さっさと清涼祭に突入する予定でしたが、ワンクッション入れました。
風邪で寝込んでいる間に思い浮かんだ話なので、話がぐちゃぐちゃかもしれません。
とりあえず、現象の田中君に足りないものを補う為の話になります。
それでは、本編へどうぞ。
清涼祭も目前に迫り、学校全体が活気付いているある日の放課後、田中達Aクラスも喫茶店の準備に勤しんでいた。
「いらっしゃいませ、お嬢様」
「…イマイチだな。やっぱ『お帰りなさいませ、お嬢様』でいこう」
「僕はどっちでもいいと思うけどね。まあアルバイトで接客を経験してる田中君が言うならその方がいいのかな?もう一度やってみるよ」
「ああ、頼む。あと、笑顔を忘れないようにな」
「分かっているよ。接客は笑顔が大事って言うのは散々聞かされたからね」
「特に久保は女子からの人気が高いからな。お前がいい接客をすればクラスの売上げも大きく伸びるはずだ」
「よく分からないけどそんなものなのかい?」
「店の評価ってのは店員の態度で大きく変わるもんだ。どんなに商品が素晴らしくてもそれを売る商人がダメじゃ店は流行らないだろう?」
「それは分かるけど…そうじゃなくてだね」
「ああ、人気云々の方か。久保、ちょっと目を閉じて想像してみろ。外を散歩していたら綺麗な喫茶店を見つけた。時間もあるから少し立ち寄ってみるとしよう」
「散歩していたら…喫茶店…」
「そうだ。中に入ると、店員が明るい笑顔で接客してくれる。しかも相手はお前が気になっている人によく似ている。寧ろ本人かもしれない」
「吉井君が…僕に笑顔で…?」
「………まぁいい。お前はその店にもう行きたくないと思うか?こんなに素晴らしい出会いをこれで終わりにしたいと思うか?違うだろう?また来たい、また来ようと思うだろ?」
「確かに。是非とも訪れたいものだね」
「そういうことだ。ましてやうちはメイド喫茶だ。店員目当ての客が大半だろう」
「理解したよ。早速ホール担当を集めて練習を始めるよ」
「分かってくれて何よりだ。じゃあ俺は他のとこ見てくるからこっちは頼んだぞ」
「任せてくれ。ホール担当の人は至急集まってくれるかい?接客練習をしよう」
久保の号令で集合する人々を横目に田中は喫茶店の内装や看板などを設営している設営班へと足を向ける。
何故田中がこのように全体を見回っているのか?
経験という他無いだろう。もともとAクラスにはあまりバイト経験者はいない。そんな中で、調理、接客ともに経験している田中に白羽の矢が立つのは自明の理であった。
「お疲れさん。首尾はどうだ?」
「あっ、田中君。今丁度看板の下書き書いたんだけど見てくれないかな?」
田中が設営班を訪れると、ちょうど看板の下地が出来上がった所だった。
「タイミング良いな。じゃあ早速見せてもらお…う……」
出来上がった下地を前にした田中だったが、予想外の仕上がりに思わず閉口してしまう。
「どうかな?やっぱりインパクトが大事だと思って」
「あー、確かにインパクトは認めよう。だがこれは店の前には置けんな」
「えー、何で⁉︎会心の出来なんだけどなぁ」
「調和というものを考えてくれ。これじゃ喫茶店じゃなくてお化け屋敷だろ」
「た、田中君に真面目に諭された…⁉︎い、今すぐ描き直します‼︎」
「くっ、何か腑に落ちんがまあいい。あの様子なら次はマトモに作るだろう」
下地に描かれた文字や絵は喫茶店と言うにはあまりにもおどろおどろしく、不気味さを漂わせていた。ただでさえ『田中の野望』などという喫茶店に似つかわしくない店名なのにこれはない。田中が客ならばまず避けて通る所だろう。
田中の言葉に衝撃を受けた看板担当は、目に涙を浮かべながらものすごい勢いで看板製作に戻って行った。
理不尽な扱いに釈然としない思いをしつつも、仕上がりを確認していく田中だった。
最後に田中が向かったのは調理班である。調理といっても本格的なものを作るつもりはなく、主に盛り付けや飾り付けに力を入れる予定である。だが、全体の足並みを揃えなければ、量や装飾に差が出てしまう。そのため、
調理室を訪れた田中はそこで戦慄を覚えることになる。そこにいたのは純白のコック服に身を包み、頭に山高帽を被った調理班の面々。それが生地を捏ねたり、チョコの飾りを作ったり、とろとろふわふわなオムライスを作ったりしていた。
めちゃくちゃ本格的だった。よく見ると本物のシェフらしき人々が各所で指導している姿が見受けられる。
すわ何事かと焦った田中は、調理室前方の教卓から全体を観察していた翔子に問いかける。
「代表、これは一体どういうことだ?」
「………?ただのお料理教室」
「いやいやおかしいだろ⁉︎凄い本格的に学んでるじゃん‼︎外部から人呼んでまで学んでるじゃん‼︎」
「………あれはうちのシェフ。どうせ出すならいいものを出すべき」
「いくら本格的でもこれじゃ採算取れないんだが」
「………問題ない。材料費とかはうちから出してる」
「結構な額動いてると思うんだがいいのか?」
「………親の許可も得てる。せっかくの清涼祭だからお客さんにも喜んでもらいたい」
「…そこまで考えてるなら俺から言うことは無いな。俺も指導受けるかな」
「………田中も調理班の一員。はじめから指導を受けてもらう予定」
「仕方ない、出来るだけ頑張りますかね。せめて足引っ張らないくらいまでにはならないとな」
「………それも問題ない。田中用にスペシャルな特訓メニューを考えている」
「なんだろう、すごく嫌な予感がする。一刻も早くここから逃げろと俺のゴーストが囁いてる」
服を着替え、早速指導を受けに行く田中に翔子から声がかかる。
「………まず、ここでは失敗作にはデスソースをかけて食べてもらう」
「えっ?」
「………田中は時間がないから放課後はうちでも特訓を受けてもらう」
「ちょっ…」
「………場合によってはさらに増やすからそのつもりで頑張って」
「\^o^/」
それから清涼祭までの期間、田中の姿を見たものはいないという。
いかがでしたでしょうか?
ぶっちゃけると、田中君に料理スキルつけるためのお話しでした。
現在の田中君の料理レベルは、最低限自炊が出来るくらいです。そのため、せっかくなのでここでスパルタ教育を受けてもらいました。教育風景の描写は書いておりませんが、田中君が阿鼻叫喚しているのを想像していただければ幸いです。
それでは、次話から清涼祭がスタートしますのでよろしければまったりとお待ちください。
批評、感想は随時受け付けておりますので、お気軽に頂けると有り難いです。
では、ここで失礼致します。
追記:2014/08/22 段落付け、仄かに加筆修正を行いました。