蒼天のキズナ   作:劉翼

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ちょっと退屈な第45話です。


第45話:科学の力ってすげー!ニビ科学博物館!

 ディグダの穴でディグダとモグリューの縄張り争いを収めたツバキ達は、そのまま洞穴を進み、ついに太陽の下へと這い出る。

 

「んっ……まぶしい……」

 

 ツバキは薄暗い地下に慣れた目を擦り、改めて空を見上げる。

 イソラとスカーレットも順番に出てきて目を細める。

 

「ふぅ、ようやく抜けられたか……ここは2番道路か。ニビシティはここから北だな」

 

「………………楽しみ。ニビシティ」

 

 スカーレットは表情こそあまり変わっていないが、ガイドブックを握り締めてワクワクしているようだ。

 

「そういえば博物館に印を付けていたな。ニビ科学博物館、だったか」

 

「博物館……お姉ちゃん、わたしも行ってみたい!」

 

「行く。ツバキも。楽しい。きっと」

 

 ツバキにガイドブックを見せながらスカーレットが歩き出し、イソラがその後ろを歩く。

 

「へぇ、大昔のポケモンの化石かぁ……!」

 

「プテラ。格好良い。見たい。早く」

 

「(……私が実物を持ってるんだがなぁ……まぁ、実物と化石では見た時の感慨も方向性が違うか)」

 

 ワクワクする2人を1歩下がった位置から見守るイソラという構図は、さながら親子のようである。

 さて、そんな親子はようやくニビシティへと辿り着き、早速博物館へと向かう。

 

「「おー!」」

 

「改装・増築したのか……私の記憶よりも立派な建物になってるな」

 

 正面ゲートが設けられた大きな建物内に入ると、受付カウンターで入場料として1人100円(ツバキのみ子供料金50円)を支払う。

 

「建物は大きくなったが、料金は良心的なままだな」

 

「見る! 色々!」

 

「はいっ! 勉強にもなりますし!」

 

 2人は期待に目を輝かせ、ずんずんと中へと入っていく。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 まず一行を出迎えたのは、巨大な隕石だ。

 

「お……」

 

「おっきい……!」

 

「ふむ、ホウエン地方の流星の滝に落下した隕石か……現在発見されている隕石の中では欠損が少なく、サイズも大きい、か」

 

 その隣にはおつきみ山で発見された一回り小さい隕石も展示され、拳大のそれと比較すると流星の滝の隕石の大きさが際立つ。

 続いては宇宙関連という事で、スペースシャトルやロケットの模型が展示されている。

 

「わぁ……! 格好良い……!」

 

「ロマン。宇宙。神秘的」

 

「こちらはトクサネ宇宙センター協力の精巧な模型か。いまだ人類には宇宙は未知の世界……宇宙から来たポケモンというのもいるらしいし、畏れも憧れもあるな」

 

 その先には、様々なポケモンの写真や説明がずらりと並ぶ。

 

「宇宙と交信していると言われるスターミー、宇宙に極めて近いオゾン層に暮らすレックウザ、隕石のように宇宙から落下してくるメテノ……そして宇宙からやって来て地球で生活していると考えられているデオキシス、ピッピ、ソルロック、ルナトーン、オーベム……もしかしたらポケモンと宇宙は密接な関係にあるのかもな」

 

 それらポケモンの解説文の側には、イソラに見覚えのある人物の名前があった。

 

「(ほう、解説にはアローラ地方のホクラニ天文台責任者のマーレイン氏も全面協力……ははっ、どうりで文に見覚えがあると思った)」

 

「はぁ……ポケモンて本当に神秘的で素敵だなぁ……♪」

 

「連れてってほしい。この子達に。宇宙」

 

 イソラがアローラで出会った人物を思い出している間、ツバキとスカーレットはキャッキャキャッキャとはしゃいでいる。

 

「でも聞いてみた。オーベムに。教えてくれなかった……」

 

「そうなんですか? ……なんででしょう……?」

 

 それは恐らく、どう答えても自分か相手のどちらかが困るからだろう。

 

「ふふっ、久々に来たが、やはりこういうのを見るのはワクワクするな。……ん、2階は海に関連するエリアか」

 

 1階の宇宙関連エリアを見終えたツバキ達は2階へと上がる。

 2階は海の中をイメージしたのか、天井や壁が青系の色に染められており、海のポケモンの模型があちこちにぶら下がっていた。

 特に階段を上って真っ先に目に飛び込んでくる巨大な影は圧巻の一言だ。

 

「お、お姉ちゃん……あの真ん中のおっきいのは……」

 

「うきくじらポケモンの『ホエルオー』の模型だな。ポケモンの中でも最大級の大きさだ。さすがに原寸大ではないようだが、迫力は十分だな」

 

「見た事ある。本物。凄い。これも……!」

 

 2階の天井スペースの3分の1は占めているであろうホエルオーの模型に、ツバキは目をまん丸くしてしまう。

 

「ん? これは……点字か? ……ホウエン地方の海底遺跡で発見された石室の壁に書かれた文の写し、か。……ふむ、ホエルオーの他、ちょうじゅポケモン『ジーランス』に関して書かれているようだな」

 

「そんな大昔から点字が……というより、そんな大昔からポケモンと関わってたんだ、人間て……」

 

「ホウエンだけじゃない。シンオウ。カロス。他にも色々。神話多い。大昔の」

 

「創世神話、英雄伝説、古代戦争、かがやき様……人智を超えたポケモンの力は、遥かな昔から人間に畏怖を以て崇められてきたのだな」

 

 そして次に見えてきたのは、大きさ順に並んだいくつもの船の模型達だ。

 

「この大きいのは知ってる! サント・アンヌ号!」

 

「正解だ。クチバ港を母港とする、世界最大級の豪華客船だな」

 

 高速船アクア号、連絡船タイドリップ号、遊覧船ロイヤルイッシュ号……様々な地方の様々な形の船がずらりと並ぶ様は非常に壮観であり、ツバキ・スカーレットのみならずイソラも笑みを隠せないようだ。

 

「……あっ……」

 

 展示品を見ていたツバキは、1枚の絵の前で立ち止まった。

 プレートには『海の守り神・ルギア』と書かれている。

 

「…………ルギア…………昔どこかで見たような……」

 

 ツバキは目を閉じてしばし思考の海に沈み……。

 

「…………っ! 思い出した……! あの時、グレン島の空を覆ってた火山灰を、もう1体のポケモンと一緒に払ってくれた……!」

 

 そう、それはツバキがもう一度会いたいと願い、旅の目的の1つとなった存在だった。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「ルギア…………ルギア……!」

 

 ようやく得た名前という手掛かりを、ツバキは記憶に刻むように繰り返す。

 

「ん……そうか、ルギアの事を知ったか」

 

「お姉ちゃん」

 

 少し遅れてきたイソラがツバキの視線を追い、その心中を悟った。

 

「私もあの時の事が忘れられず、旅の中で調べていたんだ。結果としてルギアに関する伝承などは知る事ができたが、本物にはいまだ会えていない」

 

「……そっか……伝説のポケモンだもんね……でも、わたしは信じてるよ。いつか絶対会える、って。そしたら、あの時のお礼を言うんだ♪」

 

「……ふふっ、そうか……そうだな。信じる事は力だ。どんな願いも夢も、信じなければ可能性すら訪れないのだから」

 

 そのように話していると、船の模型をじっくり見ていたスカーレットが追いついてきた。

 

「………………お待たせ。次。3階。お待ちかね。ポケモンコーナー」

 

 さらに階段を上ると、天井から吊るされたプテラの化石が一行を出迎えた。

 

「わわわっ……! び、びっくりしたぁ……す、すごい牙……ノコギリみたいにギザギザだね……!」

 

「かつて、頑強な皮膚と強靭な体力、そして鋭い牙を持つプテラに勝てる空のポケモンはおらず。太古の大空を支配していたのはプテラだったとする説もある」

 

「怖い。でも格好良い」

 

 そんな絶対捕食者であるプテラの化石の下には、様々な古代ポケモンの化石と解説文が並ぶ。

 

「空の支配者たるプテラに対し、地上の王者と呼ばれたガチゴラス、鉄壁の守りを持つトリデプス、水中の狩人カブトプス……いずれもいかにも過酷な太古の時代を生きたと思わせる面構えだ」

 

「あっ! これがさっき言ってたジーランスだね! ……1億年も姿が変わってないポケモン!? け、桁が違うね……」

 

 次に並ぶは、顔と思われる部分に不思議な点が打たれた3体のポケモンの模型だ。

 

「……? 見た事無いポケモン……お姉ちゃん、これは?」

 

「これは『レジロック』、『レジアイス』、『レジスチル』だ。遥か昔、人間によって封印されたポケモンとされている。さっき海のコーナーで点字があっただろう? あれとも関係があるようだぞ」

 

「へぇ~! どういう関係なんだろう……知れば知るほど不思議がいっぱいだね、ポケモンって!」

 

「ああ。ポケモンの秘密を全て解き明かそうと思ったら、それこそ宇宙の規模で考えねばならんほど気の遠くなる時間が必要なんだろうな……」

 

 ツバキが興味深く見ながら進むと、レジロック達よりもさらに巨大な模型が。

 

「きょだいポケモン『レジギガス』。3体のレジポケモンの長とも、彼らを作り出したとも言われる伝説のポケモンだ」

 

「ふわぁぁぁ……ホエルオーとはまた違う迫力だね……!」

 

 さて、次は……。

 

「……タマゴ……うぅん、繭? こっちは樹……かな……?」

 

「これはカロス地方の伝説のポケモン、『イベルタル』と『ゼルネアス』の休眠状態と言われている。あらゆる生命を奪う破壊の力・イベルタル。そしてあらゆる生命を永遠の物とする救済の力・ゼルネアス。彼らはその力を使い果たすと、この形態となって1000年の間眠りにつくそうだ」

 

「………………さすが違う。スケール……」

 

「そしてその隣がちつじょポケモン『ジガルデ』。自然界の生態系を監視し、それが著しく乱された時、真の力を発揮して修正を行うらしい」

 

 見た事の無いポケモン達の、想像もできないスケールの話題に、ツバキもスカーレットも呆気に取られるばかりで開いた口が塞がらないようである。

 あまりにも膨大な情報量に、博物館を出る頃にはツバキの頭はパンク寸前となっていた。

 

「……はぁ~~~~……ポケモンて……すごい……」

 

「ははっ、さすがに一気に詰め込みすぎたようだな、ツバキ」

 

「………………楽しかった。すごく。とても楽しかった!」

 

 放心状態のツバキに対して、スカーレットは満面の笑みでご満悦の様子だ。どうやら脳の情報処理能力はツバキより上らしい。

 

「さて、もうずいぶんと暗くなったな……少し早いが、夕食にするか」

 

「賛成」

 

「うんっ!」

 

 3人は揃って手近なレストランへと歩き始める。

 ポケモンの不思議、神秘……彼女達が食事中、それらについて熱く語り合ったのは言うまでも無いだろう。

 さあ、勉強の後はバトル……!

 目指せ、ニビジム攻略!

 

 

 

つづく




今回も駄文雑文落書きにお付き合いいただき、ありがとうございました!

バトルも事件も無く、ただひたすら博物館を見て回るだけのお話……たまには良いよね?
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