Ultraman G ーto come again ー 作:マイケル社長
「なに、あれは・・・・」
ギールの腹部を、榛香は訝しげに見ている。
「心臓とかか?ならあそこを叩けば・・・」
だが陽次朗の楽観的な希望は、「いけない!」という護の声にかき消された。
「腹部のコアに高エネルギー反応です、そのう、形容しづらいのですが」
『みんな気をつけて!火山噴火の前兆に似てます』
「それです、それ!」
スキョンのインカムに、護が反応する。
その頃地上の剣太郎は、望遠カメラでギールの様子を窺っていた。
「おいなんか妙だぞ。アイツ目が真っ赤だ」
「だからどうした」
陽次朗のツッコミに、「怒り心頭って感じだぞ」と返事をする。
「貴様の主観で語るな、他に異常は?」
カメラを周囲に向けると、崩れた尾根に混ざる木々が湯気を発して、しばらくすると自然に発火した。
「おい、ギールの周囲が燃え上がってるぞ」
『剣ちゃん離れて!ギール周囲の温度が急上昇してる!』
スキョンの声に、剣太郎はチョッパーにまたがると、さらに隣の尾根へ向けて走り出した。
仰向けだったギールは、不器用ながらも前脚を繰り、突然後脚を軸に二足歩行となった。
全身が熱を発し、空気が歪むのが肉眼でも確認できた。コアはさらに熱を増しているようで、いまにも破裂しそうだ。
「よし攻撃再開だ」
陽次朗は機体を翻し、レーザーパルスを当てたがギールはまったく怯まない。
「・・・まさか。陽次朗さん、かつてギール討伐のとき、村ひとつ焼けていたって話してましたよね?」
「それがなんだ?」
「アレが、その原因かもしれませ・・・」
護は最後まで言葉を出せなかった。ひときわ大きく吼えたギールは、腹部から燃え盛るようなコアを吐き出した。
狭量な谷間に激突したコアは、一撃で地形を変えてしまった。そして撃ち出されるコアは1発ではなかった。堰を切ったようにコアから射出されるそれは、超高熱の火炎弾、マグマ弾ともいえるものであった。
赤く染まる土砂が舞い上がり、谷間の地形が変わっていく。
怒りが収まらないのか、ギールはマグマ弾を撃ちながら身体の向きを変えた。剣太郎が登った尾根が燃えながら噴き上がり、一気に山林に火がついた。
剣太郎はちょうど、尾根と尾根の谷間に達していたため直撃は避けられた。さっきの場所にいたとすれば、間違いなく尾根ごと吹き飛んでいたことだろう。
剣太郎の頭上を、何発もマグマ弾が飛んでいく。そのマグマ弾は、当初安全と思われていた建設途中の地熱発電所や工事事務所にまで到達し、数秒のうちに爆破炎上させてしまった。そこから広がるブナ林にも撃ち込まれ、炎のカーテンが出来上がる。
九郎ヶ岳の森林限界地点にもマグマ弾が突き刺さり、大量の土砂が燃えながら崩れてきた。剣太郎は慌ててチョッパーを吹かし、必死に山崩れから逃れる。地形が著しく変わってしまい、うまくタイヤが進まない。
「なんてことだ・・・・・」
上空の陽次朗は呆然とつぶやき、榛香は絶句していた。下の景色は、荒涼とした岩場と深い森から一変していた。猛烈な火災が巻き起こる、真っ赤な煉獄となっていた。まるで地の底に広がる地獄を仰ぎ見ている気分だった。
怒り任せの暴虐は、スキョンがいる前線にも達した。尾根が吹き飛ばされ、一瞬で森林が発火する。
ブナの葉、枝に炎が伝播し、スキョンは慌ててiPadをつかむと、テントから飛び出して倒れるように身を伏せた。テントが一気に燃え上がり、ボロボロと崩れてきた。
安堵して息を吸い込もうとしたとき、口内が空気に貼り付くような感覚がした。高温の空気が、容赦なくスキョンの呼吸器を焼こうとしているのだ。
頭上では葉が燃え上がり、ポロポロと落ちてくる。必死で特殊フライトスーツからハンカチを取り出し、口と鼻を塞ぐ。まともに呼吸すれば気道熱傷で呼吸困難を起こしかねない。
『スキョン、スキョン!?』
インカムから榛香の呼ぶ声がした。
『スキョン、大丈夫か!?』
陽次朗の声も焦りが滲んでいる。
「・・・助けて。炎に巻かれて・・・・」
絞り出すようにインカムに喋りかけるスキョン。地面スレスレに鼻と口を向け、どうにか呼吸する。
UMAの特殊スーツは耐火耐熱素材で作られてはいるが、この火災で空気が熱せられては、いつまで呼吸が持つかわからない。ヘルメットから頭に熱が伝播してきた。
『おい三堂、スキョンを救出できるか!?』
陽次朗が怒鳴るように問いかけた。
「待ってろ、いま向かってる!」
スカーフを口と鼻に巻きつけて覆い、剣太郎はチョッパーを駆り出していた。スキョンがいるはずの陣地へ向けて崩れた土砂を登っていく。
ギールの暴走はとどまることを知らず、火災の渦はますます拡大していく。
燃え上がるブナ林の中を進むと、スキョンがいたテントが見えた。燃えて崩れ去っており、近くの地面にスキョンが横たわっていた。
「おいスキョン!」
スカーフで覆っても熱が伝わってくる中、剣太郎はスキョンを抱き起こした。酸欠状態なのだろう、呼吸が粗く意識が混濁し、おぼろげな視線を向けてきたかと思うとフッと目を閉じた。
早くここを離れ、新鮮な空気を吸わせなければスキョンの命が危ない。だが火の手は広がっており、幹に着火したブナが続々と倒れてくる。剣太郎自身、呼吸がおぼつかなくなりつつある。だがスキョンをチョッパーに乗せたところで、安全圏まで退避できるかどうかはわからなかった。
『三堂、スキョンは大丈夫なのか!?』
陽次朗が焦り気味に訊いてきた。
「・・・ああ、なんとか脱出してみる」
嘘だった。2人とも助かるとは思えなかった。
『できるのか!?いま消火剤を搭載したF22を要請したところだ!どうにか持ち堪えられるか?』
「通信状態が良くない・・・」
そう言ってインカムを外すと、剣太郎は首から下げたデルタプラズマーを掌に乗せ、目を閉じた。
紫色の光を発するデルタプラズマーを軽く握り、剣太郎は目を閉じた。すうっ、っと意識が光の中へ吸い込まれていき、弾き出されるように光が溢れ出す。
炎上する大地に、ウルトラマングレートが立ち上がった。火の手が及ばぬ森林帯に気を失っているスキョンを降ろすと、グレートは高くジャンプした。
「ウルトラマン・・・!」
上空の陽次朗がつぶやく。
『陽次朗、どうする?』
榛香が訊いてきた。
「少し様子をみよう。一時離脱し、スキョンと三堂を救出だ」
二機のハマーは高度を上げた。飛び上がったグレートは怒り狂うギールのそばに着地する。コアからのマグマ弾を止めたギールは、突然の闖入者にいきり立つ視線を向けた。