うざい提督とブラック鎮守府   作:あばずれ

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真相語られまくりのPart.6。


Part6. 捲土重来のバイオレットパール
90. 深夜は右手を上下前後に動かす人が多い


「今日はやけに空気が澄んでいると思ったら馬鹿共が二酸化炭素を排出していないからだったようだなぁ摩耶。遅刻なのかな?」

「そんな所だろうな。提督にお礼がしたいって灰と時雨達が朝の食事を用意してくるって食堂に向かっていったぞ。まぁ提督には内密に言わないでほしいって言われたけどな」

「もう言ってるんだが摩耶」

 

 灰色達の隠し事を何気なく喋る摩耶。執務室には提督と摩耶が仕事をしていた。灰色と時雨は姿を見せず、今日の秘書艦である霞もいない。霞は寝坊して遅刻な為に代わりに摩耶が手伝ってくれている。

 

「言わないでほしいと言われた時には言ってほしいという裏の考えがあるんじゃないかってあたしは解釈したけど」

「絶対に違うと思うけどな」

 

 

 

 

 ──食堂厨房内。

 

「えーっと……コレはコレで……」

「まずいよ! 提督さんが来ちゃうっぽい!」

「はァ!? マジで!? 早く用意しないと!!」

 

 外を見張っていた夕立が知らせに来た。どうやら勘づいた提督が食堂に向かって来ているようだ。まだ用意が出来ていない灰色達は急いで手を動かす。

 

「どォこにいる馬鹿共!! 仕事を放ったらかして何食堂の調理房を彷徨いてるんだ!! さっさと持ち場に戻れ!! 作った奴を持って来ーい!!」

「イイ感じに作ってるからもう少しだけ……!」

「おーい灰、なァに人にも知らせずに隠れて調理してんだ~? お前の仕事は事務処理だろうがぁ、料理人になったつもりか!!」

 

 堂々と一人席に座り、灰色に説教する。誰もいない朝の食堂に大声が響いた。

 

「どうしても白さんにはお礼がしたくて……時雨達の意見を尊重したんです。お願いします」

「本当は三ツ星レストランと鳳翔達以外の飯なんぞ熱帯林のぬかるんだ土より食いたくないが今は腹の虫が渇望していて仕事に集中出来ない、早く出したまえ」

「は、はい!!」

 

 テーブルに足を乗せ、作った料理を持って来いと命令する。朝食の時間帯になり、ぞろぞろと艦娘達が食堂に入ってきた。先に来ていた熊野、鈴谷、最上は提督と灰色の一部始終を目撃する。

 

「今日もまた提督が暴れてますわね」

「まぁいつも通りだよね」

「もう慣れたような気がする」

「そこで犇めき合ってる馬鹿共はさっさと横須賀鎮守府のおつかいという名の遠征任務に行ってこい!! ドレミファソラシドの音楽を鳴らしながら、健気なクソガキを遠くから舐め回すされるうに見られてくるといい!!!」

「出来ましたよ提督」

 

 ようやく出来たのか白露達が作った料理を持ってきてくれた。机に乗せた足を降ろし、テーブルに並べられた定食を置かせる。見たところは一般的な朝食と相違ない。何か違和感を感じるも箸を持つ事にした。

 

「その……僕達のお礼として……これぐらいしか出来ないけど……食べてくれるかな?」

「何を作ったか詳しく言いたまえ」

「鮭の塩焼きと鮭フレーク、鮭のおにぎり二つに鮭の──」「鮭ばっかりじゃないか!!」

 

 鮭のバーゲンセールに嘆き、箸を投げる提督。突然の怒鳴り声に時雨達は身体を跳ねらせる。提督は箸を拾って、自身のハンカチで丁寧に拭いていく。

 

「もしかして……鮭が嫌いだった?」

「いや嫌いじゃない。だが少しばかりバリエーションは無いのかと思っただけだ」

「提督は魚が好きだって前に聞いたから、こういうのが良いのかなって思ったぽい」

「食べてみなきゃ分からないよ提督」

「っ……いただきます」

 

 提督は手を揃えて、用意された定食を食べる。黙々と何も喋らない提督に灰色と時雨達は思わず唾を飲む。性格が捻くれた提督だ、何を言ってくるか分からない。もしかしたら悪口が殆どになる可能性もある。やがて全て食べ終え、口を拭う。

 

「……不味かった」

「美味しそうに食べておいてその言い草!?」

「ご馳走様でした」

「さりげなく全て食べ尽くしちゃったよこの人!!」

 

 提督の訳が分からない感想にツッコミを入れる時雨達。不味いとはいえ全て食べている提督に頬を引き攣る。素直なのか素直じゃないのかよく分からない。提督は素早く立ち上がり、軍帽を被る。

 

「さてエネルギー補填は完了だぁ、仕事を始めるぞ」

 

 

 

 

 

「今日の秘書艦は?」

「私よ! 見えないの!?」

「下にいたのか、気づかなかった。小さ過ぎて」

 

 執務室に入った提督は霞を嘲笑うかのようにからかう。霞と同じ目線に合わせてほくそ笑んだ。霞は赤面しながら身体を震わせる。

 

「何よ!! もうちょっと周りを見渡したらどうなの!?」

「周りを見渡しても見つからなかったんだぁ、それだけ小さいのだよ。もうちょっと頭の中を整理したらどうだー?」

「こっのぉぉぉ……!!」

「はいはいそこまで」

 

 二人の啀み合いの途中で摩耶が止めに入る。提督と霞は執務机にそれぞれ座り、仕事を始める。執務室には提督と霞、灰色と時雨が書類を書き進め、摩耶と夕立は応接間のソファにて休憩していた。

 

「摩耶、霞は仕事手伝るのか?」

「一応読み書きは教えたし、流れも伝えてはいる」

「ったく……どんな性格してんのよ……本っ当に最悪だわ!」

「今更後悔しても無駄だー、さっさと手伝え年中反抗期の幼稚園児」

 

 霞が書き終えた書類を無理矢理奪い、間違いが無いか凝視する提督。頼んだ書類はどれも簡単なものだ、慣れない艦娘に相応しい。

 

「誰が幼稚園児よ!! 私だって仕事ぐらい出来るわよ、バカにしないで!!」

「へぇ~そうとは思わんがねぇ~」

 

 霞が背中に隠していた教科書を奪い去り、人差し指である文字を指さす。そこには幼稚園から出来ると書かれた見出しが。提督の顔を見れば見下すように嘲笑っている。

 

「うるさい!! 早く貸しなさいよ!!」

「相変わらずですね、白さんは」

 

 窓際の机には灰色と時雨が今日分の書類を書いていた。以前と違って時雨や夕立は活き活きしている。すっかり灰色を信用されているようだ。

 

「なァに睦まじく眺めてるんだ、手を動かせこの深夜アニメ主人公!!」

「し、深夜アニメ主人公?」

「あまり気にしなくていいと思うよ」

 

 灰色は突然の罵倒に戸惑う。幾度となく罵倒された艦娘達を見てきている時雨達にとってはいつもの光景だと平然としている。

 

「しかし、ここも色々と変わりましたね」

「憲兵や整備士達の偏見は少しずつ解消されてる。ゆっくりではあるけどね」

「そう言いながらもベタベタとイチャイチャしてるのは目障りだがなー」

 

 灰色と時雨の馴れ合いに提督は吐き気がしている。人間の艦娘のイチャコラなど一番眼中に収めたくない光景だ。正直に言ってぶち転がしたい程である。

 

「あれれ~提督さん、嫉妬してるの~?」

「黙れ駄目犬、さもなくば猿轡と首輪付けて犬小屋に閉じ込めさせるぞ」

「ちょっと! 仕事は!?」

「お前より早く終わってるので問題無し。何だー? 手伝ってほしいのかー?」

「そ、そんな事言ってないわよ!!」

 

 提督は仕事を先に終え、応接間のソファにて珈琲を飲む。忙しそうに霞が注意するも、提督に仕事を手伝わせられるのが癪なのかそっぽ向いた。

 

「何かと提督と霞って相性良さそう」

「えーそうかなぁ」

「提督ー入るぞー」

 

 執務室に天龍が入ってきた。右手には指で挟んだ手紙を持っている。天龍はソファに座り、さりげなくお菓子を食べた。

 

「大本営から手紙が来てたぞ」

「また厄介事だったらこの拳銃で蜂の巣にしてやる」

 

 提督は腰の拳銃を持ち出し、舐めるように脅す。摩耶に注意されながらも手紙をゆっくりと開く。内容が気になるのか灰色や時雨達も提督の背後に回った。

 

「各鎮守府の戦力強化の為、練習巡洋艦の配属を決定。後日、練習巡洋艦鹿島を配属する……へぇー……」

「練習巡洋艦、ですか? 良いじゃないですか! 訓練が更に充実しますよ!」

「かもな」

 

 提督は手紙を机に放り投げ、足を乗せる。怒りもせず、ましてや苦言も言わない提督に灰色は違和感を感じた。何か怪しんでいるような、訳ありの表情をしている。

 

「かもって……何かあるんですか?」

「多ありだ。このタイミングで練習巡洋艦を配属させるとしたら表向きには戦力強化の為と言えば騙せる事だろう」

「何よ……また怪しい事が起きるって言いたいの?」

「お前らは一体何を見てきたんだ、先週にそこの馬鹿共が騒ぎを起こしたばかりなんだぞ。だとしたら考える手は一つ、監視と調査だ」

 

 馬鹿共と言われて時雨と夕立が気まずい表情をしている。提督が言うには練習巡洋艦である鹿島が来るのは監視と調査が目的だと言う。

 

「監視と、調査……?」

「そうだ。各鎮守府内の治安状況、経営状況や艦娘同士のコミュニケーション、憲兵や整備士の行動監視、目的は様々だ」

「もしかして……何か問題があれば大本営が自ら動く、という訳でしょうか?」

 

 先週の事件を受け、大本営は各鎮守府の様子を警戒する様になった。時雨や夕立が襲われた様に艦娘を貶める者やその逆を把握し、取り締まる必要がある。万が一にでも艦娘に関する事件が全国に広渡たれば海軍はまた信用を疑われる羽目になるだろう。これ以上面倒な事は嫌でも起こしたくはないのだ。

 

「そういう事だ。そこにいる馬鹿共の様な事を未然に防ぐ為、予め調査しておくんだ。問題があれば解決の為に大本営直々に矯正される。場合によっては大本営直轄の憲兵隊が動く事もあるだろう」

「では何故表向きに言わないのですか?」

「もう少しは考える頭を持つ事だ、深アニ主人公。表向きに言ったとして問題がある鎮守府は来る前に必ず隠すだろ。それを防ぐ為だ」

 

 調査しますと言われて隠し事をしている鎮守府は黙ってはいられない。何かしら手段を投じ、隠し通すだろう。そうなれば調べるのは不可能すら有り得る。

 

「提督、ここは大丈夫なの?」

「大丈夫な訳無い。つい最近まで騒ぎを起こした鎮守府だ、真っ先に目をつけられるに決まってる」

 

 時雨と夕立の件以降、この鎮守府の印象は停滞している。真実が明らかになっても尚、一度持ったイメージからは離れないようだ。以前の様にマスコミやメディアは来る事は無くなったが、また何か仕出かすのではないかと目をつけられている。

 

「また何か起こりそうですねー」

「他人事だと思ったら大間違いだぞー。君達はさっさとその書類を片付けたまえ、口を動かしてばかりで手を動かさないとはどういう了見だ!! 大学生まで夜な夜な飽きる程動かしていた癖に、軍人になってからはやる暇無いから別の口を借りてやりますってか!! 子供の時代は終わったんだ!! 早く仕事を終わらせろ深アニ主人公!!」

 

 提督は机に置かれた軍帽を被り、執務室を出ようとする。途中で霞に止められ、歩みを止められた。

 

「ちょ、どこ行くのよ!!」

「憲兵寮だ、霞も来い!!」

「少しは待ちなさいよ!!」

 

 ドアを強引に開き、提督と霞は執務室を出ていく。一気に静かになった執務室に灰色と時雨、夕立と摩耶と天龍は呆気ない表情をしている。思わず手に取ったお菓子を落としてしまった。

 

「八つ当たりだなありゃ」

「八つ当たりですね」

「うん、八つ当たりだね」

 

 不器用な八つ当たりを目の当たりにした五人はそのまま気にせずに持ち場へ戻っていった。

 

 

 

 

「ちょっと、待ちなさい!! 歩くの早いってば!!」

「なら俺が抱える!!」

「えっ」

 

 早歩きの提督に息切れそうだった霞は提督の軍服を引っ張って止めようとする。しかし提督は突然霞を抱きかかえ、左腕全体を使って掴まれた。このままでは提督の正面から自身の下着を見られてしまう。

 

「ままままままだ私は何も言ってないでしょ!! ちょっと……! この、離しなさいよクズ!! 誰かに見られたら勘違いされるでしょうが!!」

「いいから黙って来い幼稚園児!!」

「もう何も聞かないじゃない!! このクズどうにかしてよ~!!」

 

 無理矢理暴れて提督から離れようとするも何故か力が強くてまともに抜け出せない。強引な提督に霞は廊下で嘆いた。

 

「提督ー……って、何してんのさ……」

「気にするな」

「いや気にするでしょ、どう考えても」

 

 講堂を通っていた提督と霞は途中で飛龍と蒼龍に出会う。傍から見れば提督が霞を抱きかかえ、下着をチラつかせているようにしか見えない。霞に至っては無造作に暴れている。

 

「離しなさいよ!!」

「この幼稚園児が歩くの遅いから持ったら殴られた」

「誰が幼稚園児よ!!」

「持ったらって……何もそんな持ち方は無いよ」

「なら何がいいんだ」

「これとかどうです?」

 

 蒼龍は一旦提督と霞を離し、拘束を解く。そして背後に回り、提督の肩に霞を乗せた。これではまるで親と子供の肩車である。

 

「「これのどこがいい持ち方だ(よ)!!」」

「おぉシンクロした」

「暑苦しい!! 落ちろ!!」

「こっちこそ願い下げよ!!」

 

 提督達の光景を艦娘達はまじまじと見ている。講堂にら多くの艦娘達が楽しく話し合っていた。勿論■■達も奥で座っている。

 

「こんなんで秘書艦は務まってるのかプリンツ」

「大丈夫だと思いますよー」

「仲は相変わらず最悪のようだけど」

「霞さんは気難しい性格なので、人格破綻者の提督は啀み合うのは当たり前かと」

 

 長門と加賀が二人の様子を不安がる。あれだけ喧嘩していると仲も悪くなるだろう。いや提督ならば簡単な事かもしれない。そもそも提督は艦娘達とは馴れ合うつもりは無いと明言している。実際それが出来ているかと言われれば否定は出来ないが。いよいよ提督は霞の服を引っ張り、地面に引き摺らせている。

 

「引き摺るなぁ~!!」

「まぁアレで暴行しない霞さんもまだまだですね」

 

 

 

「提督殿! わざわざご足労いただきありがとうございます!!」

「隊長はどこにいる」

「■■隊長であればこちらに!」

 

 憲兵に隊長室を案内され、中へ入る。奥に憲兵隊隊長■■大尉が待ち構えていた。珍しい提督と艦娘の登場に少々驚き気味である。

 

「むむ、どうしましたか白提督殿」

「これを読め」

 

 霞が持ってきた手紙を取り出し、机に投げつける。勿論手紙の内容は練習巡洋艦の配属について。直接提督が呼び掛けるより、隊長に注意してもらった方が早い。隊長は手紙の内容を不思議そうに読んでいる。

 

「練習巡洋艦の配属……ですか。これが何か?」

「この練習巡洋艦が近々配属され、お前らを監視する。理由と原因は言わなくても分かるよな?」

「っ……確かに見張られてもおかしくはありませんね。部下達に知らせておきます」

「理解しただけなによりだ」

 

 憲兵隊隊長は礼儀正しく真面目な人物だ。煩悩という言葉が見当たらないほどの真面目さで部下には厳しく、自分にも厳しくと熱血漢な所もある。また部下や艦娘、他人には優しい場面もあり部下からは慕われてる他、艦娘からは一部打ち解けている者もいるようだ。

 

 続いて提督と霞が向かうのは工廠。金床同士が衝突する音が響き、他人の声が届かないほどだ。今はどうやら電探を開発しているらしい、整備士であるはずなのに。

 

「白髭ー!! 話があるんだけどー!?」

「はーいー!? 何て言ったんだー!?」

「だーかーらー!! 話があーるーのー!!」

「大きな声で言ってくれい!!!」

「はーなーしーがー!!」

「こんなバカうるさい所で大声出しても無駄だ。あの老害は元から耳がやらレギャッ!!」

 

 

 

「あーすまんすまん。つい手が滑ってしまったわ」

「最初から絶対聞こえてたろ」

「歳を取り過ぎると耳が遠くてな」

「んじゃ何で俺のは聞こえたんだよ」

 

 提督の額には大きなたんこぶが出来ている。悪口を言った途端に金床を投げられ、提督の額に直撃したようだ。納得いかない提督はジト目で白髭を睨んでいる。

 

「んで話ってのはなんだい?」

「……霞」

 

 今度は霞に手紙を差し出し、白髭に見せる。憲兵隊隊長と変わらず同じ内容を白髭に教えた。

 

「練習巡洋艦の配属か……これがどうしたんだ?」

「この練習巡洋艦がお前らを監視するんだ。理由と原因は言わなくたって分かるだろ?」

「……成程。分かった、注意しとこう」

 

 

 

 ――深夜二時。

 

「来たな瑞鶴」

 

「来たわよ」

 

「例の物は?」

 

「ちゃんとここに」

 

「……よし。こじ開けるぞ、摩耶」

 

「了解」

 

 

 

「……やはり俺の予想は間違っていなかったらしい」

 

 

 

「これがこの鎮守府と大本営の……──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──……闇だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 提督が手に持つは一枚の写真。

 

 

 

 

 

 写真には、

 

 

 

 

 

 大きく写された存在‪α‬と傍には秘書艦と思われる■■がいた。

 

 

 

 

 




来週から二話投稿にします。
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