蒼天のキズナ   作:劉翼

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ちょっとまったりしながらハナダシティを離れる第42話です。
集中力が無いせいで、一気に書き溜められない自分が憎いです。


第42話:託される生命

 ハナダジムでのジムリーダー・ルイとのジム戦を制したツバキは、バトルを通してルイと意気投合し、その日はイソラと共にルイの家に招かれて宿泊する事になった。

 

「ど、どうぞ入ってください。ボ、ボクはホウエン地方から来て1人暮らしなので、遠慮はいりませんから!」

 

「「お邪魔します」」

 

 自宅の扉を開いてツバキとイソラを招き入れるルイに対し、2人は声を揃えて挨拶を返す。

 玄関へと足を踏み入れると、かめのこポケモン『ゼニガメ』と、ぬまうおポケモン『ミズゴロウ』が駆け寄ってきた。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「た、ただいま、ガメメ、ゴロロ」

 

「あっ、可愛い! わたし、この子は知ってます。ゼニガメですよね?」

 

「は、はい……! カ、カントーに来てから捕まえたんです……」

 

「こっちの子は……ラグラージに似てるし、進化前ですか?」

 

「そ、そうです。こ、このミズゴロウからヌマクローを経てラグラージに進化します」

 

 2体を撫でるルイの隣にしゃがんだツバキがゆっくりと手を伸ばすと、ゼニガメとミズゴロウは一瞬身構えたが、すぐに危険の無い相手と理解し、大人しくツバキに頭を撫でられている。

 

「……ツ、ツバキさんすごいですね……ガメメは人への警戒心が強いのに……」

 

「ツバキはポケモンに好かれる事に関しては天才的だからな。……ところで……」

 

 イソラがちらっとルイに視線を移し、ツバキも同様に顔をそちらへ向ける。

 

「うん…………ルイさん、戻っちゃってますよね、喋り方……?」

 

「あうぅ……そ、そうなんですぅ……バトル中は確かに自信を持ててた気がしてたんですけどぉ……」

 

 ルイが心底無念という感じに溜め息を吐く。

 

「ふむ……という事は、恐らくバトル時の高揚感も上乗せされて、普段の緊張や不安が麻痺するんだろうな。またバトルをすれば、あの自信満々の姿になるんじゃないか? ポケモンのフォルムチェンジみたいに」

 

「バトルの時だけ性格が変わるって事? なんか格好良い!」

 

「うぅぅ……で、できれば普段から自分に自信を持ちたいんですけど……」

 

 そんなやり取りをしながらルイ手製の夕食を振る舞われ、主に性格の似通ったツバキとルイの会話が弾み、2人が疑問に思った事にイソラがアドバイスを送る、というのが続いた。

 

「あ……そ、そうだ! ツバキさん達に見てもらいたい物があるんでした……!」

 

 そして食後、お茶を飲んで話していると、ふとルイが思い出したように立ち上がった。

 ぱたぱたと他の部屋へ去ったルイが、再び急ぎ足で戻ってきたが、その腕には……。

 

「それは……?」

 

「ほう、ポケモンのタマゴだな」

 

 そう、それは全体的に緑系統のカラーリングで彩られた、ポケモンのタマゴだった。

 

「ゴロロ……あのミズゴロウは、前に育て屋さんにラグラージ2体を預けた時見つかったタマゴから育てたんですけど、これはその時に育て屋のおじさんからもらったんです」

 

「それはなんでまた……」

 

「な、なんでも元々は他のトレーナーさんの物だったんですけど、その人がいらないと言ったので育て屋さんがもらったそうなんです。でも、最近はそうやって預かるタマゴが増えて、とても面倒を見きれないらしくて……」

 

「なるほど。それで色々なトレーナーに譲って、手伝ってもらっているというわけだ。……捨てるわけにもいかんし、育て屋も苦労が絶えないな」

 

 イソラの発言に頷きつつも、ルイは気落ちした表情を見せる。

 

「……でも、受け取ったは良いんですけど、ボクはボクでジムリーダーとして意外と忙しくて……ジム戦用のポケモンも育てなきゃなりませんし……そ、そこでツバキさん!」

 

「は、はい……?」

 

「こ、このタマゴ、育ててもらえませんか!?」

 

 ガラにもなく身を乗り出してきたルイの態度と言葉に、ツバキは目をパチクリとさせている。

 

「え…………えぇっ!? わ、わたしが……!?」

 

「も、もちろん無理にとは言いません! で、でもポケモンのタマゴは、元気なポケモンとトレーナーと一緒にあちこち行くのが良いらしいので……ほ、本当によろしければなんです……けど……」

 

「ふむ……タマゴは後々ポケモンが生まれる関係上、持ち歩く場合は手持ちポケモンの1体として扱われる。当然タマゴはバトルできないので、生まれるまでは手持ち-1体のハンデを負う事になる」

 

 それはつまり、バトル時に出せるポケモンの種類が減り、選択も狭まるという事を意味する。

 ……だったらイソラが持てば、という考えも出るだろうが、イソラとしてはツバキにポケモンをタマゴから育てる事を経験させておきたいのである。

 

「……わかりました。このタマゴは、わたしがしっかり育てて見せます!」

 

「あ、ありがとうございます! ……なにしろ、この街の主だったトレーナーの皆さんは軒並みタマゴを預かってるので、これはもう旅をするトレーナーさんにお願いするしか、と思っていたので……ボクもこんな感じで……」

 

 と、ルイが別の部屋の扉を開けると、暖房の入った部屋の中で8個のタマゴが布団の上に置かれ、タオルを巻かれていた。

 

「……うわぁ……これも全部……?」

 

「は、はい……トレーナーさんから育て屋さんに譲られたタマゴを、ボクが預かってる物です。1日に何回か撫でたり、タオルを巻く位置や暖房の温度を変えたり、声をかけたり……」

 

「まったく……どうにも最近は、世話をしきれないのにポケモンを増やそうとする奴が多すぎる。しかもこうして割を食う者がいるのだからタチが悪い」

 

 ズラリと並んだタマゴを撫でるルイをツバキとイソラも手伝い、今日の分のタマゴの世話を終える。

 

「はぁう……あ、ありがとうございました……」

 

「気にしないでください。わたしもタマゴのお世話の予行演習になりましたし」

 

「……ルイ。良ければだが……私もタマゴを1つ預かろうか?」

 

「えっ、イ、イソラさんも!? い、良いんですか!?」

 

 ルイを不憫に思ってか、思わぬ申し出をしたイソラにルイが目を輝かせる。

 

「ああ、さすがに1人で8個は厳しいだろう。……まぁ、7個になったところで大差は無いかもしれんがな」

 

「い、いえ! そんな事無いです! じゃ、じゃあ、どれか1個、お願いします!」

 

 ルイに頷いたイソラはタマゴの前にしゃがみ込み、じっと眺め……。

 

「……これにするか」

 

 青と白の色合いのタマゴを選び、ゆっくりと持ち上げようとして、ハッとする。

 

「っと、いかんいかん……ルイ、明日朝一でポケモンセンターで手持ちを調整してくるので、今晩はこのままにさせてもらうぞ」

 

「はいっ! それじゃ、お2人の分のタマゴは他と分けておきますね」

 

 ルイは2つのタマゴを順番に別の布団に並べ、倒れないように下半分をタオルケットで固定する。

 

「これで良しっと。それじゃあ、ボクは2階でお2人の布団を用意してますので、先にお風呂をどうぞ」

 

「(っっ!! ツバキと……風呂っ!!)」

 

 イソラの目付きが変わり、ツバキは背筋にぞくりと寒気を感じる。

 

「……お……お姉ちゃん……?」

 

「ツバキ、ルイの好意を無下にするわけにもいかん! さぁ行こうか!」

 

 イソラはツバキの腕を掴むと、いそいそと風呂場へと向かう。

 

「お、お姉ちゃん待って! じゅ、順番に……」

 

「時間は有限だ! 纏めて済ませられる事は済ませてしまおう!」

 

 ツバキの言葉をことごとく流して進むイソラ、そしてただただ引っ張られるばかりのツバキを見送ったルイは、柔らかな笑みを浮かべる。

 

「ふふっ……ツバキさんとイソラさん、本当に仲が良いなぁ……さて、準備準備!」

 

 20分ほどして、ルイがゼニガメとミズゴロウを寝かしつけていると、何があったのか顔を赤くして頬を膨らませたツバキと、頭にタンコブのできたイソラが、ほかほかと湯気を纏いながら戻ってきた。

 

「もうっ……! お姉ちゃんなんか知らない!」

 

 肩を怒らせて通りすぎたツバキに驚いたルイは、後から来たイソラに尋ねる。

 

「な、何かあったんですか……!?」

 

「うーむ……少しスキンシップしようとしただけなのだが……妹分の身体を洗うくらい、おかしくないはずなのだがな……」

 

「…………い、妹分がいないのでわかりませんが……た、たぶんそれはあまり普通じゃないと思います……」

 

「えっ……そ、そうなのか……!? だ、だが2歳くらいの時は、むしろ喜んでいたぞ!?」

 

「2歳と10歳じゃちょっと……」

 

「む、むうぅ……そうなのか……それは悪い事をしてしまったな……」

 

 イソラは汗をダラダラと流し、珍しく心底焦っている様子が見て取れる。

 ゼニガメとミズゴロウを寝かせたルイとイソラが2階の寝室に向かうと、正座して目を閉じたツバキが待っていた。頬を膨らませたままで。

 

「ツ、ツバキ……その、さ、さっきは悪かった! さすがに調子に乗りすぎたと反省している! すまん!」

 

 イソラが頭を下げると、ツバキは左目を開けてイソラを見てボソリと呟いた。

 

「…………今度やったら、これからずっと『イソラさん』て呼んじゃうから」

 

 ルイには意味不明な謎の脅し文句にしか思えなかったが、とりあえずイソラには効果抜群のようで、ガタガタ震えながらコクコクと頷いている。

 

「じゃ、じゃあ、お好きな布団を使ってください。ボ、ボクもお風呂に入ってきますので……」

 

 それから少ししてルイが部屋に戻ると、ツバキとイソラは隣り合わせの布団で、向かい合って寝息を立てていた。

 

「(……ふふっ……やっぱり仲良しさんだなぁ……本当の姉妹じゃないなんて嘘みたい)」

 

 ルイは残った布団に潜り込むと、仲良し姉妹を眺めながら眠りに落ちていった。

 

「……むにゃ……おねえひゃん…………えへへ……♪」

 

 

 

「こっちがツバキさんで……こっちがイソラさんでしたね」

 

 翌朝、ポケモンセンターでツバキはファンファンを、イソラはテッカニンをボックスに預けると、ルイからタマゴを受け取った。

 

「ありがとうございます、ルイさん! わぁ、ほんのりあったかい……本当にこの中でポケモンが生きてるんだぁ……♪」

 

「ふふっ、タマゴから育てるというのは、何度経験してもワクワクするな」

 

 まずツバキが受け取ってタマゴを抱き締め、次いでイソラも手渡される。

 

「えへへぇ……お揃いだね、お姉ちゃん♪」

 

「そうだな、ツバキ。ふっ、タマゴの世話は私の方が先輩だから、私の真似をすると良いぞ」

 

「はぁーい!」

 

 

【挿絵表示】

 

 

 タマゴを抱いて仲睦まじく話すこの2人が、昨夜は喧嘩していたと言って信じる人はそういないだろう。

 なにしろ、その現場を見ていたルイでさえ、あれは夢だったのではと思うほどなのだから。

 

「(……心の奥底で強く繋がってるから、少し喧嘩してもすぐにくっついちゃうのかも……)」

 

「ん、何か言ったかルイ?」

 

「い、いえ! なんでもないです! ……そ、それじゃあ……」

 

「あっ、はい! タマゴ、ありがとうございます! 絶対に立派なポケモンに育てますから!」

 

 ツバキがタマゴを撫でながらルイに頭を下げ、イソラもそれに続く。

 

「……はい! 残りのジム戦……それにポケモンリーグ、頑張ってくださいね! ボクももうジム戦から逃げたりしませんから!」

 

「頑張りますっ……! ルイさんもお元気で!」

 

「達者でな」

 

 手を振るルイに、2人はタマゴを持っていない方の腕を大きく振り返す。

 2人が目指すは、ニビシティとハナダシティを繋ぐおつきみ山へと通じる4番道路。

 ジムバッジは5個……ポケモンリーグに参加するには残り3つというところまで来ていた……。

 

 

 

つづく




今回も駄文雑文落書きにお付き合いいただきありがとうございました!

それにしてもポケモンのタマゴって本当に不思議なブツですよね……。
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