蒼天のキズナ   作:劉翼

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イソラサイドからツバキサイドへ戻る第11話です。
コロコロと場面転換ごめんなさい。


第11話:仲間を増やして次の街へ

 13番道路でニャスパーのナオを仲間に加えたツバキは、14番、15番道路の境目で技の練習に励んでいた。

 

「ポポくん、“ブレイブバード”!」

 

 大きく上昇したポポは、ある程度の高さまで来たところで急降下。翼を折り畳み、周囲の空気をオーラとして身に纏う。

 そして、標的である大きな岩に向かって猛然と突進していく。……が、その速度は見る見る落ちていき、岩に当たる頃にはコツンという音がする程度になっていた。“たいあたり”にすらなっていない。

 あからさまに気落ちするポポの肩を叩いて励ましながら、ツバキはこの結果を分析する。

 

「うぅん……やっぱり“でんこうせっか”のスピードを加えないと失敗しちゃうね……。あ、でも大丈夫だよポポくん! きっとたくさん練習すればできるようになるよ“ブレイブバード”!」

 

 と、ここでツバキは、手元が妙に暗い事に気付く。

 

「あれ……? あっ、た、大変! もう夕日があんなに沈んで……」

 

 そう、練習に夢中になっていたツバキは、時間の経過をすっかり忘れていたのである。

 セキチクシティまでは、まだ15番道路を越えねばならないのに、今まさに日が沈もうとしているのだ。

 

「うう……近くにポケモンセンターも無いし……テントを張って野宿するしかないかな……」

 

 自分の迂闊さを呪いながら嘆息するツバキだったが、突然背後から声をかけられる。

 

「……もし、そこの娘さん。何かお困りかな」

 

「ひゃあうっ!?」

 

 驚いたツバキが飛び上がり、恐る恐る振り向くと、そこには網笠を被った僧のような人物が、錫杖を持って佇んでいた。

 誰がどう見ても不審者なのだが、不思議と警戒心は湧かなかった。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「この辺りは夜になるとデルビルやグラエナの群れが跋扈する。早く家にお帰りなされ」

 

「あ、えっと……わ、わたし旅をしてて……予定では今日中にセキチクシティに着くはずだったんですけど、うっかりしちゃってて……」

 

 網笠で相手の顔が見えないからか、ツバキの人見知りはあまり発動せず、思いの外すらすらと現状説明ができた。

 

「ふむ、それはお困りであろう。よろしい、拙僧もセキチクシティに戻るところ故、よろしければご一緒しましょう」

 

 その言葉にツバキの顔がパアッと明るくなる。

 

「ほ、本当ですか!? あ、ありがとうございます……!」

 

「なに、旅は道連れと言うでな。では、急ぎましょうぞ」

 

 ツバキはポケモン達をボールに戻すと、先を歩き始めた僧の後を付いて歩く。

 しばらく歩くと、ツバキの緊張を解そうとしているのか、僧は世間話を持ちかけてくる。

 

「娘さんはどちらからいらした」

 

「えっと、グレンタウンです。ポケモンリーグに参加したくて、ジム巡りの旅をしてます」

 

「ふむ、グレンタウンからという事は、すでにクチバジムは突破なされたのかな?」

 

「かなり苦労しましたけど、なんとか」

 

「ふむふむ、それは重畳。では次がセキチクジムというわけですかな」

 

「はい、そうです。それでジム戦に向けて特訓してたんですけど……うっかりしてこんな時間に……」

 

「なるほど。なに、娘さんくらいの頃はむしろどんどん失敗なされよ。その経験も、必ずや後の助けとなるであろう。……む」

 

 ツバキの話に相槌を打っていた僧が、突然足を止め、右腕を伸ばしてツバキを制止する。

 ツバキも立ち止まって前を見ると、3体の獣型のポケモンが唸り声を上げながら近付いてきていた。かみつきポケモンの『グラエナ』だ。

 

「ひっ……!」

 

「下がっておられよ」

 

 怯えるツバキを下がらせると、僧はモンスターボールを取り出す。

 

「参れアリアドス!」

 

 投げたボールから姿を現したのは、巨大な蜘蛛の姿をしたポケモン。あしながポケモンの『アリアドス』である。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 地面に爪を突き立てて軽快に着地したものの、グラエナの内2体に吠えつかれ、一歩後退りする。相手を怯えさせ、攻撃に力が入らないようにするグラエナの特性《いかく》だ。

 

「(《いかく》持ちは2体……という事は、残りの1体は《はやあし》かな)」

 

 何事か考え込む僧を尻目に、グラエナ達が牙を剥いて一斉に飛びかかってきた。“かみくだく”だ。

 

「“ふいうち”」

 

 しかし、アリアドスの姿が一瞬にして消え、上空からグラエナの1体に爪で攻撃を仕掛ける。

 咄嗟の出来事に、グラエナ達は理解と対応が追い付かないらしい。

 

「今のグラエナに“どくづき”」

 

 そして、間髪入れず毒の滲み出た爪による“どくづき”で追撃が入る。

 

「“とどめばり”」

 

 さらに、アリアドスが口から吐き出した細い針がクリーンヒットし、最初の1体が倒れる。

 その瞬間、アリアドスの纏う空気が先ほどまでと大きく変わり、闘気が身体から溢れ出る。

 

「今のは……?」

 

「“とどめばり”は、相手にトドメを刺した時、己の戦意を大きく高揚させる技。これで《いかく》はかき消した」

 

 仲間が倒された事で激昂したグラエナは、左右に分かれ、片方は“かみなりのキバ”で、そしてもう片方は“ほのおのキバ”で同時に襲いかかってきた。

 

「ジャンプして地面に“ねばねばネット”」

 

 アリアドスは地に付いた4本の脚を器用に使ってジャンプすると、直前まで自分のいた場所に口から粘性の糸を吐いた。

 飛びかかっていたグラエナ達は当然“ねばねばネット”に突っ込む事になり、一塊になって身動きを封じられる。

 

「“どくづき”」

 

 そして、ジャンプした姿勢から前傾姿勢となったアリアドスが、両前脚に毒を纏わせ放った“どくづき”が2体のグラエナを直撃し、ノックアウトとなった。

 

「よくやったアリアドス」

 

 アリアドスをボールに戻した僧はグラエナ達に近付くと、懐から取り出したオボンの実を与えながら耳打ちする。

 

「これに懲りたら、もう人を襲うんじゃないよ?」

 

 小声だったのでツバキにはよく聞こえなかったが、木の実を食べて起き上がったグラエナ達は、そそくさとその場を走り去っていった。

 

「す……すごいです……! もしかして有名なトレーナーさんですか!?」

 

「はっは、何を仰るか。拙僧はただの世を儚む修行僧よ。さ、セキチクシティは目と鼻の先……参りますかな」

 

 やがて15番道路に設置されたゲートが見え、そこを通り抜けるとようやくセキチクシティへ到着した。

 

「ポケモンセンターはあちらの階段を上ってすぐ見えてくる。早く休まれるがよかろう」

 

「あ、ありがとうございました……! あの、わたしツバキって言います。えと、お世話になりました、さようなら……!」

 

 手を振ってポケモンセンターへ駆けていくツバキに手を振り返しながら、僧はポツリと呟く。

 

「ツバキ、か。ふふっ、面白い子だな。……待ってるよ、ツバキ」

 

 クスクスと小さく笑いながら背を向け歩き出した僧の姿は、やがて深夜のセキチクシティの闇の中に溶けていった。

 

 

 

つづく




今回も駄文、落書きにお付き合いいただきありがとうございました!

今回登場の不審者…もとい修行僧は、ちゃんと再登場します。
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