蒼天のキズナ   作:劉翼

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バッジ6つ目獲得からの第51話です!


第51話:迷い惑ってトキワの森

 ニビジム戦の翌朝、ツバキはポケモンセンターのロビーで、バッジケースを眺めていた。

 

「これで6つ……あと2つでわたしもポケモンリーグに参加できる……」

 

 ツバキは緩みそうになる自身の頬をピシャリと叩いて気合いを入れる。

 

「ダメダメ、気を緩めちゃ! この先のジム戦はトレーナーレベル7と8……さらに厳しい戦いになるんだし、ポケモンより先にわたしがしっかりしなきゃ……! ……でも……」

 

 ちらりと足元に目を落とせば、好みのソースがかかったポケモンフーズを頬張る大事なポケモン達。

 特にジム戦中で進化したミスティは、進化直後とあってエネルギーを消耗しているらしく、ナゾノクサ時代よりも多く食べている。

 

「……えへへ……ミスティも進化したし、その事を喜ぶくらい……今は良いよね、お姉ちゃん?」

 

 ポポに次ぐ最古参であるにもかかわらず、“ムーンフォース”習得のために長期に渡り進化を耐え続け、ナオやファンファンに先を越されてきたミスティだからこそ、その喜びはまた格別なのだ。

 イソラはツバキの問いかけに笑顔で頷く。

 

「そうだな。しかしやはりクサイハナとしては変わっている。目は常にキリッと開いてるし、口元も引き締めて蜜をこぼしていない……本当にクサイハナなのかミスティは……」

 

 

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 ツバキも図鑑で確認した一般的なクサイハナとの違いに初めは困惑したものの、今は実にミスティらしい進化をしたと思える。

 

「えへへ~、ミスティ~♪」

 

 ツバキはしゃがみ込むと、食事を終えたミスティを抱き上げて頬擦りをする。

 

「こらこら、食べ終わったばかりの身体をあまり動かすな」

 

「はぁい」

 

 グランブルマウンテンを一口すすったイソラは、じっとミスティを見つめると、ツバキに向き直った。

 

「ところで、最終的にミスティはどう進化させるつもりなんだ?」

 

「え? どうって?」

 

「クサイハナは分岐進化する。リーフの石でラフレシア、太陽の石でキレイハナになるんだ。……ほら、こういうのだ」

 

 イソラは自分のポケモン図鑑で目当ての道具の情報を呼び出し、ツバキに見せる。

 

「あっ、これ……」

 

 と、それを見たツバキは自分のバッグを漁ると、それらしい石をテーブルの上に並べ始めた。

 

「……なんでこんなに進化の石が……リーフの石に雷の石、太陽の石と闇の石まであるじゃないか、これはルーシアを進化させられるな」

 

「えっと、これがこの前モグリューにもらったので、こっちはアンズさんにもらって、これはファンファンが掘り当てた石で、それでこれがナオの宝物! わたしのモンスターボールと交換したんだよ!」

 

 ツバキはにこやかにリーフの石をイソラに見せる。

 

「ああ、それでナオの奴が壊れたモンスターボールを持ってるのか……」

 

 ファンファンの拾った太陽の石以外は誰かからもらった物な辺り、ツバキの人徳とでも言うべきか。

 

「まぁ、それはそれとして……両方持っているなら話は早い。どちらにするか決めておくと良いぞ」

 

「うぅん……ラフレシアとキレイハナかぁ……」

 

 名前検索で出てきた2体のポケモンの情報を確認するツバキは、少し考えた後にポケモン図鑑の画面を交互にスワイプしつつミスティに見せる。

 

「ねぇミスティ、あなたはどっちに進化したい?」

 

「なるほど、本人に聞くか。まぁ、ツバキらしいが」

 

 呆れるような、感心するような表情でイソラが見守る中、ミスティがビシッと指差したのは……。

 

「ふむ……ラフレシアか……見た目的にはナゾノクサ、クサイハナからの正統進化とでも言えるからな」

 

「ラフレシア……おっきな花が綺麗なポケモンだね。それじゃミスティ、進化したくなったら、いつでも言ってね」

 

 ツバキの差し出した手に、ミスティも軽くタッチして笑い合う。

 

「さて、と。それじゃあまたタマゴを持たなきゃね。いつまでもお姉ちゃんに預けっぱなしってわけにもいかないし。ケーンもそろそろボックスから出してあげないとだしなぁ……」

 

 言いながらツバキは、ポポ以外のポケモン達をボールに戻すとパソコンの前に座り、腕を組んで誰をボックスに預けるかを考える。

 

「…………うーん………………ファンファン、ナオ、ごめん……しばらくボックスにいてね」

 

 順番に操作し、2体の入ったボールをボックスへ送ると、代わりにやってきたボールからケーンを出して抱き上げた。

 

「ずっとボックスに入れててごめんねケーン~……!」

 

「まぁ、みずタイプのハナダジム、いわタイプのニビジムと苦手な相手が続いたからな。だが、これから通るトキワの森はくさタイプやむしタイプが多い。ポポに加えてケーンもいれば盤石の態勢だろうな」

 

 ケーンに頬擦りするツバキを見て、「自分にもしてほしい」という言葉を飲み込んだイソラは、この先の道程についてアドバイスを行う。

 

「そっかぁ……うん、トキワの森を抜けながら特訓しよう! 次のジム戦で活躍できるように、一緒に頑張ろうね、ケーン!」

 

 ツバキが久々にボックスから出したケーンとじゃれていると、盛大に欠伸しながらスカーレットが2階から降りてきた。

 

「くぁ…………っふ………………おはよう」

 

「おはよう、もうすぐ昼だがな」

 

 イソラから缶コーヒーを手渡されたスカーレットは、それを開けながらツバキに目を向ける。

 

「えっへへへ~……あ、スカーレットさん、おはようございます!」

 

「……おはよう。……もう行くの? イソラとツバキ」

 

「ああ。……そういえばお前はこれからジム戦か」

 

 そう、博物館ではしゃぎまくっていたので忘れがちだが、スカーレットの主目的はそちらでなくポケモンリーグ参加のためのジム戦である。

 

「スカーレットさんとエーデルさんのバトル……うぅぅ……見ていきたいけど……!」

 

 ツバキは心の天秤が揺れているのを感じ取っていた。

 どんどん先に進んで未知のポケモンやトレーナーと出会い、ポケモン達を育てたいが、強者同士のバトルを観戦するのも自身の成長に繋がるからだ。

 

「気持ちはわかるぞツバキ。だが、こうも考えられる。……ポケモンリーグに行けば、強いトレーナー同士のバトルはこれでもかと見られる、と」

 

「そう。でも野生ポケモン。自由。一期一会」

 

「うぅっ……た、確かに……」

 

 もしかしたら出発が1日遅れるだけで、本来出会えたポケモンと会えないかもしれない。

 自然界に生きる生命体は、日々様々な変化を続けているのだから。

 

「……うー……ざ、残念ですけど……観戦は諦めます……」

 

「……ん。また会う。ツバキ。ポケモンリーグ」

 

 スカーレットがツバキの頬をぷにぷにとつまみ、柔らかな笑みを浮かべた。

 こうしてスカーレットと別れたツバキ達は、ニビシティを南下し、トキワの森へと向かう。

 

「近年、トキワの森は植樹活動なども相まって以前よりも広くなり、2番道路はほぼ森の一部となっているようだ。……ただ、どうにも植物の成長速度が尋常ではないらしい」

 

「へぇ……何か理由があるのかなぁ……」

 

 肩にポポを乗せたツバキと、ポケギアで土地の詳しい情報を確認していたイソラが歩きながら会話をしていると、そこかしこにポケモンの姿が見られた。

 

「あのポケモンは……へぇ、コロボーシかぁ。あっちの子は……タネボー? あはっ、ドングリみたいで可愛いね、ポポくん♪」

 

「豊かな自然の中にはやはり多くのポケモンが暮らすというわけだな。……む……」

 

 それまでツバキに優しい笑みを向けていたイソラだったが、何者かの視線と、周囲の異常を察知して表情が険しくなる。

 

「……止まれ、ツバキ」

 

「……? お姉ちゃん? ……あ、あれ……?」

 

 立ち止まったツバキも、周りが先ほどまでとまるで雰囲気が違う事に気付いた。

 

「わ、わたし達……道なりに沿って歩いてたはずなのに……?」

 

 周りは鬱蒼と生い茂る深い森となり、立っている場所は道だったはずが、いつの間にか腰の高さまで伸びた草ばかりとなっていた。

 振り返っても道などどこにも無い。

 

「な……何これ……? どうなってるの……!?」

 

「……私から離れるな」

 

 ツバキはイソラの服の裾をギュッと掴み、イソラとポポが周囲の気配に神経を尖らせる。

 その時だった。

 森の奥から枝を踏みしめる音が聞こえてきて、そちらに目を向ければ大木のようなポケモンが立っていたのだ。

 

「このポケモンは……オーロットか!」

 

 

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 ろうぼくポケモン『オーロット』。

 老木の分類が示す通り、枯れた木に手足と単眼が付いたような外見をしており、胴や腕の隙間からは黒い不定形の本体が見え隠れする。

 オーロットは腕をぐるんぐるんと振り回し、戦闘態勢に入っている。

 

「確かオーロットは森の番人とも呼ばれ、森を荒らす者には容赦が無いと聞くが……」

 

「わ、わたし達何もしてないよぉ!?」

 

「……聞いてはくれんようだぞ……!」

 

 オーロットは足音を響かせながら、両腕を緑色に発光させて突撃してきた。

 

「やむをえん、少しバトルで頭を冷やさせる! デリバード!」

 

「ケ、ケーン、お願いっ!」

 

 ケーンと共に立ったのは、赤を基調とした身体に、顔の周りや袋状の尻尾が白く染まったサンタクロースのようなポケモン……はこびやポケモンの『デリバード』だ。

 しかし、2対1であるにもかかわらず、オーロットは構わずに腕を振り下ろしてきた。

 

「“ウッドハンマー”か。“ドリルくちばし”で迎撃」

 

 迫る“ウッドハンマー”に対し、デリバードは身体を高速回転させながらクチバシを突き出して突進し、衝突する。

 

「ケーン、“ひのこ”!」

 

 力は互角でも、体躯の差から弾かれてしまったデリバードにオーロットが追撃しようしたところへ、“ひのこ”が襲いかかり一瞬怯ませる。

 

「すまない、助かった。どうやら相手のパワーが私の予想以上だったらしい。“れいとうビーム”!」

 

 デリバードの口から青白い光線が発射され、オーロットにヒットする寸前、オーロットの姿が地面に吸い込まれていってしまった。

 

「えっ!? き、消え……」

 

「“ゴーストダイブ”……! どこから来るかわからんぞ、気を付けろ!」

 

 ポケモン達だけでなく、ツバキとイソラも周辺を警戒し、オーロット出現の兆候を見逃すまいとする。

 そしてその姿がケーンの背後に浮かび上がってきた。

 

「っ! ケーン、気合いを入れて!」

 

 オーロットに気が付かないケーンにはツバキの言葉の意味がわからなかったが、とりあえず言う通りにすると、背中の炎がより激しく燃え上がり、オーロットはたまらず後退りしてしまった。

 

「“ドリルくちばし”!」

 

 そこへデリバードが突進し、先ほどとは逆にオーロットの身体を撥ね飛ばす。

 だが、オーロットはまたしても地面に空いた黒い穴へと沈んでしまう。

 

「……手強い……かなりの実力者だぞ、あのオーロットは」

 

 今度はどこから来るかと見渡していると、突然ケーンが宙を舞った。

 

「ケ、ケーンっ!」

 

 見れば、ケーンの足元から拳を突き出したオーロットが這い出てきているではないか。

 

「真下か……! 特に4足歩行のポケモンには大きな死角となるか……って、ツバキ!?」

 

 イソラの横をツバキが走り抜けた。

 落下してくるケーンをキャッチしようとしているようだ。

 

「ケーン! っと! ととと…………」

 

 タイミングを見計らい、腕でクッションを作ると、ボスッとケーンが落ちてきた。

 走りながらキャッチしたためかバランスが崩れ、前のめりになるツバキだったが、コツンと安定感のある物にぶつかり無事停止……。

 

「離れろツバキっ!」

 

「え?」

 

 全然無事ではなかった。

 ぶつかったのは他でもないオーロットだったのだから。

 オーロットは赤い単眼でツバキを見据え、右腕を発光させて振り上げる。

 

「あわわわわわっ!?」

 

 思わず目を閉じたツバキの腕から、ケーンが勢いよく飛び出し、オーロットの顔にへばり付いた。

 

「あっ!? ケ、ケーン危ないよ、離れて!」

 

 驚いたオーロットは技を中断し、ケーンを引き剥がそうともがいている。

 そして左腕でがっちり掴むと、捨てるように地面に叩き付けてしまった。

 ケーンの身体は地面にバウンドして一際大きく跳ね上がった……が、突如としてその身体が青い光を放ち、浮かび上がるシルエットが形を変えてゆく。

 

「っ! これは……! ケーン!」

 

 ツバキはその光を見ると、期待と歓喜から笑みを浮かべる。

 そう、進化の光だ。

 

「ここで進化するか……!」

 

 光が収まると、シルエットは身体を捻って体勢を立て直し、前脚を先にしてしなやかな動きで着地した。

 

 

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「か…………格好可愛い……! やったねケーン!」

 

 かざんポケモン『マグマラシ』へと進化したケーンは、頭部と背中から炎を吹き出し、進化直後の興奮を発散する。

 

「マグマラシかぁ…………あっ、これ新しい技……! よし……! 行くよケーン! “ニトロチャージ”!」

 

 背中の炎が一層激しく噴出し、それを推進力に一気に加速したケーンの目にも止まらぬ突進がオーロットにヒットする。

 

「“ひのこ”!」

 

 そのまま背後へ回り込んだケーンから“ひのこ”が撃ち出され、振り向こうとしたオーロットに次々に命中し、ついに膝(?)を折る事に成功した。

 

「はっ……はっ…………お、大人しくなってくれた……! ……ケーン、すごく格好良かったよ! ……あつっ!」

 

 オーロットから戦意が消えたのを確認し、ツバキは一回り大きくなったケーンを両腕で抱き上げ、頭を撫でようとして慌てて左手を離す。

 ヒノアラシ時代と異なり、背中だけでなく頭にも炎の噴出口が追加され、今の今まで激しく燃え上がっていたのだから、熱いのは当たり前である。

 ついでにケーンの身体を支えている右手も熱い。

 

「付き合い方を工夫しないと火傷するぞツバキ。……さて、オーロット。私達は森を荒らしたりはしていないはずだが……知らず知らずの内に、何か気に障る事をしてしまったのか?」

 

 イソラに静かに問いかけられたオーロットは、周囲に響くような低い鳴き声を上げる。

 すると風景が見る見る変化していき、ツバキ達の立っている場所は元々いた道の真ん中に戻っていた。

 

「……なるほど。ゴーストタイプを併せ持つオーロットならば、少し空間を歪めるくらいは可能か」

 

「歪める?」

 

「そうだな……一時的にオーロットが作った別の空間に放り込まれていたと考えれば良い」

 

 イソラがツバキに説明すると、オーロットが歩み寄り、オボンの実を差し出してきた。

 

「……くれるの? ありがとう、オーロット。はい、ケーン」

 

「もらっておこう。ほら、デリバード」

 

 それぞれもらった木の実をポケモンに食べさせて体力を回復させる。

 するとオーロットは2人に手招きをして、ゆっくり森の奥へと歩き始めた。

 

「……どうも事情があるようだな。行くぞツバキ」

 

「うん、もしかしたら何か困ってるのかも……!」

 

 ツバキとイソラは導くようなオーロットと共に、森の奥へと進んでいく。

 果たしてそこで待っている物は……。

 

 

 

つづく




今回も駄文雑文落書きへお付き合いいただいてありがとうございました!

ゴーストポケモンの後をついてくとか怖すぎる気がする。

投稿の間隔を少し開けたら心にゆとりが生まれた…かもしれないです。
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