うざい提督とブラック鎮守府   作:あばずれ

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9. 予感は当たりたくない時に限って当たる

「んじゃ摩耶、この鎮守府はお前に任せた」

「あぁ分かった。『予感』が来た次第に連絡する」

「あ、ちょっと待って摩耶。渡すの忘れてた」

 

 提督が鞄からある書類を取り出し、摩耶に手渡した。その書類は建造の依頼と機密情報のモノだった。

 

「建造艦は大潮、満潮、荒潮、霰、霞、鳥海だ。恐らく近日中に着任する、明石に把握してもらいたい。あとこの機密情報は秘密裏にな」

「分かってるさ、提督にとって一大事だからな」

「オーケー、頼むわ!!」

 

 広場には一機の離陸直前のヘリコプター。これから提督は後輩の呉鎮守府へ向かう。付き添いとして朝潮を連れ、摩耶は『予感』の為にこの鎮守府に残る事になった。

 

「朝潮、苦労するから気をつけてな」

「はい! 分かりました!」

 

 提督と朝潮を乗せたヘリコプターは離陸、呉鎮守府へ向かっていった。それを見届けた摩耶は工廠へ向かう。

 

「明石、いるか?」

「はい、居ますよ!」

「近日中に新しく艦娘が五人ほど着任するんだけど装備の手配は出来る?」

「出来るには出来ますが……」

 

 資材は絶望的。装備を開発する以前の問題だ。

 

「だからと思って提督が近い頃に資材を持ってくるそうだ。その時で構わない」

「は、はい、了解しました!」

 

 

 

 

 

――呉鎮守府執務室応接間

 

「いやまさか白くんがあの鎮守府に配属されたと聞いて驚いたよ」

「なぁに、大本営がクソ暇で真面目だったからちょっとした刺激が欲しくなっただけだよ」

 

 後輩が任せている呉鎮守府。海軍の最大規模の鎮守府で軍事力はトップを争う。艦娘を従えている軍人は総勢五名、その上に立つのは紛れもないこの男、あの鎮守府の提督である。

 

「流石は海軍一の減らず口だね。そしてこの朝潮ちゃんが、あの鎮守府の艦娘なのかな? 懐柔させるの早いね」

「懐柔なんてしてねぇよ。俺がやりたい事に従えさせたらコイツが勝手に着いてきただけだ」

 

 そういって提督は朝潮の頭を撫でていく。

 後輩達からは白くんと呼ばれているようだ。後輩と言っても四十後半の中年男性で、提督は二十代の若者。逆なのではないかと思いつつも余程人脈のある人なのだろうか。後輩も緊張するどころか気ままに話している。

 後輩の隣にいるのは加賀だ。あまり会話には混ざらず、後輩が話している姿を見るだけだ。

 

「ところで白くん、話って何かな?」

「あぁ早速本題に入るか、実はあの鎮守府の資源が枯渇状態でね? 君のところから少し恵んでもらえないかなって話」

「あぁそれだったら大丈夫だよ。決めた分だけそちらに送るね」

「お、そうか。それはありがたい。んでもう一つなんだけど医療品も少し分けてくれないか?」

 

 第六駆逐隊の事情をある程度隠して話す。全て話すと秘密情報が漏洩する可能性がある為、慎重に話した。後輩は快く受け入れてもらい、資材と同時に運んできてくれるらしい。

 

「その……中将の調子はよろしくて?」

「あぁバッチグーよ!!!」

「そちらの子が何もしてなければ良いのだけれど」

「あ、朝潮は何もしていません!」

 

 どうやらこの加賀は提督と面識があるらしい。うちの鎮守府にいる加賀さんとは偉い違いだ。とても穏やかに顔を崩さずに笑っている。

 

「大丈夫だ、お前が気にせずとも朝潮はいい子にしてる。前まではなー!」

「本当にお気楽な方だ……あ、そういえば白さん。この海域なんだけども……」

 

 後輩と提督は作戦海域について突然語り始めた。こうなればこの二人は止められない。それを重々承知している加賀は朝潮と話す事にした。

 

「ねぇそちらの鎮守府、私は上手くやってるかしら?」

「あー、えーっと目立った事は……無い……ですね」

「……やはりね。私も最初は釣り合わなかったわ」

 

 提督と加賀が初めて出会ったのは演習時の事。当時旗艦である加賀の艦隊の演習相手は提督によって育てられた摩耶を旗艦とした艦隊。結果は摩耶の艦隊による大勝利。

 損害を与える事が出来なかった加賀の艦隊は提督の監修の下、特訓を積み重ね、ようやく摩耶の艦隊に対し勝利を勝ち取る事が出来た。その事で加賀は提督に感謝しているらしい。

 

「ただ中将は正直者でウザくてバカで捻くれ者だけど心は真っ直ぐよ、だから少しでもいい……信じてあげて」

「おいさっき心情漏れてたぞ、バカとか言ったなオメー」

「あら何の事かしら、身に覚え無いわね」

「へーん何回も泣いてたくせによく言うゼブラァ!!」

「朝潮、そう伝えておいてね」

「は、はい!」

 

 加賀に殴られた提督のスマホの着信音が聞こえた。提督にとって最も来て欲しくない着信。勿論電話してきたのは摩耶だ。

 

「はいはいもしもし」

『予感的中だ。先程加賀が偵察機で深海棲艦を確認した』

「クラスは? 種類は? 数は?」

『クラスは姫、陸上型、数は一体』

「ネームは判別可能か?」

『あぁ、飛行場姫だ』

 

 クラスが姫なだけまだマシな方か。しかも一体のみ。敵の拠点を前に単騎出撃とは自殺行為だ。余程自信のある奴なのか、死にたがりか、それとも囮又は作戦の罠だろうか。いずれにせよ警戒は怠ってはいけない。

 

「そうか。分かった、んじゃポンコツ兵器共らに知らせるようにマイクに近付けてくれ」

『分かった』

「あーえっと、聞こえてっかー? 遠くから俺の綺麗な声をポンコツなお前達に届けちゃうぞ☆」

 

 早速イラつきそうな言葉で艦娘達を煽る提督。聞かせている摩耶本人もスマホを握り潰しそうだったが落ち着いて話を聞く事にした。

 

『あー何か深海棲艦が出たんだって? 飛行場姫? まぁお前達ならやれるだろ』

「うるせぇ……」

『てなわけで第一艦隊旗艦摩耶、加賀、長門、龍驤、利根、木曾。お前達に飛行場姫の討伐又は鹵獲を頼む。あー出来るだけ鹵獲の方向で頼むわ。なお現場の作戦指揮は摩耶に任命しよう』

「何故私達が……」

『うるせぇ! 俺が選んだんだ、さっさと出撃しろォ! あ、後の艦娘達は鎮守府近海の哨戒な。響と電は出撃禁止。以上、摩耶いいぞー』

 

 提督の声が聞こえなくなり、呼ばれた艦娘は仕方なく出撃する事にした。摩耶も執務室で準備している。

 

『言っとくが摩耶、あの力は禁止。いいな?』

「分かってるつーの。しかし提督、鹵獲もあてにしていいのか?」

『話が通じればの話だ。通じなきゃ沈めて構わない』

「分かった。じゃあ切るぞ」

 

 提督は摩耶との連絡を済ませ、通話を切った。現状あの鎮守府での戦力を考え、組まれた第一艦隊。恐らく下手な事でもしない限りは倒される事はないだろう。

 

「大丈夫なのかい? 艦娘だけに任せておいて……」

「あぁ大丈夫さ。摩耶なら何とかなる」

「そうですか……余程摩耶の事を信頼しているね」

「……まぁなー」

 

 何年も一緒にいれば信頼は厚くなる。この提督についてきたのは摩耶一人だけ。あんな事が起こればお互い信頼するのも無理はない。

 あんな事が起これば。

 

「し、司令官! 摩耶さんに指揮を任せて大丈夫なのでしょうか?」

「大丈夫だ。摩耶は俺には劣るが賢いし、強い。それに――」

「それに?」

「アイツは色々怪し過ぎる。摩耶に任せた方が良い」

「??」

 

 

 

 

「主砲、放て!」

 

 加賀や龍驤による艦載機の展開で制空権は簡単にも確保。飛行場姫が予め出していた敵艦載機は摩耶や利根の対空機銃により全滅、長門の砲撃と木曾の魚雷で飛行場姫を追いこんだ。

 

「敵はかなりの満身創痍だ、叩き込めば沈められる」

「待ッテ!!」

 

 飛行場姫は怪我した右腕を抑え、海上をゆっくりと移動していた。額から青い血を流し、目は朦朧としている。必死にその掠れた声で訴えてきた。

 

「敵デアリナガラ、オコガマシイノハ分カッテイル……!」

「なんや……急に喋り出したで」

「デモ頼ム! 私ヲ……鹵獲シテクレ!!」

 

 戦闘態勢に入っていない飛行場姫。艦載機も飛ばしておらず、此方に攻撃の意思は無いと伝えてきた。更には自ら捕まえてくれと懇願している。

 提督からは討伐か鹵獲かのどちらかを指示していた。だがしかし罠の可能性もある。容易に近づいてはいけない。

 

「どうするねん、作戦指揮を任された摩耶さん」

「……周辺は?」

「反応は無いのじゃ。逆に恐ろしいけどの」

 

 加賀や龍驤、加賀達による索敵でこの海近辺に敵は確認出来なかった。本当に単騎でここの鎮守府に来た可能性が高い。

 

「……鹵獲するか」

「ちょ、ちょっとあなた本気で言ってるの!?」

「私はどちらでも構わない」

「はぁ……色々言われてねんけどって摩耶!?」

 

 索敵で敵がいないとはいえ相手は姫級、そして満身創痍。沈む好機とも言えるだろう。摩耶は第一艦隊を置いていき、一人で飛行場姫に近づいた。

 

「何故ここに来た、飛行場姫」

「アノ人に……会ウ為……」

「お前のいうあの人はまだいない」

「……ッ!!」

「大人しく海の藻屑になってもらおうじゃねーか」

「ヤメテ……マダ私ハ……!」

 

 砲口を零距離で飛行場姫に向けた摩耶。飛行場姫は目に涙を浮かべ、死にたくないと懇願する。

 摩耶はその姿に躊躇いながらも砲撃した。

 

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