Ultraman G ーto come again ー 作:マイケル社長
「デュア!」
ウルトラマングレートは掛け声を上げると、突然の闖入者に向かってきたアーストロンをチョップで薙ぎ倒し、ザザーンと取っ組み合いになった。
ヘドロの藻で覆われた巨体に、グレートは立て続けにチョップとパンチを繰り出す。
ザザーンの腕がグレートの頭を包み、強烈な腐臭で窒息させようとしてきた。
右手を突き出し、正拳突きをザザーンの胴に叩き込んだ。巨体が吹き飛ばされ、炎上するコンビナートに倒れるザザーン。
背後から角を振り下ろしてきたアーストロンに足払いをかけ、尻尾を持ち上げて振り回した。埋立地を外れ、東京湾に落ちるアーストロン。
突進してきたタッコングを両手で押さえ、勢いを削ぐ。
だがタッコングの重量を含めた突進には馬力があり、グレートでも押されてしまう。踏ん張る足が引き摺られ、防波堤に食い込んだ。
止む無く、密着状態で両手にエネルギーを送り込む。青白く光がほとばしり、タッコングは大きく仰け反った。両拳から放たれるエネルギー光線・ナックルシューターのゼロ距離射撃であった。
反撃に転じたタッコングの火炎を避け、グレートは側面から蹴り上げた。体型的に有効打とはなり得ず、再度タッコングの突進攻撃を喰らってしまった。
態勢を整う遑もなく、グレートの背中にアーストロンが自慢の角を突き立ててきた。
前のめりに足をもつれさせ、グレートは振り返った。
アーストロンは口から熱線を吐き出し、グレートの腹部を狙いすました。
すかさず三角形のバリア、トライアングルシールドを展開させ、熱線を分散させて防いだ。
自慢の攻撃が防がれたことに憤慨したのか、アーストロンは吼えながら向かってきた。突き立てた角を持ち、勢いを削ぐ。グレートは両手に力を込め、角を折らんとした。頭頂部に異変を感じたアーストロンがもがき、倉庫街の瓦礫を踏み崩していく。
そのとき、グレートは背後に仰け反った。タッコングがグレートの左足に噛み付いたのだ。
タッコングの歯は鋼鉄製の石油パイプラインを噛み砕くほど強く、そして鋭い。硬質なグレートの皮膚にも難なく食い込んだ。
形勢を見極めたアーストロンのパンチがグレートの左頬に炸裂した。苦しむグレートに、続けて角を振り下げる。
火花が散り、グレートは勢い良く倉庫街に雪崩れた。
『スキョン、ウルトラマンを援護するんだ』
しばし静観していた冴島たちだったが、インカム越しに冴島が指示してきた。
「えっ?でも・・・」
当惑するスキョンに『少なくともウルトラマンは怪獣たちに立ち向かっている。我々の敵ではないはずだ』と語りかけた。
「くっ・・・」
スキョンは唇を噛んだが、隊長である冴島の指示であれば仕方がない。ハマーを旋回させ、倒れたグレートを踏みつけるアーストロンにレーザーパルスで攻撃を仕掛けた。
「怪獣がいなけりゃ、あんたなんか・・・!」
瓦礫の中で起き上がろうとするグレートに敵意を剥き出しにしつつ、スキョンはタッコングへ攻撃照準を切り替えた。
フラつきながらも立ち上がったグレートに、濃緑のガスが降りかかった。ザザーンの毒霧攻撃だった。
「グヘァッ!」
苦しげに右手を突き出し、左手で首を覆う。ザザーンは毒霧を吐き続け、後ずさるグレートを追う。グレートの胸にあるカラータイマーが点滅を始めた。
大気汚染の激しい地球では、ウルトラマングレートはその巨体を3分間しか保つことができない。
苦しむグレートに、タッコングとアーストロンはそれぞれ火炎、熱線を浴びせた。たまらず、東京湾に転がり落ちるグレート。
海面をうかがうアーストロンとタッコングに、ザザーンの狙いを外した毒霧が降りかかる。怒った2匹が向き直り、ザザーンに襲いかかる。スキョンは3匹が固まったのを見逃さず、ホバー状態で旋回しながらレーザーパルスを放っていく。
1号埋立地の対岸、新木場に上がり込んだグレートは、大きく呼吸をしてダメージを軽減させた。
3匹が三つ巴の争いを始め、完全に注意が削がれたのが確認できた。
「デアァッ!」
勢いをつけてジャンプし、両膝を折る。膝を立て、その勢いのまま3匹に飛び込んだ。
アーストロンとザザーンに飛び膝蹴りが叩き込まれ、跳ね飛ばされるように炎上する倉庫街に突っ込んだ。
いきなり戻ってきたグレートに驚くタッコングの顔面に、強烈な踵落としをお見舞いする。
タッコングの顔が地面に食い込んだ。怒りの咆哮を上げ、タッコングは火炎を放つ。
だがグレートは火炎を両手で受け止め、炎を凝縮し始めた。じわじわと炎の塊が出来上がっていき、弾き返すようにグレートは炎を放った。相手の攻撃を数倍に増幅させて撃ち返す、マグナムシュートだ。
危険を察知して転がり避けたタッコングだったが、猛烈な火炎は立ち上がったザザーンに命中した。
一気にザザーンの全身が燃え上がり、やがて炭化しながら崩れ落ちていった。
あまりの出来事に怯え、海へ逃げようとするタッコングに、グレートは両手を向けた。左手をいっぱいに伸ばし、右手を弓を引くように下げる。刹那、突き出した右手から光弾が放たれた。貫通力に優れるアロービームだ。
光の白刃はタッコングの巨体を貫いた。ポッカリ空いた傷口から爆発が広がり、タッコングは粉々に砕け散った。
残ったアーストロンは、逃げることもなく憤然とグレートに向かってきた。角を回避し、振り向きざまにまわし蹴りでアーストロンを蹴り飛ばす。
その隙に、グレートは両手を突き出して握りしめた。両手の拳に放電がつんざき、縦に開く。上下の手から光弾が走り、途中で合流するとアーストロンに命中した。
アーストロンの動きが止まり、全身に電気が走る。
さらにもう一度、グレートは同じ光弾を放った。異なる高出力の電磁波を光弾にし、激しい電離作用でどんな対象も破壊してしまう技、バーニングプラズマだ。
花火のような火の粉を撒き散らしながら、アーストロンは爆発した。破片の一片も残らなかった。
日本に初めて現れた3匹の怪獣を倒したグレートに、ある者は歓声をあげ、またある者は罵声をあげた。
「バカヤロー!なんでもっと早く来てくれなかったんだあ!?」
特に、日本以外で様子を見ていた人間たちは、圧倒的に後者の反応であった。
UMAでは、スキョンがホバー状態を維持しつつ、照準をグレートに合わせた。
無論、グレートには攻撃命令は出されていないが、スキョンはいつでも撃てるよう、憎しみを込めた眼差しでグレートを見やった。
「シュワッ!」
3匹の怪獣を倒したグレートは、暑い灰色の空に向かって飛んで行った。
〜翌日 東京都港区・山忠商事株式会社本社〜
【今回は本当にごめん】
スマホ画面に表示されたLINEに、美樹は手を止めて返信をする。
【別にいいよ。今回はお手並み拝見が目的だったから。東京襲撃はおまけでできちゃえばいいや程度だもん。ま、ウルトラマンが現れたのはまったくの想定外だったけどね】
すぐさま既読がつき、返信文が表示される。
【でも、3匹も用意したのに、悔しいよ、オレ】
【いいって。焦らずいこうよ。またチャンスはあるし。優希ちゃんが次、準備してるようだから、そっちに注目だね】
【ありがと。美樹は優しいね】
【仏の顔は3度まで、あたしの顔は2度までだからね、瑛太?】
驚愕に満ちたスタンプが返ってきて、美樹は微笑んだ。だが冗談ではなかった。
「西村くん」
上司である藤倉が、尖った口調で自分を呼んだ。昨日出張から帰ってから、いつにも増して機嫌が悪いのだ。
「仕事中にスマホなんかいじるんじゃない!」
「すみません」
美樹は下げた頭で、聞こえぬように舌打ちした。
〜石川県珠洲市・UMA日本支部〜
「全員に話がある」
冴島の号令で、陽次朗に護、スキョンの3人は司令室に集められた。陽次朗は面白くなさそうにミルクセーキを飲み、護は昨日現れたウルトラマンのニュース記事に夢中になっている。スキョンはまつ毛カーラーで、自慢のまつ毛の手入れをしていた。
司令室の扉が開いた。
「榛香」「「榛香さん」」
電動車椅子に乗った榛香が現れたのだ。
「おい、もう大丈夫なのか?」
「うん。最初の処置が適切だったらしくて、内臓の出血も治った。動かすと痛いけどね」
「そういえば、たまたまお医者さんがいたんですよね?」
スキョンが訊いた。
「そう。でも、どうやってあたしをハマーから降ろしたのか、わかんないんだ」
3人とも首を傾げた。ハマーのハッチを開けられるのは、UMAの訓練を受けた者だけのはずだった。
「あの医者、オーストラリアから来たって話してたんだけど、あんな隊員いたっけ?」
「オレのことか?」
扉が開くと同時に、噂の当人が冴島と共に現れた。
「あ!昨日の!」
護がメガネを正し、指差した。
「おう姉ちゃん、具合はどうだ?」
姉ちゃん、と呼ばれた榛香は、戸惑いつつも頷いた。
「みんなに紹介しよう。本日、日本支部に着任した、三堂剣太郎だ」
冴島の紹介に、全員が目を丸くした。
「三堂剣太郎、よろしくな」
「隊長、それって・・・」
「聞いてませんよ?」
陽次朗と榛香が、抗議するように言う。
「本当はもっと早く話すべきだったが、一昨日からの怪獣出現で後手になってしまったな。すまない、すまない」
「それにしたって・・・」
口を尖らせる榛香に、剣太郎は顔を近づけた。
「どれ、早速今日の診察だ。問診始めるぞ」
「え・・・えっ?」
戸惑う榛香を無視して、冴島は言った。
「みんな、三堂には隊内の医系主任として働いてもらう。無論、全体の仕事も満遍なくしてもらうがな」
決定事項だ、と言わんばかりに声を張る冴島に、ドヤ顔をする剣太郎に、4人は目を合わせた。
ー剣太郎、本当に大丈夫なのか?ー
精神の奥底から、グレートが話しかけてきた。
「大丈夫。なるようにするさ」
急に独り言を話す剣太郎に、さらに戸惑いの度合いが増した。