拙く粗い文章ですが、お許しを…。
ポケットモンスター……縮めてポケモン。
この世界では、ありとあらゆる場所でその不思議な生き物の姿を見る事ができる。
これは、1人の少女が、ポケモンや人々と触れ合いながらそんな世界へ踏み出す物語である。
カントー地方、グレンタウン。
地方最南端に位置するこの街は、周囲を海に囲まれ、他の街とは航路か空路によってのみ繋がっている。
一度は火山の噴火によってその大部分が喪われ、街として機能していない時期もあったが、人とポケモンの協力によって以前と変わらぬ姿へ復興していた。
……そんな街中を、1人の少女が息を切らせて港へ向かって走っている。
「……もぉ! なんで起こしてくれなかったのポポくん!」
少女にポポくんと呼び掛けられた1羽の鳥……いや、ことりポケモンの『ポッポ』は、少女の帽子の上に座り込み、「俺は起こしたぞ」と言わんばかりに溜め息を吐いている。
実際、少女の額にはクチバシの痕が残っており、ポポは何度も起こそうとしたのだろう。
「起きれなきゃ意味無いよぉ……でも、なんとか……間に合いそうかな……?」
まだ目的の連絡船が停泊している事に安堵した少女は、速度を落とし、息を整えながら歩き始める。
……と、そんな少女の前に……
「おめでとうツバキくん!」
「うひゃうっ!?」
ソフト帽とサングラスを身に付けた老人がどこからともなく現れ、祝福の言葉を投げかけてきた。
「……び、びっくりした……お、脅かさないでくださいカツラさぁん……!」
「かっかっか、スマンスマン!」
カツラと呼ばれた老人は、からからと笑いながら言葉を続ける。
「いよいよ君も10歳になってポケモントレーナーの仲間入りをすると思うと感無量でなぁ。……うむ、ポポくんも元気そうで結構結構」
カツラはツバキの頭の上からポポを持ち上げると、翼や尾羽を捲って確認を始める。
「羽毛も生え揃って、傷痕も目立たなくなったな、うむうむ。今だから言うが、ツバキくんがポポくんを連れてきた時は駄目だろうと思ったよ」
カツラは昔を思い出すかのように空を仰ぐ。
「ツバキくんが10歳だから……もう4年前か、酷い火傷と切り傷擦り傷……いつ命を落としてもおかしくない状態だったが、よくここまで回復したものだ」
「カツラさんと……お姉ちゃんが付きっきりで看病してくれたおかげです。ね、ポポくん?」
頭の上に戻されたポポは、同意するかのように一声をあげる。
「なんのなんの。……ところでツバキくんはジム巡りをするんだったね?」
「はい、ポポくんと一緒にポケモンリーグを目指します!」
ポケモンリーグ……腕に覚えがあるポケモントレーナー達が集まり、自慢のポケモン達をバトルさせる大規模な大会である。特にこのカントー地方で行われるリーグは、ポケモンリーグ運営本部のあるセキエイ高原で行われ、隣接するジョウト地方のトレーナーも参加するため、その規模は他地方の比ではない。
「うむ……道は険しいだろうが、諦めない心は忘れてはいかんよ!」
「はい!」
「おっと、忘れるところだった……ほれ、君に餞別だ」
カツラはポンと柏手を打つと、懐から赤い板のような機械を取り出す。
「……? カツラさん、これは……?」
「それはポケモン図鑑と言ってな、出会ったポケモンのデータが、自動で書き込まれるハイテクな図鑑なのだよ」
「えっ…良いんですか? もらっても……?」
恐る恐る訊ねるツバキに、カツラはカラカラと笑いながら頷く。
「そのために知り合いに頼んで送ってもらったのだ。ちなみにこれは最新のモデルでな……ポポくんをボールに戻してごらん?」
ツバキはいぶかしみながらも、腰のベルトから小さなボール……モンスターボールを外し、スイッチを押す。
すると、指先で摘まめるサイズから掌いっぱいにまで肥大化した。
そして、スイッチ部分からポポへ向けて回収用光線が放たれ、その身体を収納する。
「そして、この液晶部分にボールのスイッチを当てるんだ」
言われた通りにボールを当てると、画面に様々な情報が写し出される。
〈ポッポ〉
〈ノーマル、ひこうタイプ〉
〈レベル:8〉
〈特性:するどいめ〉
「これ……もしかしてポポくんの……?」
「そう、個体情報を登録する事によって、手持ちポケモンの詳しいデータをいつでも閲覧できるのだ! ちなみにそのレベルというのは、ポケモンのおおまかな強さを数値化した物だ。最も、あくまで目安……ポケモンの強さは、トレーナーとの信頼関係など様々な要因で変動するからね」
「わぁ……ありがとうございます!」
「ちなみに技も確認できるぞ。えーと、ポポくんの覚えている技は…………! なんと……」
情報を確認していたカツラは、技の欄を見て目を丸くする。
「まだ上手くいってないんですけど……えへへ……」
「ふぅむ……これは興味深いな…………と、いかんいかん、少し時間を取らせ過ぎたか」
カツラの思考を遮ったのは、港から聞こえるアナウンスだ。
「クチバシティ行き連絡船、間もなく出港いたします。お乗りのお客様は……」
「あわわ、そうだった! あの、カツラさん! ありがとうございました!」
ツバキは慌てて走り出し、油断していたポポが頭の上から転げ落ちるが、どうにか羽ばたいて持ち直し、ツバキの後に続く。
「頑張るんだぞぉ! 何事も諦めたらそこで試合終了だからなぁ!」
ツバキが船に乗り込んだのを確認したカツラは、帽子を持って振っていた手を下ろして息を吐く。
「……ポケモンの道は一日にして成らず……頑張るんだぞツバキくん」
新たな若人の旅立ちを見送ったカツラは、帽子を被り直すと、静かにその場を去っていった。
ポケモントレーナーを志し、旅に出る者は少なくない。だが、その半分ほどは見事リーグへの切符を手に入れるが、もう半分は度重なる挫折に、リーグ出場前に故郷へ帰ってしまうという。
果たしてこの新米トレーナー、ツバキはそのどちらとなるのであろうか……。
つづく
初っぱなから長い雑文を読んでいただき、ありがとうございました。
更新は不定期となりますので、気長にお待ちいただけると幸いです。
それではまた、ノシ