うざい提督とブラック鎮守府   作:あばずれ

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68. 月下の海に駆ける二色の稲妻

「何があったの摩耶!!」

「榛名がこの鎮守府のどこかに隠れたんだ!! 今すぐ捕まえてくれ!!」

「捕まえてくれって、榛名が何をしたの?」

「アイツは深海棲艦と手を組んでいた。提督に言われて確証は無いが、とにかく本人の口から聞くしかない! 急いで手分けして探してくれ!」

「分かったわ!」

 

 一方で鎮守府では一刻を争う事態が発生していた。深海棲艦の密告者である榛名の逃走。全艦娘が急いでその跡を追っていた。

 

「■■先生はどうだ!!」

『現在捜索中! 痕跡があまりにも少なく、どこにいるか……』

 

 更には■■医師の行方不明。恐らく深海棲艦が攫っている可能性がある。もしくは殺されている可能性すらある。一秒たりとも時間は無駄に出来ない。

 

『おい摩耶、広場に来い!!』

 

 無線で長門に呼び出され、多くの艦娘が広場に集まる。先に集まっていた艦娘はある一定の方向に顔を向けていた。

 

「どうした長門!!」

「あれを見ろ」

 

 長門が指さす方向は海。その先には大軍と思える深海棲艦の数が。その後ろには戦艦水鬼や泊地棲姫、装甲空母鬼に空母棲姫。そしてその深海棲艦の上に立つはこの鎮守府の榛名。その数、約二百近く。

 

「榛名ッ!!」

「……随分とこの鎮守府にはお世話になりました……ですがもうお別れです」

「待って榛名! 何でこんな事を!!」

「……貴方に言われる筋合いはありません」

 

 金剛が榛名に近づこうとするも摩耶達に止められる。あの大軍で単騎突撃は自殺行為だ。簡単に行かせる訳には行かない。

 

「■■先生はどうした!!」

「あの人は一回眠ってもらいました。心配しなくとも、今頃営倉で寝ています」

「何故このような裏切りを……!」

「それはそこにいる私に聞けば早いですよ」

 

 後方の門から憲兵隊と特殊艦娘部隊が身構えていた。銃器や艤装を構え、警戒している。そして舞鶴の榛名も艤装を展開し、他同様構えていた。

 

「尋問は終わりですか? ではこれにて私は失礼します……」

「待てッ──」

 

 深海棲艦が上陸していく。この数は圧倒的にこちらが不利だ。住民の避難が終わっていない上に■■医師の生存確保、また榛名の捕獲などやる事が多過ぎる。まだ提督は古鷹と加古の件で来ていない。こんな状況にて不在とは腹が立つ。

 だが──、

 

「逃がす訳ないでしょ!!」

「オラァァァ!!!」

 

 深海棲艦の艦隊の中央を二色の稲妻が駆け走る。戦艦ル級や重巡リ級、軽巡ト級が空へ殴り飛ばされた。それと同時に砲弾の嵐が深海棲艦の艦隊を襲う。一気に水の壁が出来上がり、海水が二色の稲妻の周囲を囲む様に分散する。

 その中にいるのは──、

 

「古鷹! 加古!」

「あーやっとついたー!」

「提督、今までどこに……!」

「おー長門かー……ちょっと散歩してた。さて……」

 

 提督が広場にいつの間にかいた。提督は背伸びしながら、状況を確認していく。やはり榛名捕獲は失敗したようだ。

 

「古鷹、加古、お前らに榛名を任せる。■■医師と明石は着任した艦娘共に捜索させろ。あの大軍は襲撃時の艦隊で殲滅。殲滅後に古鷹達と合流だ、一々艦隊を決める暇なんてないからな」

「了解!!」

 

 今海にいるのは古鷹と加古、武蔵のみ。即戦闘可能な艦娘に任せるしかない。雑魚共粗方片付け、その後に出撃した方が良いらしい。

 何より古鷹と加古の意見を尊重したのもある。

 即座に命令し、艦娘を動かしていく。命令を聞いた艦娘達はそれぞれ自分の役割を果たす為に走った。

 

「ンナ行カセル訳ナイダロ!!」

「残ラズ全員沈メェ!!」

 

 古鷹と加古に目掛けて深海棲艦が複数人で襲い掛かる。しかし二人は息を合わせ、近接と砲撃で薙ぎ倒した。

 

「榛名は私達が時間を稼ぐ!!」

「深海棲艦や明石、■■先生は任せた!!」

 

 二人は肩を合わせ、艤装を構える。それはまるでかつての姉妹の姿を見ているかのようだった。秋月達や第六駆逐隊は思わず喜んでしまう。きっと仲直りしたんだ、そう思っている。

 

「お前ら武闘派二人の晴れ舞台だ、存分に暴れろ。戦闘開始だ!」

 

「倒セェ!!」

 

 逃げゆく榛名と戦艦水鬼達を古鷹と加古は全速力で追い掛けた。

 しかし深海棲艦の艦隊が一斉に行く手を阻む。

 

 古鷹はわざと接近、軽巡ヘ級に砲撃させて蹴り飛ばす。

 仰け反ったへ級の腕を掴んで回転、空母ヲ級の艤装まで投げ飛ばした。

 

 加古は重巡リ級の頭に乗って跳躍。

 軽巡ツ級や雷巡チ級の脳天に砲撃、駆逐イ級を踏み台にして着水。

 また跳躍した。

 

 逃げゆく榛名達をまだ二人は必死に追い掛ける。

 

 空母棲姫が白く丸い艦載機を繰り出した。その数、約七十機。爆弾の雨が降り注ぐも、二人は稲妻の如く回避する。

 

 古鷹は目の前の敵を薙ぎ払いながら突撃。重巡リ級を傘替わりに敵の攻撃を回避し、リ級を投げ飛ばす。

 加古は空中で白く丸い艦載機を素手で直に破壊。

 

「ハァ!!?」

 

 徐々に降下しながら艦載機を破壊し、古鷹のいる地点まで砲撃の反動で移動し、着水。目の前に立つ空母ヲ級、軽母ヌ級を殴打と同時に砲撃し、それぞれを殴り飛ばす。

 

「(中々ノ強サダ……一回戦ッテミルノモ悪クナイ……)」

 

 艦隊を抜け出し、重巡ネ級が単騎突撃してきた。

 咄嗟の攻撃に二人は離れ離れになる。態勢を整えながらも榛名を追い掛けるをやめない。

 二人の間には重巡ネ級がいる。

 古鷹と加古は互いに視線を合わせ、先に重巡ネ級を倒す事にした。

 

 重巡ネ級は先に古鷹に接近。回し蹴りで古鷹を蹴るも腕で防御される。

 背後に加古が現れ、ガラ空きの背中目掛けて砲撃。

 

 重巡ネ級は大跳躍し、態勢を整え着水。そしてまた突撃、砲撃と殴打を重ねる。

 高速移動しながらの近接戦闘が始まる。

 重巡ネ級の近接戦闘は予想以上に強く、全く怯まない。腹に別れた艤装の砲撃が回避した二人に追い討ちを与えた。

 

「古鷹ッ!!」

 

 古鷹が砲撃で怯んでしまった。海面に打ちつけられ、加古に置いていかれてしまう。

 重巡ネ級は左拳を握り締め、加古に殴りかかった。

 加古はその拳を無意識で受け止める。水しぶきが更に上がり、衝撃波が広がった。

 

「任せて!!」

 

 立ち直った古鷹が全速力で追い掛けてきた。重巡ネ級の腹を蹴り飛ばし、加古と距離を離す。

 

 海面にゴロゴロと回転しながらも立ち上がる古鷹。重巡ネ級の膝の裏を蹴り、加古は左腕を弾いた。

 

 そして二人は息を合わせて回し蹴り。重巡ネ級の頭に直撃し、同時に食らった事で頭が回転。首ごと捻じ切れ、重巡ネ級は人形にように倒れる。海面に打ちつけられながら沈んでいった。

 

「砲雷撃戦始め!!」

 

 霧島や摩耶、長門率いる主力艦隊が到着した。後方で残した深海棲艦を倒してくれている。

 

「よくやってくれた、古鷹、加古!!」

「後はあたし達に任せな!!」

『古鷹と加古は帰還しろ。充分な程、時間稼ぎはしてくれた。後は摩耶達と……特殊艦娘部隊に任せろ』

「分かりました……加古ッ!!」

「なに!? 古鷹!!」

 

 古鷹と加古が背中を合わせる。二人共、先程の戦いと今の戦闘で疲れきっている。息も上がり、艤装が悲鳴を上げていた。提督が命令するも二人はまだ諦めない。深海棲艦に囲まれる中、二人は話し始めた。

 

「こういうの……いつ以来かな……!」

「さぁ……だが、こっち側で必死に足掻くのも……悪くないねぇ……!!」

 

 二人は肩を合わせながら腕を上げる。二人が指さす方向は榛名。肩に付けられた艤装を向け、堂々と口を開く。榛名は表情一つ崩さず、冷酷な目で古鷹と加古を見下ろす。風で髪が靡き、そのまま立ち尽くしていた。

 

「今までの榛名達の行動は許さない!!」

「あたし達は全力で足掻いていく!!」

 

 

 

 ──諦めたりはしない。

 

 

 

「例え困難に苛まれようと!!」

「決して後ろには振り向かない!!」

 

 

 

 ──二度と屈しはしない。

 

 

 

「今まで私達の努力は無駄じゃなかった!!」

「数え切れない悪夢の中でもあたし達はまだ灯火が残ってる!!」

 

 

 

 ──どれだけの災難だろうと超えてみせる。

 

 

 

「だからこの先覚悟しておく事だな!!」

「んじゃ後は任せてそろそろ帰還だよ!!」

 

 古鷹と加古の傍を異様な姿の叢雲と龍田が高速で通り過ぎる。そして異様な姿の金剛が二人の間を跳躍し、飛び越えた。叢雲と龍田は一斉砲撃で牽制、爆煙で姿を隠す。

 そこに金剛が爆煙を掻き分け、榛名を素早く攫った。

 

「何ッ!?」

「連レテイカレタ!!」

 

 榛名は抵抗する事なく捕らえられ、金剛に運ばれるがままだ。金剛は着水時に回転し、方向転換。艦隊と合流した。

 

「榛名、捕獲完了デース」

「任務完了ね……」

 

「ッ……分カッタ、撤退ヨ……!!」

「チッ……!!」

 

 攫われた榛名を置いていき、戦艦水鬼達が撤退していく。残った深海棲艦達も海の中へ消えていった。

 

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