これからいつも通りの更新ペースで投稿していきたいと思います。
(因みに水曜日投稿か土曜日投稿かは下書きの進み具合によります)
「私達は初めから……姉妹なんだッ!!」
腕を交差した防御でも直に伝わってくるこの衝撃。今まで受けてきた攻撃の中で最も威力の高い一撃だった。交差した腕が悲鳴を上げている。流石に加古でも耐え切れなかった。
「(ガードがッ!!)」
防御を崩され、身体がガラ空きになる加古。古鷹は躊躇いもなく砲撃し、加古を仰け反らせた。勢いよく吹き飛ばされ、加古は受身を取る。
『初めから……姉妹なんだッ!』
「今更姉ぶんのかよッ……!! ッオラァァァ!!!!」
「ウオォォォァァァ!!!」
青白い稲妻と黄色い稲妻が衝突。
互いに急発進し、互いの殴打が直撃する。
「ッ!!?」
先手を打ったのは古鷹。加古の殴打を受け流し、跳躍。
回転しながら加古の脳天を狙う様に蹴り落とす。
加古も負けじとその蹴りを紙一重で回避。蹴った後の隙が出来た古鷹を砲撃で吹き飛ばす。
「クソッ!! 当たり所が悪かった、急に考えやがっ──ッ!?」
加古は思わず息を飲む。
古鷹は海面に打ちつけられた直後、一直線に急発進した。黄色い稲妻が追い掛けるのに精一杯。有り得ない速度に古鷹は気付いていない。
「絶対に救うんだァァァ!!!」
今まで散々な事しか無かった。誰も救われず、虚しく、悲しい日々。
蔑まれた、殴られた、蹴られた、貶められた、辱められた。思い出したくもない事ばかりだ。
友達も、仲間も、妹も、誰も自分の手で救う事が出来なかった。
救いようの無い馬鹿なのかもしれない。今思えばあの時の自分が恥ずかしく思える。
何も出来ない事がどれだけの後悔を生むかなんて分かり切っていたはずだ。
古鷹と加古は互いに急接近。
二人とも自身が持ち合わせる最大の火力を乗せた一撃を使うつもりだ。
使用しているのは本物の弾薬。どちらも受ければ沈む可能性すらある。
真鍮色の稲妻が身体を纏い、艤装に集中する。
探照灯から発せられる紺碧の稲妻が変形する艤装全体に収束した。
――今更どうしようが関係無い。
――この先の決められた未来なんて知った事じゃない。
――未来や過去がどうであれ、今を生きていたいんだ。
――この勝負も誰かが決めた運命じゃない。
――私達が勝手に作った運命なんだ。
――私の人生は私が決める。もう誰にも狂わせはしない。
――いつまでも過去を貪る私とはおさらばだ。
――例えそれが自身の破滅を呼ぶ結果だとしても。
――もう二度と後悔はしたくない。
――加古は私を倒したい事で精一杯だ。
――だけど私は違う、加古を倒すんじゃない。
――加古を救う為に戦っているんだ。
加古の全門斉射と一斉発射された魚雷が至近距離で直撃。
大きな爆煙が上がり、水柱が立つ。
最早死んだも同然。
だが──、
「加古ォォォォォァァァァァァ!!!!!」
血を吐きながら古鷹は加古の名前を叫ぶ。爆煙を掻き分け、水柱を突き抜けたその姿は満身創痍。
古鷹にとって初めての捨て身だった。
後方へ引かれた右腕が残っている。
──あぁ……
握り締められた右拳は加古の頬へ直撃。
頬にめり込み、前へ前へと押し殴る。
──そうか……
「目をォォォ覚ませェェェェエエェェ!!!!!」
そのまま古鷹は咆哮と共に加古を海面に叩き殴る。
間欠泉のような水柱が立ち、猛風で海面が揺れた。
──あたしは……
──助けてもらいたかったんだ。
海面がざわつく。
水柱が立った事で海水が雨となって降り注いだ。
空には風に流される砲煙の跡、岸辺の壁にはひび割れた跡。
古鷹と加古がどれだけ本気の勝負をしたかを物語っている。
その戦場の中央では仰向けに倒れる加古と立ち尽くす古鷹がいた。
両者共に息が上がり、戦闘続行不可。
やっとの思いで立っていた古鷹も座り込んだ。加古は乱れた髪で顔を隠し、沈黙としている。
古鷹と加古によって行われた姉妹喧嘩、もとい勝負は古鷹の勝利によって幕を閉じた。
「もう気は済んだかー?」
聞き覚えのある声が聞こえた。声の方向に振り向くと、提督がニヤニヤと砂浜でシートを引きながら座っていた。そこに何故か武蔵もいる。
「て、いとく……?」
「何で……ここに……!」
「……まぁそれはさておき、帰るぞ武蔵」
「了解した」
シートを片付け、武蔵の艤装に乗る提督。少し違和感を感じた二人だが、気にせず鎮守府へ向かった。月の光が海面に映る。古鷹と加古は一言も発せず、走行していた。
「どちらとも本音が聞けてスッキリしただろうなぁ」
「……いつから居たんですか」
「お前らが出撃ハッチに行った時から」
「「……」」
一番最初から覗いていた提督は武蔵に頼み、わざわざここまで来たという。何故武蔵が乗り気なのかはよく分からない。あの戦闘を見られて少し恥ずかしくなってきた。
「で、提督よ。目を覚ましたのか? 加古は」
「さぁね~……」
提督は俯く加古に目線を移す。古鷹と一騎打ちの勝負に出て、互いに本音を言い合い、倒れるまで戦った加古。目の敵にしていた古鷹に敗れた本人はどう思っているのだろうか。すると加古は俯いたまま口を開いた。
「……分からない」
「何で?」
「分からないけど……今までやってきた事は、申し訳ないと……思ってる」
「ふーん……」
興味無さそうに提督は月を眺める。加古からの言葉を聞いて武蔵は少し口が緩んだ。罪の意識を感じているという事は少なくとも加古の心境に変化が起きている。薬に縛られていながらも何かしら変化があるのはとてもいい収穫だ。資料として視野に残しておこう。
「古鷹……」
「何?」
「姉でいてくれて……ありがと……う……」
「っ……! うん……」
妹の加古から初めて聞いた感謝の言葉。思わず古鷹は涙ぐむ。
関係は変わっていないかもしれない。変わったとしてもミリメートル程度の変化かもしれない。
それでも古鷹にとっては大きな変化だった。
まだ大した事ではないけれど、これから先は少しずつ加古と話してみたいな。
そう、私達は姉妹。
血が繋がった姉妹。
艦娘が姉妹と呼んで、他の人達は違和感を感じるかもしれない。
それでも私は姉妹だと胸を張りたい。
所詮は馴れ合いでしかないと言われても。
烏滸がましい事だと言われても。
それでも私は言い続ける。
だって一番大切な人が目の前にいるから。
「あ、お前ら謹慎二週間な」
「えっ!?」
「当たり前だろ。謹慎処分中に無断で出撃して、あんだけ暴れて、怪我までしといて重大な命令違反だ」
「確かに……」
「……ッ」
古鷹と加古は現在、一週間の謹慎処分中だ。それなのにも関わらず、無断出撃、弾薬の無断消費、全治必要な損害。あらゆる違反を繰り返してきた。当然長引くのも無理はない。
「だが入渠だけは許可してやる。流石にその状態はまずいからな。特別だ、ありがたく思え!」
「ッ痛!!」
提督にデコピンされ、額を隠す古鷹。キシシシと変な笑い声をあげ、武蔵の艤装から落ちそうになる。
加古は馬鹿らしいと溜息を吐くも、その光景がどこか懐かしく感じた。
「提督危ないって!! っ?」
「警報か?」
「鎮守府で警報が鳴っているらしいな提督」
「あの様子だとさては逃がしたな? 急いで向かうぞ」
「「了解!」」