うざい提督とブラック鎮守府   作:あばずれ

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74. 酒を飲む連中に毒を入れれば静かになる

『瑞鶴、お前に重要な任務を言い渡す』

 

『大本営の資料室に潜入し、ある書類を見て欲しい』

 

『見るだけだ。事実確認だけすればこちらが有利になる』

 

『言っておくが失敗は許されない。普段資料室に艦娘は入れない、許可証が無い限りは無理だ』

 

『しかもその許可証は一ヶ月ほどかかる。もしあの事を知った俺を把握しているなら、大本営が許可してくれるかどうかも怪しい上に俺が入れるかどうかも分からない』

 

『だから俺が惹き付ける。その間に資料室に潜入し、黒色のファイルを開け。俺の記憶が正しければ黒か赤だ』

 

『潜入ルートまでは皐月達が案内する。その時に瑞鶴の事も手伝ってくれるだろう……いいか──』

 

 

 

 

 

 

 

 

『──書かれた事実が本当だとしても感情的にはなるな。絶対にだ』

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここね……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 憲兵に案内され、皐月達と出会った瑞鶴は資料室に侵入していた。皐月が見つけた裏ルートから瑞鶴と瑞鳳が潜入し、見張りにはガングート。

 

「私も手伝うよ、瑞鶴」

「えぇありがとう。提督さんは黒か赤のファイルって言ってた」

「黒か赤、これね……待って」

 

 それぞれ種類別に別れた金具棚から黒か赤のファイルを取り出す瑞鳳。しかし色々と取り出そうとしている瑞鶴を抱え、積まれたダンボール箱の陰に隠れた。瑞鳳が隠れながら見る先には監視カメラ。先程潜入した裏ルートからは見えないようになっているが、それでも資料室全体を見渡せるように工夫されている。

 

「監視カメラがある。だけど今は皐月が気を引いてくれているわ、読みましょう」

 

 一方皐月とはいうと──、

 

「ね~ね~憲兵さん!」

「んー何だい皐月ちゃん」

「一緒にゲームしよ!」

 

 ニンテン〇ースイッチとプロコントローラーを持ってきた皐月は監視室にいる憲兵達を誘っていた。憲兵達は忙しいので出来れば他の人達に任せたいがサボりたいのも事実。可愛すぎる皐月のお願いを拒否するのも気が引ける。憲兵達は頭を悩ませていた。

 

「うーん……まぁいいか。少しくらい」

「ちょうどサボりたかったし、ここならバレないでしょ」

「ありがとう憲兵さん!」

 

『おっけーだよ』

 

 スマホのLINEから皐月の了解を受け、瑞鳳と瑞鶴はまた動き出す。物音を立てないように静かに関係のある書類を読んでいく。

 

「……無いわね」

「もし()()()が本当だとすれば、この戦争を揺るがしかねない事になる」

「そこまで……一体何が……」

「秘密のメールで送られて来たんだけどね……提督は貴方達の前任が深海棲艦の提督になったのは大本営が薦めたから、という推測をしてる」

 

 瑞鳳が言うあの事とは瑞鶴が所属する鎮守府にかつて提督として務めていた存在‪α‬はそれに気付き、存在ごと前任に消された可能性がある事。提督の推測でありながら、身の毛がよだつほど恐ろしいものだった。あまりにも信憑性の無い虚空の出来事だと思っていた。

 

「えっ……?」

「確かに聞いただけじゃ信じられないよね。でもこの前■■大将に許可を貰って資料室に入ったの。その時に確信したわ」

 

 それは鎮守府襲撃から約一週間ほどが経ち、提督からメール送られた時の事。海域攻略の為に海域図を持ってこいと言われ、特別に資料室へ入る事を許可された瑞鳳。■■大将は時折艦娘を資料室に入らせてくれる時がある。偶然入室出来た瑞鳳はその時に少しだけ緑色のファイル、数々の海軍が起こした事件簿を覗いた。そこには世間に公表された事件や事故などが詳しく表記されている。

 

 しかしあの荒くれ鎮守府が唯一起こした憲兵殺害事件のページは破られていた。そしてパソコンの中にあるその存在‪α‬についてのデータも全て削除されていた。

 

 あまりにも不自然だったのだ。

 

「そんな……」

「私と同じ口癖ね。でも事実だった、つくづくおかしいとは思ってたのよね。本当に何も無かったら艦娘は資料室の出入りを禁止だなんて面倒な真似はしないわ。艦娘だって敵の情報を知る必要があるのに、大本営側はそれらの行為を一切許してくれない。大本営は何かを隠しているに違いない」

 

 瑞鳳は真剣な目で身構える。恐らく瑞鳳が思っている以上に大本営は闇を抱えているに違いない。考えたくはないがそう考えざるを得ないのが嫌になる。

 

「無いなぁ……」

「やはり揉み消されたかな……」

 

 指示通り黒と赤のファイルを開いたがそれらしき資料は見当たらない。提督の記憶が正しければだったがどうやら違うようだ。完全に証拠隠滅された可能性がある。希望は薄いものの、二人は諦めずに時間がある限り探し続けた。

 

「ん? 何だこれ」

 

 瑞鶴が何かないかと棚の奥を調べる。

 すると元々黒のファイルが収納されていた棚の奥に見た事の無い、黒く薄い箱が隠されていた。南京錠で固く鎖されている。

 

「ちょっと見て、瑞鳳!」

「何?」

 

 鎖を少しずらし、鎖された箱の中身をギリギリ開ける。開けた隙間をライトで照らしながら目を凝らした。

 

 

 

 そこには──、

 

 

 

「……やっと見つけた……! 大本営の本当の目的を……!」

 

『もう限界だよ(汗)』

 

「そろそろね、急ぎましょう」

 

 瑞鳳の携帯の通知からLINEで送られてきた。憲兵達を惹き付ける時間もどうやら限界らしい。

 

「あっ」

 

 外の廊下から話し声が聞こえた。どうやら資料室に入るようだ。ここにいてはまずい。すぐさま二人は何事も無かったかのようにファイルを棚にしまい、裏ルートに入る。入った途端に軍人達が入室してきた。間一髪といえるだろう。

 

「危なかった……」

「ここまで来れば問題は無いわ。ガングートの所まで行きましょう」

 

 部屋の中にはガングートが立って見張っていた。ずっと見張っていたのか少し頭をコクコクとしている。瑞鳳に肩を叩かれ、目を覚ました。

 

「お、来たな瑞鳳」

「なに寝てるのよ……大丈夫よバレてはいないわ。瑞鶴はさっきの場所に戻っていて。後は私達が何とかするから」

「わ、分かった……!」

 

 瑞鶴は秘書艦待機室に向かい、部屋を出る。しかし途中でトイレに行きたくなってしまった。今まで緊張していたのか全く気にしていなかったらしい。周りをキョロキョロと探すもそれらしき物はない。初めて来る大本営に瑞鶴は迷ってしまった。

 

「むむ、貴方は■■■鎮守府の秘書艦ですね。私はこの大本営に務める憲兵長、■■■■■と言う者です。一応階級は大佐、好きな食べ物は米です! こんな所で何をしてるのですか?」

「は、はい……ちょっとトイレがどこなのか分からなくて迷ってました……」

「むむむ、あー確かにここは迷いますからね。ご案内致します」

「ありがとね」

「いえいえ大丈夫ですよ」

 

 やがて会議のような口喧嘩が終了し、大本営を去る提督と瑞鶴。提督は大本営を出るなり背伸びして関節を鳴らしている。あれだけ罵詈雑言を言ったら■■中佐が涙目をしていたのでまた何かしらやってくるだろう。

 

「あー長い会議が終わったー……」

「お疲れ様ね、そういえば提督さん! あの──」「そっちこそな」

 

 口に指を当て、シーと静かに言う提督。無言で秘密にしろと言われた気がする。確かに大本営の門前であの事を言うのは危ない。思わず瑞鶴は口を手のひらで隠した。キシシシシと変な笑い声を上げた提督はスマホでプリンツを呼び掛ける。

 

「プリンツ、今どこにいる?」

『これから東京駅に向かうところですよー』

「ちょうどいい、俺らも終わったところだ。東京駅で集合するとしよう」

 

 送迎車で東京駅まで送ってもらい、無事プリンツ達と合流する。この一日で何があったのか全員私服な上に両肩に大量の買い物袋を持っている。劇的な艦娘達の変貌ぶりに提督と瑞鶴は頬を引き攣った。それはさておき、提督御一行は泊まるホテルに辿り着き、無事にチェックインする。

 

「ここは何?」

「泊まる場所です、宿みたいなものですよ」

 

 部屋割りは提督が一人部屋、第六駆逐隊と不知火が五人部屋、球磨と筑摩と羽黒とプリンツが四人部屋、鈴谷と金剛と瑞鶴と加賀が四人部屋になっていると摩耶から聞いた。

 

 

 はずだった──、

 

 

「何故だ。何故こうなった」

 

 ベッドに座り、足を組んで悪態つく提督。指をトントンと動かし、苛立っている。無理もない、チェックイン時に名も知らない人間に一人部屋を無理矢理取られ、急遽鈴谷達の部屋に泊まる事になったのだから。

 

「仕方ありません。不本意ですが同じ部屋にならざるを得ないかと」

「まぁ私は別にどっちでもいいんだけどさ」

「俺が嫌なんだよ!!」

 

 一人部屋で静かに過ごしたかった提督。しかしその幻想は潰れ、うるさい艦娘達の部屋に寝泊まりだ。快適に過ごす事すら出来ない。

 何故なら──、

 

「何でよ」

「お前らがいると少しも静かに出来ないだろうが。例えば……」

「ねー提督ー、これどうやって使うノー?」

「これがいい例だ」

「……」

 

 ホテルに泊まる際のマナーを全く知らないからだ。教えるにしても一々呼ばれて言うのも面倒が過ぎる。元々知っているプリンツや不知火にやってもらうはずが提督が教える羽目になってしまった。

 

「まぁ大して今は気分も悪くない。今回は瑞鶴に免じて許してや──」「わぁー街の景色綺麗ー……」

「人の話を聞けェ!!」

「Admiral! お酒持ってきましたよー!」

 

 不知火やプリンツ達が早速買ってきた部屋着を着て、お酒を持ってきた。学生の深夜テンションのようにはしゃぎたいようだ。と言うよりも既にプリンツは酔っている。

 

「ほら来たぞ。騒ぐ事にしか頭が回らない酒飲み大好き感情爆発寸前騒音被害不可避の馬鹿共だぁ、ここは何故か防音壁になっている。今まで騒がしかったカラオケのような部屋がライブ会場になって合いの手でも取っている事だろう」

 

 

 

 

 

――二時間後。

 

「ハイ! ハイ!」

 

 一時間でライブ会場になる提督達の部屋。

 騒ぎたいように騒いでいる。

 

「って提督が合いの手しちゃってるよ……完全に酔ってるなぁ、アレは」

「羽黒は完全に酔い潰れて昏睡状態。暁達は楽しく不知火とお話してるわね」

「そして瑞鶴や金剛、球磨に伊168は提督と騒いでる」

 

 加賀と鈴谷が椅子に座り、騒がしい光景を眺めている。元々酒に強かったのかそれほど酔っていない。二人ともだらけた部屋着でゆっくりとしている。

 

「加賀と私が最後の砦と言うわけよ」

「えぇそうね。誰か一人は冷静沈着でいなければ」

「おーい鈴谷!」

「何なの?」

 

 鈴谷が振り向いた先には天龍の真似をした木曾。

 そして鈴谷は──、

 

「フフフ、怖いか?」

「ギャハハハハハハ!!!」

 

 あっさり木曾達の仲間になり、笑い転げながら騒いでいる。加賀は鈴谷の裏切りにため息を吐いて頭を抱えた。

 

「はぁ……」

「あー少しばかり酔ってしまったようだぁ、つい楽しくなってしまった」

「いや既にかなり酔ってると思うのだけれど」

「馬鹿言え、俺がハメを外しすぎて周りに醜態を晒すわけなかろう」

「いや既に晒してる様な気がするのだけれど……それに私達とは馴れ合うつもりは無いんじゃないの?」

 

 提督は急に無口になり、真剣な表情になっていた。酔っているおかげで少し頬が赤く見えるも、いつも鎮守府で見る顔。騒がしい光景を見て、提督は口を開く。

 

「……少し酔い過ぎたようだ。加賀、水をくれ」

「はいはい」

 

 加賀は少し微笑みながらも自分のミネラルウォーターを提督に渡す。提督は気にせずに全てを飲み干した。少し酔いが醒めたのか落ち着いている。

 

「あ、そういえらぁてぇとくぅ……あたし、しろーしちゅでぇ……しゅごいもの、みちゃったのぉ……」

「……ほう何があった」

「ききたいかぁ……クソてぇとくぅ?」

「クソ……?」

「ききたいかってきいてんだよぉ!!」

 

 ソファのクッションを投げつけ、乱暴になる瑞鶴。どうやら瑞鶴は酔うと凶暴な性格になるらしい。近づきたくはないところだがそういう訳にもいかない。何か知っているなら聞く必要はある。

 

「聞かせてもらおう……!」

「それがひとにものをたのむたいどかぁ……? おしえてくだしゃいだろ?」

「提督、ここは怒りを抑えて」

「言いたいようですから、許してあげてください司令官」

 

 加賀と不知火に怒りを抑えられる。拳が震え、今にでも言葉でぶん殴ってやろうかと思った提督。苛立ちながらも瑞鶴の言う通りにした。

 

「……教えて下さい」

「おねがいしましゅ、じゅいかくしゃま。このむのうなわたしにおしえてくだしゃ──」「調子に乗るなよ、このヒステリーツインテェ!!」

 

 提督は立ち上がり、激高する。また加賀や不知火に抑えられ、第六駆逐隊に説得させられた。加賀や鈴谷、金剛にとっては過去の提督を思い出し、少しだけ笑っている。提督は本当であれば死んでも言いたくないが仕方ないと椅子に座り、慎重に言った。

 

「……瑞鶴様。この無能な私に教えて下さい」

「Zzz」

「ふざけるなこの鳥頭ァ!!」

 

 殴り掛かろうとする提督を加賀と不知火達が止める。瑞鶴は気持ちよくソファで寝ていた。遂に不遜な態度に耐え切れず、ワインボトルを逆手に持って大声を上げている。

 

「ちょっと落ち着いて提督!」

「仕方ないって!! お酒で酔ってるんだから!!」

「鈴谷達も抑えて!!」

 

 流石に危ないと鈴谷や球磨達も止めに入る。部屋がまた騒がしくなり、提督の荒声が響き渡った。

 

「絶対許さんからなァ!! 覚えてろォォ!!」

 

 

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