朝、聡美は目を開ける。
起き上がると違和感を覚えた。
その違和感はすぐにわかった。
鏡に、翔一の姿が映っているのだ。
(えっと、これは……?)
戸惑う聡美。
部屋で携帯が鳴る。
応答すると、自分の声が聞こえてきた。
「俺だ! 翔一だ!」
「鹿島くんなの!? これって一体?」
「俺にもわからないよ。なんで俺が吉崎さんの体になってるの?」
(落ち着け聡美。昨日のことを思い出してみるのよ)
それは、放課後のこと。
聡美と翔一が階段を降りていると、彼女が足を踏み外し、彼が咄嗟に捕まえるも虚しく、一緒に転げ落ちた。
意識を失った二人が、保健室に運ばれ、目が覚めたら、二人の体が入れ替わっていたのだ。
最初は夢だと思いつつ、そのまま家に帰り、お互い寝たら覚めるだろうと甘い考えをしていた。
しかし、たった今その現実を突きつけられたのである。
(ああ、そうだった)
「鹿島くん、昨日、階段から転げ落ちたのが原因よ」
「そんな……」
「とりあえず、学校に行きましょう」
聡美と翔一はそれぞれ準備をして登校するのだが。
「鹿島くん、もちろん見てないよね?」
「何を?」
「それを私に言わせるの?」
聡美は頬を赤らめる。実際は翔一の顔だが。
「見てないよ。あんなことの後だから、昨日のままだし」
「私も昨日はそのままだったわ」
「それにしても吉崎さんの体って頑丈だね」
「太陽からスーパーパワーをもらってるからね」
「でも俺にはこの体を使いこなすのは無理かも」
「早い所戻らないとね」
学校に着く二人。
「折角だし、やってみようか?」
階段に差し掛かったところで聡美が訊ねる。
「いやだよ、痛いし」
「クリプトン人だから痛くないわ」
「そうなの? でも君が痛いと思うよ?」
「いいわ。やってみましょう?」
聡美と翔一は階段を登り、一緒に転げ落ちた。
しかし、聡美は痛みを感じるだけだった。
「ほんとだ、痛くない」
と、翔一。
「あの時と条件が違うのかしら?」
聡美は昨日のことを思い出そうとするが、しかし、咄嗟のことで記憶に残っていなかった。
その後、何度か一緒に転げ落ちるが、やはり元に戻ってはいなかった。
教室に行き、授業を受け、放課後を迎える。
下校した二人は、D.E.O日本支部へ。
「なに? 体が入れ替わっただと?」
「うん。学校の階段から一緒に転げ落ちてね」
「精密検査をしてみよう」
支部長に連れられ、二人は検査室で検査をした。
どうやら、二人の精神が入れ替わっているらしいことがわかった。
また、支部長の知識で、このような業をなせるワイド星人という宇宙人が存在することもわかった。
「その宇宙人の居場所は?」
「長崎に調べてもらおう」
三人は司令室へ。
「長崎、ワイド星人の居場所を特定できないか?」
「やってみます」
長崎がモニターを見ながらキーボードをカタカタと叩き始める。
「見つけた!」
振り返る長崎。
「ワイド星人の特殊波形をサーチしたところ、宇宙人の溜まり場にいます」
「わかった」
三人は宇宙人の溜まり場に向かった。
「人間がなんの用だ?」
「ワイド星人に会いたい」
「俺がどうした?」
「君がワイド星人か。実はな……」
支部長が聡美と翔一の入れ替わりを説明した。
「……と言うわけで、元に戻したいんだ。君の力でできないか?」
「嫌だね。人間の頼みなんて聞きたくもない」
聡美はワイド星人を蹴った。
ワイド星人は尻餅をついた。
「おお、怖い。人間は思い通りにならないとすぐに暴力を振るうのか」
「片方はクリプトン人だぞ」
「クリプトン人だと? それならそうと早く言ってくれ。クリプトン人には借りがあるんでね」
ワイド星人は目を閉じながら念じた。
聡美と翔一が光に包まれ、お互いの精神が入れ替わる。
「も、戻った!」
「ごめん、蹴って」
「いや、いいよ。それじゃあな」
ワイド星人は三人の前から立ち去る。
三人はそれぞれの場所へ戻っていった。