うざい提督とブラック鎮守府   作:あばずれ

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軍法会議的な感じにまとめましたがよく分からんのです。
あと、■が多くてごめんなさい。
あまりオリジナルの人の名前は出したくないもので。


83. 口喧嘩も程々に

 

 

 

『■■■鎮守府の対応に今でも抗議の声が続いてます。海軍ではこの事件を──』

 

 

 

 

「Admiral、気を付けてください」

「分かっている。完全にぶちのめしてやるから待っておけ」

「準備整いました。今すぐ行けます!」

「よし、行くぞ」

 

 提督、摩耶、瑞鶴、灰色、白露を連れ、鎮守府を出ていく。だが門前にはデモ隊が待ち構えている。簡単に抜け出す事は出来ない。そこで提督は早朝から船を出し、摩耶達に護衛してもらう作戦を考えた。岸辺には会議に言った際の運転手が船に乗って待ってくれている。

 

「お待ちしておりました」

「時間は少ない。今すぐ行くぞ」

「かしこまりました」

 

 予め停船許可を貰っている港に着き、マイクロバスで大本営まで移動する。朝からというものの、抗議隊が大本営の門前に集まり、時雨と夕立を批判していた。事件の現場である荒くれ鎮守府の変装した提督と灰色はそれを前に立っている。

 

「ここが大本営ですか……」

「別に緊張する事じゃないだろう。ただの会議だ」

「ただの会議じゃありませんよ! 分かってるんですか!?」

「こんな連中に何も権限は無い」

 

 灰色は緊張しているのか、祈るように指を組んでいる。足を踏みながら、深呼吸をした。

 

「……何やってんだ」

「だって大本営の会議なんて初めてなんで……」

「ただ中年のおっさん共がテーブルを囲んで暇潰しに戦争を麻雀感覚でやっている老人ホームのような場所だ。蹴散らすぞ」

 

 提督が抗議隊の中に押し入り、大本営の中へ入ろうとする。

 しかし──、

 

「右手と右足一緒に出てますよ!!」

 

 

 

――大本営大会議室

 

「それでは■■■鎮守府暴行事件について、白露型駆逐艦二番艦時雨、白露型駆逐艦四番艦夕立の処分を決めたいと思います」

 

 長く大きい机を各軍人達が座って囲み、会議室奥には元帥と■■大将が座り、扉の手前には証人台が設置されている。事前に尋問官が供述させた内容と■■■鎮守府の憲兵や整備士達の証言がまとめられた書類が置いてあった。

 

「では先ず■■■鎮守府最高責任者、白君から」

 

 司会役は元帥が自ら務め、会議を進めていく。事件の発端として先に提督が指名された。

 

「六月二十二日午後十七時未明、■■■鎮守府第四倉庫にて時雨と夕立が憲兵や整備士達に暴行を加えたとして拘束されました。そして暴行を加えた場面としてこの写真がSNS、またツ〇ッターに拡散され、大ニュースとして全国に広まりました。ですが私としては少し不可解な事があるのです」

 

 プリントされた写真を表に出し、説明する提督。勿論提督は時雨と夕立が被害者である事を知っている。

 だがそれは提督と灰色しか知らない。事件の真相を暴く為に細かく教える必要があるのだ。

 

「この写真……どうやって撮ったのか。些か疑問に思います。他の方々はどう思われますか?」

「……確かに少しおかしいな」

「まぁ不自然に見えるな」

「そう思うのが当然でしょう。そもそもこの写真にはいくつか不自然な点があるのです!!」

 

 プロジェクターに映された写真。

 不自然な点を順に説明した。

 

「一つ目、何故時雨に手錠と猿轡がされているのか! 二つ目、何故二人共カメラ目線では無いのか! 三つ目、アングルが遠くから見たような俯瞰な図なのかァ!」

 

 各軍人達が目を開かせる。確かに提督の言っている事は本当だ。暴行事件のはずが何故時雨は拘束器具で拘束されている。疑問に思う軍人が出てきた。

 

「そこで我々は考えたのです! これは違うのではないのかと」

「何が違うのかな?」

「これはあくまでも仮説ではありますが、これは時雨と夕立を貶めるように緻密に計画された事件だと私は推測しました」

「何故?」

 

 仮説だと予防線を張り、確実な事ではないと言い張る。もし決めつければ疑いはしてくれても信じてはくれない。事細かに教える必要がある。

 

「憲兵隊の方達は以前に■■■鎮守府の憲兵と整備士から事件発生時の状況を聞いています。しかしそこに不自然な証言がございました。事前に配られた資料にも記されているかと思います」

 

 案の定憲兵や整備士達の証言はどれもこちらに有利な事ばかりだった。暴行とは程遠い、事件発生前の状況が良く伝えられている。また時雨や夕立の供述も全てが本当だ。これを見て疑わない者はいないだろう。

 

「どれも証言が事件とはあまり関係無くないか? 二人が憲兵や整備士を殴ったんだろ? 予め計画された事なんじゃないのか?」

「■■中佐、そう言うのであればこちらをご覧ください。■■■鎮守府所属整備士第三班■■■■、三十九歳。事件発生前に夕立が紙を持ちながら工廠を覗き、そのまま去るのを見た。この証言を見て何か思いませんでしたか?」

「何をだ」

「もし時雨と夕立が本当に第四倉庫で暴行する計画を建てたと言うならば、工廠にはよらずそのまま時雨がいる第四倉庫へ向かうはずです。ですが証言では事件発生前に夕立は一度工廠へ来ている。夕立の証言からも時雨を探す為に工廠に行った事が書かれています。では何故時雨を探していたのか、そこで司令官候補生である灰君に言っていただきましょう」

 

 提督の指示通りに灰色は立ち上がる。軍人達が厳しい目で見てくるのは緊張モノだ。心臓の鼓動音が直に聞こえてくる、手や口の震えが止まらない。だが時雨と夕立の身の潔白を証明する為には越えなければいけない壁。

 

「私は■■■鎮守府配属司令官候補生、灰と申します。よろしくお願いします。私は事件発生前に夕立と遭遇し、時雨に遠征任務の書類を届けてもらいたく夕立に届け役を任せました。これが実際の遠征任務の書類です」

 

 透明な袋に包まれたのは夕立が実際に届けた遠征任務の書類。夕立の握力でくしゃくしゃになり、ゴミのように見えるが立派な証拠だ。もし本当に計画していたのなら灰色が夕立に頼んだ事は計画上では二人にとってトラブルの一因になる。

 

「書類につけられた指紋も■■■鎮守府の夕立と一致しております。よって夕立は時雨を探しに行っただけであり、予め暴行する計画を建てたとは考えにくいと思われます」

 

 提督が自ら立ち上がり、証言を元に推測をする。軍人達を疑問に思わせる為にあらゆる手段を投じる。疑問は深めれば深まる程、怪しくなるものだ。

 

「それは時雨も同じ、という事なのかしら?」

 

 女性軍人が問い掛ける。

 罠にわざわざ引っかかってくれるとありがたい。

 

「恐らく……同じく■■■鎮守府所属整備士第一班■■■、二十七歳。時雨が同じ第一班の■■■■と話している所を見た。この時点で時雨は第四倉庫へ故意に向かったのではなく、■■■■に誘われたという可能性も出てきます。よって私達は■■■■の証人尋問を要求します」

 

 時雨が工廠を訪ねた際に第四倉庫にいると言った整備士。この人物が鍵になっている。事件を引き起こした実行犯だ。提督が一番探している人物でもある。

 

「■■■■という人物はどこへ?」

「知りません。だって事件発生の日の夜に逃げたから」

「逃げた? 何故?」

「この男の履歴書は全てが嘘でした。名前、歳、住所、経歴、全てにおいて海軍の名簿には別人の物として書かれていたのです。■■■■という名前も別人であり、私としては警察の協力で指名手配をしてもらいたいと思っております」

 

 不幸中の幸いというべきか、監視カメラには実行犯の顔が映されていた。履歴書の顔写真も入手し、顔の特定は出来ている。後は警察でも探偵でも探せばこちらの勝利に近付く。

 

「確かに……うーん、警察にも頼もうかなー……」

「いやこの問題は我々だけで解決出来ます。わざわざ警察の協力などいりませんよ元帥殿」

「我々だけで探すと? ■■大将」

「その方が良いだろう」

「捜索するなら我々より警察や探偵にでも調べれば見つけられる時間は早くなります。何故外部の協力を拒むのですか?」

 

 提督と■■大将と啀み合う。この二人は数年近く口論で争い続けている。中将と大将という位から権力では■■大将が勝っているが、提督は一度も口論で負けた事が無い。だがしかし提督と口論で張れる唯一の人物が■■大将だけであり、提督が唯一認めている好敵手とも呼べる存在だ。

 

「機密情報漏洩を防ぐ為だ」

「ただの艦娘が起こした事件に何か重要な情報でも?」

「それは君が一番知っているんじゃないか?」

「その通り。ですが私には関係無いのでバレようがどうとも思いませんが?」

「自身の地位が地に陥っても構わないと?」

「私より地下の奥深くまで墜ちるのは隠し続けた貴方達では?」

 

 会議室内の空気がピリピリとする。二人の口論に他の軍人達は焦っていた。何を話しているかは分からないが、この二人に関わってはいけない事ぐらいは誰にでも理解出来る。提督の隣にいる灰色は唾を飲んで緊張していた。

 

「……この場で関係無い事を争っても意味が無い。直接本人に聞いた方が早いだろう」

「その意見は私も同感です。さっさと聞いた方が早い」

 

 ■■大将が話を切り替え、時雨の証人尋問を進めた。提督は再び座り、証人尋問に同意する。二人の口論が終わったのか他の軍人達は安堵した。灰色も胸を抑えて深く呼吸している。

 

「■■■鎮守府所属白露型駆逐艦二番艦、時雨。前へ」

 

 扉から手錠と足枷をされた時雨が入室。時雨の姿を見て提督と灰色は少し違和感を感じた。何故か身体の至る所に包帯が巻かれ、あまり元気がない。提督は最悪の事態を想定しつつも、有り得ないと否定しながら椅子から立ち上がった。

 

「白中将、質問を」

「時雨、お前は明石に呼ばれ工廠へ向かった。そしてそこで会った■■■■に第四倉庫にいると誘導された。そこで質問だが、夕立と共に暴行する計画を建てた訳では無いんだよな?」

「いいえ」

「そうだよな、計画なんて建てて……っ?」

 

 時雨の言葉に一瞬理解出来なかった提督。

 普通は違いますと答えるはずが、全く別の言葉に聞こえた。

 

「……いいえ?」

「いいえ、僕達が計画しました」

「……」

「質問を続けて白君」

 

 本当の事件とは真反対の事を答える時雨。真逆の答えに提督は身体が固まった。理解出来ずに言葉も失い、絶句している。

 

「……お前が計画したというのか?」

「はい」

「夕立と考えたのか? 夕立と一緒に? 夕立と自分の意思で?」

 

 何故だ。

 

 何故そう答えた。

 

 本当の事件なら時雨は被害者なはずだ。トラウマを抱えているのにも関わらず汚い欲に塗れた連中に襲われた被害者だ。まさか本当に計画していたのか。だとしたら事件発生時の青葉が言った事の信用性は失う事になる。まさか本当に最悪の事態が既に発生していたというのか。

 

「先程から質問が重複しています、元帥殿」

「白君は次の質問を」

 

 ■■大将が急かすように質問する事を進めてくる。提督は状況に理解出来ずに立ち尽くしていた。

 

「僕と夕立で暴行する計画を建てまし──」「まだ何も質問していないぞ、何を答えてる!!」

 

 時雨が勝手に証言するも提督に怒鳴られ止められる。場の空気が一気に変わってしまった。今まで疑っていた軍人達が徐々に傾きつつある。

 

「質問を続けて白君」

「……」

「質問を続けるんだ」

「……無いようですので私から」

 

 今まで以上に提督が慌てている。他の軍人達はその姿を初めて目に収めた。沈黙し続ける提督に■■大将が自ら立ち上がった。質問をするのが■■大将に切り替わり、書類を読み上げながら時雨に問い掛けた。

 

「間違いがあるのなら教えてもらいたい。■■■鎮守府所属白露型駆逐艦二番艦、時雨。お前は■■■鎮守府に憲兵と整備士が配属された時に過去の事から嫌悪感を感じていた。いつしかお前は近付きたくない一心で人間達を遠ざけていた」

「何だこれは」

「そして時間が過ぎていくと同時にストレスが溜まり、発散する場所を失った」

「何の罠だ」

「白君、黙りなさい」

 

 元帥に注意される。

 だが提督は黙っていられない。

 

「お前はその事に苛まれ、人間達に深く憎悪を持ち始め、ストレス発散の為に憲兵や整備士達の暴行を計画。司令官候補生から口実を取り、六月二十二日──」「何の茶番なんだこれは!!

「黙りなさい!! 私が質問している……六月二十二日午後十七時未明、お前は第四倉庫に人を集め、共に来た夕立と暴行。間違いないかな?」

 

 提督が■■大将の質問を遮って大声で叫ぶ。しかし■■大将が怒鳴り、提督を差し止める。互いに睨み合いながらも■■大将が質問を続けた。

 

「……はい」

「暴行しようと思って計画したのか?」

「はい……そうです……」

「……この証言により、私は時雨と夕立を旧式解体処分を求めます。以上」

 

 仮に被疑者である時雨の証言はどんな証拠や証言よりも随一の有利性を持つ。証言次第で処分の方向性は一気に傾くのだ。

 時雨は自ら夕立と計画したと証言。この言葉により、この事件の犯人は時雨と夕立である事が決まってしまった。他の軍人達もざわめき、ひそひそ話が始まる。

 

「な……何を言ってるんだ、時雨……そもそも君達は被害者じゃないか!!」

「候補生は静かに」

「元帥殿、今の証言は嘘です!! 元々この事件は時雨が襲われた事件であり、夕立は時雨を助けたんですよ!!」

「落ち着け灰」

 

 灰色が居ても立ってもいられずに立ち上がり、事件の真相を訴えた。候補生という身分ながら元帥にも分かってもらえるように慌てて話す。提督は焦る灰色を落ち着かせる。しかし灰色は思うままに時雨と夕立の無実を伝え続けた。

 だが──、

 

「でしたら資料にある証言一覧の裏をご覧下さい。そうとは思えない証言がいくつもございます」

 

 裏には嘘の証言が書かれていた。しかもどの証言した者が存在しない憲兵や整備士の名前ばかり。これは完全に捏造された物だ。

 

「……で、ですが彼女達は無罪です!! ■■少尉に貶められ、濡れ衣を着せられただけなんです!! これは冤罪です!!」

「灰」

「それこそが冤罪とも言えるのではないかな? 仮に■■少尉が貶めたとして動機が無い。それにどうやってやったかすら分からない。それを言うなら慌ててる君も怪しく見えるぞ?」

「そうだそうだ。一端の候補生が出しゃばるなんて怪し過ぎる」

 

 ■■大将が灰色を脅すように睨む。他の軍人達も呆れ顔で灰色を見ていた。■■少尉はニヤニヤしながら静かに笑っている。一気に灰色を怪しむようになり始めた。

 

「っ……!! 私は──」「すみません、私の躾がなってなかったようだ。後で厳しく言っておきますので今の御無礼をどうかお許しいただきたい」

「まぁ仕方ない。海軍一の減らず口となれば育て方も苦労するだろうよ」

「いやはや困りましたねぇ~」

 

 暴走する灰色の頭を鷲掴みにし、テーブルに叩き付ける。これ以上暴れたら灰色にも危険が及ぶ。少々強引なやり方ではあるが謝る他ない。それを見て■■少尉が提督や灰色を貶していく。提督は流暢に言葉を返し、隠したスマホでトラブル発生と瑞鳳に知らせ、瑞鶴の作戦を中止させた。

 

「後日に処分を言い渡す。白君と候補生は大本営に来るように」

「分かりました」

「分かり……ました……」

 

 会議が終わり、後日に処分が言い渡される事になった。提督と灰色は黙ったまま会議室を去り、荒くれ鎮守府へ帰る。摩耶と白露と瑞鶴は何も言わずに提督達の後を追った。

 やがて荒くれ鎮守府に帰還し、結果が気になる艦娘達が集まるも提督は艦娘達を退ける。そのまま久しぶりに入る自分の部屋に閉じこもった。摩耶も提督の部屋に入り、ベッドの上に座る提督の隣に寄り添う。

 

「お疲れ様だ……提督」

「……すまん……摩耶」

「大丈夫、提督と灰は頑張ったよ」

 

 摩耶が落ち込む提督を慰める。提督の頭を胸に寄せ、頭を優しく撫でた。

 

 

 

 

 時雨と夕立を奪還する為の会議。

 

 

 

 

 結果は時雨の裏切りにより、絶望的な終わりとなった。

 

 

 

 

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