蒼天のキズナ   作:劉翼

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ハナダジム戦開始となる40話です!それではどうぞ!


第40話:変化する事、水の如し!変幻自在のハナダジム!

 ハナダシティ。

 この街自体には注目すべき場所はあまり無いが、カントー地方の電力を支えるカントー発電所、デートスポットとして名高い25番道路、ポケモン転送システムの開発者にしてボックス管理者、そして名うてのポケモンマニアで知られるマサキ氏の住居など、観光名所ではないが多方面で需要の多いスポットの中継点となっている。

 極めつけが街から少し離れた北西部に存在する謎の洞窟であり、内部は強力な野生ポケモンがひしめき、幾度もトレーナーや協会のチームが調査に立ち入ったものの、いまだその全貌は解明されていない。

 ……そしてそんなハナダシティの一角、ハナダジム。

 審判を務めるクロタのバトル開始の合図と共に、2人のトレーナーが同時にポケモンへの指示を叫んだ。

 

「“たつまき”!」

 

「バ、“バブルこうせん”!」

 

 ポポが翼をはためかせて3つの風の渦を作り出し、ハスブレロを取り囲むように攻撃するが、ハスブレロは驚異的なスピードでその合間をすり抜け、空中のポポに向かって勢いよく泡を吐き出した。

 

「旋回してよけて!」

 

 数は多いが、直線状に纏められて発射されたため、回避はそう難しくはない。

 ……しかし、これが罠だった。

 

「……あっ!? こ、これは……!」

 

 ポポにかわされた“バブルこうせん”の泡は、ジムの天井に当たって拡散し、フィールドの空中を無数に漂う浮遊機雷へと変貌したのである。

 

「(やはり対策していたか……あの複合タイプの数少ない弱点の1つはひこうタイプ。あれはそのひこうタイプから、空中を飛べるというアドバンテージを奪うための戦術か)」

 

 イソラの指摘通り、ポポは周囲を泡に囲まれ、身動きの取れない状態になってしまっていた。

 

「ポ、ポポくん、脱出して!」

 

 ポポはどうにか泡の合間を縫って、泡の無い高さまで下りようとするが、必然そのスピードは著しく低下し、隙だらけとなる。

 

「こ、“こごえるかぜ”ぇ!」

 

 そこへハスブレロが強烈な冷気を吹き付けて追撃してくるのだから、たまったものではない。

 効果抜群のこおり技を全身で浴びてしまったポポは、泡に当たりながらフィールドへと落下した。

 

「ポポくんっ!」

 

 起き上がって土煙を払ったポポだが、どうにも動作が重い……と、よく見ればポポの翼に大量に霜が付着している上、部分的に凍ってしまっているではないか。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「(まずいな……翼をもがれた鳥ポケモンなど、陸に打ち上げられたコイキング同然だ。“すなかけ”も“たつまき”も翼を使うし、“でんこうせっか”と“ブレイブバード”は空中での機動力を活かした技……どうする、ツバキ……?)」

 

 ポポは凍結した翼をどうにかしようと振り回すが、わずかな霜が飛び散るばかりだ。

 

「(ど、どうすれば良い……? あの氷をなんとかしないと、技を出せない……!)」

 

「ハ、ハスブレロ! “あまごい”ぃ!」

 

 ツバキの悩む間にも、相手は次の手を打ってくる。

 フィールド上空にもくもくと雨雲が現れ、屋内にもかかわらず雨を降らせ始めたのだ。

 

「あ、雨……?」

 

「(雨が降っている間は、みずタイプの技は威力が上がる……相手の動きが鈍っている間に悠々と自分に有利な状況を作り出すか……やはり強い……!)」

 

 しかも、雨が降り始めてから、ハスブレロがかなり機敏に動いており、特性《すいすい》によって素早さを補強しているようである。

 

「ハスブレロ! バ、“バブルこうせん”っ!」

 

 動きに大きく制限のかかったポポに対し、容赦の無い追撃が行われる。

 

「っ! 翼で受け止めて!」

 

 ツバキの指示に従い、ポポは左右の翼で身体を守るように“バブルこうせん”を受け止める。

 すると、ダメージも当然あるものの、同時に“バブルこうせん”で霜が払われ、氷が溶けて砕けていく。

 

「(うっ……!? あ、あえて技を受けて氷を……!? ピ、ピジョンはそんなに頑丈なポケモンじゃないのに……!?)」

 

 ルイとしては、相手が不自由ながらも攻撃をよけようとし、無防備になったところへさらに連続攻撃を仕掛けて勝負を決めようと考えていたため、正面から受けられたのは誤算だ。

 というのも、臆病なルイの性格からして、『(耐久型のポケモンを除いて)相手からの攻撃は回避する物』という認識が強かったのが大きい。

 

「ポポくん、行ける!?」

 

 残った欠片を払い落とし、ポポが答えるように大きく翼を広げる。

 

「うんっ! 反撃、行くよ! “でんこうせっか”!」

 

 ポポが大きく……は、飛び上がらない。

 下手に高度を上げて、先ほどのような窮地に陥ってしまってはかなわない。

 低空飛行で器用に加速していき、ハスブレロの周囲を飛び回って、その背後から強烈な一撃を加えた。

 

「あわわわわ……! は、速すぎますよぉ……! だ、だ、大丈夫!? ハスブレロ!」

 

 背後から攻撃されたために、顔面からフィールドに突っ込んでしまったハスブレロが起き上がり、首を振って砂を落とすと、両腕を振り回して闘志をたぎらせる。

 

「よ、良かった……。じゃ、じゃあ、“こごえるかぜ”!」

 

 再度“こごえるかぜ”によって動きを封じようと目論むが、ツバキもその辺りは学習している。

 

「ポポくん、“たつまき”!」

 

 ポポが羽ばたいて巻き起こした“たつまき”が“こごえるかぜ”を巻き込み、超低温の暴風と化してハスブレロを襲う。

 

「プ、プールに飛び込んで!」

 

 間一髪、“すいすい”による素早い動きでプールへと飛び込んだハスブレロは“たつまき”を回避し、次なる攻撃の機を窺う。

 一方のツバキとポポは、“たつまき”でプールの水を多少巻き上げたものの、完全にハスブレロを見失ってしまった。

 高所から探したいが、それは最初の“バブルこうせん”の悪夢を再度呼ぶ事になるだろう。

 

「ポポくん、“でんこうせっか”で飛び回りながら探して!」

 

 “でんこうせっか”のスピードならば、水中からの奇襲もそうそう上手くはいかないはずだ。

 

「バ、“バブルこうせん”!」

 

 プールから飛び出したハスブレロが、“バブルこうせん”でポポを襲撃するも、やはり“でんこうせっか”の速さを捉える事はできないらしく、ポポに掠める事すら無い。

 また、この高さでさっきのような浮遊機雷にすると、自分の動きも阻害してしまうためか、今度の“バブルこうせん”は弾力を弱めてあるようで、泡は壁に当たって割れる。

 

「“すなかけ”!」

 

 ポポが地面すれすれを滑空し、尾羽を使ってハスブレロに向けて砂を巻き上げる。

 

「ハ、ハスブレロぉっ! ……う~……こ、“こごえるかぜ”!」

 

 視界の利かない状態で正面に“こごえるかぜ”が放たれるが、ポポには当たらず、ハスブレロの脇をすり抜けていった。

 だが。

 

「っ!?」

 

「……ほう」

 

 ツバキが驚愕し、イソラが感心したような声を上げる。

 なんと、“こごえるかぜ”によってフィールド表面が凍ってしまったのだ。

 

「(最後っ屁という奴か……ポポはともかく、地に足を付けるポケモンは苦労するぞ)」

 

「くっ……! “ブレイブバード”!」

 

 ハスブレロの脇をすり抜けたポポが急上昇した後に急降下、空気を裂いてハスブレロに頭上から突撃する。

 気配は感じているものの、目の見えないハスブレロは右往左往してしまう。

 

「ま……真上に“れいとうパンチ”ぃ!」

 

 目は見えずとも耳は健在。

 ルイの指示が届いたハスブレロは、冷気を拳に纏わせ、真上に向けて全力で突き出した。

 直後、技同士のぶつかり合いによって大爆発が起き、爆煙がフィールドを覆った。

 

「ポ、ポポくん……!」

 

 そして煙が徐々に晴れると……ポポとハスブレロは重なるようにして揃って目を回していた。

 “ブレイブバード”のオーラと正面からぶつかった“れいとうパンチ”は、表面の冷気こそ大部分が消えてしまったが、拳そのものはオーラの中のポポを直撃し、ポポはそれまでのダメージと“ブレイブバード”の反動も重なって倒れ、ハスブレロは弱点タイプの大技の直撃によって倒れたのだ。

 

「……ハスブレロ、ピジョン、共に戦闘不能! 引き分け!」

 

 クロタによるジャッジの声。

 2人は同時にポケモンをボールへと戻す。

 

「……お疲れ様、ポポくん。休みながら待っててね」

 

「あう……ご、ごめんねハスブレロ……お疲れ様……」

 

「(1戦目から引き分けとは……相性で不利なハスブレロでそこまで持っていったのだから、これは油断できんな……)」

 

 ポケモンの数で言えば引き分けの互角だが、フィールドを凍らされ、雨も降り続け、相手はプールも活用できるとなれば、どちらかと言うとツバキ側の不利と言える状況となった。

 

「……に、2番手……お、お願いっ! トドグラー!」

 

 ハスブレロに続いてルイが繰り出したのは、たままわしポケモン『トドグラー』だ。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「(トドグラーは…………こおりとみず……! ミスティは危ない……なら!)……お願いね、ナオっ!」

 

 対するツバキの2番手は、ルーシアと入れ替わりにしばらくボックスに預けられていたナオだ。

 

「(なるほど、ナオならば超能力で浮遊して、凍結したフィールドの影響を受けない……考えたなツバキ)」

 

 ナオは足元が凍っているのを確認すると、お気に入りのモンスターボールをツバキに預けて浮遊する。

 

「それでは、トドグラー対ニャオニクス。バトル……開始っ!」

 

 2戦目開始の合図がフィールドに響く。

 

「ナオ、“サイコショック”!」

 

「トドグラー、た、“たくわえる”!」

 

 ナオがサイコエネルギーを物質化すると同時に、トドグラーは大きく息を吸って身体に力を込める。

 そして、サイコエネルギーの塊が投擲され、トドグラーにヒットした……が、思ったほどのダメージは無いらしい。

 どうやら、ハスブレロほどの機敏さが無い代わりに、非常に頑強なようだ。

 

「(“たくわえる”は、大きく力を溜め込み、物理攻撃にも特殊攻撃にも耐性を付ける強化技だ……なるほど、ハスブレロとは異なり、耐久型のポケモンというわけか)」

 

「ア、“アクアリング”ぅ!」

 

 トドグラーの周りに、大気中の水分が2重の輪を描き、リングとなってその身体を覆う。

 

「わぁ、綺麗……じゃなくって! ナオ、弱点技で一気に決めよう! “10まんボルト”!」

 

 ナオの毛が逆立ち、その身体が帯電を始める。

 バチバチという音と共に、電気の流れが目視できるほど膨大になると同時に、トドグラーへ向けて放たれた。

 

「“たくわえる”ぅ!」

 

 トドグラーがさらに力を溜め込み、ますます頑強さを増す。

 “10まんボルト”が直撃し、確かにダメージはそこそこあるようなのだが、トドグラーはまだまだ余裕がありそうだ。

 しかも“アクアリング”が光り、トドグラーが多少元気になった。

 

「(“アクアリング”は時間経過と共に体力を回復し続ける技……長期戦は相手のペースに乗せられるだけだが、“たくわえる”で打たれ強くなっているので、どうしても時間はかかるか……)」

 

「み、“みずのはどう”っ!」

 

 トドグラーの口の前に大量の水が集まり、集束されて一直線にナオへと発射された。

 

「ナオ、“ひかりのかべ”!」

 

 ナオはそれに対してエネルギー体の障壁を作り出して受け止める。

 雨が降っているとはいえ、障壁によって大きく威力の減衰した“みずのはどう”は、ナオにはほとんどダメージを与えられなかった。

 ……しかし、ナオの様子がおかしい。

 

「っ!? ナ、ナオっ!?」

 

 突然、超能力が切れてフィールドに落下し、さらに身体を地面に叩き付け始めたのだ。

 “みずのはどう”の追加効果で、混乱してしまったのである。

 

「しっかりしてナオ! わたしの声聞こえる!?」

 

 だが、ナオはツバキの声にも反応せず、フィールドを走り回って氷で転ぶ。

 そうこうしている間にも、トドグラーは“アクアリング”でダメージを回復していってしまう。

 

「ト、トドグラー! オ、“オーロラビーム”!」

 

 混乱するナオへ向け、トドグラーの口から7色に輝く煌びやかな光線が発射される。

 ナオは当然よけられずに直撃してしまい、無抵抗のまま吹き飛ばされて壁に叩き付けられた。

 

「ナ、ナオぉっ!」

 

 パラパラと音を立てる壁の破片と共に床に落ちたナオが、ふらつきながら立ち上がる。

 ……と、その身から発せられる雰囲気が大きく変化した。

 

「えっ……?」

 

「(あれは……《かちき》が発動したのか? ……そうか、確か“オーロラビーム”には、稀に相手の攻撃を下げる効果があった……それに反応したか!)」

 

 正気に戻って浮かび上がったナオの目が怒りに染まり、鋭い視線がトドグラーに向けられる。

 全身からサイコエネルギーが溢れるナオに睨まれ、トドグラーは思わず竦み上がって後退りしてしまう。

 おまけに、ナオに恐れを抱いたかのように雨が止んでしまった。

 

「(な、なんだかあのニャオニクス……さっきまでと全然違うよぉ……!)」

 

 《かちき》持ちのニャオニクスは珍しいためか、ルイは何が起こっているのかを正確には把握できていないが、直感的にヤバい事態である事は察しているようだ。

 

「ナオ! “10まんボルト”!」

 

 先ほどとは比較にならない規模の電力が瞬く間にナオの周囲を覆い、それが一気にトドグラー目がけて放射された。

 《かちき》で大きく強化された弱点技の“10まんボルト”……さしものトドグラーもこれはかなりキツいようで、もがき苦しんでいる。

 ……が、そこはさすがの耐久力。体力の半分近くを持っていかれはしたものの、それでもなお闘志は衰えない。

 

「た、耐えられた……! よ、よしっ! トドグラー、連続して“みずのはどう”!」

 

 トドグラーによる反撃として、出力を抑え、代わりに連射能力を引き上げた“みずのはどう”が次々に発射される。

 

「ナオ! 動き回ってよけて!」

 

 超能力によって浮遊したナオは、ふわりふわりと不規則に浮沈を繰り返し、“みずのはどう”を回避するが、これもトドグラーの時間稼ぎだ。

 ナオが回避に集中している間に、“アクアリング”で回復しようという思惑である。

 が、当然の事ながらツバキはそれを許したくはない。

 

「(イチかバチか……一気に行くしかない……!)ナオ! “ひかりのかべ”を出して突っ込んで!」

 

 ナオは前面に“ひかりのかべ”を展開すると、まっすぐにトドグラーへと突撃を敢行する。

 雨が止んだ上に、連射と引き換えに出力の下がった“みずのはどう”は、“ひかりのかべ”を透過するとほぼ水しぶき同然でダメージは皆無に近い。

 それでも混乱のリスクは残っているが、構わずに突っ込んでいき、とうとうトドグラーの懐へ潜り込んだ。

 

「あっ……!!」

 

「“10まんボルト”!」

 

 膨大な電気が至近距離からトドグラーを襲い、凄まじい電撃の音と光が周囲を覆った。

 

「ト、ト、トドグラぁーっ!」

 

 音が消え、光が弱まると、ツバキとルイは同時に目を開く。

 そこには倒れたトドグラーと、勝ち誇るナオがいた。

 

「……トドグラー、戦闘不能! ニャオニクスの勝ちっ!」

 

 クロタの宣言と共に、ナオがツバキへと抱き付いてきた。

 

「ナオっ! えへへ、ありがとうナオ……♪」

 

「うぅぅ~……ごめん……ごめんねトドグラー……」

 

 ルイは暗い表情でトドグラーをボールに戻し、最後のボールを手に取る。

 

「……い、いよいよ最後……です……。で、でも! この子は……ひ、一味違いますよっ!」

 

「……!」

 

 ボールを突き出し、それまでに無い(彼女にしては)強気な言葉に、ナオと喜び合っていたツバキの表情に緊張の色が浮かぶ。

 果たして、ルイがそこまでの自信を持つ最後の1体とは……?

 

 

 

つづく




今回も駄文雑文落書きへのお付き合い、ありがとうございました!

改めて確認したら、すでに投稿開始から2ヶ月経ってたんですね!
……2ヶ月&40話かけてやっと5個目のバッジ取ろうってとこかぁ……。



追記:“オーロラビーム”の追加効果が攻撃でなく素早さになっていましたので修正。失礼いたしました。
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