「寝ちゃったわね……」
「そうみたい」
馬鹿騒ぎは約二時間半続き、プリンツ達や不知火達は部屋に戻っていった。今まで騒がしかった部屋が静かになり、静寂が訪れる。
「っていうか瑞鶴はアレで良かったノ?」
「……まぁ暴れるし、あぁした方がいいと思うよ」
瑞鶴は酔うと暴れるのでロープで身体を縛り、ソファに寝かせている。提督は中央よベッドに堂々と身体を大の字にして寝ていた。
「片付けも私達か……」
「世話が焼けるわね、本当に」
飲み干したビール缶の山を片付け、おつまみの包装紙をまとめる。鈴谷や金剛も酔っているとはいえ多少は理性があるようだ。片付けがようやく終了し、一つのベッドに三人が座る。
「……加賀達は提督の事をどう思ってるノ?」
「えっ……うーん、そうだなぁ……」
「改めて言われると考えるわね」
金剛が純粋に問い掛けてきた。提督の事をどう思っているか、あまり考えた事はない。ここ三週間近く、様々な事があってかそう考えている余裕は無かった。
「因みに金剛は?」
「私? 私は信用してるヨ」
「そう……まぁ私も金剛みたいに信じられる、かな。性格は最低だけど、面白い人だと思ってる」
「同調する訳では無いけれど私も信じてはいるわ。馴れ合うつもりは無いって本人は言ってるけど、どこかではちゃんと私達の事を見てくれている様な気がする」
この三人には自身の目的の為に手伝ってくれた恩がある。提督がいなければ、今の自分達はいないだろう。提督にはとても感謝している上、その分慕っている。この三人にとっては信用出来る人物だ。
性格は最低だが。
「今思ったんだけどさ……」
「何? 鈴谷」
「今なら提督、無防備だし……アレじゃない?」
その時、金剛や加賀に電撃が走る。
「でもそれ難しくないかしら」
「私達にリスクがあるヨ?」
「問題無いわ。服を隠せばいいだけだもの」
「……」
しかし三人はそれぞれ違う考えをしていた。
金剛は提督が裏のまま着ている服を表に返そうとしている。
加賀は既成事実に見せかけた写真を取ろうとしている。
鈴谷は提督のバラバラになった白い長髪をまとめようとしていた。
そうとも気付かずに三人は大の字に寝ている提督のベッドにゆっくりと近づく。
「ほ、本当にやるノ?」
「やややややるしかない、で、でしょ」
「ななな何緊張してるのよ、男のかかか身体ぐらい、見た事あ、あるでしょう」
「なにやってんらぁ!!」
「ッ!?」
一斉に三人が声の方向に振り向く。ソファてわ縛られた瑞鶴が寝言を言っていたようだ。三人は取り敢えず安堵する。
「何だ瑞鶴か……」
「はぁ……心臓止まるかと思ったわ……」
「死ぬかと思っタ……」
「さて……本番ね」
「まずは服を脱がさないと……」
「脱がすの!?」
鈴谷がいきなり驚く。
金剛の脱がす発言に思わず言ってしまったようだ。
「え、だって服を脱がさなきゃ出来ないじゃん」
「いや脱がさなくても出来るよ!?」
「そうなノ!?」
「金剛の言う通り、脱がした方がいいわね……そうしましょう」
「え?」
取り敢えず提督の服を脱がす事が決定した。しかし提督は大の字にして寝ている。眠っている提督をどうやって眠らせたまま起き上がらせるか考えていた。
「でもどうやって立たせてあげようかナ……」
「そうね……」
「うーん……」
もし提督を起こせば、まずガミガミ言われるのは確実だ。ありったけの罵詈雑言を言ってくる事だろう。慎重にいかなければならない。
「触れたりしたら、勃つかしら」
「……加賀さん、触れなきゃ立てないよ? 何を今更初ってるのさ、私は何度か見た事あるから大丈夫だけど」
「見た事あるの!? しかも何度も!?」
「え? いや、だってあの鎮守府の全員見てるよ?」
「全員!? 嘘でしょう!?」
まさかあの鎮守府にいる全員が提督の反り上がった逸物を目撃しているとでも言うのか。何をすればそんな事が出来るのか、何故誰もそれについて言ってないのか全く意味が分からない。
「立たせるよりもまず上半身だけ起こしたらドウ?」
「何で金剛?」
「だってその方が効率良いヨ。後は二人が支えてくれれば大丈夫デショ?」
加賀は抱きながらヤるという考え、鈴谷は上半身だけ起こして髪をまとめる考えをしていた。
「え? 金剛がやるの?」
「うんやるヨ。だから二人が支えてくれれば問題無いデショ、提督の苦労しそうだし」
「そこまで!?」
提督の反り上がった逸物は女性が苦労するほど大きいのか。だとしたら摩耶やプリンツはどうやって乗り越えたのか、というよりも何故金剛も見ているのか理解が追いつかない。
「だって腰まで大きいじゃん」
「そこまで大きいの!?」
「いや見れば分かるじゃん」
「分からないわよ!! どこ見れば分かるのよ!!」
取り敢えず落ち着いた三人は提督の上半身だけを起こし、丁寧に服だけを脱がす。金剛が裏返った服を元に戻していた。
だが──、
「いつ見ても……凄い傷痕ね……」
「見てるだけでもこっちがキツくなってくる……」
身体の至る所にある古傷に三人は圧巻された。一体何をしでかせばこれだけの傷を負うのか。その恐怖はあまり想像したくない。そんな中、加賀がある事を思いついた。
「……私が脱いだ方がいいかしら」
「いや何で加賀が脱ぐノ!? 加賀は大丈夫だカラァ!!!」
「いやでも脱がなければ信憑性無いじゃない」
「目視で見ても分かるヨ!! 大丈夫ダッテ!!」
「そ、そう……」
服を脱ぐ事を止められ、加賀は何か納得出来ていない。金剛は首を傾け、溜息を吐いている。鈴谷が辺りをキョロキョロとしていた。
「あ、ゴム忘れた」
鈴谷の発言に加賀が嫌そうな反応を見せる。そんな加賀に鈴谷は困惑した。因みに加賀はコンドーム、鈴谷は髪留めのゴムの事を考えている。
「貴方も……やるつもり……?」
「当たり前じゃん。ゴムなきゃ危ないでしょ? こんなの常識じゃん、私はお風呂入ってる時にいつもやってるよ?」
「やってるの!? 人目のつく場所で!?」
「他の皆もやってるよ? 金剛や加賀さんもやってるじゃん」
「いや、やってないわよ!! 何言ってるの!!」
鈴谷のあるまじき発言に加賀は血相を変えて否定した。自分の知らない間に提督の逸物を見た事があるどころかもうヤっているという事実。金剛が裏返った服を表に返した時、ある事に気付く。
「あ、提督ってMなんだネ」
「「Mなの!!?」」
「うん、よく見てたらそうらしいネ」
金剛は提督が着ていた服のサイズを指している。しかし二人は提督がマゾであると勘違いしているようだ。
「ま、まぁ確かにそう思える所はあったわね……」
「いつも摩耶が言ってたからね……」
「あ、私も因みにMだヨ」
「「金剛もォ!!?」」
まさかの性癖暴露に二人は目玉が飛び出る。しかしそう思い当たる節がある事を思い出した。散々妹達に虐められて、何もかも変わってしまったに違いない。
「本当に……ゴメン……」
「ごめんなさい……金剛」
「いや何でMってだけで私謝られてるノ」
二人は頭を下げて、金剛に謝った。何故謝罪したのか金剛は理解出来ていないらしい。
「そっかー……提督、Mなんだ……」
「少し幻滅しました」
「何デ!?」
今度は金剛の目玉が飛び出た。提督の服のサイズがMなだけでそこまで失望するのだろうか。
「いや当たり前でしょう。上官がMだなんて」
「いやM着てる男性だってこの世にいるデショ!?」
「いないよ。せめてあのままSでいてほしかったなー」
「え!? 小さい方がいいノ!? 大きい方じゃなくテ!?」
「……ちょっと待って金剛、何の話をしてるの?」
とうとう違和感を感じた鈴谷が聞き出した。金剛は何気なく普通に答える。
「え? てっきり私は裏に着ていた服を表に戻すのかと……」
「いや、私は既成事実みたいな写真撮って提督を脅すのかと……」
「え、いや私は提督の髪をまとめたいだけ……」
「「「……え?」」」
「……朝か」
朝の午前七時。カーテンの隙間から太陽の光が差し込んでいる。酔い潰れて寝ていた提督はゆっくりと立ち上がった。
「あー頭がクラックラするわー……やっぱ飲み過ぎたか……」
首の関節を鳴らし、額に指を当てる。相当飲んだのかあまり記憶が定かではない。周りを見渡すと鈴谷達が顔を隠しながら、布団を崩さずに寝ていた。
「……何だ律儀に崩さず寝てんのか。流石は艦娘だな……ったく、後でしばいてやろう。クソ面倒だが」
提督はベッドから立ち上がり、背伸びする。
そして洗面台へ向かっていった。
「顔洗って、水飲もう……」
一方で鈴谷達はあの後あまりの恥ずかしさに一睡も出来ず、布団で顔を隠してただただ縮こまっていた。
「はい二日目東京です」
ホテルでのチェックアウトを済ませ、それぞれ荷物を抱える提督御一行。瑞鶴以外はキャリーケースやリュックサックなどを買ってまとめている。そして生意気にも大層なファッションをしていた。
「今日は特別に俺がお前らの買い物に付き合ってやるからありがたく思え」
今日は摩耶に特別な物が欲しいと頼まれている。不本意だが艦娘達の買い物に付き合った方が集合するより効率がいい。早速提督御一行は送迎バスである場所へ向かった。
「ココの方が近いし、何でも揃ってる」
ある場所とは渋谷〇カリエ。渋谷を象徴するランドマークの一つでショッピングや飲食店は勿論の事、ミュージカル施設まである巨大商業施設だ。新幹線の時間までは充分にある。各自解散し、集合時刻まで買い物する事となった。
「て、提督さん……な、何を選んでるんですか?」
「羽黒か。いや摩耶に特別な物を買ってこいって言われてるから何にしようかなーって考えてた」
「だからと言って……雑貨屋さんはどうかと……」
雑貨屋で商品を見て悩んでいた提督。興味本位でついてきた羽黒に言われてしまった。
「……やっぱ駄目か」
「駄目だろ。どう考えても」
隣の木曾も否定する。仮にも結婚している摩耶にそんな安い物は渡してはいけないと羽黒、木曾はある場所へ連れていく。そこはネックレスや指輪などを扱っている店だ。
「大事な相手に渡す物ってのはこういうもんじゃないのか?」
「ひえ~……どれも高いなぁ~」
丸が何個もつく値段に頭を抱える提督。あまり金を無駄にしたくないが、かといって特別な物を買わなければ摩耶に失礼だ。摩耶の事は愛している上、お互い分かり合っている関係。確かにこういう物が特別なのかもしれない。
「うーん……仕方ない、これにするか」
「分かりました」
「早いなオイ」
提督は即断して紫色の鉱石がはめられたネックレスを選ぶ。あまりの決断力の早さに本当に悩んで買ったのか、羽黒と木曾は口を開けっぱなしで困惑していた。
「はいじゃあ帰るぞ」
「えー……」
「えーじゃねえんだよ!! 帰るぞ馬鹿共!」
あまりにも楽しかったのか名残惜しく駄々をこねる艦娘達。皆、姉妹分の服や雑貨物、欲しい物を買って満足しているようだ。早速お金は使い果たしている馬鹿もいるが、提督は気にしない。東京駅で新幹線の切符をそれぞれに渡して乗車。東京に別れを告げ、新大阪駅に到着する。帰りの送迎バスで荒くれ鎮守府まで向かった。
「あーやっと着いた……」
「あ、鈴谷、金剛、加賀」
「何……?」
「昨日の夜の出来事、録画済みなんでよろ――」「「「ちょっと待てェェェ!!!」」」