蒼天のキズナ   作:劉翼

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大っっっっ変お待たせいたしましたぁっっ!!
まぁ、言い訳は次話で聞いてやってください。事前の通知通り2話同時更新となっております。


第99話:猛毒暴君

 トージョウリーグ決勝トーナメントは1回戦が終わって準決勝へ。

 その前半を飾るはツバキとスコーピオのバトル。

 毒状態を駆使してくると予想したツバキは先鋒としてミスティを繰り出し、毒を無効にしつつ“ねむりごな”で相手を無力化しようと考えたが、相手のマタドガスの“ちょうはつ”によって“ねむりごな”を封じられて水泡に帰してしまう。

 有効打を持たない上、相手からは“かえんほうしゃ”で抜群を取られてしまうミスティを下げ、切り札のようなものだったナオを早々に繰り出す事になり、しかも設置された“どくびし”のためにラムの実も消費する散々な展開となる。

 しかし、ナオの卓越したサイコパワーのコントロールにより相手の意表を突く事に成功し、ダメージを負いながらもマタドガスを撃破して相手より先に痛手を与える。

 スコーピオの戦い方に既視感を覚えたツバキが、看破したその相手の名を告げると、スコーピオは仮面とマントを脱ぎ捨ててその素顔を白日の下へ。

 

 

 

        ――暴君、再臨ス――

 

 

 

「ま……まさかまさかまさか……まさかの『猛毒暴君(ベノム・タイラント)』ですっ!! スコーピオ選手の正体は、なんとあのプロトレーナー・ベラでしたぁっっ!! ポケモンリーグ史上最年少でプロトレーナー入りをした天才でありながら電撃引退を表明し、そのまま失踪していた彼女が、今! 再び! 表舞台に姿を現しましたぁぁーーーーっっ!!」

 

 予想外の『消えた天才』の登場にテンション爆上げとなったブルースの熱に押されるように、観客席も大いに沸き立つ。

 一方のベラはというと、口元を歪めながら次のモンスターボールを取り出す。

 

「……さぁ、アンタの力見せてやんなさい。出番よラミー」

 

 投擲されたボールから飛び出した光が膨張し、縦長の巨大な影を形作る。

 

「え……? な……なにこれ……!?」

 

 あまりの大きさにツバキは目を白黒させて見上げる。

 

 

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 固着したその姿は、茶色い身体に紫や赤のアクセントが効いた大きな海藻のような特異な形をして、いかにも水棲生物といった趣だが、まるでそこが水中であるかのように宙を揺蕩っている。

 クサモドキポケモン『ドラミドロ』。

 みずタイプとくさタイプのような姿をしているが、ベラの使用ポケモンという事でどくタイプであり、さらにドラゴンタイプも持ち併せる珍しいタイプ構成である。

 なにより特筆すべきはそのサイズで、ドラミドロは通常1.8m程度と成人男性の大きさなのだが、ベラの個体は3mに届くかというほどの巨体なのだ。

 その独特な姿も相まってか与えられる威圧感が凄まじく、相対するナオが1mにも満たないため、なおさらその大きさが際立っている。

 

 

 

「なんて大きさだ……あれだけのサイズにするのは容易ではないぞ。よほど丹精込めて育てない限りは」

 

 イソラもこれほどのドラミドロは見た事が無く、顎に手を添えて感嘆の声を漏らす。

 同時に、ベラもやはり自身のポケモンに対しては確かな愛情を持って育てている事が理解でき、彼女が自分の憎むロケット団に加わっていた事実もあって複雑な心境となる。

 

「まるで怪獣映画だね~……。オイラ、ドラミドロ見るの初めてなんだけど、他のドラゴンと全然雰囲気が違くて格好良いなぁ~」

 

「違うのは見た目だけじゃないぞ。戦い方も、ドラゴンタイプには物理攻撃主体の者が多い中、ドラミドロは攻撃も防御も特殊方面が得意だ。豊富な技の選択肢や独特のタイプ構成も相まって、他のドラゴンと同じ感覚で戦うと痛い目を見るな」

 

 イソラは以前カロスリーグに参加した際にドラミドロとの戦闘経験があり、想像を上回る激しい攻勢に手こずらされた事を思い出す。

 ましてこの個体はあの暴君の育てたドラミドロなのだから、その戦闘力はあの時の比ではないだろう。

 

 

 

「さぁ! それではスコーピオ選手改めベラ選手とツバキ選手の試合を再開いたしましょうっっ!! 先に手持ちを削られてしまったベラ選手、2番手のドラミドロでどのような戦いを披露してくれるのでしょうかっっ!!」

 

 失踪した元プロトレーナーの復活という展開に血管切れそうなほどに興奮するブルースから「はよ! はよ!」と急かされ、審判が旗を掲げる。

 

「は……はっ! で、ではドラミドロ対ニャオニクス! 試合…………再開っ!」

 

「“サイコショック”!」

 

 先に動いたのはツバキ。

 相手の力が未知数な以上、先手を取って少しでもダメージレースの面で有利に立ち回っておきたいのだ。

 だが、ベラ側も飛んでくるチャクラムをそのまま受けるつもりは無い。

 “サイコショック”は特殊技ながら相手に物理的なダメージを与えるので、特殊防御力より物理防御力が低いドラミドロにとっては厄介な技となる。

 

「“りゅうのはどう”よ」

 

 ゆらゆら気ままに浮かんでいたドラミドロの纏うオーラが一変し、全身から溢れんばかりの高エネルギーが口へと流れていく。

 

「(撃ち落とす気なの……!?)」

 

 マタドガスとのバトルで、ナオの“サイコショック”はかなりコントロールに融通が利くのはベラも理解しているはずなのだが、それでも迎撃を狙うという事はよほど精度に自信があるのだろうか。

 次の瞬間、ドラミドロの細い口から咆哮のような轟音を奏でながら、青白いエネルギー波が放たれた。

 ……と、直進していたそれは突然唸りを上げてカーブしたのだ。

 

「っ!?」

 

 ツバキは目を見開いてフリーズしてしまう。

 ドラミドロから発射された“りゅうのはどう”は、まるで自分の意思を持っている龍のように空中を泳いだかと思うと2つに分裂。

 

 

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 標的を捉えると、飛来した“サイコショック”にそれぞれ激突して相殺してしまったのである。

 

「なんとベラ選手のドラミドロ! “りゅうのはどう”を誘導兵器のように自在に操り、“サイコショック”を打ち消したぁぁーーーーっっ!!」

 

 ツバキの知る“りゅうのはどう”は、バルディの火力重視でほぼ直進するタイプと、カツラのウインディが使った範囲重視で大型化と拡散が可能なタイプ。

 だが、目の前の相手が使ったのはそのどちらでもない、高精度の誘導能力のあるタイプで、しかも“サイコショック”を易々と飲み込んでしまった事から火力もありそうだ。

 というか、発射時点ですでにかなりの大きさで、2つに分割してなおバルディのそれと同等かそれ以上の威力と推察できる。

 

「驚いたかしら? この子は見ての通り図体が大きいから死角も多い。それを補うために鍛えたのがこの誘導“りゅうのはどう”。……簡単には逃げられないわよ?」

 

 鍛えたと軽く言い放つが、それが並大抵の努力で実現したものでない事はツバキにもわかる。

 いくらトレーナーに才能があっても、ポケモン側が特訓についていけなくては意味を成さないのだから、ある程度はトレーナー側もポケモンに歩調を合わせる必要がある。

 そういった面から見てもベラのポケモンへの思い入れは本物であり、今でこそ性格が大いに歪んではいるものの、彼女の本質は決して邪悪なモノではない証と言えるだろう。

 それがわかれば十分。

 ツバキは以前、ロケット団アジトで出会ったシュルマという男性から頼まれた事を思い出す。

 

 ――ベラに……勝ってくれ。勝って、彼女を表の世界へ引き戻してくれ……!

 

 幼馴染みという極めて近い立場にありながら、心が歪んで裏世界へ沈み行くベラを止められず、その救済を他人に託すしか無かった彼の無念はどれほどのものだったのだろう。

 そんな彼の悔しさと熱意を無駄にしたくはない。

 まだ彼女の心にポケモンを想う優しさが残っているのなら、きっとこちら側へ連れ戻せるはずだ。

 ツバキにできる事は、自分とポケモン達の全力でぶつかり、ポケモンバトルの本当の楽しさを彼女に理解してもらう……ただそれだけ。

 決して弱者をいたぶる事を楽しむものではないとわかってもらわねばならない。

 

「“りゅうのはどう”」

 

「っっ! “マジカルシャイン”っ!」

 

 再度ドラミドロの口に集まったエネルギーが集束されて発射され、今度はビーム砲のようにナオ目掛けて直進してくる。

 対するナオは、身体を縮こませると同時に全身にエネルギーを行き渡らせ、両手脚を広げて周囲に強力なエネルギー波のドームを形成した。

 フェアリータイプ技の“マジカルシャイン”は、ドラゴンタイプ技相手の撃ち合いならば有利なはずだ。

 読み通りに“りゅうのはどう”は“マジカルシャイン”に衝突すると、それまでの勢いが一気に減衰してしまう。

 しかし、それでも完全には消滅せず、正面を塞がれたエネルギーの塊は分裂したかと思うとドームに沿うように地面を抉り、砕きながらフィールドを暴れ回った末に空中で爆発した。

 

「ぅ……わぁ……」

 

 ツバキはフィールドの惨状を見て愕然とする。

 地面は“りゅうのはどう”の暴走によって深々と抉られて無数の溝が出来上がってしまい、無惨な爪跡がその火力を物語っていた。

 恐ろしいのは、タイプ相性が最悪の“マジカルシャイン”に当たってもすぐに消滅する事無く、これだけの破壊力を維持していた事である。

 

「ああ、そうそう、言い忘れてたわ。ラミーの特性は自分と同じタイプの技を強化する《てきおうりょく》。威力は見ての通り…………瞬殺されたくないなら、どく技とドラゴン技は死に物狂いでよけなさい」

 

 言われるまでも無い。こんな威力をマトモに受ければ、誇張表現でなく本当に瞬殺されてしまう。

 幸いナオは小柄な上、サイコパワーによる浮遊で不規則な機動が可能なので、回避は十分に狙える。

 誘導性能は厄介だが、上記の強みを活かせば戦えるだろう。

 なにより、最初の“サイコショック”をしっかり相殺に持ち込んだ事は、裏を返せば直撃を恐れているとも言える。

 ならばそこへの一点集中で攻めれば勝機はある。

 

「破壊的な威力の“りゅうのはどう”をどうにかかわしたツバキ選手っ! ここから反撃に出たいところですがっ!?」

 

 そう、反撃には出たいのだが、その好機がなかなか訪れない。

 一気に距離を詰めて至近距離から“サイコショック”を叩き込めば、下手打てば自滅しかねない“りゅうのはどう”封じにもなって一石二鳥。

 ……が、そもそもその“りゅうのはどう”のせいで近付けないのである。

 しかし、手が無いわけではない。

 ツバキはここまで使われた2回の“りゅうのはどう”を観察し、撃ち始めは太い1本のエネルギーの塊で発射され、ある程度の距離を飛んだ後に分裂、または出力強化など、その時々に適した挙動に変化するという事に気付いたのだ。

 

「(……よしっ! このまま遠くから攻撃しててもこっちの方が危なくなるし……行くしかないっ!)突っ込むよ、ナオっ!」

 

 距離があるほど不利になるのなら、危険を冒してでも接近しなければ活路は開けない。

 ナオは浮遊したままサイコパワーの出力を引き上げ、蛇行しながらドラミドロへと突進していく。

 無論、それを黙って見ていてくれるほどベラは愚かではない。

 

「あらぁ、これだけでカタがついちゃうかしら? もう1度“りゅうのはどう”よ」

 

 ドラミドロから撃ち出されたエネルギー波が一定距離を飛翔後、4つの小さいエネルギー弾に分割され、網で囲うようにナオを襲う。

 

「“マジカルシャイン”を纏って!」

 

 迎撃にも速度を緩めぬナオは、本来広範囲に放射する“マジカルシャイン”用のエネルギーを抑え込み、自身を覆う衣として着込む。

 分裂した影響で1発辺りの火力が落ちた“りゅうのはどう”は、フェアリー技の“マジカルシャイン”を突破できず、軌道が逸れて空中へ消え、或いは地面へ落ちて爆発を起こした。

 

「……!!」

 

 迎撃をいなされたベラは驚愕して目を見開き。

 

「……かかった」

 

 口の端を吊り上げた。

 直後、立ち込める煙の中から何かツタのような、葉のような物が伸びてナオに巻き付き、その身体を締め上げた。

 ナオはたまらず“マジカルシャイン”を解除してしまい、呻き声を上げる。

 

「ナオっ!?」

 

 晴れ行く煙の向こうから伸びる、ナオを拘束するツタの正体……それはなんとドラミドロの腕だった。

 

「なぁぁぁんとぉぉーーーーっっ!? 上手く“りゅうのはどう”をいなして接近したニャオニクスですが、“マジカルシャイン”ごとドラミドロに捕獲されてしまったぁぁーーーーっっ!!」

 

 どくタイプを持つので多少軽減されているとはいえ、ドラゴンタイプが天敵であるフェアリー技に臆する事無く掴みにかかってくるとは。

 

「はぁい、捕まえた。あの“りゅうのはどう”を見せられれば、そりゃ接近戦に賭けるしか無いわよねぇ。……“どくどく”」

 

 ドラミドロは捕らえたナオを必中の距離まで引き寄せると、口から禍々しい紫色をした毒液を大量に吹き出し、ナオの全身に浴びせかけた。

 ナオが顔を振って付着した毒液を払うが、即座に全身に染み込んだ毒がその身体を蝕み始めている。

 だが、暴君の責め苦はそれで終わりではない。

 

「“ベノムショック”よ」

 

 次いで吐き出された毒液は先ほどよりも明るめの紫色。

 それがナオにかかると、見る見る内にその顔が青ざめ、次の瞬間には身体を捩らせ、断末魔の如き叫びが木霊した。

 “ベノムショック”の毒は特殊な性質を持ち、それ自体の毒性は大した事がないのだが、その真価は他のどく技とのコンビネーションにある。

 この毒は対象に付着すると、すでに体内に侵入している別の毒に反応し、その成分を刺激して活性化させ、相手の内外から耐え難い苦痛を与えるという凶悪な側面を持つ技なのである。

 その効果がフルに発揮された場合の威力は、“ヘドロばくだん”や“ヘドロウェーブ”といった他のどくタイプ特殊技の追随を許さないほどとされている。

 

「あぁぁっ……!!」

 

「時にはじわじわと獲物を蝕み、時には一瞬にしてその息の根を止める……打たれて初めてその恐怖を真に理解する事になる。……これが『毒』の力よ」

 

 表情を歪めるベラに歯噛みしながら、ツバキは慌ててナオのボールを取り出す。……だが。

 

「(……ここで戻したら、残りの交代回数は1回だけ……! まだ出てきてない相手のポケモンが2体もいるのに! でも、このままじゃナオが……!)」

 

 苦しむポケモンを一時的にでも助けるためリスクを負って戻すか、心を鬼にして戦闘不能になるまで静観するか……。

 そんな葛藤をするツバキの耳に、わずかに響きの変化したナオの声と、観客席からのどよめきが届く。

 ツバキが顔を上げると、ナオは依然として拘束されたまま。

 だが、恐らくは視界のぶれているであろう焦点の合わぬ目でドラミドロを睨み、狂乱の叫びを上げながらも、“サイコショック”用のエネルギーを右手に纏ったまま力任せにドラミドロへ叩き付けているのだ。

 もはや猛毒の苦痛で精神を集中できず、チャクラムや剣の形に成形する事すらできないのだろう。

 それでもなお、残った理性と力を振り絞り、自身にできる最後の抵抗を無我夢中で繰り返しているのだ。

 獲物は完全に抵抗力を失ったと考えていたドラミドロは、予想外の反撃で幾度も腕にダメージを受けてしまうが、その口からはピンクがかった果汁が滴る。

 エスパー技のダメージを軽減するウタンの実。数少ない弱点の1つをカバーするために持たせた木の実で、ナオがサイコエネルギーを振り上げた瞬間、咄嗟に口に含む事で被害を抑えたのだ。

 

「っ! 投げ飛ばして“りゅうのはどう”よ!」

 

 ドラミドロは痛みに耐えながらナオを拘束する腕に力を込めると、自身より遥かに小さなその身体を空中へ放り投げ、出力は多少控えているが“りゅうのはどう”を発射して追撃を仕掛ける。

 すでにナオには浮遊するだけの余力も無く、あえなくその直撃を受けて爆発と共に宙を舞い、無抵抗のまま地面へ叩き付けられた。

 

「……ニャオニクス戦闘不能っ! ドラミドロの勝ちっ!」

 

「……ごめんね、ナオ……。でも、すっごく頑張ってくれたね、ありがとう。ゆっくり休んでて」

 

 歓声とざわめきが広がる中、ナオを抱き上げて労いながらボールに戻すツバキ。

 それを見るベラは、厄介なエスパータイプを処理できたというのに、その表情に喜色は無い。

 

「(どうなってんのよ……アタシの目算じゃ“ベノムショック”をぶち込んだ時点で戦闘不能になってるはずだったのに、なんであんな反撃ができたの……? ……考えてみれば、前々からアイツのポケモンは、追い込まれる度に異様なまでにこっちの想定範囲を超えてきた……一体アイツらのどこにそんな力があるっていうのよ……)」

 

 ベラはかつて天才、鬼才と称されただけあって相手の力を見抜く才にも長けており、その予測を指標にして相手をいたぶりながらバトルを進め、そして勝利してきた。

 だが、眼前に立つ少女とそのポケモン達は、ことごとくその予測を上回る力を発揮してきた。

 これまでのベラであれば、弱者の抵抗が必死であればあるほど叩き潰した時の愉悦が大きかったが、どういうわけか今は苛立ちと得体の知れぬ感情がぐるぐると渦を巻いている。

 自分の心中の事でありながら自分で理解ができない不快感が膨らむ。

 

「さぁっ! これで手持ちの数は両者再び並びました! どちらも1体はバトルのダメージが残り、2体はいまだその正体を明かしておりませんっ!」

 

 ブルースの状況整理を聞きながら、ツバキは次に打つべき手を模索する。

 

「(次は誰を出すべき……? “どくびし”を潰すならミスティだけど……)」

 

 ドラミドロはどくタイプとドラゴンタイプの複合タイプ。ミスティの主力となるくさタイプ技はどく単体の時よりも効きにくい。

 幸いと言うべきか、“ムーンフォース”は通りが良くはなったが、お世辞にも機敏とは言い難いミスティは、基本的には攻撃を受け止めて反撃するスタイルになりがちだ。

 だが、《てきおうりょく》が適用されて馬鹿馬鹿しい火力となっている“りゅうのはどう”に耐えながら、“ムーンフォース”を撃ち込む事は可能なのだろうか?

 かといって他のポケモンは場に出た瞬間に“どくびし”で毒状態にされてしまう。

 そうなれば“ベノムショック”による大打撃を受けざるを得なくなるだろう。

 そのトラップをかわせるのはミスティ以外は空を飛ぶポポかルーシアだが、あいにくとルーシアは今回留守番中で、ポポはメガシンカ込みで最後の切り札であり、ここで出して消耗させてしまった場合、後々の状況の悪化は目に見えている。

 と、こうなると消去法で結局はミスティという事になってしまう。

 

「……もう1度お願いっ! ミスティっ!」

 

 ツバキはミスティでドラミドロ相手にどう動くべきかを脳内シミュレートしながら、モンスターボールを投げ込んだ。

 暴君の前に、再び真っ赤な大輪を揺らしてミスティが立つ。

 足元に散らばった紫色の刺を一瞥したミスティが一際大きく足を踏み鳴らすと、周囲の地面に波紋のような物が広がり、全ての“どくびし”が一瞬浮かび上がった後に破裂して消滅した。

 

「再び登場したラフレシア、まずはこれ以上不利な状況を作らないように“どくびし”を破壊しました!」

 

 少なくともドラミドロは“どくびし”は使わないはず。

 もしも入れていた場合、攻撃技が“ベノムショック”と“りゅうのはどう”の2本に頼りきりとなり、そのどちらにも無効タイプが存在する以上、どちらかが使えなくなって残った1本だけで戦わねばならない事態もありうる。

 そういった事態を回避するためにも残り1枠は別タイプの攻撃技であり、再度の“どくびし”設置は無いとツバキは踏んだ。

 そして、ツバキ……というよりミスティには、相手の主力技2つを弱体化できる秘策がある。

 

「それでは、ドラミドロ対ラフレシア。バトル…………再開っ!」

 

「(さぁて、さっきのニャオニクスがやたらしぶとかったせいで、ちょっと“りゅうのはどう”を使いすぎたわね。アイツの狙いはたぶん“ねむりごな”。けど、この無風状態じゃロクに飛びやしないわ。距離を詰めさせなければ問題無い。“ベノムショック”で十分ね)」

 

 ツバキ逆転の決め手は恐らく“ねむりごな”であるが、粉という極めて細かく軽い物質なので、噴出されてもすぐに空気中で飛散してしまう。

 中~遠距離に飛ばそうと思ったら、特定の方向へ吹く風を利用する外無い。

 ニビジムでは砂嵐の風に紛れさせたが、あれは対象であるガチゴラスの口や鼻といった粉の侵入口が大きく、呼吸での吸引量も多かったおかげである。

 ドラミドロは普段は口をすぼめている上、鼻が極めて小さいので、風の無い状態で飛散した粉程度では効果は期待できない。

 つまり、意図的に強い風を起こせないのなら、至近距離からドラミドロ目掛けて“ねむりごな”を発射する以外に手が無いのだ。

 

「(ふん……その鈍重な身体で近付けるもんなら来てみなさいよ……!)“ベノムショック”よ」

 

 タイプ一致に《てきおうりょく》の補正まで入った“ベノムショック”は、毒とのコンボでなくとも威力は十分。

 なまじ頭の花が巨大なせいで、ラフレシアというポケモンの動きは鈍く、さらにラフレシアの習得技は大部分がどくタイプに有効打を与えられない。特にメインウエポンのくさタイプ技などはほぼ役に立たないと言っても良い。

 “ベノムショック”を連打しているだけでもドラミドロは相手を完封できてしまうのだ。

 

「かわして!」

 

 案の定、ミスティは連射される“ベノムショック”を転がるようにしてよけるので精一杯であり、それでも完全回避とはいかず身体の端に着弾して、とても近付く余裕など無い。

 ……しかし、以前に自慢のパートナーに膝を付かせたこの少女が、なんの考えも無しにラフレシアを繰り出して右往左往するだけなどありうるのだろうか?

 “ねむりごな”だけが突破口と結論付けたが、本当にそれだけなのだろうか?

 

「(……ラフレシアの覚える技で、ある程度の距離があっても使えて、ラミーの優位を崩せる技………………っ!)ラミー! “りゅうのはどう”よっ! 一気に決めなさいっ!!」

 

 突然声を荒げる主人に戸惑いながらも、ドラミドロは毒液による弾幕を停止し、エネルギーチャージを始める。

 

「(気付かれた! ここから届くっ……!?)ミスティ! “なやみのタネ”っ!」

 

 ミスティが身体を傾けてめしべをドラミドロへ向け、1粒の拳大の種子が発射される。

 そして“りゅうのはどう”が放たれる直前、それはドラミドロの頭上で炸裂し、キラキラと輝く粉が降り注ぐ。

 直後にドラミドロの口から放射されたエネルギー波は、明らかに先ほどまでより威力、速度共に低下しており、ミスティがサイドステップを踏むと、大きな花びらに被弾はしたが軽傷で済んでしまった。

 回避後の地面を見ても、“マジカルシャイン”で逸らされて大暴れした技と同じとは思えないほどに被害が無い。

 

「ツバキ選手上手いっ! “なやみのタネ”は相手の特性を強制的に《ふみん》に変えてしまう技っ! 《てきおうりょく》で高い火力を出していたドラミドロですが、ガクンと弱体化させられましたっ!!」

 

「チッ……やってくれたわね……」

 

 相手がどくタイプ使いである事から“どくどく”は使い物にならないと考えたツバキは、一時的に他の技に変える選択をした。

 そこで相談したイソラから教えられたのが“なやみのタネ”。

 前述の通り、どくタイプ相手に有効な技をミスティはほぼ覚えないので、下手な攻撃技よりもくさタイプお得意の搦め手を伸ばす方が良いのではという判断だ。

 “ねむりごな”は使えなくなるものの、逆にそれを先に使えば相手はそちらばかりを警戒し、真逆の発想である“なやみのタネ”が思考から消える可能性もある。

 特性によって高い戦闘能力を実現しているポケモンは多く、そういう相手にハマれば強制的な特性変更はかなり強烈な効力が見込める。

 一例としては、互いの攻撃がほぼ確実にヒットする《ノーガード》によって“ばくれつパンチ”や“ストーンエッジ”など、威力はあるが命中に難のある技を苦も無く多用できるカイリキー。

 精神統一によって攻撃能力を引き上げる《ヨガパワー》で爆発的な火力を有するチャーレム。

 弱点タイプの技によるダメージを軽減する《ハードロック》により驚異的な耐久力を実現したドサイドン。

 ……などなど、その枚挙には暇が無い。

 ともかく《てきおうりょく》を消してしまった事で、ドラミドロは著しい火力の低下に見舞われる。

 

「(この隙に……!)“ムーンフォース”!」

 

 “なやみのタネ”による特性変化は交代するとリセットされてしまう。

 厄介な相手に交代を促すために使われる場合もあるが、今のツバキにとってはこの弱体化した状態こそ逆転の鍵である。

 故にひたすら攻める。ただただ攻撃を続ける。

 花びらから放たれたエネルギーが集まって球体となり、高密度エネルギーのビームとなって発射される。

 

「チィッ……! “ハイドロポンプ”!」

 

 ドラゴン技の“りゅうのはどう”、《てきおうりょく》の無い“ベノムショック”では対処不可と即座に判断し、第3の攻撃技で迎撃。

 大きく息を吸い込んだドラミドロの口から凝縮された水圧砲が噴射され、“ムーンフォース”と激突する。

 さすがにレベル差があり、しかも“ハイドロポンプ”はみずタイプ技全体の中でも五指に入る威力。

 空中での激突は次第にドラミドロ側が押し始め、勢いを止められた“ムーンフォース”はエネルギーの分解が始まる。

 

「あぁーーーーっとっ!! 技と技の熱い競り合いが続きますが、これはドラミドロ優勢かっ!?」

 

 ブルースがそう言った直後、それまで技同士の激突を腕組みして見守っていたベラが目を見開いた。

 

「……! しまった……!?」

 

 その視線の先には、ドラミドロの直下で花びらに“ムーンフォース”のエネルギーを集めているミスティがいた。

 

「(囮……!!)」

 

 そう。今“ハイドロポンプ”を放つドラミドロと対峙しているその先にミスティはいないのだ。

 同じ技でもポケモンの種類や性格、鍛え方によってはまるで異なる性質を持つ場合がある。

 威力では劣る“ムーンフォース”だが、ミスティの使用するそれは圧縮した球状のエネルギーを頭上に設置し、そこから集束したビームを放つという流れとなっており、そのエネルギーを使いきるまで自動で照射を続け、本体は自由に動き回れる。

 チャージに時間はかかるものの、いわば“置きムーンフォース”とでも呼ぶべき使い方ができるのである。

 だが、そんな“ムーンフォース”の使い方に遭遇した事の無いベラは、完全に不意を打たれた形となってしまう。

 そして、強者であるが故に今のこの状況を正確に理解する。

 すなわち、『詰み』であると。

 真下のミスティを攻撃するために“ハイドロポンプ”の噴射を止めれば、今は押している“ムーンフォース”が一気にドラミドロを飲み込む。

 が、噴射を止めなくとも真下から同じ技を撃たれて結果は変わらない。

 初めから《てきおうりょく》込みの“りゅうのはどう”を使っていれば、恐らくそこで決着はついた。

 その判断ミスが、結局はドラミドロを失う結果となったのだ。

 これこそ、弱者を嬲って楽しむ『遊び』とするベラと、持てる知恵と力をフル活用し、決死の覚悟で勝利に食らい付く『勝負』とするツバキ……2人のポケモンバトルへの認識と姿勢の違いが導いた状況だ。

 ドラミドロ自身もベラ同様に状況を理解し、自分の体力では継戦不可と判断した。

 そしてわずかに顔を横へ背けると、“ハイドロポンプ”を噴射したまま、見下ろすように真下へ射線を変更した。

 

「っ!? ラミー!?」

 

 命令していない行動を取った自身のポケモンに、ベラは驚きを隠せない。

 “ハイドロポンプ”はミスティに直撃はせず、また相手がくさタイプな事もあり、相討ちに持ち込むまではいかなかったものの、強烈な水飛沫は多少なりともダメージを与える事には成功した。

 無論、その代償として2方向からの“ムーンフォース”を全身に浴びる事にはなったが。

 どのみち自身が倒れるならば、せめてわずかでも相手にダメージを……その最後の足掻きを達成したドラミドロは、ビームの消滅と共に、黒煙と咆哮を上げながらゆっくりとその巨体をフィールドに横たえた。

 

「げほっ……ド、ドラミドロ戦闘不能っ! ラフレシアの勝ちっ!」

 

 ドラミドロが倒れた時に発生した砂埃でむせながら、審判がドラミドロの敗北を告げた。

 

「圧倒的な火力でフィールドを支配したドラミドロ! ついに! ついに敗れたぁぁーーーーっっ!!」

 

 ブルースはいつものように暑苦しくやかましい声で叫ぶが、ドラミドロをボールに戻すベラの耳にはその声が半分ほどしか入らない。

 なぜドラミドロがあれほどの執念で指示されていない攻撃を行ったのか。

 たかが遊びになぜそれほどまで……それこそ見苦しいと言えるほどに熱くなったのか。

 今のベラにはドラミドロの心境は理解できない。

 ただ、ドラミドロが力を尽くした上で倒れた事だけはわかっている。

 

「……お疲れ、ラミー」

 

 だから、何は無くとも労いの言葉だけは忘れない。

 ……本音を言えばマタドガスの時にも言ってあげたかったのだが。

 ともかく、精神の歪みがどれだけ大きくなろうとも、そのポケモントレーナーが最低限備えるポケモンへの思いやりだけは不変の物なのだ。

 

「(……でも……この感じは何……? ムカつくだけじゃない、この感情……)」

 

 ベラとて常勝無敗ではない。

 強豪トレーナーに敗北した事も1度2度ではなかった。

 だが、そもそもポケモンバトルを遊びや暇潰しとしか認識していないベラには勝敗そのものへの執着が無いに等しく、負けたところで思い通りにならぬが故の苛立ちが湧き上がる程度。

 だが、2体のポケモンを破られた今の彼女の胸中には、それまでとは異なる感情が膨らみつつあった。

 しかし、ベラはその未知の感情を拒絶するように首を振ると、次なるボールを手にした。

 

「……アンタの出番よ。ピース」

 

 投げられたボールから放たれた光は、巨大な円錐状の両腕を持った蜂の姿を作り出す。

 

 

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 1回戦でも使用された、どくばちポケモン『スピアー』だ。

 羽音が大きくなり、交差させた腕を振り抜くと同時に、離れた場所にいるツバキにまで風圧が届き、帽子は飛びそうになり、その髪を乱暴に靡かせる。

 マタドガスとドラミドロが弱かったわけではないものの、このスピアーは彼らよりもさらに格上である事がバトル前からわかる。

 以前のバトルで見せたドラピオンに勝るとも劣らない、窒息しそうなほどの圧力を含んだ覇気が伝わってくるのだ。

 

「ベラ選手の3番手はスピアー! 1回戦にてマユリ選手の使用するヘラクロス本来のタフネスをものともせず軽くあしらった驚異的スピードの持ち主! ここまでの2体とは大きく傾向が異なりますが、ツバキ選手はどのように立ち向かうのでしょうかっ!?」

 

 否。警戒すべきはスピードだけではない。

 幾重にも並んだ“ストーンエッジ”を、“ドリルライナー”で纏めて貫き、その先にいたヘラクロスをも空中へ撥ね飛ばすほどのパワーも持ち併せている、危険極まりない相手だ。

 技の構成も1回戦と同じとは限らず、一瞬気を抜くだけで壊滅的な被害を受けるであろう事は想像に難くない。

 

「この子を出したからには、もう調子付くのもおしまいよ。……力の差が絶望的って事をわからせてやるわ……!」

 

 暴君の放つ凶悪的なまでの圧がツバキを飲み込まんとする。

 だが、彼女はまだ気付いていない。ツバキとツバキのポケモン達の熱に引きずられるように、自身が『たかが遊び』に感情を昂らせ、闘志を燃やしつつある事に。

 

「では、スピアー対ラフレシア。バトル………………再開っ!」

 

「(あのスピアーは動きが速いから、普通に攻撃しても当たらない……それなら!)バラバラに“エナジーボール”!」

 

 素早く生成した緑色のエネルギー球から、細かな弾丸が散弾銃のように広範囲に発射される。

 むしタイプとどくタイプを持つスピアーにダメージは期待できないが、体重が軽く、耐久力もさして高くないので、攻撃を当てさえすれば動きは鈍る可能性がある。

 そこへ連続して攻撃を叩き込む事ができれば勝機も見えるはずだ。

 が、ヘラクロスが一撃を打ち込んで吹き飛ばした際は、逆にその勢いを利用して素早いリカバリーと反撃に繋げていた事を考えると、とにかく弾幕を張って相手に行動させないというのが重要だろう。

 

「速い相手への対処としてはセオリー通りね。もっとも、相手が常識の範疇を超えてたら意味が無いけどねぇっ! 全部見えてるわね、ピース! “どくづき”よ!」

 

 スピアーの複眼が真っ赤に明滅し、両腕を紫色のオーラが覆う。

 そして、羽の振動が激しくなり、少し後方へ身を引いたかと思うと、真っ向から“エナジーボール”の雨霰の中へと突進してきた。

 

「そんな……!?」

 

 スピアーは自身に被弾する弾道のエネルギー弾のみを正確に見極め、両腕の槍で次々に粉砕して道を切り開く。

 それがわずか2、3秒の間に行われ、5秒が経過する頃にはミスティがその槍の直撃を受け、地面を激しくバウンドしていた。

 

「……えっ!? ミ、ミスティっ!?」

 

 自分の足元まで転がってきたミスティに、ようやくツバキが気付いて視線を落とした。

 ミスティは両手をついてふらふらと立ち上がり、上空でホバリングして見下ろすスピアーを睨む。

 くさタイプとどくタイプの複合タイプであるミスティには、どく技は可も無く不可も無くといったはずなのだが、明らかに一撃のダメージが大きすぎる。

 スピアー自身に何かあるのではとよく観察してみれば、両腕の槍の穂先に細い針が括り付けられている。

 

「(あれはたしか……!)」

 

 ポケモン図鑑に内蔵された、公式戦使用可能な持ち物のリストで見た事がある。

 それはポケモンに持たせる事でどくタイプ技の使用時に威力を引き上げる、名前そのままの毒針という道具だ。

 圧倒的なスピードに加え、持ち物で補強されたあの火力……やはり真っ向から殴り合っても無駄な相手。

 どうにか搦め手でそのどちらかを封じなければ。

 

「(……まただわ。今の一撃で倒れてもおかしくないのに立ち上がってきた……どうなってるのよコイツのポケモン……!)」

 

 知識、経験、ポケモンの能力、バトルセンス。全て自分の方が上のはずなのに、攻撃も防御もこちらの想定を遥かに上回る力を発揮して食い下がってくる。

 初めは彼女の事は虐め甲斐のあるサンドバッグ程度にしか思っていなかったのに、気付けばこちらの喉元にまで食らい付くほどになっていた。

 一体何がこの少女とポケモンに力を与えているのか、ベラには皆目見当がつかない。

 ……ただ1つ言えるのは、これまでの雑魚どもと同じ感覚で相手をする事はできない、という事。

 胸の内に渦巻くこのわけのわからない感情を消すためにも、なんとしてでもコイツを打ちのめさなければならない。

 

「(叩き潰す……! 全力でぶちのめしてやる……!)」

 

 暴君の毒が猛威を振るうのはまだまだこれから。

 激しく燃焼する闘志がポケモントレーナーの本能を呼び覚まし、『遊び』が『死闘』へと変わりつつあった。

 

 

 

つづく




ここではあえて多くを語りませぬ。
続いてもう1話をどうぞ!
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