お昼休みのことだった。
「吉崎はいるか?」
生徒指導の教師が教室に入ってきた。
「なんでしょうか?」
「吉崎、ちょっと来い」
聡美は生徒指導の教師に空き教室へ連れ込まれる。
「お前、他の生徒を殴ったってのは本当か?」
「ええ。でもそれはいじめをやめさせようと思って」
「いじめ?」
「ええ。いじめられてる生徒がいたので。その子、自殺しようとしてたから」
「お前が一方的に暴力を振るったわけではないのか?」
「はい」
「……そうか」
生徒指導の教師は去っていった。
聡美は教室に戻った。
「先生、なんだって?」
翔一が訊ねる。
「なんでもないわ」
「そっか」
「鹿島くん、食堂行こう?」
「あ……俺、今日は弁当なんだ」
「そう」
聡美は食堂へと向かう。
「吉崎さん」
その声に振り返ると、先ほど殴り飛ばした女子生徒がいた。
「あら、まだ殴られ足りない?」
「いや、そうじゃなくて……」
「じゃあなに?」
「私をあなたの舎弟にして下さい」
「え?」
戸惑う聡美。
「舎弟も弟子もいらないんだけど……」
「じゃあ勝手になりますんで。ところで、どちらへ行かれるんですか?」
「人の話聞いてる? 食堂だけど」
「私もお供します。あ、私、
「……………………」
聡美は無言を回答に食堂へ向かう。
後ろを追いかける美穂。
食堂に着き、食券を買う聡美。
「おごりますよ」
「いや、いいよ」
美穂が半ば強引に聡美の買った食券の代金を押し付けてきた。
(めんどくさ)
聡美はお金を受け取った。
「私は……」
美穂が食券を選ぶ。
「これにしよう」
美穂も食券を買った。
聡美と美穂が窓口で食券を渡し、品を受け取って席に着いた。
「吉崎さん、さっき浮いてたけど、手品できるんですか?」
「クリ……」
クリプトン人、そう言いかけて、やめた。
「できるよ」
「一体どうやったんですか?」
「それは教えない」
「企業秘密ってやつですね」
聡美は持ってきたご飯を食べる。
食事を終え、食器を返却口へ持っていく。
「はー、食べた食べた」
聡美はそう言って教室に戻る。
「待って下さいよ」
ご飯を平らげた美穂が慌てて追いかけてくる。
「美穂、あんた教室は?」
「一年のB組ですけど」
聡美は頭を抱える。
同じクラスだった。
……。
…………。
………………。
放課後、聡美と美穂が帰り道を歩いている、
「美穂ってこっちなの?」
「はい」
そこへ、ガラの悪い隣町の女子高生が現れる。
「桜井!」
「げ、吉田!?」
「昨日はよくもうちの子分を可愛がってくれたね!」
聡美は美穂に訊いた。
「美穂、あんたなにしたの?」
「ちょっと喧嘩を……」
面倒なことに巻き込まれた、内心そう思う聡美である。
「隣のやつは?」
「うちのクラスの女番長だよ」
「はあ!? 何言ってんの美穂!?」
「へえ。そうなんだ」
他校の女子生徒が竹刀を手に、聡美に襲いかかる。
「だったら狩ってやるよ!」
聡美の肩に叩きつけた竹刀がボキッと折れた。
「う、嘘……だろ……?」
聡美は女子生徒をデコピンで吹っ飛ばした。
「うわああああ!」
軽く数十メートルは飛んで行ったか。
「すごいですね、吉崎さん」
「行くよ」
聡美は歩き出した。
「待って下さいよ」
美穂が追いかける。
「美穂、あんたこういうことはやめな。いつか怪我するよ?」
「はい、もうしません」