蒼天のキズナ   作:劉翼

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どんどんサブタイの暑っ苦しさが増して参りました。
第6話は、初のジムリーダー戦という事もあって加減が効かず、今までの量で言えば3話分ちょいに相当する、長めの文量となっております。


第6話:電気の壁を打ち破れ!翻る勇気の翼!

 クチバジム……ジムリーダーであるマチスを筆頭に、でんきタイプの使い手達が集い、チャレンジャーを待ち受ける。港町なだけあり、他地方からやって来るトレーナーの、カントー最初の挑戦となる事も多いポケモンジムである。

 今、そのジム内のバトルフィールドで、マチスと1人のチャレンジャーによるバトル……その火蓋が切って落とされた。

 

「ライチュウ、“アイアンテール”デース!」

 

 マチスの指示に、ライチュウは獲物に向かって駆け出し、長い稲妻型の尻尾の先端を硬質化。その形通り、雷のように頭上から降り下ろす。

 

「ファンファン、“まるくなる”!」

 

 チャレンジャーたるツバキも、負けじと指示を飛ばし、フィールドに出ているゴマゾウ……ファンファンがそれに応じる。身体を丸め、防御態勢に入ったファンファンにライチュウの尻尾がヒットするが、ダメージは小さい。

 

「なかなかの頑丈さデス。ならばこれはどうデスか? “シグナルビーム”デス!」

 

 ライチュウの両手の間に光が集まり、3原色の螺旋となって発射される。防御態勢を取っていたファンファンだったが、“シグナルビーム”の直撃を受けて吹き飛ばされる。

 

「っ! ファンファン……!」

 

 その光景を見ていた審判の男性は、冷静にバトルの分析を始める。

 

「(“まるくなる”は物理的な攻撃には強くなるが、“シグナルビーム”のような特殊攻撃は防げない……さすが容赦が無いな……)」

 

 しかし、ツバキの側も決して退こうとはしない。

 

「ファンファン! そのまま“ころがる”!」

 

 宙を舞っていたファンファンは、大きな耳をバタつかせて姿勢を制御し、再度身体を丸めると、高速で回転しながらライチュウへ向けて急速落下を始める。

 落下速度の加わった“ころがる”は、本来の地上で出すそれよりもスピードが増し、ライチュウは反応が遅れてしまう。クリーンヒット寸前で、両手を使って受け止めるも、回転しながら高所から落下してきた30kg越えの物体を抑えきれるはずもない。ましてライチュウの手は、先端が丸くなっており、物を掴むには不向きである。

 案の定、拘束を外れたファンファンの身体がライチュウにヒットした。

 

「(あの状況から即座に“ころがる”に繋げ、威力の水増しを図る……やりマスね、ガール)」

 

「も、もう一度“ころがる”!」

 

 ライチュウを轢き倒したファンファンは、そのままの勢いでUターンして戻ってくる。

 

「デスが、同じ手は通用しマセンよ、ガール! ライチュウ、引き付けて避けなサイ!」

 

 落下していた時よりもスピードが落ち、さらに直線的な動きしかできない“ころがる”の2発目は、ヒラリとかわされてしまう。

 

「“シグナルビーム”デース!」

 

 そして、ライチュウを通り過ぎ、無防備に転がっていくファンファンへ放たれた“シグナルビーム”が直撃する。爆発と共に吹き飛ばされたファンファンは、ここまでのダメージも重なり、あえなく戦闘不能となってしまう。

 

「ファンファン……!」

 

 自身の眼下に倒れたファンファンに、ツバキは一瞬青ざめた表情を見せて目を伏せるが、その場にしゃがみ込み、その身体を撫でながらモンスターボールを取り出す。

 

「……ファンファン、頑張ってくれてありがとう。ボールの中で休んでいて……」

 

 回収用光線と共に収納されたファンファンのボールを見つめた後、足元に目を落とす。

 

「……ミスティ、お願い……!」

 

 ゲントとのバトルの後、ポポと共に控えていたミスティが頷き、フィールドに立って、体躯に大きな差のあるライチュウを精一杯睨み付ける。

 

「(相性の良いポケモンから順に出して、早期から消耗を狙っていく作戦、デスか……)」

 

「い、行きます! ミスティ、“どくのこな”!」

 

 葉の間から勢いよく噴き出した“どくのこな”がライチュウに襲いかかる。しかし、マチスは慌てる様子も無く冷静に対処する。

 

「長い尻尾にはこんな使い方もありマース! ライチュウ、尻尾で吹き飛ばしてしまいなサーイ!」

 

 ミスティに背を向けたライチュウは、尻尾を風車のように高速で回転させ、迫っていた“どくのこな”を霧散させてしまう。

 

「っ……! (そうだ……私もポポくんの“かぜおこし”で防いだんだ……! マチスさんがそんな事思い付かないはずないよね……。……でも……!)」

 

「ライチュウ! Youの本領発揮デス! “10まんボルト”!!」

 

 ライチュウの頬に備えられた電気袋が帯電を始め、徐々にバチバチという音が周囲に響き始めた。

 

「っ! ミスティ、埋まって!」

 

 ミスティは、その場でジャンプをすると、身体を回転させながら爪先でフィールドを抉って半身を埋める。同時にライチュウから強力な電撃が放たれ、ミスティを襲う。そのダメージはライボルトの“ほうでん”を受けた時の比ではなく、目に見えて体力の消耗が大きい。

 

「タイプ相性で半減し、身体をアース化してもあれほどのダメージ……。やはりマチスさんのポケモンの“10まんボルト”はひと味違う……!」

 

「お願い……! 耐えてミスティ……!」

 

 ツバキの祈りが届いたか否かは定かではないが、どうにか持ちこたえたミスティは、地面から這い出る。

 

「ありがとう……! ミスティ! “どくのこな”!」

 

 再度ミスティの葉から多量の“どくのこな”が噴出される。

 

「ガール! 同じ手は通用しないと……!」

 

「そのまま粉の中を走って!」

 

「What's!?」

 

 ミスティは、ツバキの指示に従い、自らの噴き出した“どくのこな”の中を、ライチュウに向けて走り始める。

 

「そ、そうか……! ナゾノクサはくさタイプだけでなく…どくタイプでもある……。どくタイプは毒状態にならないから、あんな芸当も……!」

 

「(さっきのように粉を吹き飛ばそうとすれば、無防備な背中を晒す事になりマス……! かといってこのままだと……)」

 

 “どくのこな”とミスティが迫る中、マチスは意を決して指示を飛ばす。

 

「っ! ライチュウ! “シグナルビーム”!」

 

「ミスティ、“ようかいえき”!」

 

 両者は同時に技を指示し、実際に技が出されたのも同時。放たれた“シグナルビーム”と“ようかいえき”が交差し、お互いに直撃した。

 ミスティはこのダメージによって戦闘不能となったが、ライチュウも“ようかいえき”のダメージに怯んだ隙に、一拍遅れて飛んできた“どくのこな”を吸って毒状態となってしまう。

 

「……ミスティ……もしかしたら、もっと上手い戦い方があったのかもしれない……ごめん……。……それと……ありがとう、あとはわたしとポポくんを信じて休んでいて。」

 

 ツバキは、動けなくなったミスティを抱き上げ、声を掛けながらボールに戻す。

 

「……ポポくん、お願い。ファンファンとミスティが頑張って繋いでくれたんだもん……勝とう……! マチスさんに……!」

 

 ツバキに対して頷いた後、いよいよ最後の1体、ポポがフィールドに降り立つ。

 

「ガール、名残惜しいデスが、これがラストバトル……悔いの無いバトルにしマショウ! ライチュウ! “10まんボルト”!」

 

「ポポくん! 飛んでかわして!」

 

 帯電したライチュウの電気袋から電撃が放たれるが、ポポは空中を縦横無尽に飛翔してかわしていく。

 

「この動き…………っ! なるほど……これが狙いデシたかガール……! ポッポに“10まんボルト”という技のクセを見せるために、相性の良いナゾノクサで様子見を……!」

 

「い、今のわたしやポケモン達じゃ……ポケモンの知識も、技の知識も足りません……なら、一度実際に見るしかありませんから……!」

 

 そう、このジム戦、ポポは最初からここまで、ずっとツバキの側で見て、学習していたのだ。

 ファンファンとのバトルで、ライチュウのでんきタイプ以外の技のレパートリーを。

 ミスティとのバトルで、“10まんボルト”の攻撃のクセを。

 そして、ライボルトの“ほうでん”に比べれば、攻撃の溜めが長く、攻撃範囲が狭いという事を。

 

「(“アイアンテール”は、飛んでいれば大丈夫…恐いのは、撃つのが早い“シグナルビーム”だけど、タイプの相性は良いはず……! ……でも、ポポくんの“すなかけ”も、あの尻尾で押し返されてしまうから使えない……なら……!)ポポくん、“かぜおこし”!」

 

 “10まんボルト”を回避したポポは、翼をはためかせて強風を巻き起こす。正面から吹きつける凄まじい風に、ライチュウは思わず目を閉じて視界が遮られる。

 

「今だよ! “でんこうせっか”!」

 

 風が止み、ライチュウが目を開く前に……そう判断したツバキは、スピードに優れる“でんこうせっか”を指示し、ポポはライチュウに向けて猛スピードで突っ込む。

 

「悪くない狙いデスが、甘いデスよガール! ライチュウ、真正面に“かみなりパンチ”デース!」

 

「え……!?」

 

 目を閉じたままのライチュウの右手が電気を帯び、正面に向けて強烈な右ストレートが突き出される。すでに直撃コースに入っていたポポは、回避しきれずに“かみなりパンチ”を受けてしまう。

 

「ポポくんっ!」

 

 ツバキの足元にまで殴り飛ばされたポポは、かなりのダメージを受けながらも、翼を支えに起き上がる。

 対するライチュウも、ファンファン、ミスティとの連戦に加え、毒によるダメージも蓄積し、両者共に満身創痍である。

 

「……ポポくん……こうなったら……決めるよ……!」

 

 顔を見合わせたツバキとポポは、互いに頷き合い、最後の大勝負の決心をする。

 

「“でんこうせっか”!」

 

 再び猛スピードでの突進が行われ、ライチュウに迫る。

 

「来マスか……! “かみなりパンチ”で迎え撃ちなサーイ!」

 

 そして、ライチュウ側も走り出し、拳に電気を集め、一気に突き出す。……しかし、ポポの身体は、“かみなりパンチ”を掠め、ライチュウの脇をすり抜ける。

 

「……なっ!?」

 

「もっと……! もっと“でんこうせっか”!」

 

 フィールド中を飛び回るポポは、どんどん加速しながら、天井ギリギリまで上昇していく。

 

「……お願いっ……!」

 

「くっ……! ライチュウ! “10まんボルト”デス! 撃ち落としなサーイ!」

 

「っ! ……ポポくんっ!」

 

 時間の止まったような感覚の中、ライチュウが電撃を放つ音と、ツバキのこれまでに無い大声が同時に響いた。

 

「っ! “ブレイブバァァァァーーーーード”!!!」

 

 

【挿絵表示】

 

 

 急激に角度を変え、“でんこうせっか”の加速に落下速度を加えて降下を始めたポポの周囲で空気が渦を巻き、それは瞬く間に巨大な鳥型のオーラを形成した。オーラに触れた“10まんボルト”を切り裂きながら、速度を上げてライチュウに迫り……そして爆音と砂埃がフィールドを覆った。

 

「ポポくん……!」

 

「ライチュウ!」

 

 視界の利かない砂埃の中、1つの影がゆらりと立ち上がった。それは、甲高い鳴き声と共に、大きく翼を広げて己の健在をアピールした。

 砂埃が晴れた時、そこには倒れたライチュウと、脚を震えさせながらも、己を奮い起たせるかのように鳴き声を上げるポポがいた。

 

「ラ…………ライチュウ……戦闘不能! ポッポの勝ち! よって、このジム戦、チャレンジャー・ツバキの勝利とする!」

 

「……! …………や……」

 

 気が付けばツバキは駆け出し、今にも倒れそうなポポを抱き締めていた。

 

「やったぁぁーーーーっ!!! ポポくん……ポポくん……! 勝った……! マチスさんに勝ったんだよぉ……!」

 

 ツバキの歓喜の感情を察したのか、腰に着けた2つのボールがカタカタと揺れ、ボロボロにも拘わらずファンファンとミスティが飛び出してツバキに飛び付き、バランスの崩れたツバキは尻餅をついてしまう。

 

「わっ……! ファンファン……ミスティ……! うん……勝てたよわたし達……! 2人のおかげで勝てた……! ありがとう……ありがとう……!」

 

「……ライチュウ、ナイスファイト。ゆっくり休んでくだサイ」

 

 ライチュウをボールに戻したマチスは、ミスティが飛び付いた拍子に落ちたツバキの帽子を拾い上げ、砂を払いながらツバキに歩み寄る。

 

「Excellentデス、ツバキ。土壇場まで温存していた“ブレイブバード”……あれが真の隠し玉デスか」

 

「えへへ……でも、実は賭けでした。ポポくん、わたしと会う前から覚えていたみたいなんですけど……いつも当たる前にスピードが落ちて、成功した事が無かったんです。“でんこうせっか”を覚えた時、このスピードを利用すれば……って思ったんですけど、練習の時は五分五分でしたから……」

 

「なるほど、本番では成功するかわからなかった……と。しかし、結果は見事に成功デス。恐らくは、ポッポがYouの本気の闘志に応えたのではないデショウか」

 

「……わたしの……本気……」

 

「フッ……ともあれツバキ、Youは見事勝利してみせマシた。よって、YouとYouのポケモン達のガッツを称え、ポケモンリーグ公認、クチバジム突破の証……このオレンジバッジをここに進呈しマス!」

 

 マチスは、審判の男性が持って来たケースからバッジを手に取り、ツバキに手渡す。

 

「わぁ……! あ、ありがとうございます、マチスさん! ほら、ポポくん、ミスティ、ファンファン!バッジ……オレンジバッジだって……! 綺麗だね……!」

 

 

【挿絵表示】

 

 

「そして、これは、Meからの餞別デース。“10まんボルト”の技マシンと、技マシンレコーダーデス」

 

 マチスが取り出したのは、黄色いディスクのような物と、箱状の機械だ。

 

「技マシンの中には、ポケモンが覚えられる技の情報がインプットされていマース。使い方は簡単、技マシンディスクをレコーダーにセットし、その技を覚えさせたいポケモンの頭に、レコーダーから伸ばしたアダプタを着けるだけデス。まだYouの手持ちに覚えられるポケモンはいマセンが、いずれ役に立つ時が来マース」

 

「ありがとうございます!」

 

 技マシンとレコーダーを受け取り、次いで落とした帽子を渡されたツバキは、ソワソワとして目を泳がせ始める。

 

「……あ、あの……マチスさん……お願いがあるんですけど……良いですか……?」

 

「……? Meにできる事なら、言ってみてくだサイ」

 

「…………あ…………頭を……」

 

「頭……?」

 

 首を傾げるマチスを、顔を赤くしたツバキが見上げ、辿々しく言葉を紡いでいく。

 

「……頭を……撫でてもらって良いですか……?」

 

 まさかの子供のようなお願いに、一瞬呆気に取られたマチスだったが、そういえばまだ子供だったと思い出す。

 

「(考えてみれば、まだ10歳かそこら……大人に褒めてもらいたい年頃デスね……)OK、御安い御用デス」

 

 そして、ポケモンセンターの時とは違い、今度は帽子ごしでなく、直接頭をワシャワシャと撫で始める。

 

「ガール、Youも、Youのポケモン達も、本当によく戦い、実に立派デシた。今のまま成長すれば、ポケモンリーグでも十分に通用するはずデス、頑張ってくだサイ」

 

「……ふにゃ……はい……」

 

 マチスの大きな手に撫でられ、幼い頃によく両親や、尊敬する人物にこうしてもらった事を思い出し、ツバキは目を細めて微笑んだ。

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

つづく

 

 

 

【ツバキの現在の手持ちポケモン】

 

■ポポ(ポッポ(♂))

レベル16

特性:するどいめ

覚えている技

・すなかけ

・かぜおこし

・でんこうせっか

・ブレイブバード

 

■ミスティ(ナゾノクサ(♀))

レベル14

特性:ようりょくそ

覚えている技

・すいとる

・ようかいえき

・どくのこな

・しびれごな

 

■ファンファン(ゴマゾウ(♂))

レベル15

特性:ものひろい

覚えている技

・かぎわける

・まるくなる

・ころがる

・じゃれつく

 

【マチスの使用ポケモン】

■ライチュウ(♂)

レベル27

特性:せいでんき

覚えている技

・10まんボルト

・かみなりパンチ

・アイアンテール

・シグナルビーム

 




というわけで、これまでで最長となってしまった第6話でした。
次回からは元の文量に戻る予定ですので、ご安心ください。
長い文章にお付き合いいただき、ありがとうございました!
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