結城友奈は勇者である~勇者と大神と妖怪絵巻~   作:バロックス(駄犬

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本篇とはあんま関係ないお話?
久しぶりの投稿なので、短めに二分割です。慣らし投稿だオラァ!


~大神と精霊と青い鳥~前編

 讃州中学の生徒は今日も元気にあふれていた。

 グランドでは体育の授業が行われているのか、活気のある生徒たちの声が空に響いている。

 

 

「勇者だーっしゅっ!」

「友奈ちゃん、頑張れー!」

 

 

 そこには勇者である結城友奈と東郷美森の姿がある。

 友奈は短距離走で駆け、ぶっちぎりのトップを走る彼女を美森が応援していた。

 

 

 

『ふーむなるほどなァ……』

 

 

 その讃州中学の屋上にて、

 意気揚々と生徒たちが体育の授業に励む光景を眺める者がいた。 

 天道太子ことイッスンである。

 

 

『この時代の女たちは運動するときって、あんなに薄着になるんだなァ……オイラ達の時代とは偉い違いだぜェ』

 

 

 そう語る彼の腕にあるのはイッスン程度の大きさのある望遠鏡である。

 レンズ越しに見えるのは讃州中学の体育服装の女子生徒たち。

 

 

 そもそも和服がほとんどであったナカツクニの人々と、この四国の人々の服が違う事には違和感はあったのだ。

 特に体育服装に関しては、あんなに肌を晒していて風邪をひかないのかと、一時はその時代の服装にモノ申そうと思ったほどである。

 

 

 しかしそれは大きな誤算だったと、イッスンは後に気付くことになる。

 

 

『だがしかしなんでェ……なかなか、ウム』

 

 

 少女たちが運動によって生じた汗が、陽の光によって輝きを放っている。

 一息つく間もなく、疲れた体に連動して方は激しく上下し、その表情からは荒い息遣いが聞こえてきそう。

 一言で表すならば、妖美、この時代で例えるならエロさを感じる、だろうか。

 

 

 その中でも、結城友奈の顔はハードな走りを終えた後だというのに底なしの体力を見せつけるかの如く、満面の笑みであった。

 彼女の笑顔は見ている者たちを元気づける力を持っている。

 徹夜漬けの疲れも吹き飛ぶような、そんな感じだ。

 

 

『昼間っからこんな光景を目に出来るなんてなァ、絵師としては最高の場所だぜェ。 

 アマ公、やっぱオイラこの世界に来て良かったって思っちまうなァ……お前もそう思わねェか?』

『クゥ……』

『なんでェ、昼寝してんのかィ。勿体ねぇなァ、こんなチャンスを見逃すなんてよォ……ま、犬には分らねぇか』

 

 

 イッスンの真横ではアマテラスが盛大な昼寝をしている。

 それ以前に、彼らがどうやってこの屋上までたどり着いたか、という疑問が生まれるがここでは割愛願いたい。

 

 

 だが一つ説明をするならば、現在のアマテラスの持つ力を持ってすれば讃州中学の屋上まで人に気付かず辿り着くなど造作もない、という事だろうか。

 筆しらべの数が増えるということは、アマテラスが本来の大神としての力を取り戻すということ。

 

 

 世を照らす神としての威厳を少しは取り戻しつつあるようだ……今の昼寝をしている姿で大分台無しになるのだが。

 

 

『さてさて、オイラはこのまま女の子たちの鑑賞……間違えた、観察を続けるとするかィ――――』

 

 

 そう言って、視線を女子生徒たちが走るグランドに映そうとした時だ。

 イッスンの頭が重みを感じた。

 さほど重くはないにしても、このままでは非常に見づらい上に何やら透明な液体が垂れてきている。それは涎のようなモノ。

 それを見て、イッスンは自身が『噛まれている』という事に気付いたのだった。

 

 

 上を見上げずとも、その正体を明かすのは簡単だ。

 

 

『牛鬼ィ……オメェかよォ、なんでこんなところにやって来たんだァ?』

 

  

 イッスンの頭上では彼の玉虫を模した笠に噛みついて、背中の羽をパタパタと動かしている牛鬼がいた。

 

 

『ははーん、さてはスマホから抜け出してきたなァ? あんなせまっ苦しい所に居たらそりゃタイクツかもしンねェけどよォ……

 だからってオイラと会うたびに食おうすんのは止めなってンだィ。 少しはジチョウしなよォ!』

『―――――』

 

 

 イッスンの言葉を聞いているのか、そして理解しているのか、そんなことをお構いなしに牛鬼は噛みついている笠から口を離そうとしない。

 むしろ更に食すようにもごもごと口を動かしてさえいた。

 

 

 友奈の精霊である牛鬼は他の精霊と違ってちょっとだけ特別である。

 

 

 こうやってスマホから勝手に飛び出したり、他の精霊を食べようとしたり、奔放な動きをするその様子は『まるで意志がそこにあるかのよう』だ。

 

 

 友奈の精霊だからなのか、それともそれ以外に要因があるのだろうか。

 こうして夏凜の精霊、義輝と共に齧られ役を担うことになってしまったイッスン。

 牛鬼に関しての謎は深まるばかりである。

 

 

 

『仕方ねェ、こうなりゃとっておきよ……ホレ、牛鬼』

『――――!!!』

 

 

 イッスンが右手に持つソレを見て、牛鬼の耳がぴくんと動く。

 噛んでいた笠から口を離し、視線に力を入れて白の身体をうずうずと震わせる牛鬼にイッスンは右手の赤色の干し物を差し出したのだ。

 

 

 それは牛鬼の好物、ビーフジャーキー。

 友奈から牛鬼に噛まれた際の最後に抜け出す手段として渡されていた。基本、食べ物には目がない牛鬼であるがビーフジャーキーには他の食べ物よりも先に優先して飛びついてくる。

 その習性を利用した牛鬼対策だ。

 

 

『ふぃー、効果抜群だぜ……友奈ちゃんに感謝しなくちゃなァ』

 

 

 顔に付着した涎を拭いつつ、イッスンはその効果を確認した。

 現に牛鬼はイッスンに目もくれず一心不乱にビーフジャーキーを口に運んでいる。

 暫くは襲ってはこないだろう。しかし、予断は許されない。

 餌は限りがあるし、牛鬼は常に食すスピードは速いほうだ。

 食べ終えたなら、すぐさま標的をイッスンへと戻すだろう。

 

 

『食い意地の張り具合はアマ公と同等かィまったく……コイツが食べ終えるまでの間に何か対策考えねェとな……』

『アウ……?』

『なんでェアマ公、漸くお目覚めかィ?』

 

 

 そのイッスンの隣で昼寝をしていたアマテラスが首だけを起こしていた。

 大きく欠伸をして何度か口を動かすが、頭は船を漕いでいるかのように揺れている。

 寝起きなのか、まだまだ寝足りないのか。

 

 

 寝ぼけているアマテラスの頭をイッスンがぱし、ぱしと叩く。

 

 

『おーいアマ公、寝起きのところ悪ィが牛鬼がエサ食ってる間にどこかに行っちまおうぜェ、神骨頂一つ奢ってやるからよォ』

『アウッ』

 

 

 眠気も飛んだのか、目を見開き、応じるかのようにアマテラスが短く吠える。 

 アマテラスも食べ物に目がない。

 イッスンの提示した条件にいとも簡単に乗ったのだった。

 長年の旅でアマテラスをより良く知っているイッスンが築き上げてきた絆の賜物である。

 

 

『よーしよし、ゆっくりと頼むぜェ……ん?』

 

 

 アマテラスの頭部に飛び乗り、その場をそそくさに去ろうとするイッスン。

 だが、立ち上がったアマテラスがすぐに動きを止めたのを見て違和感に気付く。

 

 

『なんだアマ公、急に止まりやがってェ……腹減って動けねェのかァ? 悪ィが報酬の先払いはナシだぜェ。オイラってば今ビンボーだからよォ』

 

 

 それでどうやってアマテラスのエサを調達しようとしていたのか、それはさておき。

 アマテラスはある一定の方向に視線を注いでいた。

 まるで何かに魅入られたように固定するその視線の先には、彼が動きを止めた理由が存在していたのである。

 

 

『……』

 

 

 視線の先に居たのは鳥だ。

 大きさはさほど大きくはない、しかし目を惹くのはその体毛の色である。

 

 

 青い。まるで藍染めされたかのような美しい青の色。

 こんな鳥を、イッスンはこの国で初めて見た気がした。もちろん、彼の元の世界であるナカツクニにいるかどうか分からない。

 

 

 どこか神秘的な雰囲気を纏う青い鳥が屋上の手すりに止まり、アマテラスの方を見つめていた。

 

 

『なんだィあのトリ公はよォ……オメェの知り合いかィ、アマ公?』

『……?』

 

 

 咄嗟にアマテラスに聞くが、当の本人は首を傾げるばかり。

 流石に妖怪の類ではないだろう、と高を括りつつも愛刀・電光丸に手を伸ばすイッスン。

 

 

『―――――』

『あ……? なんだって?』

 

 

 柄に手が触れようしたとき、イッスンの動きが止まった。

 目の前の青の鳥が、こちらに向けて何かを言わんとしていたからである。

 

 

 

 イッスンなどの妖精、コロポックルは生まれながらにして人ならざる者の意思をある程度は読み取ることが出来る。

 ナカツクニでも里見八犬士を探しだした際には、その犬の通訳をしていたのをイッスンは懐かしく思い出していた。

 

 

 

『”私と遊ぼう”……だってェ? 一体なんだって―――』

 

 

 その直後、青の鳥は飛び上がると真っすぐアマテラス目掛けて直進した。

 目にも止まらないその速さはアマテラスでも追うので精いっぱいである。

 

 

『アウ?……!!』

 

 

 風が吹いたかと思い、頭部から重さが消えたことに気付いたアマテラス。

 頭の上にいたイッスンが姿を消していたのだ。

 

 

『だぁー! は、離しやがれェ!』

 

 やかましい声がする方へ顔を向けると空だ。

 青い鳥が羽を上下に動かしながら飛んでいる。何故か、イッスンをその足で捕まえて。

 両肩を掴まれているイッスンは身動きが出来ないのか、暴れてもその鳥からは逃れることは出来ない。

 

 

『――――』

『”追いかけっこだ”―――だとォ!?トリ公のクセに何ワケ分かんねぇコト言ってやがんだァって―――』

 

 

 青の両翼を羽搏かせて、鳥は屋上からグランド目掛けて滑空する。

 イッスンの声が遅れて聞こえてくるほどに凄まじいスピードである。

 数秒と経たないうちに、青い鳥はアマテラスとの距離を開いたのだった。

 

 

『あ、アマ公! た、助けろォイ!!』

 

 

『アウッ……ワウ?』

 

 

 当然、相棒が連れ去られてしまってアマテラスがジッとしている筈がない。

 グランドで授業をしている生徒たちの真っただ中へ飛び込んでいく事になってしまうが仕方がないことだ。

 

 

 しかし、屋上から飛び降りようとしたアマテラスの頭に普段より重みのある物体が乗っかっていた。牛鬼である。

 

 

『……』

『……?』

 

 

 白い真ん丸の瞳がじっとこちらを見つめている。それは何かを訴えているかのようであった。

 小さいその手は青い鳥が飛び去って行った方向に伸びている。

 

 

 追いかけろ、という意味なのだろうか。

 イッスンのように動物たちの言葉を理解することは出来ないアマテラスではあるが、そういう風に解釈した。

 

 

『ワウッ』

 

 

 そんな事よりも、あの鳥との追いかけっこはとても面白そうだ。

 と、目の前の楽しそうな事にアマテラスと牛鬼は屋上を飛び込えて行くのだった。

 




謎の青い鳥……一体何バードなんだ。


結局今回の浸食も勝てなかったよ……(クソ雑魚勇者)

アマテラスの家庭訪問。誰の家にいく?

  • 結城さん家
  • 東郷さん家
  • 犬吠埼さん家
  • 三好さん家の花凛
  • 乃木さん家(病院)
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