男の娘が冒険したって良いじゃない、寧ろしていけ 作:magunetto01
紅い館の一室。肩にまで届く程に長く艶のある黒髪。黒曜石のような綺麗な黒色の瞳に、少女と見間違えてしまうほど可憐な少年が椅子に座り読書に耽っていた
「──ん?おや、珍しいお客さんだね。ようこそ紅魔館へ。僕は
少女の様な少年は栞を挿してから本を閉じ、昔話をする様な口調で語りだす
「君達みたいなお客さんが来るのはとても珍しくてね。本来なら茶菓子でも出すべきなんけど君達には何か物語を語った方が良いかな。そうだね……僕の昔話なんてどうだい?と言っても僕が語るわけじゃなくて、僕の記憶と世界に記録された過去を見せるだけなんだけどね。それじゃ、まずは僕がこの世界で目覚めた所から見てみよう」
何処かも分からぬ森で少年が目覚める
(──ん?ここは……どこ?木が辺り一面に生えてるのを見るに森みたいだけど。でも確か僕はあの時、あの女性を助けようとして鉄柱の下敷きに……。死んだにしては意識はしっかりとある、手も足もしっかり動く。つまり生きている。ふーむ、なるほど、つまりこれはラノベとかで見た異世界転生ってやつかな?いやまあお決まりの神様に会ってないし特典も貰ってもないけど)
(ああ、それにしてもまさか僕が女性を助けるために動くなんてね。転生した事より驚くよ。それでこんな何処とも知れない森に来ちゃったんだから、笑い話にすらならないよ。……はあ。このまま延々と愚痴っても良いけど、それで助けが来るわけでも無いし、この森から脱出するために時間を使った方が遥かに有意義だよね)
「よし!善は急げだごーごー!」
脱出するために探索を始めてから十分程経った現在。蒼夜はやや異形の化物から逃げていた。熊の尻尾部分が蛇になっただけの見た目だが、その握力と脚力、蛇の部分から発せられる霧は見るからに毒性を持ち人間を呆気なく死に追い込むには充分な威力を持っているのが見てとれる。死に追い掛けられると言う表現がピッタリ当てはまってしまった
慣れない足場を走り続けたのと元から体力も少ないのが災いし蒼夜は木の幹に足を引っ掛けてしまい盛大に転んだ。後ろを見るとあの化物が近付いてくる
距離もそこまで離れておらず、やろうと思えば一瞬で殺せる。それを解っているのか恐怖で動けなくなった蒼夜の恐怖心を更に煽るように、ゆっくりと近付き、ついにその腕を振り上げた
そして腕が振り下ろされるその瞬間、何かが風切り音と共に蒼夜の頭上を通り過ぎ、そのまま化物の眉間を貫く。そのたった一発だけで巨体は倒れ、起き上がることは無かった
「貴女、大丈夫かしら?」
三つ編みの銀髪で赤と青にはっきりと別れた服にその配色と位置が逆のスカートを履いて、ナースが付けてるような帽子を被ったとても綺麗な女性が立っていた。その女性の持っている弓から察するに、化物を死に至らしめたのは矢のようだ
「……ッ。はい、大丈夫です。助けていただきありがとうございます」
助かった、とホッとするも自分が忌み嫌う女性に助けられた、その事実から一瞬だけ顔を顰めるも直ぐに戻した
「それは良かったわ。それにしても、何故貴女はこんな所に居たのかしら?」
「それが……僕にも分からなくて。気付いたら森に居て、探索してたらあの化物に見つかって追いかけられたんです」
「原因不明、ねえ。そうだ、近くに月の都って言う都市があるのだけど、行く宛が無いならそこに来ないかしら?」
少し考えた後、その提案を受けた蒼夜は警戒心を抱きながらも、女性の案内で都市に向かって歩き始めた
蒼夜を助けた女性、
エレベーターが止まり、ドアが開くと一面白銀色の壁に、月がその向こうに見えるドーム状の天井が現れ、その最奥に見た目に反して神としての威厳を感じさせる銀髪の少女が居た
「初めまして、少女よ。私は
「は、はい!概道蒼夜です!え、えっと、よろしくお願いします!!」
「そこまで緊張しなくても良いのだがな……まあいい。君がこの都市に住むにせよ住まないにせよ私は、この都市は君を歓迎しよう」
それで。と言いながら月夜見は二枚の書類を蒼夜に渡した
「この書類に自分の名前と年齢と性別と有れば職業と能力を。こっちは住所及びそれに関する書類だが……これは後日提出で構わないぞ。どこか適当な場所で記入して一階の受付に出してくれれば君の身分証明書が作れるから、少なくともこっちの書類は忘れず提出するように」
書類をしっかりと受け取った蒼夜は月夜見に礼を言い、永琳と共にエレベーターで一階、ではなく二階に移動した
「さあ、貴方の能力を調べましょう」
「能力、ですか?ここに来る途中で説明されましたけど……とても僕にあるとは」
「無かったら無かったで良いのよ。さっ、始めましょう。そこに座って」
二階にある能力検査室。そこに設置されてある椅子に座ったのを確認すると永琳は近くにあるパネルを操作し始めた
「一応言っておくけど人によってはほんの少し異物感を感じるらしいわ。でも、もしそうなっても我慢してね?」
言い終わると同時にパネルの操作を終えると蒼夜の体を覆うように幾つもの線が行ったり来たり……しかし数十秒程で線は消えた
永琳の手元のパネルに『判定中』と点滅しながら表示された画面がやがて審議中となり、最終的に『計測不能』と表示された
「計測不能……ですって?そんな、この表示がされるはずが無いのに、なんで?」
「僕に能力が無いからそう表示されてるんじゃないんですか?」
「いいえ、それは無いわ。能力が無いなら能力無しって表示されるように作ったもの。一応この表示を組み込んだものの表示されることは無いと思ってたのだけれど……貴方、一体何者?」
そう聞かれても、蒼夜は明確な答えは出せない
「さあ?僕に聞かれましても……」
「貴方の事なのに……まあいいわ。その内自ずと判る時が来ると期待しましょう。さて、後はそこの机で書類に記入して提出しに行くだけね。住所は、そうねえ……暫く家に泊めてあげるわ、だから八意永琳宅って書けばいいわ」
「えっ!?いやそんな、でも、うーん」
やんわりと断ろうと思った蒼夜だが、外は既に暗く、泊まる宛も宿も金も無く、野宿をしようにも不安が勝る。最終的に辿り着いた結論は
「分かりました、そう書きます。それと暫くの間お世話になります」
永琳の自宅に泊まることだった。二枚の書類に記入を済ませた蒼夜は永琳と共に一階に向かい、自身の身分を証明するカードを手に入れた
「それじゃあ早速私の家に案内するわ。夜が開けたらこの都市を、月の都を隅々まで歩き回るわよ」
「はい」
月と人工的な明かりが照らす都市を二人が歩いて行く。永琳は上機嫌に、蒼夜は内心嫌がりながら
ベースとなってる世界がIS世界と東方世界なんですが、IS世界とか言う極端な女尊男卑思想が蔓延ってる世界で生きてきたんならそりゃ女性に対する警戒心は持ってそうだもんなあ……克服できなきゃ幻想郷編で苦労しそう