Ultraman G ーto come again ー   作:マイケル社長

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第1話 三大怪獣出現!東京大乱闘! V

~東京都江東区 第一号埋立地

 

 

炎上する倉庫街を、港湾作業員たちが逃げまどっていた。海上から炎が吹き上がり、さらに延焼範囲を拡げていく。

 

倉庫群から停泊中のタンカーに引火し、大爆発が起こった。

 

炎と黒煙の中、巨大な鞠玉のような怪獣が瓦礫を蹴散らしながら上陸した。

 

オイル怪獣タッコング。

 

そのユーモラスな姿に似合わず、無尽蔵ともいえるバイタルと、体内に蓄えられたオイルを高熱火焔に換えて噴き出す、脅威の怪獣だ。

 

対岸には、緑色に染められた海から緑色の巨体が身体中から体液を滴らせつつ上陸した。

 

ヘドロ怪獣ザザーン。

 

不気味な体色とたらこのような唇から猛毒のガスを吐き出す、厄介な怪獣。

 

そして二匹は天敵、犬猿の仲であった。

 

タッコングが威嚇するように吼え、丸い身体を突進させていく。ザザーンは怯みつつも、タッコングの顔面にガスを見舞った。

 

慌てて後ずさり、お返しとばかりに火焔を噴き出す。逃げ回るザザーンの背後が火の海になり、火災は倉庫の隣に構築された化学コンビナートに引火した。

 

精製施設、ガスタンクが吹き飛び、猛烈な炎が竜巻上に天を焦がす。

 

能登半島から数分で、ハマー4機が到着した。

 

わずか数分で変わり果てた東京の景色に、榛香は思わず唾を飲んだ。

 

『全員聞いてくれ。軍は市街地ということもあり、投入戦力が限られる。厚木からアタッカーオスプレイが飛び立ったが、まともに対抗できないものと考えられる。正確に確実に、レーザーパルスを当ててくれ』

 

インカムから冴島の指示が飛び、「「「「了解!」」」」と返事をする。

 

「よし、榛香、お前はザザーンを頼む。スキョンは空域を転回しながら陽動、要撃。オレはタッコングをやる。護、観測をやれ」

 

操縦桿を握ったまま、陽次朗は全員に指示する。

 

「陽次朗さん、僕もやれます!」

 

「ダメだ。お前のシュミレーターでのスコアでは、まだハマーの実戦は早い。攻撃の効果を見極めるのも大事な仕事だ。わかったな?」

 

顔こそ見えないが、護の必死さと焦りが伝わってきた。

 

「照準、良し。発射!」

 

榛香が先陣を切り、レーザーパルス二門を放った。ザザーンの腹部に吸い込まれ、白煙が上がった。

 

陽次朗も続き、タッコングの顔付近にレーザーパルスを当てる。攻撃に反応し、タッコングが火焔を向けてきた。操縦桿を絞り上げ、陽次朗は上空に逃れた。

 

注意を削がれたタッコングに、スキョンは背後からレーザーパルスを当てる。向き直るタッコングを旋回し、そのままザザーンの後頭部に命中させた。

 

「護、効果は?」

 

陽次朗が訊いた。

 

「目視による損傷、なし。効果が認められません」

 

榛香は舌打ちし、ハマーを前進させた。立ち上る黒煙を避け、ザザーンに続けざまにレーザーパルスを撃ち込んでいく。

 

放たれたガスを回避し、上空からさらに二発、攻撃を当てる。

 

「おかしい、これだけ当ててるのに・・・!」

 

歯噛みする榛香に、ザザーンはガスを放って応戦する。機体にこそダメージはないが、機内にガスが侵食すると危険だ。榛香は操縦桿を横倒しにし、その態勢のまま引き金を絞った。

 

「ダメだあ・・・」

 

「くそ、こっちもダメだ!」

 

陽次朗が叫んだ。

 

「ランチャーを使えれば・・・!」

 

スキョンが苦しげに言った。

 

「いけない。箱根と違ってここは東京だぞ。アレは使えない」

 

スキョンは悔しそうに唇を結んだ。

 

『護、攻撃を許可する。低速でいいから、必ず当てるんだ』

 

冴島の指示に、陽次朗が噛みついた。

 

「しかし隊長、護のスコアは基準に達していません!」

 

「そんなこと言ってる場合じゃないでしょ!護、あたしたちがフォローするから、照準調整して。大丈夫だから」

 

言いながら、榛香はタッコングとザザーンの間をすり抜けた。榛香を追うザザーンの後頭部に、護は照準を合わせる。

 

ハマーをホバーモードにし、機体を安定させる。だがあちこちで巻き起こる火災のせいか、気流が悪く機体がいまいち安定しない。照準がブレ、なかなか引き金を絞れない。

 

「何をモタついてるんだ!」

 

陽次朗の叱責が飛び、護は顔中に汗を浮かべた。やろうとすればするほど気が焦るのだ。

 

「マモー、がんば!」

 

スキョンの励ましも、耳に入ってこない。

 

榛香のハマーは機首を回し、もう一度ザザーンの正面を向いた。

 

ちょうどガスを吐こうとしたザザーンは動きを止めた。照準が当てはまり、モニターが点滅する。

 

護は思わず目をつむって引き金を絞った。見事、ザザーンの後頭部にレーザーパルスが当たり、ザザーンは振り向いた。

 

焦りが喜びに取って代わり、護は嘆息をついた。

 

「護、回避して!」

 

榛香の声で我に返り、護は機体を傾けた。危うくザザーンのガスが直撃するところだった。

 

 

 

 

 

第一号埋立地にかかる橋は、避難する人々でごった返していた。

 

避難者たちの波をかき分けるように、剣太郎は第一号埋立地へ足を走らせた。

 

橋のたもとで足を止め、爆発音と炸裂音が断続的にこだまする倉庫群の先に目を馳せた。

 

足元が揺れ出した。避難する人たちも足を止め、よろめいて街路樹や建物に身を委ねた。

 

剣太郎の数十メートル先でマンホールが吹き飛び、海から湯気が昇り始めた。

 

剣太郎は険しい目つきのまま、先へ向けて走り出した。

 

 

 

 

 

 

ハマーの攻撃を受けつつも、タッコングはザザーンに噛みついた。ザザーンはつんざくような悲鳴を上げ、タッコングを殴りつける。もみ合ったまま、二匹は倉庫街に雪崩れ込んだ。瓦礫を振り払い、タッコングは火焔を噴いた。

 

ザザーンの下半身から煙が上がり、ザザーンは港湾クレーン群に仰向けに倒れた。

 

そのとき、ザザーンの倒れた付近から土煙が噴き上げた。地面が激しく揺れ、地下から大きな角を誇る怪獣が姿を現した。

 

「アーストロン・・・!」

 

榛香は語気を強めた。

 

「くそ、やっぱりコイツ死んでなかったのか!」

 

機体を整え、陽次朗は忌々しそうに怒鳴った。

 

天に向けて吼えたアーストロンは、天敵のそばに現れた怪獣に驚いているタッコングに突進していった。

 

タッコングの巨体はアーストロンの突進を阻んだ。一度は倒れるも、アーストロンは口から熱線を吐いた。

 

タッコングの周囲が爆破され、炎に包まれる。態勢を整えたアーストロンに、背後から緑色のガスが浴びせられた。ザザーンが復活したのだ。

 

アーストロンは苦しそうに転げ回った。コンビナート群が倒壊し、噴出したガスに引火し大爆発が起こる。

 

炎の中立ち上がり、アーストロンはザザーンとがっぷり組み合った。そこにタッコングが近寄り、火焔を浴びせる。

 

「厄介なことになった、くそ!」

 

悪態をつきつつ、陽次朗は機体を操りアーストロン、タッコングにレーザーパルスを当てていく。ホバー状態を保持し、護は引き金を絞ったが、激しく動く三匹にうまく当てることができず、ザザーンの足元が吹き飛んだ。

 

「マモー、どんまい!」

 

護の上空を、スキョンは飛行する。狙いをつけ、アーストロンの頭部に命中させる。

 

うるさそうに首を振り、アーストロンは熱線を吐いた。スキョンの機体後部をかすり、ハマーの塗装が焦げ付いた。

 

「スキョン、気をつけて!」

 

対角線上から榛香は機体を飛び込ませ、絶妙な機体操作で連続して三匹の胴体にレーザーパルスを当てていった。機体を翻し、今度は斜め上からアーストロンとタッコングに攻撃を浴びせていく。

 

実戦経験こそなかったが、ハマーの操縦及び攻撃に関しては榛香がもっとも高スコアであった。その成績を遺憾なく発揮し、向かってくるザザーンの脚部に攻撃を命中させた。

 

「よし、榛香!正面は任せた!」

 

言うと、陽次朗は機体を垂直に上昇させ、急降下しながらレーザーパルスを撃ちまくった。上空から雨のように飛び交う攻撃に混乱する三匹に、榛香は正攻法ともいえる水平攻撃を仕掛けていく。

 

吼えるザザーンが、勢いよくガスを吐く。榛香は操縦桿を傾け、回避させた。だがそこに、タッコングの火焔が直撃した。

 

「うああ!!」

 

左ローター付近から出火し、榛香の機体はバランスを崩した。

 

『榛香、離脱しろ』

 

冴島の指示を待つこともなく、榛香は歯を食いしばり、機体を横に滑らせるように不時着の態勢を取った。だが今度は、怒りのあまり跳ね上げられたアーストロンの尻尾が機体底に衝突した。

 

「榛香!」「「榛香さん!」」

 

天と地がひっくり返ったように榛香のハマーは回転しながら、湾外側の空き地に突っ込んだ。爆炎が上がり、榛香以外の三人のインカムに砂嵐のような音が飛び込んできた。

 

『榛香を救出しろ!』

 

冴島は珍しく、強い口調で指示を出す。焦り、陽次朗と護は空き地にハマーを着陸させるべくホバーモードにする。

 

「スキョン、引き続き陽動しろ!」

 

半ば呆けていたスキョンは、陽次朗の声で正気を取り戻した。

 

「くっ、よくも榛香さんを!」

 

こちらへ向かってきたアーストロンに、怒りのレーザーパルスを放つ。

 

 

 

 

 

 

~大田区・東京羽田空港~

 

 

エアポートシャトルが停止し、陸の孤島となった羽田空港では、大勢の利用客が直に第一号埋立地、あるいはテレビで様子をうかがっていた。

 

「とうとう日本にも怪獣が現れたか」

 

「ヤバいんじゃない?一度に三匹なんて」

 

あちこちが騒然とする中、藤倉は「うるさい!こっちは電話してるんだぞ!」と声を荒げた。

 

周囲の鋭い視線にもかまわず、藤倉は電話口で怒鳴る顧客に向き直る。

 

「誠にもうしわけありません。この騒ぎが落ち着きましたら、すぐにお詫びと説明にうかがいます。ハイ、恐れ入ります」

 

電話を切り、怒り任せに近くの空ペットボトルを蹴飛ばした。

 

「ちきしょう、何がシャトルが動かないなら歩いて来い、だ!」

 

悪態をつき、階下のタクシー乗り場を仰ぎ見た。空港内まで、長蛇の行列だった。配車アプリを利用しようにも、出払い中、または災害等の事由でご利用になれません、などとメッセージが表示されるばかりだ。

 

このままでは、あの若造に倣い、歩いて空港から出なくてはなるまいか・・・。

 

大きく息を吐き、藤倉は空港の外に出た。

 

 

 

 

 

 

額がヒヤリとし、榛香は覚束ない視線を泳がせた。ボーっとする頭が次第にはっきりしてくると、激痛が脳天を突いた。

 

「気がついたか?」

 

正面を向くと、1人の男性が自分の手当てをしていた。見ると左上腕に添え木の上から包帯が巻かれ、額にはガーゼのようなものを当てられている。

 

「あ、あなたは・・・っぐッ!」

 

一気に血が喉に上がってきたかと思うと、口から流れ出した。

 

「おう、あんまりしゃべらない方が良いぞ。少なくとも破裂はしてないはずだが、内臓に損傷があるかもしれない」

 

激しく痛む胸を押さえながら、榛香は焦げ付くようなにおいの先を向いた。

 

搭乗していたハマーは全損こそ避けられたが、激しく黒煙を上げている。それにしてもどうやって、この男性は自分のことを助け出したのだろうか。

 

「ちょ、どうやってあたしをコクピットから?」

 

多少血を交えながら、訊いた。

 

「んん。オレ、オーストラリアから来たんだけど、そこで学んだんだ」

 

「それって、あなたもしかしてUMAオーストラリアの・・・?」

 

激しく咳きこみ、胸に激痛が走る。痛みは胸を覆うように、首筋まで連なった。

 

「こりゃ肋骨も折れたか?いまから触診っていって、胸を触るからな。どうか許してくれ。ひっぱたくなよ?」

 

男は慣れた手つきで、榛香の胸に掌を当て、やや強めに押し込んだ。鈍い呻き声を上げ、榛香は身をすくめた。

 

「ごめん。悪かった。肋骨もヒビ入ってるな」

 

男はジャケットを脱ぎ、枕にして榛香の頭に当てた。

 

「おーい!」

 

少し先に着陸したハマーから、陽次朗と護が駆けてきた。

 

「榛香、大丈夫か!?」

 

「榛香さん!?」

 

慌てて駆け寄る二人を、男は制した。

 

「左上腕部の骨折、右足首強打による内出血、内臓・肋骨に損傷あり。安静を維持だ」

 

冷静に告げる男に、陽次朗と護は怪訝な目を向けた。

 

「あんた、医者か?」

 

詰め寄る陽次朗に、男はポケットから身分証明書のようなカードを出して見せた。

 

「三堂剣太郎。オーストラリアで医師のライセンスを取得してる」

 

得心がいったように頷くと、陽次朗は即席の担架を拡げ、護と二人で榛香を担ぎ上げた。

 

「っうっ・・・!」

 

低く唸り声を上げる榛香に、思わず手を止めた。

 

「姿勢を極力変えず、ゆっくり降ろすんだ。拘束用テープは?」

 

剣太郎に訊かれ、「担架わきに付いてます」と護は答えた。

 

剣太郎はテキパキと拘束テープで榛香の身体を固定させる。UMA隊員は最低限度の医療行為も訓練するが、本職にはやはり及ばなかった。

 

「これで良し。できることは施したが、あくまで応急処置だ。すぐ病院へ」

 

「おお、すまん。あんたも早く避難しろ」

 

陽次朗は護と担架を持ち、護のハマーに向かった。

 

二人が見えなくなったところで、剣太郎は周囲を見回す。

 

自分以外、誰もいない。

 

少し先では、相変わらず三匹の怪獣が争い続けている。

 

剣太郎は胸元から三角形のペンダント、デルタプラズマーを取り出し、軽く握った。

 

紫色に光を発すると、剣太郎は目を閉じた。すうっ、っと意識が光の中へ吸い込まれ、光が弾き出されるように発せられた。

 

三匹の怪獣の前に、すっと立ち上がった。

 

担架の上の榛香も、担架を持つ陽次朗と護も、そしてハマーで陽動を続けるスキョンも、そして埋立地から逃れる人々、テレビで様子を見守る人々も、目にした全員が息を呑んだ。

 

「ウルトラマン・・・!」

 

護が驚愕と歓喜の表情を浮かべた。

 

「なんで、今頃・・・!」

 

コクピットのスキョンは、悔しげに言い放つ。

 

モニター越しに見ていた冴島は、表情を変えることなく、30年ぶりに姿を現した銀色の巨人を凝視していた。

 

 

 

 

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