蒼天のキズナ   作:劉翼

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ニビジム戦その1となる第49話です!


第49話:ニビジム攻略戦!砂塵の先へ!

 いよいよニビジムへ挑戦したツバキは、3体のポケモンへ同時に指示を出さねばならないトリプルバトルに参加させるポケモンを吟味し、ミスティ、ファンファン、ルーシアを繰り出した。

 ツバキとエーデル、両者の準備が整った事を確認した審判のレヴンは、掲げた右手を勢いよく振り下ろした。

 

「両者見合って。バトル…………開始っ!」

 

 その合図と共にツバキが腕を突き出して指示を飛ばす。

 

「ミスティ、ファンファンの上に! ファンファン、“マグニチュード”!」

 

 ファンファンの上に飛び乗ったミスティが、横に突き出た耳に葉を絡ませてしっかり掴まると、ファンファンは前脚を上げて地面に叩き付けた。

 それによって周囲に震動が伝播し、フィールド全体を揺るがす地震が発生した。

 

「“ワイドガード”ですわ!」

 

 前面に出たアバゴーラが、交差させた両腕を横に払うと、青い障壁がユレイドル、アバゴーラ、ガチゴラスの3体を覆い、自分達への“マグニチュード”の衝撃を無効化した。

 

「(やっぱり持ってた、“ワイドガード”……!)」

 

 味方への全体攻撃ダメージを防ぐ“ワイドガード”。

 その効力はタマムシジムでのダブルバトルで学習済みのツバキは、相手3体の内の誰かが持っているであろうと睨んで探りを入れたのだ。

 ミスティは技を出すファンファンの上に乗せ、ルーシアは特性《ふゆう》で“マグニチュード”に巻き込まれる事を回避するフォーメーションを組んだが、“ワイドガード”があるとなるとあまり活かせそうにはない。

 

「(ふふっ、今のは様子見、といったところですわね。こちらに防御技があるか否かを確認し、あわよくば大打撃を狙う……さすがにやりますわ……!)……今度はこちらから参りますわ! “すなあらし“!」

 

「(来たっ……!)」

 

 ユレイドルの周りで風が巻き起こり、それは周囲の砂を巻き込みながら範囲を広げ、やがてフィールド全体を包み込んだ。

 

「ルーシア、“あやしいかぜ”!」

 

 それに対抗するように金切り声を上げたルーシアの周囲の空気が流れを変え、ルーシア達3体を中心とした渦のようになって砂嵐からの隔離に成功した。

 

「風を用いた技である事を利用して攻撃技を守りに使う……悪くない着眼点ですが、ここで守備に走るのは甘くてよ! “からをやぶる”ですわ!」

 

 アバゴーラの甲羅の表面が弾け、身軽になったアバゴーラは雄叫びを上げる。

 

「むぅ……ツバキも普通であれば上手く凌いだと褒めてやりたいが……相手はいずれも優秀な強化技を習得するポケモンだ。それを使う猶予を与えてしまったのはまずいな」

 

 イソラの言う通り、“からをやぶる”事によってアバゴーラの守りは薄くなったが、攻撃能力と素早さは大きく向上している。

 

「……でも見て。ツバキ。落ち着いてる」

 

「む……確かに……」

 

 スカーレットの指差した先にいるツバキは、この状況下にあって平静を保っている。……ように見える。

 

「ファンファン、“ころがる”!」

 

 渦の中から身体を丸めて高速で回転するファンファンが飛び出し、アバゴーラ目掛けて突撃してきた。

 

「“バリアー”!」

 

 アバゴーラの前に出たユレイドルが、正面に“バリアー”を展開してファンファンの突進を受け止める。

 弾かれたファンファンは、そのまま岩を盾にしながらフィールドを転がり回る。

 その様子を観察しながら、エーデルは眉間に皺を寄せた。

 

「(……じめんタイプのドンファンは砂嵐のダメージは受けませんわ……砂嵐が晴れるまでドンファンで時間稼ぎ…………いえ、ツバキさんは進んで3対1の状況を作るほど愚かなトレーナーではないはず。ならばムウマとナゾノクサもどこかから機を窺っているはずですわ……!)」

 

 エーデルはファンファンの動きにも注意しつつ、目を細めて砂嵐の中を凝視する。

 

「ドンファンに“エナジーボール“! ”ハイドロポンプ”!」

 

 ユレイドルが眼前で触手を纏め、中央に緑色のエネルギー弾を作り出し、アバゴーラが大きく息を吸い込む。

 直後、エネルギー弾と高水圧砲が発射されるが、視界の悪い砂嵐の中、高速で転がり回るファンファンにはそうそう当たらない。

 

「(……この動き……やはりドンファンは囮で、本命は残り2体……?)……ガチゴラス! 周辺警戒! ユレイドルはそのままドンファンを牽制なさい!」

 

 エーデルが最も警戒しているのは、くさタイプであるミスティだ。

 砂嵐下とはいえ、“からをやぶる”で防御面の薄くなったアバゴーラが、4倍弱点のタイプ一致技を受ける事は極めて危険だからだ。

 そのために前はユレイドル、後ろはガチゴラスが固め、アバゴーラが奇襲を受けないようにしているが、いかんせん相手は非常に小柄なナゾノクサ……岩陰に隠れながら接近されると認識しづらい。

 

「(ふふっ、ですが、ドンファンが陽動を始めてからずいぶんと経ちますわ。ナゾノクサも砂嵐でだいぶ弱っているはず……動きも鈍って、少しは発見しやすくなっているでしょう。さぁ、どこですの……?)」

 

 エーデルは目ぼしい岩陰をじっと見つめ、ミスティの姿を探す……が、一向に現れる気配が無い。

 

「……っ! くくっ、なるほどな……さすがというか……奇想天外な事をする」

 

「イソラ?」

 

「ミスティの居所……見当がついたよ。見たら驚くだろうな」

 

 イソラはツバキの発想力に素直に感心し、その成長を心中で喜ぶ。

 

「ファンファン、“ころがる”!」

 

 間近に着弾する“エナジーボール”にも怯まず、ファンファンが激しく蛇行しながらユレイドルへと迫る。

 

「しつこいですわねっ! “じしん“と”ワイドガード”ですわ!」

 

 ユレイドルが重い胴体をどすんどすんと動かして震動を起こすと同時に、アバゴーラが青い障壁で味方を守る。

 激しく揺れる地面によってファンファンの動きに若干の鈍りが見えたが……なんと、その身体が緑色に光り始めた。

 

「っ!?」

 

「“エナジーボール”!」

 

 岩をジャンプ台代わりに跳ねたファンファンが丸まった形態を解除すると同時に、その内側からミスティとルーシアがエネルギーのチャージを終えた状態で飛び出し、即座に“エナジーボール”を生成した。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「え……えぇぇっっ!?」

 

 めったに表情を崩さないスカーレットが、驚愕の表情で身を乗り出す。

 

「ふふっ……ファンファンが身体を丸める際、ミスティとルーシアを抱き締めるように内側に隠したんだ。どちらもファンファンよりも遥かに小さいし軽いからな」

 

 驚いているのはスカーレットだけではなく、対戦相手のエーデル、審判のレヴンまでも開いた口が塞がらないようだ。

 

「……はっ! “エナジーボール”で迎撃! “いわなだれ”!」

 

 我に返ったエーデルはすぐさま指示を出し、ユレイドルがエネルギーチャージを行い、アバゴーラが空中に岩を出現させてミスティ達目掛けて飛ばしてきた。

 が、もう遅い。

 ミスティとルーシアが同時に発射した“エナジーボール”が頭上からアバゴーラを直撃し、その身に致命的なダメージを与えた。

 

「ファンファン、“じゃれつく”!」

 

 そして、ファンファンは全体重を乗せてユレイドルに力いっぱい“じゃれつく”。

 迎撃のために撃たれた“エナジーボール”がヒットしたが、幸い速射性を重視してエネルギーチャージが不十分だったので一撃必殺とはならなかった。

 ユレイドルに激突したファンファンが着地するのと、顔面に2発の“エナジーボール”を食らったアバゴーラがひっくり返ったのはほぼ同時だった。

 少し遅れてミスティとルーシアも下りてきたが、“いわなだれ”の弾幕で無傷とはいかなかったようだ。

 

「……アバゴーラ、戦闘不能!」

 

 守りが弱まっていたところへ4倍弱点の技2発、しかも急所にヒットとなると、とてもアバゴーラは立ってはいられなかった。

 目を回して倒れたアバゴーラをボールに戻したエーデルは、悔しそうに唇を噛む。

 

「くっ……申し訳ありませんアバゴーラ……。ツバキさんを侮ったつもりはありませんでしたが……それでもわたくしのどこかに慢心があったのかもしれませんわ……!」

 

 変わらず悔しさに溢れた表情でボールを懐へしまったエーデルだったが、スッと顔を上げるとツバキに柔らかく笑いかけた。

 

「やはり……やはりわたくしの目に狂いはありませんでしたわツバキさん。その機転、発想力……並のトレーナーでは比較にもなりません」

 

「エーデルさん……」

 

「……ですが! わたくしもニビジムを預かる身! このエーデル、ここより本気の本気、全力を以て応じますわ! “エナジーボール”最大チャージですわ!」

 

 

【挿絵表示】

 

 

 再びユレイドルがエネルギーチャージを始める。

 

「わたしだって負けません! 全力も全力ですっ! “あやしいかぜ”! “エナジーボール”!」

 

 負けじとルーシアが周りの風を操り、突風の刃がユレイドルを襲い、ミスティが放ったエネルギー弾もヒットする。

 だが、ネリアのリリーラがそうだったように、このユレイドルもまたかなりのタフネスっぷり。

 “じゃれつく”も含めて何発も被弾しているにもかかわらず半分以上は体力が残っていそうだ。

 

「援護ですわ! “ストーンエッジ”!」

 

 ガチゴラスが脚を地面に叩き付け、浮かび上がった鋭い岩塊を一斉にミスティ達へと発射する。

 “ストーンエッジ”はいわタイプ技の中でもかなり威力が高い部類に入り、その形状からヒットした時のダメージも大きくなりやすい。

 

「よけて!」

 

 ミスティ達は手近な岩陰に隠れて“ストーンエッジ”をやり過ごすが、砂嵐がファンファン以外の2体を襲う。

 その時、ユレイドルの目が光り、極めて巨大なエネルギー弾が触手の先端に作られた。

 

「発射ですわ!」

 

 ユレイドルが天井へ向けて発射した巨大“エナジーボール”は、空中で炸裂してツバキのポケモン達に降り注ぐ。

 かなりの密度で隕石のように降ってくるエネルギー弾は、ミスティ達ならともかくとして大柄なファンファンには回避が困難だ。

 転がってよけようとするファンファンだったが、丸まるのが間に合わずに背中に何発も着弾してしまう。

 助けようにもミスティ達もまた回避でいっぱいいっぱいなのだ。

 

「“りゅうのまい”!」

 

 その隙を逃さず、エーデルは次の手を打った。

 ガチゴラスはその太い尻尾を震い、首の周りの毛を揺らし、地面を踏み鳴らして激しく舞う。

 自身の闘争心を大きく高めたガチゴラスは、大きな雄叫びを上げてここから始まるであろうさらなる激闘に備えた。

 

「“りゅうのまい”は素早さと攻撃力を引き上げる技……厳しい戦いになるな……」

 

「…………本番。ここから」

 

 数では優位に立ったものの、ファンファンは満身創痍、ミスティとルーシアも砂嵐も合わせてそれなりにダメージを受けている。

 対して相手はタフなユレイドルと、強化された無傷のガチゴラスが控える。

 はたしてツバキはこの強力な矛と盾を破り、バッジを手にできるのであろうか……。

 

 

 

つづく




今回も駄文雑文落書きにお付き合いいただきありがとうございました!

ハナダジムまでの微妙な技ラッシュから一転、構成はともかくとしてガチ技で溢れかえってしまった……。
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