Ultraman G ーto come again ー 作:マイケル社長
〜日本 石川県珠洲市禄剛崎 UMA日本支部〜
夜8時。送迎のアルファロメオから降りたUMA日本支部隊長 冴島 基美長(サエジマ キミナガ)は、上品に仕立てられたタキシード姿のまま断崖にポッカリ穴を開けた洞窟へと入っていった。
一見自然に作られたと思われるその洞窟はしかし、足場は綺麗に舗装され、コウモリや蛇など野生動物が棲みつかないよう、人間には察知できない音波が常に放たれている。
洞窟の最奥地はさほどではなく、180センチある冴島の背丈ほどはある、地元の海神を祀った社がそびえている。仮に誰かが洞窟へ入ったとしても、この社を見れば心理的にそれ以上の侵入を避けようとするはずだ。よしんば社の先へ行こうにも、洞窟の奥行きとなっておりただ岩肌があるばかりだ。
冴島は社の裏手にある、不自然にも岩肌を向いている1匹の狛犬像の口に手を入れた。
すると岩肌の麓が左右に開き、地下へと続く階段が現れた。
階段を降りると、淡いブルーの間接照明に照らされた空間に続く。しばらく通路を進むと、さらに地下の巨大な空間に並ぶUMA戦闘機、通称ハマーが硬化ガラス越しにうかがえる。
通路の終点である、鋼ステンレス製の自動扉が開くと、隊員個人用モニターが仕付けられた円状の大きなデスクがあり、それぞれがモニター、各々と向かってやり取りしている。
冴島が入室すると、中の4人が一斉に立ち上がった。
「「「「おかえりなさいませ」」」」
「うむ」とだけ返事をすると、冴島は円卓から離れた隊長専用のデスクに向かい、ネクタイを外した。
「お呼出てして、もうしわけありません」
席に着くなり、二階 榛香(ニシナ ハルカ)が寄ってきた。
「むしろありがとう。その後の経過は?」
冴島は榛香と、その他の隊員へ目を配らせながら訊いた。
「こちらをご覧ください」
モニターとにらめっこしたまま、守山 護(モリヤマ マモル)が応えた。
「最初に報告したときより、地温が7度。地表温度は、高いところで5度上昇が見られます。この地域の平均温度と比較すると、いずれも10〜15℃も高いです」
「スキョン。君の見立てはどうか?」
キーボードを叩くのを止め、李 淑敬(イ スキョン)が顔を上げた。
「この程度の火山ガスと地下のマグマでは、噴火の前兆とは考えられません。少なくとも地質学的には問題がないことから、別な要因である可能性が高いです」
スキョンはモニターに地図を展開させた。異常な地温上昇が見られた当該区域である、神奈川県箱根仙石原付近のサーモマップが表示された。
今日午後3時過ぎ、箱根二子山で熱水の噴出が確認され、続けて周囲5キロに渡って地温上昇が見られた。
元から火山帯である箱根の噴火が懸念されたが、地質学の博士号を持つスキョンの出した結論は火山噴火とは程遠いというものであった。
また地温上昇は一時的なものではなく、以降も上がっていく可能性が高まり、定例のパーティに出席している冴島を呼び出すこととなった次第である。
「しかし隊長、この程度の気温上昇はこれまでも観測されたことです。今日は日中暑かったですし、直射日光による地表面温度上昇に過ぎないと考えたので、私はわざわざお呼出てすることはないと申し上げました」
苛立ち気味に、日本支部副隊長である陽次朗 ラインハートが言った。
「違いますよぉ。地表のみならともかく、地下15メートルでも同様の温度上昇が見られるから異常事態なんです。もうちょっとこっちの話を聴いてくださいよぉ」
スキョンが口を尖らせると、「だから、もう少し様子を見てから判断しても良いだろうと言っただろうが」と陽次朗が喰いかかった。
「わかった。陽次朗、榛香。ハマーで現地に飛んでくれ」
「隊長!」
不満気に詰め寄る陽次朗の後ろで、スキョンは我が意を得たりとばかりにドヤ顔を作った。
「考えすぎかもしれないが、箱根という土地でこの観測結果は気にかかる。何かあった場合、東京始め首都圏への影響は必至だ。もしやとは思うが、いよいよここ日本でも動き出したことを想定しよう。2人とも、5分で支度をするように」
唇を真一文字に結んだ陽次朗に、榛香は肩を叩いて出動を促した。