リゾットが吊らされたサヨの手首についた縄を解き、そこら辺にあった古い毛布を地べたに敷きその上に、サヨを横におく。
「少し、汚れてはいるが......確かにサヨだ...」
サヨの顔は自身の血で汚れており、目の横から顎の先まで涙を流した後が目立っていた。
リゾットは冷たくなった、彼女の胸元を触るも、心音は感じられなかった。
「やはり、死んでしまってたのか」
リゾットが彼女の死に嘆いていた時、左側の方から聞いたことのある声がした。
「お、おい、お前、もしかしてリ、リゾットか?」
リゾットが声のする方に体を傾けるとそこには、牢屋の中で体中に黒いマダラ模様が広がっているイエヤスの姿であった。
「お前は、イエヤスか!」
リゾットは急いでイエヤスの方に駆け寄る
「まさか、お前がここに来るとは、思わなかったな...ぐばぁあ」
イエヤスは近くに来た人物がリゾットと確信し、安堵するもすぐさま、血反吐を吐く
「一体、何があったのだ、イエヤス教えてくれ」
リゾットは今にも死にそうな、イエヤスを牢の隙間から手を伸ばし体を支え真剣で心配をする様な眼差しでイエヤスに聞く、するとイエヤスは悔しそうに大粒の涙を堪えながらこう答えた。
「俺とサヨはアリアって言う女に、声をかけられて...出された飯を食ったら意識が遠くなって気が付いたらここにいたんだ」
イエヤスは目をグッと瞑りながら続ける。
「あのくそ女がサヨを殺しやがったんだ!」
リゾットは黙ってその話を聞くことしかできなかった、話の途中で割り込んだりもしなかった。只々真剣にイエヤスたちに起こった身の経緯を聞いた。
「なぁ、リゾット聞きたいことがあるんだ」
イエヤスはふと何かを思い出したかのようにリゾットに問いかける
「ああ、何か言いたいことがあるのか?」
リゾットはイエヤスの手を握りながら返答する。
「タツミには会えたのか?」
「ああ、タツミには会った、約束通り伝言も伝えた。」
皮肉なことに伝言とは違う残酷な結末になってしまったがリゾットは本当のことを言う。
「そうか、会ったのか、あいつは無事だったのか、怪我とかなかったか?」
リゾットは驚いた、今一番悲惨な状態で今にも死にそうな自分の心配よりもタツミの心配をしたのだ、そう答えたイエヤスの目に嘘はなく、心から心配している人間の目であった。
「ああ、ピンピンしているぞ、だが少し問題があってな。」
「もん...だい?」
イエヤスは不安になったのか不安そうな眼差しをリゾットに向ける
「今、俺とタツミはお前たちが言っていたアリアに誘われこの屋敷にいる。」
「な...!?」
イエヤスはリゾットの言葉に目を見開き驚く
「だが、今のところはまだ危害はない、必ず、タツミと一緒にここを出ると約束しよう」
「.....そうかタツミも...」
「とりあえず今はお前を病院まで連れて行k」
「いや、いい」
リゾットがイエヤスを病院まで運ぶと提案した直後にイエヤスはその提案を断る
「なっ!?」
「俺の体は、もう助からない、俺はルボラの薬漬けにされてもう手遅れなんだ」
「っ!?」
リゾットはイエヤスの症状を見て助からない状態であることは気づいていた、しかし、この世界はリゾットが居た世界とは違うため病院には直す手段があるのではないかと考えたのだ、だがもう助からないとすぐさま答えるイエヤスに対しリゾットもまた、イエヤスは助からないのだと確信する。
それでも何とかイエヤスだけでもと考えていた時イエヤスが口を開く
「なあ、リゾット頼みがあるんだけど、いいかな?」
「ああ、俺に出来ることなら...」
イエヤスは苦しそうな表情から真剣なまなざしで続ける
「俺が死んだら、タツミが一人前の男になるまでそばにいてやってくれないか」
「なに!?おれがタツミを?」
イエヤスの思いがけない言葉にリゾットは戸惑う
「無理なことを言っているのは分かってる、けど!? 頼む、俺が死んじまったらタツミは一人ボッチになっちまう、だから頼む、この通りだ。」
イエヤスはリゾットの胸のところに顔を付け、服を握りしめ泣きながら必死になって頼み込む
その姿を見てリゾットの心は揺らぐ
「...イエヤス......そこまで...」
リゾット・ネエロは基本的に口数が少なく常に無表情であり、人を暗殺するときは迷いがなく一切の慈悲を見せない為、冷酷な人間のように見られるが、実際の彼は、身内には優しく、ソルベとジェラートがボスにより殺され、二人の葬式を開いている際に二人のことは忘れろと言ったが、リゾットは他のメンバーが去った後も長時間ソルベとジェラートが入った棺桶を悲しそうに眺めていた。
また、リゾットが裏社会の住人になったのにも理由がある
リゾットがまだ14歳の時、いとこの子供が自動車にひかれ死亡してしまう。
その男は酒酔い運転をしていたのだ
社会はドライバーを数年の刑で済ませたが、リゾットはその男を決して許さなかった。リゾットが18歳の時そのドライバーを暗殺。
以後裏の社会に生きることになり、パッショーネに入団する。
そして月日は流れ、今、目の前で今にも死にそうなのに仲間の心配をするイエヤスやサヨの悲惨な姿を見てリゾットはイエヤスやサヨと年の近かったいとこの子どもが身勝手な理由で殺されたことを思い出していた。サヨもそのいとこの子どもも身勝手な理由で殺されたのだ!
(俺がいた世界も今いるこの世界も、結局は同じだ、子どもを轢き殺しても何事もなかったかのように普通の生活に戻ったあの男も! 貧困で困っている自分の村を救いたかった心優しいサヨやイエヤスをこんなにも見るに無残な姿にした、この屋敷の人間たちも結局は反省もなく、自分の過ちに気づかずに生きていくのだ!)
リゾットの目は見開き、額には血管が浮き、拳を力強く握りイエヤスにこう答えた。
「約束しよう、タツミは俺が責任を持って守るとお前たちの意思を無駄にはしない。そしてこの屋敷の住人はすべてこのリゾット・ネエロが地獄に送ると約束しよう」
リゾットは今までにないくらいの真面目な顔でイエヤスに約束する。
「あ、ありがとう、タツミをたの...む」
バタン
イエヤスは涙を流し心から感謝しながら倒れこむ
「イエヤス!?」
急に倒れるイエヤスの口元に手をかざす
「スー、スー、スー、スー」
若干弱いが息はしている
(肝が冷えた、本当に死んだかと思ったぞ......せめて最後くらいはタツミに会わせてやるからな、その時まで死ぬんじゃあないぞイエヤス)
その後リゾットは、裸で横になっているサヨの体の首から足の部分に布を被せた後、小屋から外に出て、小屋のカギを占めてから体に鉄分を纏い姿を消しながらタツミたちがいる方へ戻るも、「長いうんこだな~」っとタツミに馬鹿にされ周りにいたアリアたちも笑う、さっそくイエヤスとの約束を破ろうかと本気で思ったリゾットであった。