リゾットが逝く!   作:ティハロック

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第28話 首斬り役人ザンク②

 

「気絶しているのか」

 

「…」

 

ザンクは傷を負い過ぎたのかまたは、アカメの迫力にやられたのか意識を失っていた。

 

「葬る」バッ

 

アカメの一声でザンクに斬りかかろうと刀を振るう

 

「!?」バッ

 

シュバ

 

ピタ

 

その矢先、リゾットがザンクとアカメの間に立つ

 

「...」

 

アカメの村雨はリゾットの眉間のギリギリで止まっているのに対し、リゾットは表情を変えるそぶりも、冷や汗すら掻いておらず、ただ真っ直ぐアカメの目を見据えている

 

「おい!なにすんだよ!!リゾット!!!」

 

その行動には、勿論理由があるのだがそれを知らない、アカメは軽く驚いた表情をしたがすぐにいつもの無表情に戻りとタツミは声を荒げながら驚く

 

「落ち着け、タツミ、俺はどうしてもこいつから、ある情報を聞き出さなくてはならんのだ」

 

「…」

 

情報を聞き出したいリゾットを前にアカメはいまだに剣先をリゾットの方に向ける

そのままではらちが明かないと思ったリゾットは説得を試みる

 

「アカメ、ザンクに一刻も早く止めを刺したいと思う気持ちは俺にも分かる、タツミほどじゃあないが、サヨとは面識があったし、いまだにあの日のことを後悔しているからな...クロメ?とか言ってたが、あの時の状況を察するにお前の妹だろう(現にお姉ちゃんと呼んでいたし容姿も似ていた)?」

 

「!…」

 

アカメは図星だったのか少しの動揺を見せる

 

「その反応を観るに当たりのようだな、だが!俺はどうしても情報を聞き出したい!!俺の仲間を殺した奴の素性を知ることが出来る可能性をもっているからな!!!」

 

「だが…」

 

ここでアカメは反論しようと声に出すもすぐさまリゾットが割って入る

 

「ナジェンダにはすでに許可は得ている、一人で遭遇して倒したらと言っていたが、ザンクは既に再起不能だ、戦う力は残っていない、それに、情報を聞き出さなくっちゃあならない理由がもう一つある!これからのお前たちにも必要な情報になるはずだ!!」

 

「私たちに…必要な?」

 

「情…報ってどういうことだよ!」

 

その情報が自分たちにも必要である、そんなふうに思っていなかったアカメとタツミは軽く首をかしげる

 

「タツミ、お前、ザンクの攻撃で不思議に思ったことはないか?」

 

そんなタツミに突拍子もない質問を投げかけるリゾット

 

「不思議?…はっ!そう言えば、ザンクは、何もない空間から攻撃していて、いつの間にかふっとばされたことか?」

 

「そうだ、その後、お前は、矢を刺され、見えるようになった」

 

「見えるようにって、まさかあの、ザンクから出てきたあの人型の影は!」

 

「そうだ!タツミお前は矢に刺された影響で、あれが見えるようになった」

 

「タツミにも見えているのか」

 

「そうだ、アカメ、俺やタツミは観ることできる、それが『スタンド使い』と言うものだ!!」

 

バ―――――――――――――――――――――ン

 

「スタンド使い…っ!そういえばザンクはこう言っていた」

 

 

 

 

 

(「なっナニィイイイイイイイ!!アカメ!キサマァアア、お前もこいつと同じスタンド使いなのか!」)

 

 

 

 

「リゾットが見えているのはザンクの口ぶりから分かってはいたが、まさかタツミまでそのスタンド使いになってしまったとはな...」

 

アカメは点と点が繋がり納得する

 

「そういうことだ、矢に刺されたものは二つのうちどちらかの道を辿る!一つは『矢に選ばれずにそのまま息絶える者』そしてもう一つは『そこで気絶しているザンクや俺、そして先程、矢に刺されスタンドのヴィジョンを見ることが出来た、タツミのように矢に選ばれた者だけだ』」

 

「それじゃあ、俺はその矢に選ばれて、スタンド使いになったってことかよ」

 

タツミは自身の背中をさすりながらリゾットの返答を待つ

 

「そうだ、いずれお前もスタンドのヴィジョンと共に新たな能力を得るだろう...そろそろ、刀を降ろしてもらえるとありがたいのだがな...」

 

「...ボスから了承を得ているは分かった、私がそれを止める理由はない」スッ

 

チャキ

 

アカメは理解を示し刀を鞘に納める

 

「そうか、ではさっそく、ザンクを叩き起こすとするか」

 

「リゾット」

 

「...今度はなんだ」

 

リゾットが気絶しているザンクにメタリカを放とうとするとアカメが再び声をかける

それに対し、またか、と言う態度で返答する

 

「さっきはすまなかった、お前の言う通り、偽物とはいえ、妹を自らの手で殺めたことに怒りが隠せなかった...我を忘れ、判断を見誤った、許してくれ」

 

そう言うとアカメは頭を下げる

 

「...頭を上げろ、アカメ、謝るのは俺の方だ」

 

「え」

 

まさかの返答にアカメは顔を上げ、タツミも何故、と動揺している

 

「俺は自分の過去を話さないことを条件にナイトレイドに加入した、スタンド使いというのも俺の過去に関わるからだ、もっと早くに、俺がスタンド使いと言うことを話していればこんなことには、ならなかったかもしれない、もしザンクが現れた場所が、レオーネ達であれば、全滅していた可能性が高い、全ては俺の判断ミスだ、すまなかった」

 

今度はリゾットが頭を下げる

 

「リゾット、お前の方こそ頭を上げてくれ、確かにスタンド使いについては知らなかったが、もし教えてもらっても、能力が分からない相手と戦うことに変わりはない、それに、私が怒りで我を失っていたのは事実だ」

 

「そ、そうだぜリゾット、俺だってスタンド使いがどういうものか分からなかったけど、サヨに矢ァ刺されて、そのスタンド使いって奴になれたし、刺された背中はなぜかは分からないけど、血は止まったし、穴も塞ぎ掛かってるしよ...サヨが偽物だって心のどこかでは分かってたのに、油断したのも、俺の甘さが招いたことだしよ、ここはお互い悪いってことでいいんじゃないか、なっ!アカメ」

 

「あ、ああ、そうだな、それじゃダメか?リゾット」

 

アカメとタツミはまさかリゾットが謝ると思っていなかったため、動揺したのか、慰めの体勢に入っていた。

 

「お前ら...」

 

「それに、ザンクに聞かないといけないんだろ?誰か人が来る前に聞き出そうぜ」

 

「っふ...そうだな...メタリカ」

 

「!? ぐわああああああ」ザシュザシュザシュザシュ

 

リゾットの掛け声とともにザンクは再び目を覚ます

 

「え、えげつないな」

 

「...」

 

ザンクへの起こし方にドン引きするタツミとアカメ、それもそのはず、ザンクの足先から膝まで釘やメスが大量に噴き出したのだ

 

「ハァハァハァハァハァ」

 

それでもザンクは動かなかった、なぜなら両方の掌がナイフで貫かれ地面に直接、差し込まれている為、ザンクは今、四つん這いの状態でもあるのだ

 

「目、覚めたか...ザンク」

 

「リぃゾットオ」ギシギシ

 

ザンクは限界まで首を上にあげ、リゾットに睨みを利かせる

 

「目覚めたばかりだが、お前に聞きたいことがある」

 

「誰が貴様の質問なんかに答えなきゃならギャアアアア」ゴパァ

 

ザンクが悪態をついた瞬間、二つあるうちの一つの目、すなわち左目から4~5本の釘が瞳孔から噴き出る

 

「ザンク何か、勘違いしてるんじゃあないか?」

 

「ハァハァ!か、勘違い?」

 

「質問は既に、拷問に変わっている...俺が聞きたいこと以外を話せば、どうなるかぐらい、貴様でも分かるだろう?」

 

「!?」ゾッ

 

「そうだな、次は右目だ、言葉さえ話せれば、情報は聞き出せる...メタr」

 

「わ、分かった!?話す!は、話すから!!もうやめてくれ!!!」

 

「ベネ、それでいい」

 

そう言うリゾットに恐怖と口にしたことは絶対に行うということを理解したザンクはリゾットの質問に答えることになる

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

 

「お前が探しているという人物...!もしかしたら、あの人のことか?」

 

「あの人?」

 

「ああ、お前が言うソルベとジェラートは体を切り刻んでも1週間は生きていたんだろ?」

 

「...ああ、そうだ、どうやら分かったようだな、詳しく教えてもらおうか」

 

「ああ、あれはたしか俺が帝国で首斬り役人をしていた頃…………」

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

~数か月前~

 

首斬り役人になってから十数年たった、俺もそれなりに出世し、給料も少し増えたが、毎日首を斬ることは変わらない…いや、違う、もう首を斬らないと落ち着かない体になっていた、癖みたいなものだ、自分から首を斬りに行くことも今思えば多かった。

 

そんなある日、俺の人生を変える出来事が起こった

 

「ザンク君、少しいいかい?」

 

「ザラキ署長...私に何か用ですか?」

 

「ハハハ、ああ、実は来週から新しく配属する人、2人が決まったみたいでね」

 

「新しくっということは…」

 

「ああ、私や君の部下になるということだ、そこでだ、君には新人二人の教育係になってもらいたい」

 

「私が...ですか?」

 

「ああ、そうだよ、かつて私が君の教育係をしていたようにね...で、どうかな、任せても?」

 

ザラキは鋭い目でザンクに圧をかける

 

(...チッ、めんどくせーな)

 

「ん?今メンドクセーなって思ったかい?」

 

ザラキは自身の額についている物を人差し指でコツコツと突きながら言う

 

「!?い、いえ、喜んでやらせてもらいます。」

 

「そうかい?じゃあ頼んだよ」

 

 

~一週間後~

 

「確か今日だったな、新人が入るのは...ん?」

 

 

タッタッタッタッタッタッタッタッタ

 

俺が新人が来るのを待っていると、明らかに走っている音がした

 

「あ、ザンク君、やっぱりここにいた!!」ハァハァ

 

「ザラキ署長、どうしたんですか、珍しいですね、走って来るなんて、いつもは歩きで来るのに」

 

「そんなことはどうでもいい!ザンク君、教育係の件だが!!」

 

「ええ、今日ですよね?あ、もしかして、俺が忘れてると思ってこうしてわざわざ走って来たんですか、そんなことしなくても忘れてませんよ、ちゃんと覚えて」

 

「そのことなんだが、教育係は取りやめになった!」

 

「え!どういうことですか?じゃあ、ザラキ署長が教育係をやるってことですか?なら私は別に構いませんが」

 

「いや、そうじゃないんだ、お、落ち着いて聞いてくれ」

 

ザラキの目は焦りと動揺が見られた

 

「は、はい、分かりました」

 

「実はなザンク君、入ってくるっていう二人の新人だが、昨日の夜、正式に」

 

「正式に?」

 

「大将軍と同等の地位に昇格した。」

 

「...え?」

 

どうやら俺の部下になるはずだった2人は、帝国に入って1週間もしないうちに、俺の上司よりも役職が高い地位になっていた。

 

「さ、さっそくで悪いがお二人がいる場所まで連れていく、来るんだザンク君」バッ

スタスタスタスタ

 

「ま、待ってください、署長!ザラキ署長!!どういうことですか?帝国に入って、1週間たらずで、大将軍と同じ地位になったって、まるで、あのエスデス将軍とブドー将軍、二人を相手に無傷で勝ったことで大将軍になった、あの人以来の衝撃ですよ!!!」

 

ザラキの歩幅に合わせるようにザンクは歩き、ありえないと言う

 

「確かにあの、大将軍は、エスデス将軍やブドー将軍以上の化け物だ、だが、ザンク君も私が今からいう話を聞けば、その2人も化け物だと思うだろう」

 

「そ、それはどういう?」

 

「聞いた話だと...............」

 

「帝国に敵対していた南方の異民族50万人のうち、49万人を殺戮し、残りの1万人を拷問にかけ、全滅させたらしい、しかも、たった二人で」

 

「...ふ、二人!?」

 

ザラキがずっと震えている理由が分かった、そんなわけのわからない、化け物が俺たちの上司になるのだから、そしてザラキが言っていることがほんとうなら、その二人は化け物だ、俺がそう感じた瞬間、汗と震えが止まらなくなった

 

「そ、その二人はどうやって...南の異民族を殺ったんですか?」

 

「...あまり詳しいことは聞けなかったが、その異民族の遺体には緑色のカビが生えていたそうだよ、そして、妙なことに、その死体のほとんどは、変形した地面の中に埋まっていたそうだ」

 

「わ、訳が分からない...」

 

「訳が分からない…か...私もだよ」

 

俺の返答にザラキも同意を示すとその2人がいるであろうドア、2~3メートル付近まで来ていた

 

そして―――

 

「ここだよザンク君、出来るだけ粗相のないよう頼むよ」

 

「は、はい」

 

「スゥーハァー...失礼します」コンコン

 

 

ガチャ

 

ギィィィ

 

「失礼します、本日、この部隊に配属されることになりました、ザラキと申します、位は署長であります!!」ビシッ

 

「同じくザンクと申します!!」ビシッ

 

「...」ボー

 

「ウガ、ウッガ」バリバリバリ ボリボリ

 

ザラキと俺が自己紹介をするも目の前の二人は見向きもしなかった。

 

一人は今まで見た事がないほどの邪悪な顔つき、カビのような形の緑色の髪、紫色に縁どられた上下真っ白な服、そして服にはその男には似つかわしくない十字架がデザインされていた。

 

もう一人はなぜか角砂糖をぼりぼりかじっており、こちらを見向きもしない、特徴としては、全身を茶色っぽいダイブスーツを身から顔にまで、まとっており、目元しか見えない

 

「あ、あのう...」

 

ここで、ザラキが沈黙に堪えたのか、ゲス顔の方に声をかけるすると、

 

「よし、セッコ、角砂糖、食い終わったな?」

 

「ウ、ウガ」コクコク

 

ゲス顔の方が、もう一人の方、セッコと言う人物に語り掛けるとセッコと呼ばれた全身ダイブスーツの男は首を縦に振る

 

「そうか、じゃあ、仕事に行くとするか」ニタァア

 

「うー、ウ...ン」

 

そう言うと、二人は俺やザラキのことなど目もくれず部屋から出て行ってしまった。

 

「が、眼中にないって、感じでしたね、ザラキ署長」

 

「ああ、だが、これで良かったのかもな」

 

「え?」

 

「見ただろ、あの邪悪な笑み、あの目は、誰でもいい、人の絶望した表情が見たい、その為なら、犠牲は問わないという、目だ、きっとあいつは、生まれついてのゲスだ、邪悪だ、ダイブスーツの方は分からんが」

 

帝具を所持しているザラキだからこそ説得力のある言葉、それ以上に彼の汗の量と、震える体を観れば一目瞭然だが

 

「そういえば、片方の名前は分かりましたが、もう一人の名前は何て言うんですか?」

 

「名前...ああ、そういえばザンク君には言ってなかったな、あの人の名前と役職は...」

 

 

 

 

 

 

 

「最高責任拷問官“兼”将軍(将軍とあるが拷問官のトップでもある為、大将軍と同じ地位)チョコラータ」

 

 

 

 




 ちなみにセッコの役職は、最高責任副拷問官であり、将軍よりちょい上の立ち位置にいる(将軍以上大将軍未満)

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