。何しようと全く開かないので提督は思いっ切り蹴り飛ばす事にした。

 

「ドーン!! オブ・ザ・デッドォ!! 誰かいるかー?」

 

 工廠は少し暗くてあまりよく見えない。人の気配もしない。といっても妖精の声は聞こえた。

 

「アンタハダレナノネ?」

 

「ん? 俺か? 俺は有能な提督だ!!」

 

「ウザイノネ」

「ウルサイノネ」

「ヤバイノネ」

 

「ウザくて結構! それより妖精達よ、明石知らないか?」

 

「アカシ、ナノネ?」

「アソコニイルノネ」

「イヤアッチナノネ」

「コッチナノネ」

 

「どっちだよッ!!」

「あーすいませーん!!」

 

 奥の方で声が聞こえた。走って駆けて来たのは少々煤まみれの明石。工具を持って現れた。

 急いでいたのか汗が出ている。

 

「よう明石! 調子はどうだ?」

「まぁまぁと言ったところです!!」

「理由がふわふわしてるが元気があってよろしい!! ところで明石、工廠の整備は如何ほどか?」

 

 見た限りだと内部は上手く片付けられている。資材が足りないので何も造る事は難しいが、今にでも造れそうではある。妖精達もやる気は充分だ。

 

「今からでも開発は出来ます! しかし……」

「資材だろ? 大丈夫だ、明日届く。なんせ俺は有能だからな!!」

「ほ、本当ですか!? でも……」

 

 一瞬喜びの目を向けたが、縮こまってしまう明石。

 何故か身体が震えている。情報では開発はしていたものの、拷問器具を開発した経験があるらしい。恐らくそれがトラウマなのだろう。

 

「でも――」「でもじゃなああああああい!!!」

 

「ウルサイノネ」

「スゴクウルサイノネ」

「スピーカーナノネ」

 

「お前は俺や艦娘から開発して欲しい物があったら開発す・る・の!! それでいーいーのー!!」

「は、はぁ……」

「だからお前の過去なんざ興味無ぇ!! お前は自由だ! なんでも作れ!! 以上!  解散! 頑張れ!」

 

 

 

 

 

――重巡寮

 

「ようこそこの鎮守府へ!」

 

 摩耶は重巡の艦娘達による歓迎会に誘われていた。最上の部屋を使って催された歓迎会は盛り上がっている。テーブルにはつまみやお酒が無造作に置いてあり、各自食べたい時に食べる感じだ。

 

「アイツは別だが摩耶は大歓迎だな!」

「こら那智、少し飲み過ぎよ」

 

 主役である摩耶は大注目の的だ。自身の事や提督との関係性など隙もなく質問してくる。少し嫌気がさすも同じ仲間がいる摩耶としては少し居心地は良かった。

 

「ねぇねぇ、摩耶さん! あの人って普段はどんな感じなの?」

「いつも通り、ウザい提督だ。暇さえあれば煽って来る。クソ野郎と呼ばれてもおかしくはないな」

「んじゃあの人と何年関係続いてるの?」

「んー八年ぐらいかなー、初めて会った時が大体その年月になる」

 

 青葉が必死にメモを取っている。恐らくこの調子だと提督の弱みや嫌いな物でも聞いてくるだろう。本当は言いたくないが、色々と不満があるので言ってやる。

 

「じゃあその初めて会った時のエピソードとかない?」

 

 エピソード、あるにはある。だがあまり言いたくはない。提督からも何回注意されている。

 これは二人だけの秘密なのだ。

 

「ごめんな、よく覚えてねぇんだ」

 

 そう言って摩耶はお酒を少し飲む。酒を飲むのは久しぶりだ。

 

「あの人の弱みとか嫌いな物とかある?」

「提督は……確か肉をあまり好まないな。魚しか食べていない」

「それでそれで?」

「あと白黒つけない人が嫌いだったりする。それに力があるのに何もしない人は大嫌いだな。大本営にいる大将が主だったりする」

 

 あとここにいる艦娘達。とは伏せておいて摩耶は思いつく限り、全て話した。あのクソ提督に報いを。

 しかし前まで聞いていた酷い鎮守府とは何だったのか、艦娘達から笑顔が伺える。本当に前任は酷い事をしたのだろうか。それともただ艦娘達が無理して笑顔を作っているのだろうか。あとで提督に聞いてみれば早い話だ。

 

「……アイツの朝礼は何だったのか……完全にイってるよなぁアレ」

「そうよそうよ、なにが反抗も出来なかったポンコツ兵器共よ。私達の事何も知らないでイイ気になって……」

「まぁまぁ加古さん、今は歓迎会ですから……」

「そうだぞ加古? ここは愚痴る所ではない」

 

 皆和気あいあいとしている。前任の事もあってか仲間との絆はかなり深い。どんな艦娘でも仲良くやっていけそうだ。

 

「いやーしかし……摩耶は何だか、深海棲艦に見える……あっ」

 

 その時全ての重巡に電撃が走る。摩耶も思わず昔の癖で殺気を放ってしまった。どうやら艦娘達は摩耶が深海棲艦に似てる事を禁句として黙っていたらしい。

 正直この姿でそう見られてもおかしくはないだろう。慣れているはずが少しだけ精神的に来ていた。

 

「ごめんなさい、どうやら那智が飲み過ぎて酔っちゃったみたいで……アハハ……」

「いや良いんだ、大丈夫。もう慣れてる」

「そ、そう? ごめんね……」

「んじゃ、あたしはこれ食べようかなー」

「あ、それは私が残しておいた物だ! よこせ!」

 

 摩耶が自ら空気を変えた事でこの場は丸く収まった。またあの時のテンションと同じ様に皆楽しんでいる。しかし摩耶の心の中では少し複雑な気持ちだった。

 一方、提督は――、

 

「暇だなー……――

 

 

 

――よっしゃ摩耶がいない内に飲むであろう水に下痢剤入れておこう」

 

 

 

 




下書きだと誤字多くてたまに添削出来てないんですすいません
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