結城友奈は勇者である~勇者と大神と妖怪絵巻~   作:バロックス(駄犬

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たまにはこんな日常回もいいよね。
という、大幅なペースダウンの言い訳。





ツイッターでこの作品をツイートしてくれた読者さんが居て驚きました。
感謝感激あめあられ、精一杯言わせてもらいます。 ありがとうございます!


其ノ四点伍、東郷さんとイッスン

―――勇者部部室。

 

 

 授業が終わった放課後、部室の机の上で咀嚼音を奏でる者がいる。

 口に一杯に含んだ『ぼた餅』を胃の中へと下したのはイッスンだった。

 

 

『うんめ~!美森ちゃんの作るぼた餅は最高だぜェ!』

 

 自分用に切り分けられたサイズの、二個めのぼた餅に手を着けて口へと運ぶ。

 しかし立て続けに口の中へ大きなぼた餅を入れたのが原因だったのか、

 

 

『――んぶッ!!』

 

 当然の如く、そのぼた餅を喉へと詰まらせて息苦しさから目を見開く。

 もち米故の粘着性の高さから気道が狭まり、呼吸困難寸前のイッスンが胸を叩きながら机の上を転がり始めた。

 

 

「ああ、もうっイッスンちゃんったら!」

 

 その光景を真横で見ていた東郷が慌てながらも、てきぱきとした動作で『小さな湯呑』を人差し指で押すようにして差し出した。

 イッスン専用に作られた豆粒程度の大きさの湯呑にはその器を満たす程のお茶が注がれている。

 

『……っ!……っ!!』

 

 お茶の注がれた湯呑を受け取ったイッスンは鬼気迫る表情でお茶を飲み干す。

 ごくん、ごくんと喉を動かし、せき止まっていたぼた餅を水で流しこんで漸く落ち着いた。

 

『ぶはーっ! す、すまねぇ美森ちゃん……危うく天国に召されちまうところだったぜェ……』

「がっつき過ぎよ、イッスンちゃん」

 

 車椅子に身を預け、普通なら一般生徒よりも低い視線になる美森だが、自身よりも低い位置にいる存在を見ては若干呆れるようにため息をつく。

 

 

「美味しく食べてくれるのは嬉しいのだけれど、お行儀が良くないわ。次同じことをしたら縄で縛って吊るしちゃうわよ?」

『め、面目ねぇ……』

 

 笑っている様な美森だが、それは冗談めかした言い方ではない。

 イッスンは思う。この少女は絶対にやる、と。そう思わせる威圧感が美森から感じられたのだ。

 

 

『それにしても……良くできてんなぁ』

 

 手に取った湯呑を見ては感嘆の声を漏らすイッスン。

 目の前にある湯呑、急須、ちゃぶ台。全てがイッスン専用のサイズである。

 

 

「ふふ……自信作よ。イッスンちゃん達にはいつもお世話になっているから頑張っちゃった。

勇者部五箇条が一つ、『成せば大抵なんとかなる』、ね!」

 

 

 これが全て美森の手作りだというのが驚きだ。

 しかもすべてが美森の手が加えられた一品だと示す様にそれぞれ文字が書かれている。

 

 

 

 急須には『和』。

 ちゃぶ台には『日ノ本』と達筆で書かれていた。

 

 

 湯呑にある『護国思想』とは一体どんな手段を用いて書いたのか疑問に思ったほどの出来である。

 犬神事件が終息し、一息ついたあとイッスンとアマテラスはそれぞれの勇者達の家に時折場所を変えるなどして寝泊まりしている。

 

 

 戦いの後は勇者部部室に入り浸る日々が続いており、現在は美森とイッスンの二人っきりだ。

 アマテラスは風に呼び出されて別行動中である。

 

 

 なんでも、手伝ってほしい依頼があるのだとか、ないとか。

 

 

 

 美森たち勇者が所属する組織、『大赦』から送られたメッセージは自我に目覚めたり暴走したりする精霊がいれば即座に対処するようにと文面にあった。

 しかし、バーテックスだけでなく妖怪と呼ばれる別の敵も見られる中では勇者達の御役目に支障ができる。

 

 

 そこで美森の提案で精霊と妖怪絡みの問題はイッスンとアマテラスに協力を仰ぐことにしたのだ。

 彼らの探している『筆しらべ』を一緒に探すというのと、三食寝床を提供するという条件で。

 

 

 野宿も普通だと思っていたアマテラス達だったが、この世界の人の家の作りとその居心地の良さに憑りつかれてしまっている。

 

 

 

『しっかしィこの世界に来て考えてたが……便利なモノがいっぱいだよなァ、薪も火も使わねぇでオコメが炊けるなんてよォ…”すいはんき”、だっけか?』

 

 イッスンが目にするこの世界には知らない事でいっぱいだ。

 彼がいたナカツクニにはない技術で出来た物で溢れている。

 

 それは全て便利なモノばかり。

 

 

 遠くへ行くために人々は『車』と言う車輪のついた鉄の箱で移動し、

 『テレビ』と呼ばれる箱には世の中の情報が映し出され、

 『スマホ』と呼ばれる薄い板は同じものを持っている者同士で遠く離れていても会話ができるという。

 

 まるで『未来の世界に来てしまった』かのようだとイッスンは驚愕してばかりだった。

 腕を組んで頷いていると、目の前の少女、美森が言うのである。 

 

 

 

「でも私からすればあなた達の世界、ナカツクニの暮らしで普通になってる釜で炊く御米の方が好きだわ」

『こんな便利なモノがあるってのに、わざわざ手間をかけて炊くのが好きなのかィ? 物好きだなぁ美森ちゃんはよォ』

「古き良き伝統が、私は好きなのよ。それに釜で炊いた御米って”おこげ”ができるじゃない? アレはとても美味しいの」

 

 ますますもって物好きな少女だ、とイッスンは思うのである。

 

 しかし勇者部のなかで唯一の黒髪、そして陶磁器のような白い肌をもつ美森の容姿は彼のいたナカツクニでもなかなかお目にかかれない美少女である。

 

 

 知性があり、料理が出来て、大和撫子の鏡と言わしめんほどのおしとやかさ。それらを併せ持つ美森はイッスンにとって超が付くほどのドストライクであった。

 そしてイッスンが美森に対して最も惹かれれるものがある。それは―――、

 

 

・・・・・圧倒的、ボインッ!!

 

 

「……?」

 

 まるでカムイの霊山、聳え立つ巨峰『エゾフジ』の如く突き出る美森の胸部を見てイッスンは思わず目を見開く。

 美森は血走った眼を向けるイッスンの視線の意味が解らないようなキョトンとした表情。

 

 

「どうしたの、イッスンちゃん。私の顔に何か付いているかしら?」

『いいや、ついてないぜェ。相変わらず、綺麗な肌してんなぁって思ってよォ』

 

 正確にイッスンが見ているのは顔から数センチ程したに聳える巨峰である。

 彼はその至福を脳裏に刻みながら、実感するのである。

 

 

 生きててよかった、と。

 

 

『オイラが見てきた女性の中で一番かもしれねェ』

 

 分からないのであれば分からないままの方がイイ、現実とは時に非情な側面を併せ持つ。

 言葉巧みに、こちらの意図に勘付かれないように少女を褒める言葉を忘れない。

 

 

「あらあら、褒めてもぼた餅しか出ないわよ?」

 

 

 こちらが口説く意図が無いのが解っているのか、

 少しも頬を朱に染めることなく微笑みかける美森にイッスンは常に一手を取られている気分になった。

 

 

 しかし、警戒が無いことがなによりも救いだ。

 彼女がこちらを警戒してくれていない事で、イッスンは時間の許すまま、美しく突き出る山脈を眺める事が出来るのである。

 

 

『オイラ‥‥‥この国に来て良かったぜェ』

「そう?なら、ずっとここにいてもいいのよ?」

 

 

 

 ちなみに、美女が彼の前を通り過ぎればコロッと先程までの意見を変えるだろう。

 そうなる展開はもはやお約束なのである。

 

 

 

 

『あ、そうだ美森ちゃん。この四国全体を写してある地図あるっていってたじゃんか―――、アレはもう用意できたのかィ?』

 

「ええ、用意は出来てるわ。ちゃんと縮小コピーでイッスンちゃんが持ちやすいように加工しておいたから……どこか行きたい場所とかあるの?」

 

『この前、街を歩いてるときに遠くから見えたのが気になってたんでなァ……ちょいと観光がてら、行ってみようと思ったんだィ。 

なんだっけかな、ああ思い出した。たしか―――――』

 

 

 揺らぐことのない意志の表れのように熱のこもった視線を美森へと向けながら、既に温くなっていた湯呑の中身を飲み干してイッスンは言う。

 

 

 

『――瀬戸大橋、だっけかァ?』

 

 

 




恋愛事情には発展しないから安心してくれ「ゆゆゆ紳士」の皆様。
イッスン小さいから東郷さんと二人っきりにさせて、服の中に入り込んでToラブるみたいなことさせてみたい....させたくない?

美女とボインをこよなく愛する、それが天道太子一寸。

アマ公と風先輩の話はまた別の時に。

さり気なく、次回への予告をする感じで日常回は終わらせていこうと思います。

感想欄にあった、オロチ組ヤクザのTさんキャラ当てクイズですが、「ゆゆゆ」、「大神」にもいないキャラです。完全にオリキャラでふ。ですが既存の伝承を元に作成したキャラとだけ言っておきます。

アマテラスの家庭訪問。誰の家にいく?

  • 結城さん家
  • 東郷さん家
  • 犬吠埼さん家
  • 三好さん家の花凛
  • 乃木さん家(病院)
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