「やあやあ将軍君、よく来たね。お姉さんは歓迎するよ」
材木座の依頼から一週間。彼のラノベへの感想会当日、雪ノ下陽乃は当然のように奉仕部に居た。雪ノ下は額を押さえ、由比ヶ浜は苦笑を漏らしている。
「なんでまた姉さんがいるのか、もう一々聞く気もないけれど――材木座君。あなたは部外者がいても構わないかしら」
「うむ、我は気にしない。それに陽乃氏ならまた褒めてくれるし……ふひっ」
材木座は気持ちの悪い笑いを漏らす。うむ、今日もこいつは平常運転だな。いつも通りの気持ち悪さだ。
「では。早速本題に入りましょうか」
雪ノ下は鞄から夥しい量の付箋の付いた原稿用紙の束を取り出し、机に置く。原稿用紙は1ページ目から赤ペンで真っ赤になっている。
それを見た瞬間、材木座の顔色が青くなったような気がした。ドスン、という原稿用紙が置かれる音とともに奉仕部室を静寂が満たす。
そして、雪乃下雪乃の第一声は。
「つまらなかった。読むのが苦痛ですらあったわ。想像を絶するつまらなさ。そもそも未完成の原稿を他人に読ませるなんて常識が無いの?せめて完成させてから他人に意見を求めなさい」
「ぐふっ」
1コンボ2コンボ3コンボ。雪ノ下の批評は的確に材木座のウィークポイントにクリティカルヒットし、由比ヶ浜が止めるまで続いた。それでも雪ノ下曰く、10分の1も批評は終わっていないらしい。流石に引く。俺でも引く。
次は、由比ヶ浜。彼女も頑張ってこの1週間読んだ跡は、原稿用紙の書き込みから窺える。それでも栞は3分の1程度の場所までで止まっていたが。睡眠欲に忠実なガハマさんである。
「難しい漢字たくさん知ってるね!」
「ぐはっ」
「えぐいなお前……」
容赦ねぇ……ガハマさん容赦ねぇ……純粋さと言うのはかくも人を傷つけるものである。
「は、八幡んんんん。お前なら理解できるよなぁ?我の描いた世界の変遷を、前世からの付き合いのお前ならばわかるよな?な?」
期待の目が材木座から向けられる。ああ、当然だとも。俺は彼に対して力強く頷く。そのために雪ノ下陽乃に歯向かいすらしたのだ。安心しろ、材木座。
俺は材木座の肩を掴み、彼の目をまっすぐに見た。
「で、あれなんのパクリ?」
「ひでぶっ!」
彼の巨体ははじけ飛び、仰向けになる。ピク、ピクと時折痙攣したように動く体を雪ノ下と由比ヶ浜が及び腰で見下ろす。
「し、死んでる……」
いや、由比ヶ浜。それはここで言うセリフじゃないから。間違ってはないが。
「完成させて来い、といったな」
「ええ、最低限ね」
結局材木座は部活終了ギリギリまで立ち直ることは無かった。雪ノ下と由比ヶ浜がいつものように部室の鍵を返しに行こうとする直前、彼はおもむろに立ち上がり、雪ノ下に言い放った。
「我の新作が完成した暁には、また読んで感想を貰ってもいいだろうか」
シン。奉仕部室に静寂が満ちる。またもや雪ノ下と由比ヶ浜は材木座に対して体を引く。
「あなた、被虐嗜好でもあるのかしら」
「ドМ……」
「パクリはやめとけよ。重要なのはイラストだからな」
「ぐ、ぐすん……」
ドン引きの女子二人の言葉に、材木座は本気で涙を流す。やめろ、だから捨てられた犬みたいにこっちを見るな。大丈夫、マジで一番大切なのはイラストだから!
雪ノ下は終始情けない材木座に、呆れたようにため息を吐く。
「まあ、最低限完成したらいつでも来ればいいわ――完成前の駄文は、そこの男にでも読ませておきなさい」
「う、うむ!八幡、よろしくな!」
俺はよろしく了承した覚えはねえぞおい。
しかしまあ。縋るように俺を見る材木座を仕方なく受け入れる。俯いたままの雪ノ下陽乃を見て、思う。
雪ノ下陽乃に勝った対価としては、安すぎるくらいだろう。
「ねね、材木座君。君はまだ彼らに、君の小説を読んで貰いたいの?」
部活の時間が終わり、校門から少し離れた場所。部室の鍵を返しに行く雪ノ下と由比ヶ浜より一足先に材木座、俺、陽乃さんの3人は帰路についた。
材木座と別れる直前。陽乃さんの質問に、彼は鷹揚に頷く。
「うむ。世の中には彼奴らのように酷評だけする人間もいるだろう。そのような意見を知ってこそ我は更なる高みへと――」「おかしくない、それ?」
その問いに、あくまで設定通りのキャラだった材木座はピタリとその動きを止め、陽乃さんは髪をかき上げる。
「あー、めんどくさい。比企谷くんの友達ならいいよね、別に」
俺は彼女を止める気はなかった。ここからは答え合わせの時間だ。彼女の好きにすればいい。
何も言わない俺、戸惑う材木座をよそに、雪ノ下陽乃は仮面を1枚剥ぐ。
「君の文章は、つまらなかった」
「……へ?」
皮肉にも陽乃さんの第一声の感想は、雪ノ下と同じだった。材木座の間抜けな疑問符を無視し、彼女は淡々と続ける。
「細かい所がどうとかいう問題じゃない。君の目標が『本を出すこと』か『アニメ化すること』か知らないけど、もしそうなら努力も想像力も見通しも全てが甘い。大勢に伝え、共感させる文章じゃない。この文章は君にしか理解できない」
「は、陽乃氏?どうしたのだ?」
ハ○太郎のような声を出す材木座をまた無視し、雪ノ下陽乃の言葉は止まらない
「でも君はこれを他人に読ませようとするし、労力も覚悟も足りないのに酷評を求める。お姉さんにはそれはひどく矛盾した行動だと思うんだけどさ」
材木座に合っていなかった陽乃さんの焦点が、初めて彼に向けられる。
「承認欲求の充足。目的への努力。ただの自己満足。君は何を求めてあの部活に来たんだろう。よかったら教えてくれないかな」
1週間前とは豹変した彼女に、材木座は戸惑いの声しか洩らせない。
「な、なんかおかしいぞ?先週まではもっと――」
「材木座君。私、物わかりの悪い子は嫌いだよ?」
「ひっ、ひぃ!?だ、だからだな、えっと……」
材木座は本気で助けを求めるように、涙目で俺を見るが、それには首を振ることしかできない。
「大人しく答えたほうが身のためだ。この人はその辺のヤンキーの100倍質が悪い」
茶化すような俺の言葉に、陽乃さんからの茶々は入らない。彼女は今、材木座だけを見ている。自分の理解の外にいる生き物を解ろうとしている。
その彼女の視線に息をのみ、材木座は震える声で何とか切り出す。
「は、陽乃氏。貴殿が何を我から聞きたいか、その真意ははっきりとは分からぬ。分らぬが――意見を貰いたい理由、か」
材木座は腕組みし、しばしの間思案する。陽乃さんは珍しいことに何も言葉を発さず、静かにそれを待つ。
チラホラ運動部も部活を終え始めた頃、材木座は重々しく口を開いた。
「例えば我は今まで書いた小説で、肯定的な感想をもらったことがない。先日八幡が言ったように、それを気にしないわけでもない。どうせ書くなら褒められたいのは人情であろう?」
それは陽乃さんの理解の範疇だ。自己顕示欲と、承認欲求の充足。彼女はコクリと頷き、材木座は少し安堵の吐息を漏らす。
「だが我は結局文章を書くことをやめられなかった。褒められたいし、人気になりたいし、声優さんとも結婚したい。……そういう面では、貴殿の言うことはすべて合っている」
材木座の視線が地面に落ちる。彼は自分の生み出すものが他者に受け入れられないのを知っている。的外れであることを知っている。
「だが」
それでも、止められない。俺と彼の否定が重なる。
中二病とは、何かを創ることとは。無駄と矛盾の塊なのだ。
「だがそれ以上に、好きで書いた文章に反応があること自体、我にとって愉快だった。だからどれだけ酷評されようと、聞きたくもない正論を並べ立てられようと――また彼らに読んでもらいたい。面と向かって生の人間に感想を貰えるのは、とても嬉しかったから……のだと、思います……はい……はっきり答えられなくてすみません……」
途中まで格好がついていた彼の言葉は、最後には陽乃さんの射抜くような視線を意識したのか、途端に失速する。その情けない姿に、思わずずっこける。中二病なら最後まで格好くらいつけなさい。
黙って材木座の話を聞いていた陽乃さんは、彼の目を見たまま問い直す。
「……じゃあ他人の感想じゃなく、君にとって。君にとってはその自分の小説、どれくらい面白い?」
「う、うーむ……?」
唐突な問いに、材木座は首をひねる。パラパラと自分の原稿を見直し、唸り、なぜかスマホをいじりだし、ようやく陽乃さんに向き直る。
「少なくともこれ以上に面白いラノベを、我は読んだことはないな」
「そっか」
どこまで矛盾してるの、君。
どれだけ酷評されようと自らの作品こそ最も面白いと言い切り、それでも他者に感想を求める。理解できない不合理を前に、雪ノ下陽乃は力なく微笑んだ。
「そう思えるのは羨ましいよ、本当に」
これからも頑張りなさい。彼女はそう言い残し、ポケットから取り出したusbを材木座に押し付けた。
中二病は、主観の究極だ。
自分の視点でのみ世界は構成されており、そこに他者の思惑や常識は介在しない。自らの設定で自らの世界に身を置き、満足する。
だがそれはイコール、他者からの評価を気にしないわけではない。最初から矛盾しているのだ。材木座は独りよがりの文章を書き、それでも作家になりたくて、酷評でも他者の感想が欲しい。本気でそう思っている。そこに合理性は存在しない。
片や雪ノ下陽乃。彼女は、客観の究極だ。
いつでも周りを、己を俯瞰的に眺めることが染みついている。客観的であろうと常に自らに言い聞かせている。
だから自らを凡人と称し、才能を具体的に列挙し、できることとできないことを理解する。それは他者に対しても同じだ。彼女は過大評価も過小評価もしない。目標を設定したらそこに至るまでの最適な道筋を選び、達成する。そこに主観の入る余地はない。
彼女はそうやってこれまで生きてきた。いや――生きるしかなかった。俺はそれを知ってる。
先日の俺の問いに、彼女は短く答えた。
『自らを特別だと信じたことはあるか』
『そんな無駄なことをする時間は、20年なかった』
ああ、そうか。それを聞いた時、俺は初めてこの人に心底同情し、憐れみ――彼女の境遇に、なぜか筋違いの怒りを覚えずにはいられなかった。
それこそ凡人たる雪ノ下陽乃の、最大の不幸ではないか。
「そういえば」
無言で前を歩く陽乃さんの背中に問いかける。
「結局何だったんですか、材木座に渡したあのusbは」
「ああ、アレ」
彼女はつまらなそうに爪をいじり、その磨き具合を確認する。
「ここ1年でネット小説で書籍化した作品の文字数、読者層、更新頻度、文章の傾向と、具体的にどんな作品が売れるかの素案」
……それはそれは。どうやらまだ俺は彼女の化け物ぶりを過小評価していたらしい。
「あの、材木座が来てからまだ一週間しか経ってませんけど」
「比企谷君。人間、24時間程度あれば大抵のことはできるもんだよ。やろうと思わなきゃ例え一週間だって、一時間の価値すらない」
このように努力を努力と思わない。それが彼女の化物たる所以なのだが。微妙に話がかみ合っていないことを感じつつ、俺はガシガシと頭をかく。
「なぜそんなもんを、あいつに」
「私の定義で将軍君を決めつけたからね。あれは一応用意してた、将軍君と君へのお詫びの気持ちだよ」
「俺への、ですか」
「うん。普段自分のために拘らない君が、珍しく拘ってきたんだもの。そのくらいわかるよ」
つまらなそうに爪を見つめていた彼女は、一転俺の目をのぞき込む。
「君だって、将軍君を応援してるんでしょう?」
飲み込まれるような昏い瞳から目を逸らし、俺は吐き捨てる。
「……どう考えても文章書くのは向いてないと思いますけどね。声優と結婚したいなら、それこそ声優でも目指したほうがまだ目がある」
「アハハ、そりゃ違いない!将軍君ならそっちのが才能あるし、声優さんとも結婚しやすいだろうしね」
ま、とにかく。ひとしきり笑った彼女は、両腕を大きく広げる。
「この世には、私の理解の及ばない変人もいるってわけだ!君や将軍君のように」
「現中二病患者と元を一緒にしないでもらえますかね」
俺の返答に彼女は肩をすくめ、僅かに視線を落とす。
なら、雪乃ちゃんも。
そんなつぶやきが聞こえた気がした。
それを聞こえないふりをして、俺はおどける。
「ま、そうですね。あんたにもわからんことがあるとわかって、本当に良かったです」
「あ、ひどーい。そりゃお姉さんだって何でも知ってるわけじゃないよ」
「そうですね。何でもではなく、知ってることだけでしたね」
「……?まあそうだけど……」
この手のネタが彼女に通じないのは当然として。俺の戯言に疑問符を浮かべる彼女に問う。
「ついでにもう一ついいですか、陽乃さん」
「ん?いいよ。答えるかはわかんないけど」
別に答えてもらわなくてもいい。材木座は雪ノ下陽乃の理解とは外れていて、彼女はそれを読み違え、俺が勝った。結果は既に出ている。答え合わせも済んだ。
だが、何かがおかしい。喉の奥に残った僅かな小骨のような違和感がある。雪ノ下陽乃の思惑も材木座の思考も、凡そ俺の理解からは外れていなかった。だが一つ、決定的におかしいことがある。
違和感に気づいてしまったからには、聞かずにはいられなかった。
「材木座にあのusb渡した
間が空いたのは一瞬だった。
彼女はパチパチと瞬きをし、可愛らしく首を傾げる。
「なんでそう思うのかな?」
一瞬答えに詰まる。これは彼女の一週間の時間も労力も否定する言葉だ。本当にあのusbが詫びの気持ちなら、俺は随分と無礼なことを言おうとしている。
しかし、これは勝負だ。俺は1週間前の会話を思い出す。彼女を少しだけ知った今なら、これくらいは許されないだろうか。
結局俺は、次の言葉を止めることができない。
「――あのusbは、無駄でしょう」
どうやらそれだけで伝わったらしい。幸か不幸か彼女は気を悪くする訳でもなく、うんうんと幾度か頷く。
「うん、そっだね。将軍君は目的のために手段を講じてるわけじゃない。手段そのものが目的になっている。彼は何より、自己満足のために創作をする。それならあんなものいくらあってもただのゴミだ。何より――」
「――何よりあんたは、無駄なことはしない」
先日の言葉を反芻する。陽乃さんは出来の良い生徒を前にするように、満足げに頷く。
仮に彼女にとってあのusbが詫びの気持ちでも、材木座にとってはただのusbならば、そこには自己満足以上の意味はない。
そして俺の知る限り、雪ノ下陽乃は自己満足とは最も遠い位置にいる――そうだ。俺は一貫して雪ノ下陽乃という人間を信用している。だからあのusbだけがおかしいのだ。
雪ノ下陽乃のあらゆる言動には、意味が無くてはならない。
「ていうかさ」
彼女は半笑いで、俯く俺の目を覗く。
「得意のわかんないフリ、もうやめたの?」
「……」
何も答えられなかった。踏み込まず、首を突っ込まず、理解しない。そんなことを彼女と1年も続けてきたのは俺の方だ。
何より俺自身、なぜ自分がそんなことをするのかわからない。だから彼女に返す言葉はない。
「ま、いいや」
黙る俺に彼女は小さくため息を吐き、大仰に声を上げる。
「ああ!そこまで分かるならもう少し想像してみて、比企谷君。君は私に言ったよね。将軍君は自己顕示欲を満たしたいだけでも、作家を目指すだけでもないと」
「……まあそうなりますかね」
先日の俺の言葉を抽出するなら、確かにそうなる。彼女は俺の肯定を受け、悪戯っぽく笑う。
「そんな彼が万が一私の素案の通りに小説を書いて、作家になっちゃったらどうなるか」
しばし、その未来を想像してしまった。結果。
「君にとって、それ以上の皮肉はないでしょう?」
――最悪だった。
のぞき込む瞳から自然と目を外す。だが、それは。それでは俺と彼女の『勝負』は、それこそ材木座が作家になるまでつかない。それまで答え合わせができない。自然と抗議の言葉が口をついて出る。
「なんかずるくないですかね、それ」
「女の子はずるいものだよ、比企谷君」
彼女は指揮者よろしくくるくると指を振り、俺を背にして言う。
「私は、負けのある勝負はしない。そのための下準備を努力と言うの――そもそも雪乃ちゃんも君も、真面目過ぎるんだよ。勝敗なんて究極的には二分の一でしかない。どんな天才だって神様だって、二分の一でしか勝てないのは当たり前じゃない?」
You understand?
先日と同じ英文が繰り返される。俺は半ば照れ隠しに、そっぽを向いて吐き出すしかない。
「――戦いは始まる前に終わっている」
つまり俺は、勝ってなどいなかったのだ。最初から最後まで。
「That’s right!よくできました。天は二物どころか三でも四でも一人に与える。だから天才は確かに存在する――でも、勝敗に関してはいつだってどこまでも、凡人も天才も関係ない。自らの運命は、自らで切り開くものなのであーる!」
「うわうぜえ」
ここぞとばかりに回る口に、俺は思わず眉をしかめる。そんな俺を面白そうに彼女は眺め、思い出したように呟く。
「万が一将軍君が私の素案で小説家になったら、印税貰えるかな?ほら、ゴーストライターとかで脅迫して」
「悪魔じゃねえか」
なお悪魔のごとき思考を展開する彼女に、俺はホールドアップする。
雪ノ下陽乃は、自らを凡人と称す。更に病的なまでに天才を崇める。俺はそれに憤りを覚えた。認めたくなかった。
なぜなら俺にとって雪ノ下陽乃という存在は、何にも劣ることのない化物だったから。それは初めて会った病室から変わることは無い。
だから妹を天才と讃える彼女を許容できなかった。今回こんなことをしたのも、それが一番の要因だった気がする。
しかし。俺は今一度彼女の言葉を一つ一つ思い出し、拾い直す。
彼女はただの一言も、凡人は天才に勝てないとは言わなかった。自らが妹に劣るとは言わなかった。いつでも積み重ね続ける雪ノ下陽乃の労力は、時間は、準備は。天才も、神様ですら歯牙にもかけない。
俺も分かった気になっていたのだろうか。
ふと思い、呟く。
「あんたが印税を貰うなら、俺はあんたから材木座の紹介料貰えますかね」
「君も大概じゃない」
今度こそ呆れたように額を押さえる彼女を前に、俺は再認識し、胸を撫で下ろしていた。
やはり雪ノ下陽乃は、化物である。