Ultraman G ーto come again ー   作:マイケル社長

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第2話 漂流 ーExileー Ⅶ

「デェアッ!」

 

グレートはギールに向かった。ギールも雄叫びを上げつつ迫り来る。

 

がっぷりと組み合い、互いに力を出し合って牽制する。ギールの前脚に生えた爪は鋭く、グレートに食い込んだ。

 

かまわずグレートは押し込む力を込め、ギールは仰向けに転倒した。二足歩行で立ち上がるギールの顔めがけ、回し蹴りを打ち込む。ふらつきこそしたがギールは踏ん張った。そこへ、返す脚でさらなる回し蹴りが放たれた。

 

ダメージが大きく、再び転倒するギール。ギールの腹部が熱を帯び始めた。

 

グレートは滑り込み、マグマ弾の死角となる位置からギールの首に手を回した。右手でギールの首を締め付ける。

 

かすれた咆哮を上げ、苦しげに身体をバタつかせる。グレートは腕により力を込めた。

 

腹部のコアはいまにも炎が上がりそうだが、その位置からはグレートに当たるはずもない。ギールの口から泡が出てきた。

 

このままヘッドロックでギールを締め落とそうとしていたとき、ギールは目を赤くギラつかせた。首を反らせてグレートを睨みつけると、口から焔を噴いた。

 

上半身が焔に包まれたグレートは、思わず手を放して転げ回った。頭を振って意識をはっきりさせたところに、四足歩行状態でギールが突進してきた。

 

グレートの両膝がしたたかに打ち付けられ、山の尾根に倒れかかった。ギールはグレートの左脚に噛みつき、先ほどの逆襲とばかりに歯を食い込ませた。

 

「グアアッ」

 

グレートの強固な皮膚はギールの歯こそ拒むが、痛みに喘ぐグレートにギールは全体重をのし掛けてきた。

 

ギールの重みに加え、グレートの腹部にマグマコアが直に当てられる。超高熱はグレートの皮膚を焼き、白煙が上がり始める。

 

グレートの胸にあるカラータイマーが鳴り始めた。大気汚染の激しい地球では、ウルトラマングレートはその巨体を3分間しか保つことができない。否、変身後3分も経過してないのだが、周囲の激しい火災で酸素が奪われている上、もうもうと昇る煙が大気を汚染することでグレートの変身可能時間は限られてしまっていたのだ。

 

グレートは力を振り絞り、ギールの腹部に両手を当てた。全身のエネルギーを両手に集中させ、気合いを入れて放出する。両手からの光弾、ナックルシューターのゼロ距離射撃だ。

 

破裂したように煙が上がり、ギールは真上に吹き飛ばされてひっくり返ってしまった。かなりダメージを受けたらしく、仰向けでのたうち回る。

 

立ち上がったグレートは大きく呼吸をすると、より強力な光弾でギールを屠るべく自身の腕へさらなるエネルギーを送り込んだ。

 

ー待ってくれー

 

そのとき、合体している剣太郎が意識下から声を上げた。

 

「どうしたのだ、剣太郎」

 

両腕にチャージしたエネルギーをそのままに、グレートは訊いた。

 

ーコイツを倒すのはやめてもらえないかー

 

「何を言い出すのだ」

 

ーコイツ、怒りで見境いなくしてるだけで、本来は地底で大人しく眠ってるだけの怪獣だと思うんだ。しかも、昔住処だったヨーロッパを追われ、きっとここに逃れてきたんだろう。ようやく安住の地だと安心していたら、オレたち人間に“そこに居るだけで”眠りを妨げられたから頭に来てんだと思う。どうにか、地の底へ戻してやることはできないか?ー

 

「それはできない。この怪獣はもはや話が通じぬほど怒り狂っている。倒す以外に選択肢はないのだ」

 

ーグレート、頼む。ここの地下には巨大な空洞が拡がっている。アロービームで、地中に穴を開けてくれ。筋道さえ作れば逃れてくれるかもしれねえー

 

「剣太郎」

 

ーオレ、なんだかコイツがかわいそうなんだ。オレも住んでた場所を迫害されて、当ても無く漂流するしかなかったことがある。迫害された怒りと先が見えない不安で、ささくれ立つ気持ちがよくわかるんだー

 

グレートは両腕に溜めたエネルギーを放つことなく、腕を下げた。だが怒りに燃えるギールは立ち上がり、大きく吼えてからマグマ弾を連発してきた。放出された弾はすべて、グレートに向かった。

 

身体に直撃する寸前、グレートは両掌ですべてのマグマ弾を受け止めた。数発のマグマ弾は焔を巨大化させ、グレートの上半身を上回るほどの大きな火球となった。

 

火球の梺にある大地が熱され、融解してしまうほどの超高熱弾を、グレートはギールに押し返した。相手の放つ技を受け止めた上で増幅し、数倍にして返す技、マグナムシュートだ。

 

巨大な火球が直撃したギールは断末魔の叫びを上げる間も無く、派手に砕けながら炎に包まれてしまった。火球の余波はギールだった破片を呑み込み、跡形もなく燃やし尽くした。

 

グレートは大きく息をすると、あちこちで捲き上る煙を振り払うような高速で天へと飛んでいった。

 

 

 

 

 

陽次朗から要請を受けて飛んできた国防空軍のF22編隊が上空から消火剤を巻く中、一時的に着陸した陽次朗と護、榛香は消息を絶ってしまった剣太郎とスキョンを探していたが、火災現場から遠く離れた山林地帯から一筋の煙が上がったことを確認すると、急ぎ煙の元へと向かった。

 

救難時の信号となる黄色い発煙筒が焚かれる中、剣太郎が横たわるスキョンに携帯酸素を吸わせているところだった。

 

「無事だったか」

 

陽次朗が駆け寄ると、剣太郎は頷いた。

 

「スキョン?」

 

榛香はスキョンに駆け寄った。顔は煤で黒く染まり、酸素ボンベを付けた顔は意識が完全に覚醒していないのか、ぼんやりとした表情だった。

 

「大丈夫です、剣ちゃんが助けてくれて」

 

スキョンはいつもの明るい笑顔を見せたが、喋った途端に咳込んだ。

 

「まだ喋らない方がいいな。気道が焼かれてるかもしれねえ。でもまあ、このボンベしばらく吸って喋れるようなら、さほど深刻な状態じゃない」

 

剣太郎は咳込むスキョンに酸素ボンベを当てた。咳込みながら、スキョンは剣太郎に笑いかけた。

 

「それにしてもお前たち、あの火災をよくここまで逃げて来られたな」

 

陽次朗が剣太郎に訊くと、「ああ、オレだけじゃ無理だった。火災がひどくて立ち往生したところを、グレートが助けてくれたんだ」と答えた。

 

「グレート、だと?」

 

「なんですか、グレートって?」

 

怪訝な表情で、陽次朗と護が訊いてきた。

 

「あのウルトラマンの名前だ。ウルトラマングレート。オーストラリアじゃ、そう呼ばれていた」

 

剣太郎は視線を空に向けた。天に飛び去ったグレートを追うかのような視線だった。

 

「ウルトラマン・・・グレート?」

 

「グレート・・・」

 

陽次朗と護はグレートの名を反芻した。ウルトラマンという名前を耳にしたスキョンは、それまでの笑顔を曇らせた。

 

 

 

 

 

〜石川県珠洲市 UMA日本支部〜

 

 

ギールを撃破した翌日、ベトナムコーヒーの香り漂うUMA司令室にて。

 

冴島は剣太郎が淹れたコーヒーをうまそうに飲みながら、自身のiPadでネットニュースを見ていた。

 

【経済産業省、西日本電力第四地熱発電所建設の無期限延期を決定】

 

【怪獣は仕留められなかったのか 国防軍の作戦展開に非難殺到】

 

隊長デスクに腰掛ける冴島の他には、自身のデスクで物憂げにコーヒーを飲む剣太郎が居るばかりだった(コーヒーが苦手な陽次朗は、機体整備補助と言い残して司令室を出てしまった)。

 

コーヒーにミルクを注ぎ、ゆっくりと白く渦巻く様子をぼんやりと眺める剣太郎。冴島はチラリと視線を送るが、敢えて声を掛けることはしなかった。

 

「剣ちゃん!」

 

やや重苦しい雰囲気を打ち消すかのように、スキョンが元気に入ってきた。

 

「おうスキョン、どうだ調子は?」

 

「うん、食べたり飲んだりするときにちょっと喉の奥が痛いだけ☆それよりどうしたの剣ちゃん、なんか元気ないよ?」

 

「ん?いやそんなことないぞ。オレはいつだって元気だ」

 

声の張りが戻った剣太郎を見て、少し怪訝な顔をしたもののスキョンは微笑んだ。

 

「それより、またコーヒー飲むか?昨日と違うフレーバーにしてみたんだ」

 

「ホントー?飲む飲む てかさ、いまマモーがカフェテリアでご飯食べてるから、持ってって一緒に飲もうよ!」

 

賑やかに出て行く剣太郎とスキョンを、反対側の入り口から恨めしげに見る榛香。少し歯嚙みをすると、iPadで格闘技の映像を観始めた。

 

真剣に、食い入るように映像を見る榛香。冴島は席を立ち、榛香の背後に立った。

 

「どうしても剣太郎に勝ちたいようだな?」

 

冴島の声かけに、榛香は振り向くことなく頷いた。動画に集中させて、そう心の声が聴こえてきたが、冴島はかまわず続けた。

 

「だが勝負どころか、いくら君が頼み込んでも彼は“女性だから、自分より弱いから”と一戦すら交えさせてくれないようだが」

 

今度は榛香が振り向いてきた。怒りを帯びた目だった。

 

「榛香、君は彼に勝ちたいのか。それとも、とにかく手合わせしてほしいのか」

 

「・・・両方です。なのにあいつ、あたしがいくら頼んでも・・・!」

 

榛香は動画の再生を止め、歯噛みした。フフ、と微笑む冴島に「何がおかしいんですか」とトゲ混じりに訊いた。

 

「榛香、気を悪くするだろうが、いまの君ではまず剣太郎には勝てない。剣太郎もそれがわかってるから、君の頼みを断るんだ」

 

「・・・じゃあどうしろっておっしゃるんですか!」

 

声を荒げ、感情的に立ち上がった榛香に、冴島は人差し指を突き出した。

 

「落ち着くんだ。どうだろう、頼み方を変えてみては。剣太郎と戦いたいのだろう?」

 

つり上がった榛香の眉が、やや下がった。

 

 

 

 

 

 

カフェテリアに入ると、彼がどこにいるかすぐにわかった。自作のコーヒーを振る舞いながら、護とスキョン相手に談笑していたからだ。

 

「それでなあ、インドのバラナシに行ったとき、赤い洗面器を頭に乗せた男が・・・」

 

笑顔で喋っていた剣太郎は、ツカツカと歩み寄る榛香に気がつくと目尻を上げた。ワクワクと話に聴き入っていた護とスキョンは、気まずそうに顔を背けた。

 

「おい二階、その顔はまた戦ってくれって頼みにきたのか。何度言わせるんだ」

 

強張る榛香の顔を見て、剣太郎は機先を制するつもりで口を尖らせた。

 

だが榛香は顔を強張らせたまま、勢いよく頭を下げた。あまりに力強いお辞儀に、剣太郎は言葉を失った。

 

「三堂お願い。私に武術を教えて」

 

普段の気の強さからは想像もできない榛香の行動に、護とスキョンは目が丸くなった。

 

「もっと、強くなりたいの」

 

頭を下げたまま、榛香は絞り出すような声を出した。剣太郎はやや呆気に取られつつも、そんな榛香を凝視したまま黙り込んだ。

 

 

 

 

 

「そうじゃない、オレが首筋狙ってきたら、片足を軸に半身を下げろ」

 

数分後、トレーニングルームで剣太郎から手ほどきを受ける榛香の姿があった。

 

「上半身だけ反らせるよりも、半歩下がるんだ。そうすれば確実に身体に当たらないし、反撃もやりやすくなる」

 

言われた通り、榛香は動く。これまで学んできた空手や少林寺拳法、はたまたUMAの基本格闘技であるマーシャルアーツにもない、極めて実戦的な技法だった。

 

「よしいいぞ、その調子だ。パンチはそのタイミングで良い」

 

教える剣太郎も、教わる榛香も汗だくになっていた。傍目から見ても、真剣さが伝わってくる。

 

「冴島隊長、なかなか活きの良い若者を入れましたな」

 

トレーニングルームの端で、冴島と共に様子を見る米山 光吉(ヨネヤマ コウキチ)が声をかけた。

 

「いやあ。ま、これで隊内の和ができてくれればありがたいですな」

 

冴島は微笑んだ。

 

「彼が来てUMAがまとまってくれたなら、来るべき時にも備えられる、そうお考えになったのじゃありませんか?いやなに、お答えは不要ですが」

 

なおも微笑む冴島。米山の問いはまんざら的外れではなさそうだった。

 

 

 




第3話 予告



食糧危機の懸念がある日本。

調査を進めるUMAに立ちはだかる二大怪獣。

ウルトラマングレート、町を守れ。



第3話 目を覚ませ、男なら! 大ガニ怪獣ガンザ 大ダコ怪獣タガール 登場
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