蒼天のキズナ   作:劉翼

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ロケット団編突入となる第65話です!


第65話:アジト突入!ロケット団を撃滅せよ!

 ロケット団らしき一団がふたご島を離れた……カツラからその話を聞いたイソラは、スカーレットに協力を要請し、発信器の反応が消失した場所へ向かおうとする。

 しかし、彼女が何かを隠している事を察知したツバキにその場を押さえられて追及を受け、スカーレットの口添えもあって彼女も同行させる事となった。

 そして3人はロケット団のアジトがあるとおぼしき場所へ到着すると、偵察に出したペリッパーの帰りを待つ事に。

 

 

 

「……ふむ……あくタイプの使い手は多く、見つけるのに苦労したが……恐らくこれがロケット団加入前のアクイラだ」

 

 ペリッパーが戻るまでの間、少しでも相手の情報を集めようと考えたイソラは、特にアクイラに関するデータをネット上で探していた。

 ベラがウィルゴと名乗っているように、アクイラもまず本名ではないであろう。

 そうなると手がかりは、あくタイプを操る優秀なトレーナーという事だけなので時間がかかったが、ようやくそれらしい情報を得る。

 

「本名クシダ。若くしてポケモントレーナーとして卓越した才覚を発揮し、ポケモンリーグをはじめ数々の大会で好成績を残している。特にあくタイプの扱いに長け、防御を切り捨てた苛烈な攻めで圧倒するパワーファイターであると同時に、相手のわずかな間隙を見逃さない観察眼とあくタイプ特有の絡め手を巧みに組み合わせる狡猾な一面も併せ持つ優秀なトレーナーらしい。だが……」

 

 イソラはさらに読み進めていく。

 

「非常に喧嘩っ早い……というより闘争本能に極めて忠実で、白熱してくるとバトルフィールドの中しか見えていないかのように、時に相手のトレーナーをも攻撃に巻き込み、対戦ポケモンを戦闘不能という事ではなく、本当の意味での瀕死状態にまで追い込んだ事が1度2度ではない危険人物でもある……か」

 

「………………おっかない」

 

「こ、怖い人なんだね…………で、でも、怖がっていられない! ロケット団なんてやめさせないと……!」

 

 ツバキが両手を握り締めて自分を奮い立たせたその時、ペリッパーがイソラの元へと戻ってきた。

 

「どうだった、ペリッパー?」

 

 ペリッパーはくいくいと首……というより身体全体を動かしてイソラ達を導こうとしており、無事アジトの入口を発見したようである。

 

「よし……出てこい、ギャラドス」

 

 イソラが取り出したボールから水上に現れたのは、青く長い身体を持つ、龍のようなポケモン。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 一度怒れば、天を焦がし、地を焼いて暴れ狂うと言われるきょうあくポケモン『ギャラドス』だ。

 ……しかし、その巨体と強面な顔とは裏腹に、自身より遥かに小さいイソラに擦り寄り甘えるという、衝撃的な登場を果たした。

 

「よしよし。……ん? ああ、こいつはコイキングの頃から甘えん坊でな。ボールから出すと毎回このスキンシップから始めるんだ」

 

 ツバキとスカーレットの唖然とした表情と視線に気付くと、イソラはギャラドスの額を撫でながら、2人の心中を察したかのように話す。

 

「そ……そうなんだ……」

 

「………………ギャップ萌え?」

 

 顔を見合わせるツバキ達に首を傾げながら、イソラはギャラドスに向き直る。

 

「ギャラドス。背中だけ出して潜航し、そこに私達を乗せてくれ」

 

 ギャラドスは素直に頷き、身体を海中へ沈め、その背中の一部分のみを露出させた。

 

「よし、2人とも乗れ」

 

 先に乗ったイソラの手招きに従い、ツバキとスカーレットが順にギャラドスの背中へと乗り込んだ。

 

「案内を頼む、ペリッパー」

 

 先を飛ぶペリッパーの後を追い、ギャラドスが潜航状態で前進を始める。

 しばらくすると、ごつごつとした大小様々なサイズの岩がいくつも海面に顔を出し、さながら迷路のような様相を呈するエリアだ。

 

「ふむ……ギャラドス、まだ進めそうか?」

 

 尻尾をパシャッと跳ね上げてギャラドスが答え、細長い身体を駆使し、器用に岩の合間を縫って進んでいく。

 

「船の航路からは外れ、周りは断崖絶壁で釣り目当ての者もそうそう来ないし、これらの岩が外からの目を欺く……なるほど、隠れて悪事を働くにはもってこいだ」

 

 ペリッパーの案内で岩の迷路を進む一行の前に、ぽっかり穴の空いた岩壁が姿を現した。

 

「ここは……タマムシシティの下か」

 

 イソラは入口らしき穴のある崖を見上げて位置を確認し、納得したように頷く。

 

「そういえば、かつてはタマムシシティの地下にロケット団のアジトがあったな……ロケット団壊滅の折に完全閉鎖されたそうだが。まさか1度一掃された場所に再びアジトが造られるとは思いもよらないか。ある意味心理の裏を突いている」

 

「………………どうする?」

 

「決まっている。ペリッパー、ご苦労だった、戻ってくれ。出てこいチルタリス」

 

 ペリッパーをボールへ戻し、次いで出したのはチルタリスだ。

 

「2人とも耳を塞げ。ギャラドスはそのまま水中にいろよ。……よし、チルタリス、あの穴へ向けて“うたう”」

 

 イソラは自分の耳を両手で塞ぎ、ツバキ、スカーレット両名がそれに倣ったのを確認するとチルタリスへと指示を出す。

 チルタリスは翼を広げて目を閉じると、その口から聞く者の心を虜にする美しい歌声を奏で始めた。

 

「……そろそろ良いか。チルタリス、“うたう”中止」

 

 歌い始めてから1分ほど。

 イソラに止められてチルタリスが口を閉じる。

 

「ギャラドス、突入するぞ」

 

 イソラがギャラドスの背中をぽんぽんと叩くと、ギャラドスがゆっくりと穴へ向けて前進し、チルタリスも後へ続く。

 入口から入ってしばらく水路を進むと、天井と壁がだんだんと広がり、広い空間に出た。

 明らかに人工的に広げられた空間はドックになっており、8艘の小型ボートと、連絡船に偽装した船が1隻停泊していた。

 

「やはりここで合っていたようだな」

 

「お姉ちゃん、あれ!」

 

 ツバキが指差した先には、共通の黒いユニフォームを纏った男達が何人も倒れている。

 洞窟内で反響した“うたう”によって眠気を刺激されたようだ。

 

「まずは侵入成功。あとは気付かれずにどこまで入り込めるかだな」

 

 岸に寄せたギャラドスの背中から降りた3人は、とりあえずドック内で眠っている団員達を集め、一纏めにして縛り上げておく。

 

「ありがとう、ギャラドス。助かったぞ」

 

 イソラはギャラドスの顔を撫でてからボールへと戻す。

 団員の1人が持っていたアジトの見取り図を確認すると、ここからさらに2階層ほど下へ広げられているようだ。

 

「行くぞ。今日こそロケット団を完全に撲滅する」

 

 イソラを先頭に、スカーレット、ツバキと続いてアジト内の通路を進む。

 ……と。

 

「…………ん? っ! な、なんだお前ら!?」

 

 曲がり角で巡回中と思われる団員と鉢合わせしてしまった。

 無線機に手を伸ばした団員だったが、次の瞬間、脇腹にイソラの回し蹴りがクリーンヒットし、吹っ飛ばされて壁に激突した。

 

「がっ……! ……か……ふ……」

 

「……チルタリス、ツバキの目と耳を塞げ」

 

「え? わわっ……!?」

 

 チルタリスがそのふわりとした翼で、鼻と口を除いたツバキの顔を覆った。

 

「お、お姉ちゃん……?」

 

 イソラは起き上がろうとする団員へ近付くと……。

 

「うぐぐ…………ぎっ!?」

 

 なおも連絡を取ろうと伸ばした右腕を勢いよく踏みつけた。

 

「答えろ。お前達は伝説のポケモンを捕らえて何をしようとしている」

 

「うっ……うぅ……」

 

 口をつぐもうとする団員だったが。

 

「っ!? ぐぎっ……! あが……があぁぁぁ……!」

 

 イソラは相手の関節を歪めんばかりに踏みつける脚にさらに力を込める。

 

「ふむ、痛いか? だが、お前達がこれまでに苦しめたポケモン達のそれに比べれば大した事はあるまい? ……私はお前達ロケット団を殺したいほど憎んでいる。無論、これ以上の事をするにも躊躇いは無い。お前が答えないならさっさと次の奴を探すだけだ」

 

 脚が踏み込まれる度に骨と筋肉が脳へ激痛を訴え、今にも腕が断裂しそうな感覚に襲われる。

 

「わ、わかった! わかったからやめてくれぇっ!」

 

 みしみしと身体の中へ悲鳴を響かせ始めた自身の腕、そして殺意以外の感情の無いイソラの眼差しに恐怖した団員は、顔を青ざめてとうとう口を開いた。

 

「お、俺も詳しい事はわからないが、捕まえた3体のエネルギーだ遺伝子だって話してて……ち、地下……最下層の研究エリアに運んだんだ……! こ、この通路を進んだ先に貨物運搬用のエレベーターがある……! 俺……俺が知ってるのは……それだけだ……! 本当だ!」

 

「……そうか。チルタリス、“うたう”」

 

 イソラとスカーレットが耳を塞ぎ、チルタリスが歌を鳴り響かせる。

 男はすぐに眠りに落ち、その場で寝息を立て始めた。

 

「行くぞ」

 

 手がかりを得た一行は再び歩き始める。

 

「チルタリス、もうツバキを放して良いぞ」

 

「……もう! なんなのお姉ちゃん!」

 

 羽毛による視覚と聴覚の遮断から解放されたツバキは、ぷりぷりと怒りながら腕を振っている。

 当然、先ほどのようなえげつない尋問をツバキに見せないための配慮であるが、当の本人は何も説明されず不満げだ。

 

「すまんすまん。だが、今は時間が無いからな。後にしてくれ」

 

「むー……」

 

 

 

「あーらら、侵入されちゃってるわねぇ」

 

 モニターに映る3人組がエレベーターに乗り込む様子を眺める女性が面白そうに呟く。

 

「よもやこの場所に気付く者がいるとはな。キメラプロトの起動にはまだ時間がかかる……アクイラ、ウィルゴ、迎撃に向かえ。トラップで分断して各個撃破せよ」

 

 ロングコートを纏い、顎髭を蓄えた壮年の男性の指示にもう1人の男性が歓喜する。

 

「なら俺は女帝と闘るぜ! 前はバトルが中断されちまったんで、不完全燃焼でなぁ。……待てよ……だが鬼も捨て難いな……」

 

「どっちでも好きにすればぁ? アタシはぁ……んふっ……♪」

 

 女性は画面の中の帽子を被った少女をじっと見つめ、舐めていた飴を噛み砕いた。

 

「うふふ……前よりは愉しませてくれるようになったかしらぁ……? 弱い奴の必死の抵抗、そしてそれを真っ向からぶち壊してやった時の絶望の表情……あはぁっ♪ バトルの醍醐味よねぇ♪」

 

「相変わらずわけわかんねぇ上に悪趣味な奴だぜ……バトルの醍醐味つったら強ぇ奴との死闘だろうが」

 

「なんでも良いから早く行けっ!!」

 

 バトルに関する持論で対立し始めた2人に、コートの男性が雷を落とすと、2人はようやく移動していった。

 

「まったく……だが、あの2人ならば撃退はできるだろう。悪くてもキメラ起動まで時間は稼げるか……やれやれ」

 

 

 

 エレベーターで最下層までやってきた3人は、それぞれ周囲を警戒しつつ通路を進む。

 

「……妙だ。いやに静かすぎないか? ここは敵の本丸のはずだろう」

 

「………………する。嫌な予感」

 

「それって、罠ってこ……」

 

 ツバキがイソラの疑念に質問しようとしたその時。

 言い終わる前に突如としてツバキの姿がかき消えてしまった。

 

「っ!? ツバキっ! ……くっ、これは……!」

 

 駆け寄ったイソラが、先ほどまでツバキの立っていたその足元で発光する平べったい機械を手に取る。

 

「使い捨てのワープパネル……! くっ、一方通行か……!」

 

 それは、ヤマブキジムなどにも設置されている、特定の座標へ物質を転送する装置の使い捨てタイプ。

 持ち運びして好きな場所に設置し、別の場所に置いた同タイプと連動させられるが、内蔵バッテリーの容量から1回使うと機能を停止してしまう。

 イソラはボケギアの電話機能でツバキを呼び出してみる。

 

「………………っ! ツバキ! 無事か!?」

 

「お姉ちゃん! そっちは大丈夫!?」

 

 聞こえてきた声にイソラが安堵の息を漏らす。

 

「良かった……この地下で通じるという事は、そう遠くに飛ばされたわけではないようだ。こちらは私もスカーレットも無事だ、お前の方は?」

 

「平気! ……でも、どうしよう……」

 

「互いの詳しい場所がわからない以上、別々に進むしかない。……気を付けろよ。恐らく今のお前ならば雑魚ども相手なら問題は無いと思うが……連中は数を恃みにしてくるはずだ」

 

「……わかった。お姉ちゃん達も気を付けてね!」

 

 電話がプツリと切れる。

 

「……敵地で分断されたというのに、不安を感じさせないあの声……ふふっ、本当にたくましくなったものだ……」

 

「…………イソラ……」

 

 少し寂しそうなイソラにスカーレットが声をかけると、彼女はすぐに顔を上げた。

 

「私達も行くぞスカーレット。ツバキに負けてはいられん」

 

 歩みを再開したイソラとスカーレット。

 だが、その行く手を遮るべく、4人の団員が通路の正面へポケモンと共に陣取った。

 

「スリープ、ゴースト、ニューラ、ベトベター…………かわいそうにな……このような連中の悪事に利用されるとは…………ペリッパー」

 

 怒気の籠るイソラの声と共にペリッパーが姿を現し、通路の天井付近に雨雲が広がる。

 

「怯むなっ! アクイラ様の手を煩わせるまでもない! ここで止めるぞ! “サイコカッター”!」

 

「“シャドーボール”!」

 

「“こごえるかぜ”!」

 

「“ヘドロこうげき”!」

 

「ふぅ…………“ハイドロポンプ”」

 

 サイコエネルギーの刃、影を固めたエネルギー弾、凍てつく冷風、毒液の塊……それら全てを高圧の水流が飲み込み……。

 

「うっ!? うわ……うわぁぁぁーーーーっっっ!!」

 

 そのまま相手のポケモンとトレーナーまでをも押し流してしまった。

 

「……ふんっ……」

 

 倒れた団員達を侮蔑の眼差しで見下ろし、イソラはその間を歩き去っていく。

 

「……ぐぐっ……! お、おのれ……!」

 

 その内の辛うじて意識を保っていた1人が、倒れたまま電磁警棒(スタンロッド)に手を伸ばし……。

 

「ぐっ……!?」

 

 そのまま全身に刺激が走り、完全に沈黙した。

 

「…………ありがと。レントラー」

 

 

【挿絵表示】

 

 

 スカーレットの脇で黒い体毛を帯電させているのは、逆立った鬣を持つ四足獣型のポケモン……がんこうポケモンの『レントラー』である。

 倒れた相手に電撃を浴びせる、柄にも無い容赦の無さを見せたスカーレットであるが、実のところイソラほど表には出さないだけで、彼女もまたロケット団のような輩を激しく憎悪している。

 というのも、彼女がまだ駆け出しトレーナーだった頃、地元シンオウ地方にて、伝説のポケモン『アグノム』の捕獲を目論むギンガ団幹部・ジュピターの前に正義感から立ちはだかるも一蹴され、アグノムのついでに手持ちのミミロルを奪われてしまった事に由来する。

 事件解決後にミミロルは無事手元に戻されたが、それ以来他人のポケモンを奪ったり、野生でも相手の意を無視して力尽くで連れ去ろうとする者に対して強い怒りと憎しみを抱いて生きてきたのだ。

 

「………………行く。レントラー」

 

 スカーレットは真紅の瞳で周りを見渡し、今度こそ全員無力化した事を確認してからレントラーを伴ってイソラの後を追った。

 イソラとスカーレット、そしてツバキ。

 敵の策略によって2組に別れた一行は、底の見えぬロケット団の野心を砕くべく、それぞれに行動を開始した……。

 

 

 

つづく




今回も駄文雑文落書きにお付き合いいただきありがとうございました!

守る守る言いながら毎度のようにツバキとはぐれるポンコツお姉ちゃん。
ただ、こうして引き離さないと、ツバキの成長の機会を食いかねないレベルで味方としては強すぎるのがイソラの欠点なのです…。
自分で言うのもなんですが、強すぎて扱いには慎重にならざるをえない困ったちゃん。
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