かつて、まだ尸魂界、現世、虚圏が同じ1つの世界だった頃。
瀞霊廷と呼ばれる世界。
人はその世界で一度目の、肉体を伴う人生を終える。
それが死だ。
死が人生の終わりだと思っていた人間は、死を恐れぬよう
「死ぬと神になる」
という考えを持つようになった。
しかし其の実、死んだ人間は肉体が朽ち果て魂だけの存在として次の人生を歩むこととなる。
だが第二の人生を歩む魂は、獣の住む世界に漂う霊子の鎖に繋がれ、時間が経つと心無い
そして彷徨う魂や、まだ現に生きている人間を襲う存在となった。
しかし、ある時から数万、数億とある魂の中で強力で善意に満ちた魂が鎖の呪縛から逃れ、特殊な力を持つようになる。
彷徨う魂を浄化する能力。
そう、彼らこそが死神の始祖である。
死神は彷徨う魂や現に生きている人間を守るため
そして時が経つにつれ、死神、人間、虚の住む世界は自然と分かれていった。
死神の住む区域を尸魂界。
人間の住む区域を現生界。
虚の住む区域を虚庭界。
尸魂界は現生界に囲まれ、さらに現生界は虚庭界に囲まれていた。
死神たちは魂を斬る刀、斬魄刀を帯同し虚と戦った。
程なくして瀞霊廷を守る存在、瀞霊廷警備隊が組織され、ある男が入隊した。
その男は剣術に優れ、若くして警備隊の首領である警備総長まで上りつめる。
その男の名は、、、、
〜警備隊隊舎〜
「山本殿、山本重國殿!!」
山本重國と呼ばれる髷を結った男は警備総長室の執務机にいた。
「なんだ?喧しいぞ。」
重国の部下は膝をつき、緊急の報告を始める。
「現生界からこちらへ葬られる魂魄が少なくなっているようです!」
「このままでは三界の均衡が崩れ、破滅すると!」
「誰が言うておる?」
「はっ、流魂街の
現生界から
蘭島とはそこに住む女性研究者のことだった。
「やつか。やつが言うなら間違いあるまい。少し話を聞いてくる。」
重國は総長羽織を羽織ると足速に執務室を後にした。
〜流魂街某所〜
「山本重國、久しぶりだな。」
眼鏡をかけ、後ろで髪をくくった顔の整った若い女性が、乱雑な研究室でパソコンのようなものを前に椅子に座っていた。
「今回の騒動はなんじゃ?」
「突然変異、、、いや、開花と言うべきかね。ある人間が霊子を集め放出する能力を手に入れた。」
「そしてその能力を他人に与え、同じ能力を開花させることができるようだ。」
「既に急激に仲間を増やして、自分たちで虚を
「そしてその指導者を、霊子を隷属させる王、《霊王》と呼んでいるみたいだね。」
ひとしきり聞いた重國の感想は一つ。
「大それた名だ。」
重國は蘭島の対面にある椅子に腰をかけた。
「だが良いことではないか。人間が自分たちで身を守れるなら。」
蘭島は眼鏡をかけ直し、目の前に投げ置いてある資料を手に取る。
「問題なのはそいつらが虚を斃すと、滅却してしまうことだ。」
「滅却?」
「私たち死神は魂をこちらに
「そうすることで全体の魂魄数や霊子のバランスが保たれる。」
「だが奴らは魂魄を消滅させる。」
「かなりの勢いで魂魄数が減っていってる。これじゃあ近いうちに均衡が崩れ瀞霊廷全体が消滅する。」
「やつらを止めねばならん、ということか。」
「まぁそういうことだ。」
「そこは警備総長殿にお任せするよ。」
「ついでじゃ、このまま現生界に行ってみようかの。」
「腰の軽い総長だこと。」
そう言うと蘭島はパソコンを叩きまた自分の世界に入った。
〜現生界〜
「やはり霊子の濃度が低い。この中で霊王とやらは霊子を吸収できるのか?」
そんなことを思いながら歩いているときだった。
「おい!そこのお前!ここに何の用だ!?」
人間。
10人ほどはいるだろうか?
「見えるのか。儂が。」
ただの人間ではない。
「貴様らが霊王とやらの取り巻きじゃな?」
「だったらなんだ?」
男たちは一斉に、霊子を集め剣を形作る。
重國も斬魄刀を引き抜くと男たちに向け斬りかかった。
わずか10秒。
男たちの剣は重國の斬魄刀によって全て断ち斬られていた。
そして腰を抜かした男に切っ先を向け問い質す。
「霊王とやらはどこだ?」
「クソ、、、こいつ、、、」
皆重國の強さに尻込みしている。
その時重国は感じたことのない霊圧を感知した。
男たちは自然と道を開ける。
そしてその奥に一つの人影があった。
「霊王様!」
「霊王じゃと?」
その男は端整な顔立ちをしており、品格が感じられる雰囲気を纏っていた。
また、目の水晶体は黒く瞳は白く歪な形で、どこか不気味さも放っている。
「いかにも余が霊王である。」
「儂は山本重国。死神というこの世界の均衡を保っている存在だ。」
「聞くところによると虚を斃しているようだが、お主らがやると世界の均衡が崩れる。やめてもらえんか?」
「虚は儂らが対処する。」
「虚とは怪物のことか?」
虚は死神たちが使う呼び名であり、人間たちは《怪物》として認識されていた。
「そうじゃ。」
「断る。主ら死神とやらが来るのを待っていては喰われてしまうではないか。」
霊王は顔色ひとつ変えることなく淡々と答えた。
「ふぅ、、儂は気が長くなくてのう。断るならここで皆殺しにするまでよ。」
重國は殺伐とした雰囲気を漂わせ、尋常ではない殺気を放っている。
「余と戦おうというのか?よかろう。」
「流石は霊王!言いよるわ!」
斬りかかって行く重國に対し、霊王は霊子の大剣を創り出し斬魄刀を受け止めた。
霊王は二太刀目、三太刀目も防いでいく。
しかし剣術に優れた重國を前に霊王は徐々に追い詰められていた。
「王ともあろう者が、剣術の訓練が足らんようだな!」
「剣術で叶わなければ、違う武器を作ればいいこと!」
霊王は間合いを取り霊子で弓矢を創り出すと、重國に照準を合わせ矢を放った。
一つ目の矢は躱すに苦労はしなかった。
しかし二つ目、三つ目、次は逆に重國を追い詰めていく。
そして周りの者たちも同じように重國に向け矢を放った。
「クッ、、、、」
そして避けることに精一杯で隙を一瞬見せてしまう。
霊王はそこを逃さなかった。
いつの間にやら形成していた大剣を大きく振りかぶり。重國に一閃を浴びせる。
重國はなんとか斬魄刀で防いだものの、刀身の半分から上は地面に刺さっていた。
「我々の身は我々で守る。」
「ではな、死神。」
霊王は完全に勝ち誇った様子でその場から離れていった。
重國は折られた斬魄刀を見つめていた。
「霊王か。厄介な事になったのう。」
〜続く〜