蒼天のキズナ   作:劉翼

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トキワシティ行きとなる第53話です!


第53話:トキワジム突入……ならず!?

 オーロットの頼みで、トキワの森の木を伐採せんとするロケット団と戦う中、訪れたツバキの危機にシェルルはグソクムシャへと進化してロケット団を一掃。

 さらにロケット団から助けたデデンネに懐かれたツバキは、彼をゲットして仲間を増やすと、改めてトキワシティを目指して進み始めた。

 

 

 

「植物の成長を促進して森を拡げていたのはオーロットだったんだな」

 

「最初襲われた時はどうなるかと思ったけど、森が大好きな優しいポケモンだったね」

 

 森を出たツバキとイソラは、雑談をしながら2番道路を南下する。

 まぁ、大部分を森に飲まれて、本当に短くなってしまっている道ではあるが。

 

「それはそれとして、次はトキワジムだね! よぉし……!」

 

 次なる挑戦に闘志を燃やして気合いを入れるツバキの姿は、旅に出たばかりの頃を思えば、もはや別人と言えるほどに生き生きとしている。

 が、対するイソラは腕を組んで思案顔だ。

 

「……うぅむ……トキワジム……トキワジムなぁ……」

 

「……? どうしたのお姉ちゃん?」

 

「いや………………うん、まぁ……場所の確認も兼ねて、先に行ってみようか」

 

 歯切れの悪いイソラの態度を疑問に思いつつも、ツバキは歩みを進めて無事トキワシティに到着し、イソラに案内されてトキワジムへ向かう。

 そして、イソラの態度の意味と理由を知る事になった。

 

「……えぇ……」

 

 唖然とするツバキの視線の先にあるのは、ジムの扉に貼り付けられた1枚の紙。

 

〈ただいま外出中。恐れ入りますが、御用の方は日をお改めください。 トキワジムリーダー〉

 

「はぁ……やはりか。どうにもここのジムリーダーになる奴は、やたらとジムを留守にしがちなんだが、今のジムリーダーもその類らしい……」

 

 イソラは溜め息を吐くと、やれやれといった様子で首を捻る。

 

「お姉ちゃん、どうしよう……?」

 

「まぁ……戻るまで特訓しつつ待つか、先にグレンジムを攻略するかだな」

 

「……グレンジム……」

 

 ツバキとイソラの故郷であるグレンタウンに存在するポケモンジム。

 その名に妙な懐かしさを覚えたツバキは、郷愁からか目を閉じてしばし考え込んでいたが、やがて笑顔を浮かべてイソラを見上げた。

 

「……うん、ここで待っててもいつ戻るかわからないし……グレンタウンに行こう! パパとママにも会いたいし……」

 

 考えてみれば、旅の途中では両親も電話で会話をしただけで、旅立ちの朝の挨拶以来対面はしていない。

 一応テレビ電話もポケモンセンターに設置されているのだが、旅の初期は顔を見たら意思が鈍るかもしれないと考え、あえて普通の電話にしていたのが習慣として染み付いてしまったのだ。

 

「ふむ……となるとルートはいくつかあるな。南のマサラタウンからさらに南下して21番水道をポケモンに乗っても行けるし、来た時同様にクチバシティから連絡船を使っても良い。セキチクシティから19、20番水道を進む手もあるぞ」

 

「マサラタウン……マサラタウンてあのオーキド博士の研究所がある所だよね……!? 行ってみたい!」

 

 ポケモンに関わる者として、ポケモン研究第一人者であるオーキド博士はまさに憧れの存在。

 それはポケモントレーナーとして日の浅いツバキとて例外ではない。

 

「ふっ……そう言うと思ったし、私も行きたかった。実のところ、これまで2回くらいしかお会いした事が無かったからな」

 

 そして当然イソラも、である。

 各地を巡り、様々な地方のポケモン研究者と出会ったが、オーキド博士の名声は彼らにも大きな影響を与えていた。

 オーキド博士が称賛される度に、出身地方の同じイソラは少し誇らしい気分になっていた。

 

「よぉし! それじゃあマサラタウンに……! ……の、前に……」

 

 ツバキはポケモンセンターに向かうと、パソコン操作を始めた。

 

「うーんと…………うん、ミスティ、かなぁ……ごめんねミスティ、少しの間ボックスにいてね」

 

 キーボードを叩いて操作を進めると、ミスティの入ったボールが転送され、別のボールが送られてきた。

 

「ふふっ、出ておいで、スフィン!」

 

 掲げたボールからデデンネが飛び出し、ツバキの腕の中へと落ちてきた。

 

「スフィン?」

 

「えっへへ~、形が球体(スフィア)だから! 丸々して可愛いよね~♪」

 

「ああ、なるほど……」

 

 可愛いという感想はイソラも同意だが、どちらかと言うと饅頭や大福、鏡餅みたいだなと思っていたのは言わない方が賢明だと判断し、とりあえず頷いておく。

 

「これからよろしくね、スフィン!」

 

 そしてツバキは満面の笑みでスフィンに頬擦りを……。

 

「っ! ま、待てツバ……」

 

 時すでに遅し。

 スフィンと頬を擦り合わせたツバキの身体に電流が流れる。

 

「んびびびびびっ!? ……ふひゅぅ~……」

 

 ツバキは身体が痺れ、スフィンを抱いた姿勢のまま、ペタリと座り込んでしまった。

 

「……デデンネの頬には電気袋があって、常に一定量の電気を溜め込んでいる、と言おうとしたんだがな……」

 

 かく言うイソラも、エモンガで同じ事をしてしまった経験があるので、あまり強く言えない。

 

「……あうあうあう……」

 

「顔の筋肉が痺れたか……やれやれ」

 

 イソラが表情の固まったツバキの頬や顎の周りを丹念にマッサージしていくと、少しずつ顔が動くようになってきた。

 

「はふぅ……びっくりしたぁ……」

 

「ケーンの場合もだが、触れ合いには気を付けてな……」

 

 仕方なくスフィンを撫でるだけで我慢するツバキの頭を、イソラが宥めるようにポンポンと軽く叩く。

 

「そ、それじゃ改めて出発だね!」

 

「ああ。だが、“なみのり”を覚えたポケモンを連れてくるから少しだけ待っててくれ」

 

 イソラは手早く自分のボックスと接続し、手持ちを入れ替えて戻ってきた。

 

「よし、では行くか」

 

「うんっ! オーキド博士かぁ……本やテレビ、ラジオでは知ってるけど、本物は初めてだなぁ……」

 

 スフィンをボールに戻したツバキは、意気揚々とマサラタウンへ向けて歩き出した。

 トキワシティとマサラタウンの間に存在する1番道路を進むと、あちこちで野生ポケモンをゲットしようとするトレーナーの姿が見られ、彼らの多くはフシギダネやゼニガメを連れている。

 

「マサラタウンの研究所でポケモンをもらってトレーナーデビューする人は多いからな。ここはバトルやゲットの練習をするのにぴったりなんだ」

 

「へぇ~……わたしもグレンタウン以外で生まれてたら、あんな風に練習してたのかなぁ…………あたっ! あいたたたっ!? なっ!? なななっ!?」

 

 ツバキがボソリと呟くと、肩に乗っていたポポが側頭部を突ついてきた。

 

「あー……グレンタウン以外で生まれていたら、ポポと出会う事も無かったという事だからな……」

 

「ご、ごめんごめんポポくぅ~ん! そういう意味で言ったんじゃないってばぁ~!」

 

 

【挿絵表示】

 

 

 走り回るツバキと、飛び回ってその後頭部を突つくポポのじゃれ合いを、イソラは微笑ましく見守る。

 

「(ふふっ……まるで兄妹だな……)」

 

 基本的にツバキに危害を加える者には容赦しないイソラだが、長く共にいるポポに関しては、数少ないツバキの世話を任せられる存在として見ており、かつ本気でツバキに攻撃をするわけがないという信頼もあるので、笑って黙認している。

 しばらくするとじんじんする側頭部と後頭部を撫でながらツバキが戻ってきた。

 ポポをボールに戻せばそれで終わりだったのだが、そうしない……というよりその発想が出てこなかったのがツバキらしい。

 

「うぅ……そういうつもりじゃなかったのに……」

 

「まぁ、それだけポポにとってお前との思い出が大切という事だ」

 

「それはわたしだって同じだけどぉ……」

 

 ぶつぶつ言いながらマサラタウンへの歩みを再開するツバキ達。

 その時、甲高い鳴き声が一帯の空に響き渡った。

 

「ひゃっ!? な、何……?」

 

「……っ! あれは……!」

 

 ツバキとイソラ、そして周りのトレーナー達が見上げた先に、火の粉を散らしながら飛ぶポケモンの姿があった。

 

「ファイヤーか!」

 

「ファイヤー!? 伝説のポケモンだよね……!?」

 

「ああ……伝説と呼ばれる中では個体数はそこそこいるようだが、希少なポケモンである事には変わりない。こんな所で見られるとは思わなかった。向こうはセキエイ高原……いや、シロガネ山か……? 確か何回か目撃例があったな」

 

 ファイヤーの飛び去った方角を眺めながら、イソラはその先に鎮座するカントー・ジョウト最大級の山へと思いを馳せる。

 

「しかし、こんな人里の空を飛ぶなんて珍しいな……」

 

「そうなの?」

 

「ああ。そうそう人目につかぬが故の伝説ポケモンだからな。ふっ、縁起が良いものを見られた」

 

「そうだね! えへへ、良い事あるかなぁ」

 

 にこにこしながら歩き出したツバキに笑いかけながら、イソラは真顔で振り向く。

 

「……あれだけ地上で騒がれても、まったく気にも留めず、何かに導かれるようにまっすぐに…………何も無ければ良いのだが……」

 

 イソラの胸に湧いた正体不明の違和感と不安。

 それが現実の物とならぬよう願いながら、イソラはツバキの後を追っていった。

 

 

 

 

――――シロガネ山山頂

 

「おっほ、マジで来やがった」

 

 

【挿絵表示】

 

 

 周囲に熱気を撒き散らしながら飛来したファイヤーを、黒衣の男が見上げ、唸り声を上げていた機械のスイッチを切る。

 

「よう、ファイヤー。俺はアクイラってんだ。早速だが、バトルを申し込ませてもらうぜ! 行くぞヘルガー!」

 

 アクイラがボールを投擲し、ファイヤーの前に地獄の番犬のごとき遠吠えを上げながらヘルガーが着地した。

 

「まずはその気になってもらわねえとな。“バークアウト”!」

 

 ヘルガーの悪意を乗せた咆哮がファイヤーの全身を震わせ、敵意と恐怖心を同時に掻き立てる。

 ギロリとヘルガーを睨み付けたファイヤーが飛び上がり、口から超高熱の“かえんほうしゃ”が放たれ、地上のヘルガーを飲み込んだ。

 

「なるほどな、さすが伝説のポケモンだ。すげえ熱量だぜ……だが……」

 

 地上を覆っていた炎が、1ヶ所に吸い寄せられ、見る見る内にその量を減らしていく。

 炎の中からヘルガーが姿を現し、周囲に燃え盛る炎を吸い上げ、飲み込んでいく。

 

「その炎も、こいつにゃ効かねえ。むしろご馳走さんってとこだ」

 

 特性《もらいび》によって相手の炎を喰らい、自らの力としたヘルガーが口の周りを舐め回し、満足げな表情を見せる。

 

「もらってばっかじゃ悪いからな、返すぜ。“かえんほうしゃ”だ」

 

 ヘルガーの口の端から漏れ出た炎は、ファイヤーのそれを喰らい、本来よりも遥かに熱量を増している。

 そしてファイヤー目掛けて一気に発射された“かえんほうしゃ”が、その身体を包み込み、ファイヤーは苦しみから呻き声を上げた。

 

「わりいわりい。もらった炎が強すぎてコントロールしきれなかったみてえだ」

 

 ファイヤーが大きな翼を振るい、身体に纏わり付いた炎を振り払う。

 

「ほー、やるじゃねえか、そうでなきゃあな。“バークアウト”」

 

 再度上げたヘルガーの凄まじい吠え声に、ファイヤーの身体が竦み上がるも、翼を振り下ろして突風を巻き起こし、“エアスラッシュ”を放った。

 しかし、それはヘルガーの身体にヒットしたにもかかわらず大したダメージを与えられていないようにも見える。

 それもそのはず、“バークアウト”は声に乗せた悪意を以て相手の精神を磨り減らし、特殊攻撃を思うように使えなくする追加効果があるのだ。

 それを2回も食らったのだから、ファイヤーの戦意はもうガタガタになってしまっている。

 

「くっくく、もう十分か。悪いなファイヤー」

 

 そう言うとアクイラは手元のリモコンのスイッチを入れる。

 すると、周囲に散乱していた黒い三角形の物体が浮かび上がり、弱ったファイヤーを囲むように位置付けし、互いの間にエネルギーフィールドを展開する。

 突然の事にパニック状態となったファイヤーは口から炎を放つも、エネルギーフィールドに跳ね返され、己の身を焼いてしまう。

 

「ちと狭い鳥籠だが、まあ、我慢してくれや。………………おう、ルプスか? アクイラだ。ファイヤーの捕獲に成功したぜ。迎えをよこしてくれ」

 

「了解、連絡しておく。こちらもサンダーが接近しているようだからな、切るぞ」

 

「あいよ。…………ウィルゴ、そっちはどうだ?」

 

「ふたご島に向かってる最中よ。船の擬装に手間取ったわ」

 

「そうかい。ま、気を付けてな。……さあて、と」

 

 同僚への連絡を終えたアクイラは、近くの岩に腰かける。

 

「迎えのヘリが来るまで待機か……暇だなあヘルガー」

 

 アクイラは寄り添ってきたヘルガーの顎を撫でながら、エネルギーフィールドの中で衰弱するファイヤーを眺める。

 

「……ふー……やっぱ気分の良いもんじゃねえな……」

 

 これが自分の役割とはいえ、腐ってもポケモントレーナー……徒にポケモンを傷付けるこの装置には懐疑的である。

 

「ま、組織の活動なんてそんなもんか……悪く思わねえでくれよな、ファイヤー」

 

 こうして炎を纏う伝説のポケモンは、人知れずロケット団の手に堕ちてしまったのだった……。

 

 

 

つづく




今回も駄文雑文にお付き合いいただきありがとうございました!

ファ、ファイヤーさんが弱いんやない…特殊寄りほのおタイプなのに《もらいび》+“バークアウト”でメタられただけやねん…。
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