Ultraman G ーto come again ー   作:マイケル社長

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第2話 漂流 ーExileー II

〜石川県珠洲市 UMA日本支部 トレーニングルーム〜

 

 

 

 

 

 

投げられた陽次朗は、ゆっくりと立ち上がった。

 

周りの榛香、スキョン、護はただただ驚きの表情を浮かべた。

 

軍隊格闘技を完璧にマスターしている陽次朗が、ものの数秒で剣太郎に投げ飛ばされたのだ。それも、相手の手を掴んで一気に捩じ伏せる技を使おうとして、まさかの逆襲を喰らってしまった。

 

陽次朗は悔しげに剣太郎を睨みつけたが、当の本人はどこ吹く風とばかりに手をブラつかせていた。

 

半ば陽次朗の「新人かわいがり」行事となっている格闘訓練で、あっさり敗れ去るなど前代未聞であった。

 

息を切らせて座り込むと、陽次朗は榛香に視線を向けた。

 

榛香はジャケットを脱ぎ、臨戦態勢を取った。

 

「おう、次は姉ちゃんか。その様子だと怪我、すっかり良くなっただろ?」

 

ニコニコしながら、剣太郎も臨戦態勢になった。

 

「おい新入り、言っとくが女だからって榛香を甘く見るなよ?」

 

痛めた肩甲骨をさすりつつ、陽次朗が口を挟んだ。

 

「UMAでの格闘スコアは日本支部最強、全支部でも1、2を争うぞ?」

 

陽次朗の言葉に、偽りはなかった。陽次朗のように実戦での経験はないが、訓練では陽次朗ですら打ち負かすほど、榛香には天性の能力と実績があった。

 

榛香はキッと剣太郎を見据えた。どうにもつかみどころがなく、隙がありそうでなさそうだ。

 

それでも、榛香は思い切り踏み込み、剣太郎の胸元に拳を叩き込まんとした。

 

一気呵成。あまりの早さに、陽次朗を始めとするケンカ慣れした相手でもかわすことが難しい正拳突きだった。

 

だが榛香は思いがけず、勢いが止まった。剣太郎は手のひらで、完全に榛香の拳を受け止めていたのだ。じゃんけんでグーがパーに勝てない、とはこのことか。

 

一瞬ギョッとしたが、すかさず左手で剣太郎の頰目掛けて拳を振るった。

 

パン!と乾いた音がした。榛香の拳がクリーンヒットしたわけではなかった。剣太郎に苦もなく弾かれ、それどころか剣太郎の手刀が、いつのまにか榛香の首筋に当てられていた。

 

榛香は固唾を呑んだ。手刀は榛香の皮膚ほんの少し手前で停止していた。剣太郎は口許に微笑みを湛えているが、榛香は一瞬、強い殺気を感じていた。剣太郎がその気であれば、間違いなく自身の首は弾き飛ばされていただろう。

 

「もういい。やめようぜ」

 

手刀を引っ込めると、剣太郎は振り向いてペットボトルの水を飲み干した。

 

「え・・・ちょっと、まだ訓練終わってないでしょ!」

 

詰め寄る榛香に、剣太郎は向き直った。

 

「いや、やめる。何度やっても一緒だ」

 

榛香は一気に脳天が沸騰したのがわかった。

 

「一緒じゃない!次は絶対に・・・」

 

目にも留まらぬ速さで、剣太郎は榛香の眼前に人差し指を突き出した。

 

「やらない理由はふたつ。ひとつは、いくら訓練でも女性をブン殴る趣味はオレに無い。もうひとつ。オレは、自分より弱い相手とは闘わない主義だ」

 

言うだけ言うと、剣太郎はさっさとジャケットを着て、「腹減った」とぼやきながらトレーニングルームを出て行った。

 

「おい貴様!まだ訓練は終わってないんだぞ!」

 

陽次朗の怒鳴り声も意に介さず、口笛を吹きながら廊下の先へ歩いていく剣太郎。

 

「まったくあの野郎、上官の言うことが・・・・!」

 

不遜な剣太郎への怒りに同意を求めるべく榛香を見遣った陽次朗は、二の句が継げなかった。歯を食いしばり、わなわなと震える榛香の表情には、どの言葉も投げ掛けられなかったのだ。

 

背後のデスクに座る冴島は、目を閉じて軽く微笑んだ。

 

「少し早いが、みんなも休憩するか」

 

「隊長!」

 

困惑気味に強い語調の陽次朗に頷きこそしたものの、言ったことは言ったことだ、と無言で伝えた。

 

 

 

 

 

「いやあ、剣太郎さんてすごいですね!」

 

「ホント、めっちゃ強いんですね☆」

 

一緒に食うかと誘われた護とスキョンは、誘われるがままにカフェテリアで剣太郎と同じ席に着いた。

 

「どこであんなに鍛えたんですか?」

 

護の質問に、「ん。まあ、長いこと地下格闘技に出ててな」と答える剣太郎。

 

「えー!ガチでリアルファイトだったんですねぇ!」

 

「おいおい、そんな大袈裟な。ま、生きるか死ぬか、闘わなければ生き残れない世界だったもんでな。そうそう、オレ年上かもしんないけど、敬語なんて使わなくていいぞ。さん付けもすんなって、なんか照れ臭い」

 

「えー、じゃあ、剣ちゃん!」

 

「それがいい!ざっくばらんにいこうか」

 

盛り上がる3人を、やや離れた席で忌々しげに見つめる陽次朗と、黙ってコーヒーをすする冴島がいた。

 

「隊長、あんな礼儀知らずで得体の知れない男を、どうして日本支部に引っ張ってきたんですか?」

 

アップルジュースを怒り任せに飲み干して、陽次朗は訊いた。

 

「なんだ、不満か?」

 

陽次朗の質問には答えず、冴島は逆に訊いた。

 

「ええ。あれほど不遜な野郎な上に、オーストラリア支部で訓練課程に入る前の経歴がまったく不明ときてる。そんな男が、よくもUMAの試験パスしましたね。しかもあいつ、さっき地下格闘技やってたとか話しましたね?」

 

「らしいな」

 

「地下格闘技は、非合法組織の収益源です。犯罪の片棒を担ぐようなものだ。そんなことをしていた奴が、UMAに所属するのはUMA憲章に抵触するのでは?」

 

ここで冴島は、ようやく陽次朗に視線を向けた。

 

「UMA憲章には、在職中の犯罪行為に関する罰則規定があるのみだ。当然入隊前の経歴審査は厳格だがな。ま、オーストラリア支部が入隊を許可したのなら、こちらとしてはとやかく言うこともあるまい。それに、人はそれぞれ、後ろめたい過去があるものだ。陽次朗、君もそうじゃないのかね?」

 

いつもの微笑みを打ち消し、冴島はじっと陽次朗の目を見つめた。後ろめたい過去、という言葉に、陽次朗は明らかに動揺していた。

 

「ところで、榛香の姿が見えないが?」

 

「それが、休憩誘ったんですが、自室へ戻りました。あいつに打ち負かされたことに、かなりショックを受けてたようです」

 

「ふむ。彼女が落ち込むとはな」

 

そう言ってコーヒーに口をつける冴島に、陽次朗は気色ばんだ。

 

「隊長、やはり自分は、あの男を仲間に加えることに異議があります。あいつが来て、隊の規律が緩んでますし、みんなひっかき回されている。榛香など特に・・・」

 

ちょうどそのとき、隊員招集を告げるアラームが鳴った。

 

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