Ultraman G ーto come again ー   作:マイケル社長

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第1話 三大怪獣出現!東京大乱闘! Ⅲ

〜オーストラリア シドニー キングスフォードスミス国際空港

日本トランスワールド航空 東京羽田空港行き327便 ビジネスクラス〜

 

 

「シャルドネ」

 

ドリンクを勧めてきたキャビンアテンダントに、藤倉はぶっきらぼうに答えた。

 

「??失礼しました、もう一度ご注文を」

 

くぐもるような口調だったので、キャビンアテンダントが聞き取れず訊いてきた。

 

「シャルドネだ、一度で聞き取りなさい!」

 

苛立つ心を、藤倉は隠さなかった。

 

「大変失礼いたしました、申し訳ございません」

 

心底申し訳なさそうな表情で、キャビンアテンダントは引き下がった。

 

ふて腐れた顔で、藤倉は革製の背もたれに踏ん反り返った。

 

そもそも、ありとあらゆる因子が藤倉をご機嫌斜めに導いていた。

 

あれやこれやウザいラウンジを出て、搭乗待合エリアで飲み直そうとしたところ、日本のオフィスから電話がかかってきた。

 

出張先への電話は大抵ロクなものではない。案の定、『東京湾底の石油パイプラインに送油事故発生』を報せるものだった。

 

それからは気を取り直しての一杯どころではなくなった。

 

藤倉が決して部下に任せなかった顧客・取引先への説明、謝罪に追われ、気がついたら搭乗予定時刻寸前を迎えていた。

 

さすがに機内からの電話は控えるが、日本までの約半日、メールやLINEでの対応が山積するだろうことは容易に想像できた。こんなことなら、抱えているいくつかの取引先を何軒かでも部下に押し付けておけば良かったのだ。

 

状況と後悔への苛立ちは、絶対に歯向かってこないキャビンアテンダントにぶつけてやろう。こちらは客である。いつも部下にしているように、怒鳴り散らしてやろうー。

 

その第一陣が実り、藤倉はわずかながら溜飲を下げた。強張った表情でシャルドネをサーブするキャビンアテンダントからグラスを奪い取り、3分の1ほど飲み干した。

 

アルコールの作用で胃が熱くなると、また怒りがこみ上げてきた。また、何か言いがかりをつけていびってやろうとしたとき、背後から聞き覚えのある声がした。

 

「いやあ、何か悪いなー」

 

藤倉は目を丸くした。さっきラウンジで図々しく絡んできた、日本人の若造ではないか。たしか、三堂とかいったはずだ。

 

「三堂様、とんでもありません。せめてものお気持ちですと、当機の機長が申しております。後程、チーフパーサーと共にご挨拶をさせてくださいとも、仰せつかっております」

 

「ちょいちょーい、気を使わなくていいよ。てゆーか、マジ嬉しいな、ビジネスクラス」

 

先ほど藤倉がいびったキャビンアテンダントが、満面の笑みで若造に接している。クソ、若造の分際でビジネスクラスとは生意気な。

 

何か文句の1つでも言ってやりたかったが、この若造に見つかって飛行中絡まれたりするのも癪だ。藤倉はアイマスクをつけた。

 

どいつもこいつも、人の神経を逆撫でさせやがって・・・。

 

 

 

 

 

〜日本 神奈川県箱根町・仙石原上空〜

 

 

点在する温泉旅館やペンションの灯り以外は、箱根仙石原は漆黒の闇に包まれていた。ハマーの高度計がなければ、虚空と大地の区別がつかず、自分の居場所がわからず混乱しかねないほどの闇夜だった。

 

「スキョン、現在の地温だよ。確かめて」

 

榛香はインカム越しに、基地のスキョンに呼びかけた。ハマー底面から棒状の測定器が顔を出し、地表へ向けて音波を発する。

 

『うわ・・・通常の4倍近いです。気をつけてください、噴火はしなくても、局所で高温のガスや熱水噴出が考えられます』

 

「わかった、上空から調査続けるね」

 

インカムを切ると、隣席の陽次朗がため息をついた。

 

「こんなことばかりして、本当に怪獣なのか、て言いたそうだね?」

 

榛香が訊くと、目を閉じて頷いた。

 

「オレはこの目で見るまで、怪獣がここに居るなんて信じられないんだよ」

 

「でも、怪獣は出現前に必ず何かしらの形で予兆を出す。それが何なのか突き止めるのも、大事なことでしょ?」

 

「ああ」

 

生返事だった。榛香は呆れつつも、陽次朗は軍育ちで『予測・分析』よりも『戦闘・殲滅』を叩き込まれたのだ。こういう仕事は苦手なのも頷けた。

 

センサーモニターから警告音が流れた。

 

『陽次朗さん、榛香さん、気をつけて!硫黄濃度が急上昇してます!機を上昇させてください!』

 

スキョンが叫んだ。陽次朗は操縦桿を自身に傾けた。ハマーはホバリング状態のまま、高度を一気に稼いだ。

 

それと同時に、仙石原になびく一面のススキが突然発火した。一気に周囲の森も発火し、闇夜を紅く照らす。

 

『振動確認、お二人とも注意して、来ます!』

 

護の声がした刹那、爆発的に地面がめくり上がり、黒い巨体が身を起こしあげた。

 

黒い闇の中、白と赤の眼が浮かんだ。

 

「識別、アーストロン!」

 

モニターを凝視していた榛香は、表示された怪獣の識別標を読み上げた。

 

凶暴怪獣アーストロン。頭に天を裂かんばかりの巨大な角を湛え、黒い肌からは絶え間なく白煙が昇っている。

 

「隊長、攻撃しますか?」

 

陽次朗は操縦桿をひねり回しながら、訊いた。

 

『攻撃を許可する。良いか、これが日本におけるUMA初の火力攻撃だ。心してかかるように』

 

「「了解!」」

 

ハマーは機体正面をアーストロンに向けた。榛香は自動照準機を操作し、いつでも攻撃できるようにする。

 

榛香自身、悟られるまいと必死に隠していたが、震える指は否応なしに陽次朗の視線に飛び込んできた。いくらUMA隊員養成機関を首席で卒業したとはいえ、榛香にとってシュミレーターやVRではない、はじめての本格的な実戦であった。

 

陽次朗は咳払いをして、操縦桿に取り付けられた引き金を絞った。空気を斬り裂くような音がして、紫色をした2本の光の筋、レーザーパルスがアーストロンに向かっていく。

 

アーストロンの両肩に閃光が迸り、怒りと驚きの咆哮が上がる。

 

攻撃後アーストロンと距離を取ったハマーは、モニターで着弾地点をサーモする。

 

「レーザーパルス命中。対象への損傷・・・認められず」

 

額に浮かぶ汗も気にせず、榛香はモニターを読み上げた。

 

「バカを言うな、出力は最大値だぞ!」

 

操縦桿を操りながら、陽次朗が言った。

 

「間違いない!傷つけられてない!」

 

焦りと怒りを滲ませる榛香が答えた。

 

『お二人とも!旋回して頭部、顔面を狙ってください!過去の戦闘記録によれば、頭部への攻撃は有効でした、頭を狙ってください・・・』

 

護の呼び掛けに応えようとしたとき、『待て』と冴島が割り込んだ。

 

『ランチャーを使用するんだ』

 

陽次朗と榛香は互いに視線を合わせた。ハマーには基本装備であるレーザーパルス2門の他、爆撃用の各種爆弾、火力集中攻撃用のミサイルランチャーをアタッチメント可能兵装として用意されている。

 

だが照準も着弾も正確にコントロールできるレーザーパルスと違い、場合によっては周囲へ二次的被害を及ぼすこともあるランチャーの使用は、指揮官である支部隊長の許可なしには使用出来ない規則になっている。

 

そして使用許可の権限を持つ支部隊長としても、おいそれと運用することのないよう、厳格な使用基準が設けられていた。

 

「隊長、よろしいんですか?」

 

榛香が訊いた。

 

『幸い周囲は人口密集地ではない。都市への侵攻阻止、怪獣の撃滅を最優先と考える』

 

それでも戸惑う榛香に、「隊長がおっしゃるんなら」と、陽次朗は用意を促した。

 

榛香は頷くと、コマンドを入力した。ハマーの底面が大きく開き、円形の蜂の巣を思わせる全10門の砲が現れた。

 

陽次朗はアタッチメント用の引き金を絞った。すべての砲門からミサイルが飛んでいき、全弾アーストロンに命中した。

 

闇夜の仙石原が昼間のように明るくなり、衝撃波が周囲の森をなぎ倒した。VR訓練で見たことがあるとはいえ、あまりの威力に榛香も護もスキョンも、絶句したまま爆炎を凝視した。

 

煙が晴れ、燻る地面が現れた。アーストロンの姿はなかった。

 

「・・・・・やったの?」

 

静けさを取り戻した仙石原を見て、榛香がつぶやいた。

 

「兵器こそ違うが、似たような威力で粉微塵になった怪獣を何匹も見てきた。アイツもそうなったんだろうさ」

 

陽次朗は視線を前方から逸らすことなく答えた。現在のUMA日本支部でただ1人、怪獣と直接交戦した陽次朗には説得力があった。

 

「隊長、どうしますか?」

 

陽次朗が訊くのと、スキョンが深刻な顔をしてデータを見せるのが同時だった。

 

『帰投だ。2人ともご苦労』

 

冴島の返事に、榛香は大きく息を吐いた。

 

その安堵も束の間だったと、帰投後に思い知らされることとなるとは、そのときは考えもしなかった。

 

 

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