蒼天のキズナ   作:劉翼

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ニビジム戦スタートの第48話になります!


第48話:誇りを懸けて!

「……よし、準備完了! 行くよポポくん!」

 

 ポケモンセンターの個室で外出準備を終えたツバキは、肩にポポを乗せるとロビーへ向かう。

 そこにはイソラとスカーレットがツバキ同様準備を完了して待っていた。

 

「行くか、ツバキ」

 

「……挑戦。ニビジム」

 

 そう、今日はツバキがニビジムへ挑戦する日なのだ。

 ツバキのジムバッジは現在5個……トレーナーレベル6ともなれば、かなりの苦戦が予測される。

 姫騎士ことニビジムリーダー・エーデルとの面識はあるが、暴れるボーマンダを鎮めるための戦いしか見ていないため、彼女がどのような戦術を駆使するのか、そしてニビジムのバトル形式がどのような物なのかは一切不明だ。

 できる事は全てやりきり、あとはスカーレットとの特訓の成果を、どれだけ実戦で出せるか、だろう。

 

「頑張る。ツバキ」

 

「はいっ! スカーレットさんから学んだ事を忘れずに頑張ります!」

 

 ツバキはスカーレットに挨拶をすると、イソラと目配せをして微笑み、2人の間をすり抜けてニビジムへと歩み始めた。

 そんなツバキの少し後ろを、イソラとスカーレットが並んで歩きながら小声で話し合う。

 

「……ツバキは変わった」

 

「…………変わった?」

 

「ああ。……昔はな、ひたすら私の後ろを歩いて、光を恐れるようにその影の中で縮こまっていたんだ。だが、ポケモンとの旅で大きく成長した今のツバキは、こうして進んで先頭に立って自ら光を浴びながら歩くようになってくれた。……それがな、とても嬉しいんだ、幼い頃から一緒にいた身としては」

 

「…………そう。親心ならぬ姉心」

 

「そんなところだろうな。まぁ、少し寂しくはあるが、な」

 

 昔よりも大きくなったツバキの背中を見ながら、イソラは目を細める。

 考えてみれば、自分の後ろにばかりいたため、彼女の背中はあまり見た事が無かったかもしれない……が、そのわずかな記憶のそれと比較しても、今のツバキの背中はとても頼もしくなった。

 それは何も単純な大きさだけではなく、抱いた想い、背負った覚悟の強さが大きく見せているのだ。

 ……もう、自分がいなければ何もできない臆病な少女などどこにもいないのかもしれない。

 イソラがそう考えたその時、先頭を歩いていたツバキが足を止めた。

 

「……お姉ちゃん」

 

「ん……? どうしたツバキ」

 

「………………ニ……」

 

 ツバキがゆっくり振り向き……その顔はやや赤くなっていた。

 

「……ニビジムって……どこだったっけ……?」

 

「……博物館に行く途中、左手に大きな建物があっただろう。そこだ」

 

 ツバキはバツが悪そうに「えへへ……」と笑うと、再び歩き始めた。

 

「………………まだまだかかる? 手」

 

「……だな」

 

 イソラはさっきより少し弱々しくなったツバキの背中を見ながら、呆れ半分、安堵半分の溜め息を吐いて苦笑いを浮かべた。

 危うく出だしでつまずくところであったが、どうにかこうにかニビジムへと辿り着いた。

 

「……すぅー…………はぁー…………うんっ……!」

 

 深呼吸して高揚する心を抑えたツバキは、ニビジムの扉を開き、中へと足を踏み入れる。

 

「す、すいませーん! ジム戦をお願いしまーす!」

 

 しばらくすると、老齢の男性が奥から現れて応対する。

 

「失礼、少し外しておりましてな。ジム戦希望は、どちらの方ですかな?」

 

「はいっ、わたしです! グレンタウンのツバキです!」

 

「ほうほう……なかなかに良い目をしていらっしゃる。……では、まずは私とバトル……」

 

「じいや、お待ちなさい」

 

 男性がモンスターボールを取り出そうとした瞬間、凛とした声が彼を制止した。

 

「っ! お、お嬢様……?」

 

「そちらのツバキさんは、わたくしがお招きしたのです。よってトレーナー戦は不要ですわ」

 

 現れたのは、先日よりもさらに重装備を身に付けたエーデルで、腰には剣まで携えている。

 

「はっ、承知いたしました。エーデルお嬢様のお知り合いとは知らず失礼いたしました。ジムトレーナーのレヴンと申します」

 

 レヴンと名乗る男性は、姿勢を正して深々と頭を下げる。

 

「い、いえいえ! ……もしかしてエーデルさんの……」

 

「わたくしの家に仕えてくれている執事ですわ。わたくしの幼い頃から、側で守ってくれてますの」

 

「自慢ではありませんが、このレヴン……お嬢様に仕えてより19年、1度たりとも不逞の輩をお嬢様に近づけた事はありません」

 

 レヴンは自慢ではないと言いつつも、肝心の態度はいかにもその事が誇らしいと言わんばかりである。 

 

「この通り頼もしいのですが、おかげでわたくし、男性と知り合う機には恵まれませんの……」

 

「お嬢様に言い寄ろうとする男がことごとく情けないだけです。せめて私を倒せるくらいでなければ、お嬢様には釣り合いませぬ」

 

 その言葉を聞いたイソラが目の色を変え、レヴンの手を取った。

 

「わかります……わかりますよレヴンさん! やはり大切な人には馬の骨など近づけたくはありませんよね!」

 

「おお! ご理解いただけますか!」

 

 なにやら保護者同士で意気投合してしまっている横で、エーデルが話を進める。

 

「さて……ツバキさん、お待ちしておりましたわ。どういうわけだか今日、あなたが来そうな気がしていましたの。バトルフィールドは整えて清めてありますわ」

 

「そ、そうなんですか……? 不思議ですね」

 

「ふふ……では、こちらですわ。……じいや、いつまでイソラさんと語っておりますの! 審判をお願いいたしますわ!」

 

「はっ! か、かしこまりました!」

 

 会話がヒートアップしていたレヴンを大声で呼んだエーデルは、ツバキ達を連れて大きな扉をくぐり、バトルフィールドへと案内する。

 砂の多い荒野のようなフィールドには、大小様々なゴツゴツした岩が転がっている。

 

「さぁ、ここがニビジムのバトルフィールドです。見ての通り砂と岩が散乱し、挑戦者の行動を遮りますわ。ひたすら翻弄されるか、はたまたこれを利用して自身の優位を作るか……あなたの手腕、お見せいただきます」

 

 エーデルは甲冑の金属音を響かせながら歩き、フィールドを挟んでツバキと対峙する。

 

「ツバキさんは確か、バッジは5個でしたわね?」

 

「はいっ!」

 

「ふふっ、準備しておきましたわ。では、ニビジム戦の説明をさせていただきます。……ツバキさん、ポケモンバトルは基本は1対1ですが……例外も存在しますわ」

 

「……! も、もしかしてダブルバトルですか!?」

 

 ツバキは思わず身構える。

 ポケモン2体を同時に出して戦うダブルバトル……タマムシジムでラニーとアケビを相手にしてそれっきりだからである。

 ましてジムリーダーを相手に行うのは初めてになる。

 

「……ふふっ……いえ……ニビジムのバトル形式はズバリ……」

 

 エーデルは指を3本立ててツバキへ突きつける。

 

「トリプルバトルですわ!」

 

「ト……トリプルバトル……!?」

 

 まさかの3体同時に使用するバトル形式である。

 

「トリプルバトルか……合計6体ものポケモンが入り乱れて戦うが、あまりにも複雑……状況把握と指示が難しいので、あまり見かけなくなった形式だな」

 

「…………イッシュ。カロス。……そのくらい?」

 

「だな。まぁ、熟練のトレーナーの中には好む者も少なくはないが」

 

 観客席に移動したイソラとスカーレットがトリプルバトルという形式について話している時、フィールドではツバキがこの形式への対処法を模索していた。

 

「(3体同時指示……わたしにできるかな…………うぅん、やらなきゃ、だよね! でも、あんまり複雑な指示は隙が大きいから……)」

 

 ぶつぶつと呟くツバキに、エーデルは3つのモンスターボールを見せる。

 

「では、先にわたくしの使用するポケモンをお見せします。……おいでなさい! ユレイドル! アバゴーラ! ガチゴラス!」

 

 

【挿絵表示】

 

 

 エーデルの投擲したボールからまず現れたのは、以前にタマムシジムでバトル経験のあるリリーラの進化した姿、いわつぼポケモン『ユレイドル』。

 次に青い身体を頑丈な甲羅で覆ったこだいがめポケモン『アバゴーラ』。

 最後にその両者の後ろに着地したのは、巨大な恐竜のような姿をしたぼうくんポケモン『ガチゴラス』だ。

 

「さ、さすがに強そう……! タイプは……」

 

 ツバキが図鑑を開いて相手の情報を確認する。

 

「(ユレイドルがいわ・くさ、アバゴーラがみず・いわ、ガチゴラスがいわ・ドラゴン……!)」

 

 いずれもかくとうタイプが弱点だが、あいにくとツバキはそれを使えるポケモンは持っていない。

 

「(ファンファンを使うつもりだったけど、ユレイドルとアバゴーラが怖いなぁ……)」

 

 どちらもそれぞれくさタイプ、みずタイプをいわタイプと併せ持ち、じめんタイプのファンファンにはかなり重い相手だ。

 だが、ナオとルーシアに新たに覚えさせた“エナジーボール”は、タイプ相性上、アバゴーラにしか大きなダメージを狙えない。

 かといってポポやシェルルはいわタイプは大の苦手と来ている。

 

「…………悩んでる。ツバキ」

 

「だろうな。エーデルさんのポケモンは、かくとう技が無いというだけでかなり嫌らしくなるパーティ構成だ。が、ポケモントレーナーには悩む事も大切だからな」

 

 しばし目を閉じて考え込んでいたツバキだったが、ゆっくりと瞼を開いて顔を上げる。

 

「……お待たせしました」

 

「お気になさらず。……決まりまして?」

 

「はいっ! わたしが選んだのはこの子達です! お願い! ミスティ! ファンファン! ルーシア!」

 

 ツバキが同時に投げた3つのボールからポケモン達が飛び出し、最も重いファンファンが地響きと共に着地し、その背中にミスティ、そして最後にふわふわとルーシアが下りてきた。

 

「ふむ、苦手な相手が多いと知りながら、あえてファンファンを使うか……」

 

「何かある。ツバキ。考え」

 

「ああ、あの子は無能じゃない。何か策を考えているだろう」

 

 イソラ達が見守る中、いよいよバトルの準備が整い、レヴンがフィールドへ近づく。

 

「両者、準備はよろしいですかな?」

 

「ええ」

 

「はい!」

 

「では、ジムリーダー・エーデルとチャレンジャー・ツバキのジム戦を始めますぞ!」

 

 レヴンが右腕を振り上げると同時、エーデルは微笑んで剣を引き抜くと、胸の前に構えて誓いの姿勢を取る。

 

「……さぁ、始めますわよツバキさん。我が師・ガンピ様、そして先代ジムリーダー・タケシ様の名に懸け、易々とバッジは渡しません。このエーデル、チャレンジャーと正々堂々相まみえる事をここに誓いますわ! 尋常にいざ! いざ!」

 

――――ジムリーダーのエーデルが勝負を仕掛けてきた!

 

 

【挿絵表示】

 

 

「両者見合って。バトル…………開始っ!!」

 

 

 

つづく




今回も駄文雑文落書きへのお付き合い、ありがとうございます!

エーデルの剣はちゃんと刃を潰してありますのでご安心を。
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