いつもより投稿が遅れて申し訳ありません。
ワシは悪くねぇ、会社だ、会社が悪いんだ……!
ハナダジムリーダー・ルイに3対3のジム戦を挑んだツバキは、ポポを失いながらもハスブレロ、トドグラーの2体を倒し、数の上で優位に立つ事に成功した。
しかし、弱気なはずのルイは最後の1体であるにもかかわらず、強気な発言を繰り出す。
「ト、トレーナーレベル5の人で、この子を突破した人は…………な、何人でしたっけ、クロタさん……?」
「……2人です」
「そ、そう! 2人しかいないんです!」
自信満々かと思いきや、言葉に詰まって視線を泳がせたルイは、今度は自信無さげにおずおずとクロタに尋ね、答えを得るや再度自信満々にボールを突き出す。
まぁ、これまでジム戦を担当してきたのがクロタなので、仕方ない部分もあるにはあるが……。
「と、ともかくすごいんですね!?」
「と、ともかくすごいんです!」
「(なんだこの会話……)」
どうにも性格の根っこ部分の波長が合うのか、ツバキとルイの2人だけだと、ツッコミ不在の漫才のような会話になってしまうらしい。
「と……というわけで……! こ、この子でお相手です! お願いっ! ラグラージ!」
先ほどとはうって変わって、ルイはかなり気合いの入った投擲を見せ、空中で開いたボールから、フィールドにポケモンのシルエットが現れた。
全体的に青い身体、頭部と尻尾には大きな黒いヒレ、そしてたくましく発達した前腕と、強靭な肉体を支える太い後脚。
ぬまうおポケモンの『ラグラージ』である。
「(みずとじめんの複合タイプ……くさタイプ以外に弱点を持たない、耐久力に優れたタイプ構成だ。中でもラグラージは、かなりのパワーファイター……しぶとさとパワーを併せ持つ難敵と言えるだろう)」
ラグラージとナオが向かい合い、火花を散らす中、クロタが右腕を振り上げ……。
「では、ラグラージ対ニャオニクス。バトル……開始っ!」
一気に降り下ろした。
「ナオ、“サイコショック”!」
先手を打ったのはツバキだ。
両手の中に円盤状のサイコエネルギーを実体化して、ラグラージを左右から挟み込むように投擲する。
「い、“いわなだれ”で防御!」
ルイの指示と共に空中に岩塊が出現し、ラグラージの左右に落下……迫っていた“サイコショック”に対する盾となった。
「防がれた……!?」
「こ、今度はこっちから……! た、“たきのぼり”ぃ!」
空中に発生した水流がラグラージの両腕をグローブのように覆い、一直線にナオへと突っ込んでくる。
鈍重そうな見た目とは裏腹に侮れないスピードであり、ナオはよけられずに強烈なアッパーを受けてしまい、くるくると回りながら吹き飛ばされた。
……が、どうにか超能力で体勢を立て直し、ラグラージに睨みを利かせる。
「ナオ! まだ大丈夫!?」
ナオはちらりとツバキへと目を向け、静かに頷きを返す。
「(……とはいえ、離れて攻撃すると“いわなだれ”で防御されて、近付くと“たきのぼり”……それに、まだ見せてない2つの技も気になる。意外とスピードは速かったけど、しっかり距離を取れば反応できなくも無いし、遠距離攻撃を持ってるかも……)」
ツバキの予想では、ラグラージの残りの技は遠距離攻撃用の技を1つと、もう1つが搦め手系の技という構成だ。
無論、技全て攻撃用という可能性もあるが。
「(それなら、こっちの方が小柄なのを活かして、スピードと体格で相手に捉えさせない戦い方を……!)ナオ、“サイコショック”を小さくして連射! 攻撃しながら近付いて!」
両手にサイコエネルギーを蓄えたナオが、飛翔してラグラージへと接近する。
そして両手のエネルギーの塊を、少しずつ小さな円盤状へと成形して次々に投擲し、ラグラージの反撃を牽制する。
「ち、近付いてきた……! い、“いわなだれ”ぇっ!」
それに対してラグラージは、自身の前面に大量の岩を落として壁代わりにする。
岩の壁を乗り越えてくるならば引き続き“いわなだれ”で攻撃し、左右に迂回してくるならば、両手に水を集めて“たきのぼり”を応用したパンチをお見舞いする算段だ。
神経を尖らせて虎視眈々と待ち構えるラグラージだが、ナオは一向に姿を現さない。
と、その時、ラグラージの視界の端を何かが横切り、すかさず水流を纏ったパンチを叩き込んだ。
「っ!! サ、“サイコショック”……!? ラ、ラグラージ、上!」
時すでに遅し。
“サイコショック”のエネルギー盤でラグラージの視線が外れた一瞬の内に岩を飛び越えたナオは、小さな身体を活かしてラグラージの懐へ潜り込み、手に残ったありったけのサイコエネルギーを直接ぶつけた。
「(この距離なら“いわなだれ”は自分を巻き込むし、“たきのぼり”は足元に打ち込むには大振りすぎる……! ラグラージはナオの小さい身体を捉えられないはず……!)」
ツバキがちらっと見ると、ルイはラグラージの足元をうろちょろするナオの素早さにあわあわして、当のラグラージも自分の体格が災いしてナオを見つけるのも困難な様子だ。
「(行けるかも……!)ナオ、そのまま“サイコショック”!」
ラグラージの周囲や股下を動き回りながら、ナオは両手を突き合わせてサイコエネルギーを増幅させていく。
しかし、それを見たルイの指示が、ツバキのこの時点での勝機を奪う。
「ミ……“ミラーコート”ぉ!」
「えっ……?」
ラグラージの表面を虹色の膜が覆うと同時に、ナオの手から“サイコショック”が放たれる。
しかし、直撃したはずのエネルギー盤とラグラージの身体が拮抗し、エネルギー盤が見る見る内に肥大化していく。
「えっ? えっ?」
困惑するツバキをよそに、ナオの身体と同じくらいまで大きくなったエネルギー盤が跳ね返り、逆にナオを直撃した。
「ナ……ナオぉぉーーーーっっ!!」
力無く宙を舞ったナオの身体が、フィールドの外へと落下し、あわやプールに落ちるというタイミングで、ツバキが両腕を伸ばしてキャッチに成功した。
「うぅ……ナ、ナオはもうダメみたいです…………お疲れ様、ナオ……よく頑張ったね」
ツバキはクロタに目を回したナオを見せる。
「……ニャオニクス、戦闘不能! ラグラージの勝ちっ!」
それを見たクロタが高らかに宣言し、ラグラージが両腕を上げて勝ち誇る。
そのはりきり具合からして、少なく見積もってもまだ体力は3分の2以上残っていそうだ。
「“ミラーコート”は特殊技で受けたダメージを倍増して跳ね返す奇襲技だが、自分もダメージ自体は受けている……さすがにタフだな、ラグラージは……」
ラグラージはタイプ構成だけでなく、種族としての能力もまたかなりのタフネスを誇り、攻守に隙の無い強力なポケモンなのである。
「(さて、ツバキの3体目は恐らく……)」
ナオをボールに戻したツバキは、別のボールを握り、じっと見つめている。
「(今回のジム戦……全てはあなたに掛かってる……わたしも精一杯頑張るからね……!)……お願い……! ミスティっ!」
目を閉じ、自身の想いを込めるようにギュッと握ったボールを、開眼と共に勢いよく放り投げた。
ボールから飛び出したミスティは、“こごえるかぜ”で凍ったフィールドに面食らいつつも、なんとか体勢を安定させる。
「ミスティ! かなり足場が悪いけど、ここで頑張れば5個目のバッジが取れるかもしれないの! だから一緒に頑張ろうっ!」
ツバキの檄を受けたミスティは、葉をぶんぶんと振り回して戦意を高めている。
「(ツバキさん……前のピジョンも、ニャオニクスも、あのナゾノクサも……本当にポケモンと信頼し合ってるんだなぁ……それに引きかえ……)」
ルイは目を細めてラグラージの背中を見つめる。
「(ボクは……ボクはポケモンを信じてるけど、ポケモン達は……? ……ジム戦から逃げてばっかりのボクは、ポケモンに信頼されてる……? そんなんでポケモンにボクを信じてって言える……?)」
「では、ハナダジム戦最終戦を始めます!」
思索の波に拐われそうになったルイだったが、クロタの声で現実に引き戻され、頭を振って思考を切り替える。
「ラグラージ対ナゾノクサ。最終バトル……開始っ!!」
今度もツバキが先制する。
「ミスティ、“どくどく”!」
思うような動作ができそうもない氷のフィールドでは、下手な動きは自滅を招く。
まずは現在位置から状態異常の付加を狙う事にしたようだ。
「っ! プ、プールに逃げて!」
猛毒の液は、飛び散った飛沫ですら皮膚に付着すれば瞬く間に肉体を蝕むだろう。
だがそんな毒液も、この膨大な量の水の前には無力だ。
バックステップでプールに飛び込んだラグラージは、水中を泳いでミスティの死角へと忍び寄る。
フィールドの周りは全てプール……どこから現れてもおかしくはない。
「ミスティ、冷静に。いつでも技を出せる準備をしておいてね」
ツバキは水面をじっと見つめ、わずかな変化も見逃すまいとする。
ラグラージほどの体躯ならば、どんなに泳ぎが上手かろうと、一切水面を乱す事無く浮上するなど不可能のはずだからだ。
「(す、すごい……ツバキさんとナゾノクサ……話し合いもしてないのに、それぞれ違う方を監視してて死角が無い……!)」
ツバキが左の水面を見れば、ミスティはその反対、右側に注意を配る。
ミスティが左を見れば、今度はツバキが右を注視する。
阿吽の呼吸というのはこういう事を指すのかと、ルイはバトル中にもかかわらず感心する。
「(って、いけない……! ラグラージもずっと水中で息が続くわけじゃないんだ……!) れ、“れいとうビーム”!」
ミスティの左後方の水面が揺れ、ラグラージが猛スピードで浮上してくる。
「左後ろっ! “エナジーボール”!」
最も大きい物を除いた4枚の葉を4方向に向けていたミスティは、ツバキの指示が飛んだ方向の葉から小さめの“エナジーボール”を射出する。
それはちょうど水中から飛び出したラグラージの顔面にヒットし、口から放とうとしていた“れいとうビーム”は見当外れの方へと発射された。
小さいとはいえ、いわゆる4倍弱点となる技を受けてはさしものラグラージも堪える。
「ラ、ラグラージぃ! こ、こっちに戻ってきて!」
ラグラージはルイ側から這い出て、フィールドの上へと戻る。
「(ま……負ける……! ラグラージ自身は強いのに……ボクがもたついてるから……や、やっぱり……ボク……)」
ルイの思考が黒く染まりかけたその時、ラグラージがルイの方を振り向いて一声吼えた。
「えっ……ラ、ラグラージ……?」
ルイを見つめるその瞳は、不手際を責めたり、嘲笑するようなそれではない。
それはむしろ……。
「もっと自分を信じろ」
そんな声が聞こえた瞬間、ルイの脳裏を駆け回る、ジムリーダー就任までの道。
「ルイ~♪」
そうだ……ポケモン達の身体を洗っていたボクに、カスミさんが声をかけてきて……驚くような事を言ったんだ。
「じ、次期ジムリーダーに推薦……? な、なんでですかぁ……!?」
本当にカスミさんは突拍子も無い事をしたり言ったりする人。
「私が相応しいって思ったから! ルイはいっつもポケモン達のお世話してくれてこの子達を熟知してるし、たまにやる模擬バトルだって、やる度にメキメキ実力を付けてる。ルイにとっては普通かもしれないけど、並のトレーナーが羨ましがる成長速度なんだからね? もっと自分を信じなさいよ♪」
……自分を信じる……。
「……か……勝っちゃった……試験官さんに……」
自分を……。
「ルイ、これからはあんたがハナダのジムリーダーよ。ジムとポケモン達の事、よろしくね」
ポケモンを……。
「ルイさん、ポケモン達もたまにはあなたと共にバトルしたそうですよ? 少しはご自分を信じてはいかがです?」
ポケモンを信じる……そんな自分を……!
「(……そう……そうだったんだ……ポケモンに信じられてるかじゃない……大事なのは……ポケモンを信じてる自分を…………!)」
不思議とルイの頭の中がスーっと風が抜けるようにすっきりしていく。
なんの事は無い。
信頼という物が互いを信じる事で生まれるならば、ポケモンに信じられているのか、という不安は、ポケモンを信じる自分自身を信じられていなかったという事だったのだ。
「……ラグラージ」
ルイとラグラージの視線がぶつかる。
「大丈夫、ボクを信じて」
自分が信じれば、ポケモンも信じてくれる……そう、はっきりとした自信を持てば良いだけの話だった。
ポケモンに自信を持つのはトレーナーとして当たり前。大事なのは、自分にも自信を持つ事なのだ。
「ツバキさん……今は油断しましたけど……ボクもラグラージもまだまだ行けます。簡単に負けるつもりはありません!」
突如として雰囲気の変貌したルイにツバキは驚きつつも、次の瞬間には笑みを浮かべていた。
「……はいっ! お願いします!」
「……行きますっ! ラグラージ、“れいとうビーム”!」
吹っ切れた表情のルイは、別人のようにはきはきと指示を出し、心なしかラグラージのやる気も違うように見える。
さて、凍ったフィールドでの遠距離攻撃……やられる側としてはたまったものではないが、相手は待ってなどくれない。
しかも、こおりタイプの“れいとうビーム”は、ミスティへは効果抜群……当然の事ながらマトモに受けるわけにはいかない。
「転がってよけて!」
氷の上を少し滑ったミスティは前転の要領で転がり、“れいとうビーム”はその頭上を通りすぎる。
先に述べた通り、ここは氷上……1度転がり始めれば、そう簡単には止まらない。
ミスティは氷上を滑走してラグラージへと急接近する。
「ラグラージ、“いわなだれ”っ!」
そんなミスティに、頭上から無数の岩塊が襲いかかる。
「ミスティ! “エナジーボール”で迎え撃って!」
5枚の葉から“エナジーボール”を射出して撃ち落とすが、落ちる岩を片っ端から迎撃しては、いくらなんでも手……もとい葉が足りないので、本当に直撃コースとなる物のみを落とす事に集中する。
が、周囲に落下した岩が氷を砕き、飛び散る岩と氷の破片がミスティに着実にダメージを与える。
「岩に集中しすぎて、動きが単調になってますよ! “れいとうビーム”!」
「うっ……!?」
ラグラージの口から青白い光線が発射され、岩への対応に追われるミスティに迫る。
滑って移動していた上、直前まで別の行動を取っていたミスティでは回避は間に合わず、正面から当たった光線がその身を凍てつかせる。
「ミ、ミスティ!」
幸いにして氷状態とはならなかったものの、弱点技を受けたミスティは、寒さも相まってガチガチと震えている。
「(ルイさんの指示も、ラグラージの気迫も、さっきまでとはまるで別物……! どうすれば突破できる……!?)」
ツバキは思考を巡らせ、氷に阻まれたこの状況を打開してラグラージに勝利する策を思案する。
「(下手な“エナジーボール”は“ミラーコート”で大ダメージになって返ってくるけど、勝つにはこれを撃ち込むしか……なら、“ねむりごな”で無抵抗にする必要がある……でも……)」
泳げも飛べもしないミスティが確実に“ねむりごな”を決めるならば、ラグラージによる迎撃をすり抜けながら、この氷上を滑るしか道は無い。
「(…………っ! 違う……! 道がある!)」
フィールドを観察していたツバキの脳裏に、1つの戦術が浮かぶ。
ラグラージによる迎撃がある点は同じだが、氷の上よりはマシなはずだ。
「ミスティ、もう1度近付くよ! 走って!」
ツバキを信じるミスティは、再度ラグラージへ向けて走り出す。
「させませんよ! “れいとうビーム”!」
小柄な相手に近付かれると厄介なのはナオの時に学習済みである以上、ルイ側はそれを断固阻止する。
ミスティの“エナジーボール”は、ナオの“サイコショック”よりも生成と射出が早く、至近距離からでは“ミラーコート”展開が間に合わない可能性があるのだ。
「ミスティ! 岩に飛び乗って!」
「えっ!?」
そう、ツバキが目を付けたのは、“いわなだれ”によって落下した大量の岩。
少なくとも一直線に滑るという形で動きが阻害される事は無く、5枚の葉を動かして身体のバランスを取れるミスティならば、その上に立つ事は難しくない。
岩へと飛び乗ったミスティの後ろを、“れいとうビーム”が通過していく。
「岩を飛び越えながら“エナジーボール”!」
散乱する岩の上を次々に飛び継ぎながら、目眩ましに“エナジーボール”を発射する。
“ミラーコート”を警戒してか、ラグラージに直撃はせずにその足元に着弾して一瞬だけ視界を奪う。
「(こっちの“いわなだれ”を利用するなんて……! でも……でもボクだって負けたくない……! 初めてポケモン達と一緒にジム戦をしたんだから、勝ちで飾ってあげたい……!)ラグラージ! “れいとうビーム”連射! 近付けないで!」
ラグラージの口から低出力の“れいとうビーム”が対空砲火のごとく発射され、ミスティの接近を妨げる。
「ミスティ、決めてっ!」
最後の岩から大きくジャンプしたミスティが、“れいとうビーム”を掻い潜って落下していく。
葉や身体の一部が凍ってしまっていたが、ここまで来たら構ってはいられない。
そして……。
「っ!!」
「取りましたっ! “ねむりごな”!」
ラグラージの足元へ着地したミスティから青い粉が噴出され、ラグラージを強烈な眠気が襲い、その場に倒れ込んでしまった。
「ありったけのパワーで……“エナジーボール”っ!!」
そして、無防備になったラグラージの背中に特大の“エナジーボール”が叩き込まれ、すさまじい爆煙がフィールドを覆った。
「ラ……ラグラージぃぃっっ!!」
煙が薄れ、倒れた両者のシルエットが浮かび上がる。
……いや、ミスティは倒れそうになってはいるものの、葉を支えにしてギリギリで踏みとどまっていた。
「……ラグラージ、戦闘不能! ナゾノクサの勝ちっ! よってこのジム戦、チャレンジャー・ツバキの勝利とする!」
クロタの宣言が部屋中に響き、イソラがツバキへ、そしてクロタがルイへとそれぞれ歩み寄る。
「やったなツバキ!」
「お姉ちゃん……うん、皆が頑張ってくれたから……! ありがとう、ミスティ」
ツバキがミスティに頬擦りして、葉に付いた氷を握って溶かす。
「はぅ……ごめんねラグラージ……ボク……」
一方のルイは、ラグラージを抱き締めてキズぐすりを塗りながら、その身体を労るように撫でる。
すると、目を覚ましたラグラージが抱き返してきた。
「ラグラージ……そうだね、今言うのはごめんじゃなくて……ありがとう、だね」
「……ルイさん。ご自分に自信を持てたようですね」
それを見ていたクロタが声をかける。
「クロタさん…………はい。……カスミさんやクロタさんも言ってくれてたのに……なんでボクもっと早く気付かなかったんだろう、こんなに簡単で大事な事なのに……」
「ふっ……それはルイさんの性格からして仕方ないでしょう。今はルイさんがジムリーダーとして一皮剥けた事を喜ぶべきでは?」
「……そうですね。……さて、と……それじゃあ、ジムリーダーのジム戦最後の仕事……してきますね」
ルイはラグラージを一撫ですると立ち上がり、部屋の隅の壁を裏返すと、1枚のディスクとプラスチックケースを取り出し、ツバキへと歩み寄る。
「ツバキさん」
「あ、ルイさん……」
ツバキはイソラと共にポケモン達にキズぐすりを塗っていたが、ルイが近付いてくると立ち上がって向かい合った。
「おめでとうございます……そして、ありがとうございます、ツバキさん。お互いを信じるツバキさんとポケモン達の姿が、ボクにも大切な事を気付かせてくれました」
そう言うと、ルイはケースのフタを開き、水色の雫のような形のバッジを取り出した。
「ポケモンリーグ公認、ハナダジム突破の証……ブルーバッジです。ボクの初めてのジム戦を素晴らしい物にしてくれて、ありがとうございました」
「こちらこそ……ありがとうございます!」
ツバキはバッジを受け取ると、ポケモン達と一緒に眺めて笑みを浮かべた後、バッジケースへ5個目のバッジとして収納する。
「そしてこれはボクの気持ちです。“たきのぼり”の技マシン……ぜひ旅のお役に立ててください」
差し出された青いディスクを受け取り、ツバキはそれを胸に抱く。
「わぁ……あ、ありがとうございます、ルイさん!」
「い、いえ、こちらこそありがとうですよ!」
「いえ、わたしの方が……」
「ボクの方が……」
そこまで言葉を交わして、不意に2人は顔を見合わせ、どちらからともなく吹き出して笑いをこらえる。
「……あの2人、良い友人になれそうですね、クロタさん」
「ええ、性格が似ているのでしょう。きっとツバキさんに触発され、ルイさんはさらなる成長を遂げるはずです」
笑い合う少女達を見守る2人の表情は穏やかで、若いトレーナーの明るい将来へ抱く希望に満ちていた。
つづく
【ツバキの現在の手持ちポケモン】
■ポポ(ピジョン(♂))
レベル36
特性:するどいめ
覚えている技
・すなかけ
・たつまき
・でんこうせっか
・ブレイブバード
■ミスティ(ナゾノクサ(♀))
レベル33
特性:ようりょくそ
覚えている技
・エナジーボール
・どくどく
・しびれごな
・ねむりごな
■ファンファン(ドンファン(♂))
レベル31
特性:がんじょう
覚えている技
・こらえる
・マグニチュード
・ころがる
・じゃれつく
■ナオ(ニャオニクス(♀))
レベル30
特性:かちき
覚えている技
・サイコショック
・ひかりのかべ
・10まんボルト
・あくび
■シェルル(コソクムシ(♀))
レベル24
特性:にげごし
覚えている技
・むしのていこう
・すなかけ
・アクアジェット
■ルーシア(ムウマ(♀))
レベル28
特性:ふゆう
覚えている技
・おどろかす
・あやしいひかり
・くろいまなざし
・あやしいかぜ
【ルイの使用ポケモン】
■ハスブレロ(♀)
レベル29
特性:すいすい
覚えている技
・バブルこうせん
・あまごい
・れいとうパンチ
・こごえるかぜ
■トドグラー(♂)
レベル32
特性:あついしぼう
覚えている技
・オーロラビーム
・アクアリング
・たくわえる
・みずのはどう
■ラグラージ(♂)
レベル39
特性:げきりゅう
覚えている技
・いわなだれ
・れいとうビーム
・たきのぼり
・ミラーコート
今回も長文にお付き合いいただき、ありがとうございました!
って、なんで主人公じゃなくてジムリーダー側が覚醒しとんねん……。
というかラグラージ、お前描くの難しいわ!