うざい提督とブラック鎮守府   作:あばずれ

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66. 最初からあるモノと言えば

「よく気付きましたね。ここの艦娘達にはバレていないのに」

「貴方の行動を今まで監視していました。まさか貴方があの前任や深海棲艦と繋がってたなんて思いたくありませんでしたよ」

 

 舞鶴の榛名が艤装を展開し、この鎮守府の榛名を脅す。彼女は着任当時から前任に気に入られ、■■達と共に君臨する支配者の一人だ。

 だが実際は艦娘でありながら前任に選ばれた深海棲艦のスパイ。密かにこの鎮守府で暮らし、息を潜んでいた。主な仕事は大本営の情報提供や作戦内容の密告。

 

「鎮守府襲撃の際、こちら側の作戦を密告した事。そしてこの鎮守府に前任と深海棲艦を上陸させる為に影で手配していた事。金剛お姉様を殺害しようと計画した理由は作戦の邪魔になる金剛お姉様を消す為。全て確証が得られます」

「……それで? 貴方は私をどうするつもりですか?」

 

 彼女は余裕な表情で舞鶴の榛名を見つめる。深海棲艦のスパイとバレた以上、ここには住めないはずだ。捕まえた後に情報を吐いてもらわなければいけない。

 

「貴方を捕縛し、洗いざらい吐いてもらいます。既に憲兵隊や特殊艦娘部隊が到着していますのでご降伏をお勧めしますよ」

 

 廊下に通ずるドアの向こうには摩耶とプリンツが潜んでいる。逃げ出そうとしても無駄だ。既に捕まえる準備は整っている。

 

「……一つ、いいでしょうか」

「何を、ですか?」

「確かに貴方の言う通り、私は深海棲艦の密告者です。それは紛れもない事実……」

 

 彼女は思い出に浸る様に部屋を歩いた。テーブルや本棚、ベットに触れる。表情一つ変えない彼女は深刻そうに語り始めた。

 

「……ですが私は裏切らなければいけなかった」

「どういう……事ですか」

「確か貴方はこの鎮守府で最初の榛名、ですよね? そして私は二代目の榛名……」

 

 舞鶴の榛名は前任に解体寸前まで追い込まれ、金剛の協力もあって脱出。大本営まで逃げ出し、あの提督によって助けられた艦娘。

 彼女は榛名が逃げ出した後に建造され、これからの生活に胸を膨らませていた。しかしある事を知ってしまった彼女は金剛の過去を知ると同時に洗脳されてしまう。

 

「貴方達は()()()()()()()()()()()、そして()()()()()()()

「っ!?」

「その事を知ってしまった私は洗脳を施された。操られてしまった」

「怪しい行動はやめてください!!」

 

 舞鶴の榛名は警戒を強め、艤装を構えた。このまま語り出せば時間稼ぎに使われている可能性がある。不本意ではあるが、強制的に連行するしか手段は無いようだ。

 しかし何故だろうか、彼女は何故か悲しげな表情をしていた。

 

「やはり憶えていらっしゃらないのですね……」

「何が言いたいんですか!!」

「……私から忠告させていただきます。この事を知りたければ私のようになる覚悟を……」

「ッ? まさか──」

 

 そのまさかだった。警戒を強めていたはずが後方の窓から深海棲艦が覗いているとは思わなかった。急いで振り向いた舞鶴の榛名は──、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 闇夜の暗海に輝く火花。

 

 

 

 

 

 青白い稲妻が暗海を駆ける。

 

 

 

 

 

 砲煙が影となり、水柱が行く手を阻む。

 

 

 

 

 

 砲撃音が直に耳へ響く。衝撃が身体を巡る。

 

 

 

 

 

 互いに怯み声を漏らし、相手を睨みつける。

 

 

 

 

 

 加古は大跳躍。空に砲撃し、その反動で古鷹に殴り掛かる。

 古鷹は殴打を回避。着水した加古に狙いを定め、砲撃する。

 水柱が立ち、加古の姿が確認出来なくなった。

 がしかし、水柱を潜り抜けた加古が急加速。

 

「(早い……!! 以前より速度が上がってる!! まず──)」

 

 古鷹は無意識に左脚で蹴ろうと迎撃。

 加古は左脚の蹴りを軽々と回避。身体を回転させ、古鷹の死角に入る。

 そして古鷹の脇腹を思い切り殴り、そのまま殴り飛ばした。

 

 古鷹は岸辺の壁に叩きつけられ、胃のものを吐いてしまう。

 加古はすかさず攻撃、怯む古鷹を殴りながら砲撃。

 古鷹は回避するも加古に服の袖を掴まれた。

 勢いよく投げ飛ばされ、古鷹は態勢を整え、着水。

 

「ダメだ……!! あまりにも早すぎる……!!」

 

 加古は荒々しくも冷静さを見出している。古鷹の戦闘パターンを見極め、弱点を探していた。勿論古鷹もそれは実践している。だが圧倒的に加古の方が早い。

 

「……加古……!」

「何笑ってんだァァ!!」

 

 古鷹は自然と笑みを浮かべた。加古は元々強い、だがその強さを再確認出来て喜んでいるようだ。加古は気に入らないのか突進し、殴りながら砲撃する。

 

「あたしを倒すんじゃねぇのかァ!?」

「倒すけど……加古も救う!!」

 

 咄嗟の攻撃に回避するも、海面に尻餅をつく古鷹。加古に煽られ、古鷹も突撃する。

 

「訳の分からない事をッ!!」

 

 加古はわざと至近距離で海に砲撃。水柱で自分の姿を隠した。水柱の中へ古鷹は突進する。しかし加古はそれさえも読んで、古鷹を殴った。

 

「何でこんなに悲しいんだよ!! 全部、お前の所為だ!!!」

 

 怯んだ古鷹を殴り飛ばし、砲撃する。古鷹は空中高く飛ばされ、爆煙がアーチとなった。

 

「お前が立ち直らなきゃこんな事になんてなりはしなかった!! あのクソ提督が来なきゃお前が強くなるなんて絶対に無かった!! 嫌な思いしたくなければ関わらなければいい話なのに!! 今まで部屋に閉じこもってた様な奴が!! 強くなってあたしを救うなんて戯言をほざいて!! その癖弱いのに一々突っかかって来て!! 変に頭が痛くなるんだ!! 変に悲しくなるんだ!! 初めからあたし達に感情なんてなければ! こんな悲しむ気持ちなんてなかったのに!!!」

 

 加古の言葉はまるで兵器であり人間である私達艦娘の存在を恨んでいるかのようだった。艦娘は深海棲艦に対抗できる唯一の兵器。人間の身体をした兵器が戦っているだけに過ぎない。

 だが、それと同時に人間が持つ感情と心が存在している。仲間を想い、互いに分かち合えるモノだ。

 

 思えば歪だ。

 感情が無ければ深海棲艦なんて躊躇いもなく倒せる上にこんないざこざが起きる事なんて無い。ましてや強くなりたいと思う向上心すら無かっただろう。

 

「……確かに今までの事を考えれば関わりたくないって思うよ……! だけど……どういう経緯で変わってしまったのかが分かった以上……! 姉として……救わなきゃいけないんだ!!」

「ッ……!」

 

 古鷹の身体が徐々に光り出す。黄色い稲妻が周囲に放たれ、身体に纏っていく。手を再度握り、加古を睨んだ。

 

「加古……私達はもう他人同士じゃないッ!!

 

 叫んだ古鷹は突如、急発進。黄色い稲妻が遅れて古鷹を追い掛けた。

 凄まじい速度に加古は圧倒される。古鷹は跳躍、右腕を後方へ引き、左足を前に出す。

 

「(早ッ……ガードをッ!!)」

 

 腕を交差させ、防御する加古。反撃が出来ない以上はこうするしかない。

 古鷹は加古の防御を崩そうと交差した腕に目掛けて殴った。

 

私達は初めから……姉妹なんだッ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわッ!!」

「どうした榛名──ッ!!」

 

 背後の窓から押し寄せた深海棲艦によって舞鶴の榛名は拘束されてしまった。摩耶達も慌ててドアを無理矢理蹴り飛ばし、中に入るも軽巡棲鬼に砲口を突きつけられる。例え艤装を展開している摩耶達と言えど、零距離で構えられたら無事ではいられない。

 

「私である貴方であれば何か思い出せるかもしれませんね……」

 

 彼女は窓から脱出しようと試みる。深海棲艦達に匿われるように彼女は窓の縁に立った。この部屋は地上三階、艦娘ならば余裕で降りる事が出来る。プリンツは先回りしようと部屋を出た。軽巡棲鬼が追い掛けようとするも摩耶が庇う。

 

「待て榛名!!」

「待ちなさい!! こんな事をしてただで済むと思わないで!!」

「……さようなら」

 

 別れの一言を残して、彼女は飛び降りた。軽巡棲鬼がその場面を確認し、背後に顔を向ける。その瞬間に摩耶は軽巡棲鬼を部屋の外まで蹴り飛ばした。空中で怯んだ軽巡棲鬼。すかさず摩耶は足で顔面を踏み、地面に叩きつける。そして周囲を確認した。

 が、彼女や深海棲艦の姿が見当たらない。

 

「摩耶!! 榛名は!?」

「それがどこにもいないんだ!」

 

 あの短時間でどうやって逃げたのか。まさかもう撤退したのか、いやその可能性は低い。不測の事態だ、仕方なく摩耶は遠隔操作で警報を鳴らす。

 

「どうした摩耶!!」

「長門か! 緊急事態だ、今すぐ榛名を探してくれ!!」

「榛名か、了解した!!」

「摩耶さん!!」

 

 警報で起床し、不知火が駆けつけてきた。既に艤装を展開している。

 

「■■先生が見当たりません! 医務室で荒らされた跡がありました!」

「んなッ……!!」

 

 この鎮守府の専属医師である■■医師が行方不明となった。医務室では誰かに荒らされ、連れていかれたような痕跡が残されている。事態は更に悪化しているようだ。

 

「こちらコードネーム、HN。対象の交渉と捕獲に失敗しました」

『こちら■■。構わない、お前の良心故に行った作戦だ。このまま作戦Bに以降する、A地点にて特殊艦娘部隊と合流してくれ』

「了解しました」

 

 壁に大穴が空いた部屋で舞鶴の榛名が憲兵隊と特殊艦娘部隊と連絡していた。本当であれば突入して捕獲、又は殺害する作戦のはずが舞鶴の榛名自身が捕獲するという作戦に切り替わっていた。連絡を取り合い、舞鶴の榛名は手を握り締める。

 

「このまま引き下がる訳にはいきませんよ……!」

 




活動報告にも説明してありますが、今週土曜日は私個人の諸事情により投稿できません。

恐らく来週水曜日か来週土曜日になる可能性があります。
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