宇宙世紀.0086年3月、コンペイトウを出港したサラミス改級『セイロン』は、補給と隊員の有給休暇のために月面都市グラナダに入港した。
サラミス級の乗組員には、当直を除いて1日の休暇が与えられた。乗組員とパイロットは大喜びでグラナダの街へと繰り出している。外出許可が出たマイクとホセは解放感あふれる表情を見せていた。
ライアン隊長とチャーリーは2人に声をかけた。
「ホセ、マイク、休暇を楽しんでこい」
「くれぐれも喧嘩はするなよ。喧嘩は」
「隊長、俺が血気盛んな若者に見えますか?」
「ああ、元気があり余るほどにな」
マイクは黒ズボンに青ジャケット、ホセは青いジーパンに緑のジャケットを着ている。
「マイク、名物を食って腹ごしらえしたいぜ」
「グラナダなんかに名物があるのか?」
「お前知らないのか? グラナダ名物といえば月面ピザだろ」
「ぼくは、月面都市に来たことがないから」
「俺は何回もグラナダに来たことがあるからな。おすすめのピザ屋があるんだ。案内するぜ」
マイクとホセは赤い看板のピザ屋に入った。店内は人でこみ合っており、グラナダでも人気の店ということがわかる。席につくと赤毛の店員さんが銀トレイに載せた水を持ってきた。
ホセはメニュー表をパラパラとめくっている。
「ピザは決めたが ドリンクは何にするんだ」
「コーラにする。炭酸は好物なんだ」
「店員さん、月面ピザとコーラを2人前」
ホセはマイクに向かって得意げに言った。
「これがグラナダ名物の月面ピザさ」
「月面ピザはうまいだろう。しょっぱくないコーラもあるぜ」
「おかわりがしたくなるぐらいうまいよ」
その時、ピザ屋に皿が割れた音が響き渡った。赤毛で気の弱そうな店員が「すみません」と店長と思わしき人に謝っている。店長らしき人は「もういい」と言って奥に入ったようだ。
「ホセ、基地から脱走したグナー大尉をどう思う」
「ガルバルディBに乗ってエゥーゴに逃げた人だろう」
「テストチームにビームライフルを向けたらしいな」
「エゥーゴのスパイに違いないよ。あの人は」
マイクはホセの話をうなずいて聞いている。マイクはホセに前から気になっていた事を質問した。
「そういえば、ホセは地球のどこの出身なんだ?」
「俺は北アメリカ大陸のメキシコ出身だ」
「お前は軍を辞めたら何をしたいんだ」
マイクは前から考えていたことを口に出した。
「ぼくは実家の農園で働こうと考えているんだ。農園でトウモロコシや小麦を育てようかな」
「俺は故郷でパン屋でもやろうと思っている。軍を辞めたら来いよ」
「必ず行くよ。アメリカからメキシコは近いから」