ライモンシティのカルミア、エンジュシティのコウイチと破り、ついに迎えた予選最終戦。
だが、そこで待ち構えていたのは、スタジアムに到着して間も無く出会って意気投合したフスベシティのボックだった。
お互いもっと先で戦いたかったと思いつつも、嘆いたところで試合開始の合図は待ってはくれない。
ガブリアス、クリムガンと強力なドラゴンポケモンを並べたボックに対してツバキはポポとバルディを繰り出して応戦。
トレーニング期間で習得したバルディの新技、“ドラゴンクロー”と“りゅうのはどう”を中心に奮戦するも、ポポとクリムガンは共倒れとなってしまう。
残ったバルディとガブリアスが奮起して睨み合う中、突如バルディの身体が輝きを放ち、その姿を大きく変化させる。
オノノクスへと進化したバルディとガブリアスの戦闘はますます激しさを増し、幾度にも渡る技の応酬の末、渾身の“ドラゴンクロー”の打ち合いをバルディが僅差で制した。
ギリギリのバトルを終えたツバキとボックは多くを語らず、ただ相手に笑みを向けて幕を下ろしたのだった。
ツバキがボックに勝利したのに前後し、他の選手達も続々と決勝トーナメントへと駒を進めていた。
「ユキノオーさん、“ふぶき”です!」
雪男と見紛う恰幅の良い真っ白なポケモンの口から、あらゆる物を凍てつかせる凶悪な冷気が強風を伴って広範囲へ噴射され、対峙していた2体のポケモンを完全に凍結させてしまった。
「バッフロン、ドリュウズ共に戦闘不能! スノウ選手、予選Aブロック突破! 決勝トーナメント進出!」
「ふふふ……私達の勝利です。さすがユキノオーさんにフリージオさんです。このまま立ち塞がるモノ全て凍らせてさしあげるです」
左目を隠すほどの長く真っ白な前髪を掻き上げた少女が、青い瞳を晒して微笑む。
――カロス地方・エイセツシティのスノウ
「デンリュウ、“ほうでん”だ!」
電気のような金とも黄とも取れる髪色の青年が指示を飛ばす。
額と尻尾に赤い球体を持つ黄色いドラゴンを思わせるポケモンが全身から四方八方へ無差別に電撃を放ち、周囲の全てを攻撃する。
隣にいる寸胴体型の人型ポケモン、そして向かい合っていた食虫植物のようなポケモン2体に容赦無く電撃が降り注いだ。
「くぅっ! だ、だが! ウツボットもマスキッパもくさタイプ! でんきタイプ技は……」
「わかってるさ! 本命は……こっちだ! エレキブル、“れいとうパンチ”!」
電撃を避けようと移動している内にひと塊になった2体の背後に、信じ難い速度で大きなシルエットが回り込んだ。
気配に気付いた2体が振り向くより速く、冷気を帯びた両手で相手2体を挟み込むように打ち合わせる。
ごっつんこという音でも聞こえてきそうなほどの勢いで2体は頭から激突し、目を回しながら大きな1つの氷塊に変わってしまった。
「ウツボット、マスキッパ共に戦闘不能! ゲント選手、予選Aブロック突破! 決勝トーナメント進出!」
「っしゃあ! 見たか《でんきエンジン》の力!」
――カントー地方・クチバシティのゲント
「オコリザル! “ほのおのパンチ”!」
手がボクシンググローブのようになった、刺々しい毛並みの1頭身のポケモンが、鼻息も荒く敵目掛け突進し、至近距離に達するや炎を帯びたストレートを連続で打ち込む。
だが、耳や尻尾が植物の葉のようになった4足歩行のポケモンは、しなやかな身体で軽やかなステップを踏んでそれらを全て回避して見せる。
「…………“リーフブレード”」
そして、真っ赤な髪と瞳をした女性のボソボソとした指示を聞き取り、尻尾の葉をピンと伸ばすと逆に相手に向けて斬り込む。
怯んだオコリザルの懐に一瞬にして潜り込むと、前脚だけで体重を支え、身体を回転させる形で振り抜いた葉の刃で一刀両断。
先ほどと同じようにしなやかに着地するその背後でオコリザルがどうと倒れた。
「オコリザル、戦闘不能! スカーレット選手、予選Bブロック突破! 決勝トーナメント進出!」
「………………やった。リーフィア。エテボース」
――シンオウ地方・ズイタウンのスカーレット
「キテルグマァっ! “アームハンムァー”っ!!」
燃える炎のようなオレンジ色の髪を揺らし、大仰にポージングしながら技の指示を出す男性。
それに答えるは、頭部から背中、尻尾にかけてピンク、前面の胸から下が黒色をした熊の着ぐるみのようなポケモン。片脚を上げて大きくジャンプすると右腕を振り上げ、真下にいた相手ポケモンへその腕を叩き付けた。
地面は見てわかるほどに陥没し、叩き込まれた相手は目を白黒させてそのまま倒れてしまった。
「サワムラー、戦闘不能! ガラム選手、予選Cブロック突破! 決勝トーナメント進出!」
「うおぉぉぉぉうっ!! リングマ! キテルグマ! まだまだバトルをエンジョイしようぜぇぇぇぇっ!!」
――アローラ地方・コニコシティのガラム
「レアコイル、“ラスターカノン”を」
磁石のついた3つの金属の球体が光り輝いたかと思うと、それが一点に集束されて光線のように発射され、敵ポケモンを撃ち抜いた。
「ニンフィア戦闘不能! ロウィー選手、予選Cブロック突破! 決勝トーナメント進出!」
「ふっ、僕の分析力と計算、そこに君達の実力が組み合わされば、破れぬ敵はいませんね、レアコイル、メタグロス」
拭いた眼鏡をかけ直した茶髪の青年が、自慢げにポケモン達を撫でた。
――ホウエン地方・キンセツシティのロウィー
「“リーフストーム”や!」
ニコニコした笑顔の周りを黄色い花びらで飾った、直立した花のようなポケモンが、腕……というか葉を左右に伸ばしてその場で高速回転すると、無数の葉が逆巻く巨大な竜巻が発生し、敵ポケモンをいとも容易く飲み込んでしまう。
高々と空中へ放り出された相手は力無く地面に落下し、目を回して動かなくなった。
「ヌオ―、戦闘不能! マユリ選手、予選Dブロック突破! 決勝トーナメント進出!」
「ふぅ、ようやったな、キマワリ、パラセクト。せやけど、『勝って兜の緒を締めよ』やで。ここからが本番……気ぃ引き締めていこか」
黄緑色の軽くウェーブした髪を撫で、少女は厳しい言葉とは裏腹に優しい微笑みをポケモン達に向ける。
――ジョウト地方・コガネシティのマユリ
「“どくづき”」
両腕が突撃槍のような形となった蜂型のポケモンが瞬く間に間合いを詰め、相手が視線を向けた時にはすでに槍の一撃を加えてトレーナーの前に戻っていた。
相手のポケモンは何が起きたのかを理解する前に青ざめ、泡を吹いて倒れてしまった。
「バシャーモ、戦闘不能! スコーピオ選手、予選Dブロック突破! 決勝トーナメント進出!」
「……ふん……」
さそりポケモン『スコルピ』を模した仮面で顔の上半分を隠したトレーナーが、退屈そうに鼻を鳴らして踵を返した。
――詳細不明、謎のトレーナー・スコーピオ
上記7名にツバキを加えた8名が予選を見事勝ち抜き、決勝トーナメントへと進んだのである。
「ともあれ、まずは予選突破おめでとう! ツバキ! さすがパパ達の子だ!」
スタジアム周辺に建てられたレストランで、シャコバがツバキの頭を撫でる。
「いやぁ、ツバキちゃんも強くなったもんだねぇ」
「うむ……」
2回戦が終わった頃に遅れてやって来たイソラの両親・テンジとイロハも交え、ツバキの予選突破を祝した食事会が開かれているのだ。
「うぅ~……あ、頭撫でるのやめてよぉ~……」
顔を真っ赤にしたツバキがちらりと横へ目を向ける。
「あはは~、ツバキ真っ赤っかだ~」
「………………かわいい」
そこにいたのは、ボックとスカーレットだ。ツバキとイソラの友人という事でお呼ばれしたのである。
ツバキは当初、予選敗退となってしまったボックをこのような席に呼ぶのは気が引けていたのだが、イソラが声をかけたところ意外にもノリノリで承諾したらしい。
「オイラはジョウト住まいだからね~。参加も優勝もまたチャンスがあるよ~。それにやっぱり恨んだり怒ったりよりは友達をお祝いした方が楽しいからさ~。決勝ト~ナメント、頑張ってねツバキ~」
ボックはニヘラという擬音がつきそうな笑顔でツバキを激励すると、ジュースを口に運んで喉を鳴らす。
「(……まったく、よくできた子だ。私が声をかけた時は、少し目元が赤かったのにな)」
そう、全ての予選が終わり、トレーナー達がポケモンの回復も済ませた頃、イソラは先述の通りボックの姿を探していた。
時々近くの人に尋ねながら10分ほど探したところでイーストドーム近くに植えられた木の陰で彼を見つけて声をかけたのだ。
……そうして振り向いたボックは目を見開き、潤んだ瞳でイソラの姿を捉えると、慌てて両腕で顔を擦ってから改めて笑いかけてきた。
夕暮れ時でわかりにくかったが、足元のコンクリートには水滴の跡が見えた気がする。
当然と言えば当然だろう。
リーグ優勝を夢見て、ポケモン達と共に血の滲む努力を続けてバッジ8つを集め、ようやく参加したのに決勝トーナメントに進む事すらできずに自身のポケモンリーグは終わってしまったのだ。
チャンスはまたあるとは言うものの、少なくとも今回はそのポケモン達との苦労が報われずに終わった事に変わりは無い。
10歳そこらの少年の心に爪跡を残すには十分な悲しみと悔しさが容赦無くのしかかったのだから、泣くなという方が無理な話だ。
「(……切り換えが早いというか、割り切りが潔いというか……健気なものだ)」
それでもなお、彼は自身を破ったツバキに憎悪を向けもしなければ妬む事も無く、ただ純粋な祝福と応援の言葉を贈る。
イソラは彼の純粋な人柄に感心しながらグラスを傾けた。
「……もう! パパったらいつまで撫でてるのっ!」
友達の前で子供扱いされまくった事に、とうとうツバキが真っ赤な顔で怒った。
「そうよぉ、あなた。ツバキはもう立派なポケモントレーナーなんだから、旅に出る前と同じ感覚で接するのはNGよぉ」
「……うぅむ、それもそうだ……。いや、悪かったなツバキ。ただ、あのツバキがこんなに強くなってくれたのがパパは嬉しくてなぁ」
ミミナに窘められつつも、しみじみとツバキの幼い頃の話を始めようとするシャコバに対してツバキが怒り、それを見ている周囲からは笑い声が上がる。
そんなやり取りが繰り返されながら和やかに食事会は進み、夜も更けていった。
「………………楽しかった」
夜風に当たって歩くスカーレットがポツリと呟き、横に並ぶイソラがそれに答えた。
「そうか、それは良かったよ。……しかし、お前がツバキと同じブロックだったとはな。危うく予選で潰し合う事になるところだった」
「わたしも聞いた時ビックリしちゃった! ……正直に言うと、戦わずに済んでちょっとだけホッとしてるんだ……弱気になっちゃいけないのはわかってるんだけど……どうしてもスカーレットさんに勝てるイメージが湧かなくて……」
イソラの隣を歩くツバキも会話に加わり、少し不安げな表情を見せる。
「へ~、スカ~レットさんてそんな強いんだ~。ねぇねぇ、明日オイラとバトルしてくれない~?」
さらにその横からボックが顔を出してスカーレットにバトルを申し込む。
4人揃って選手宿舎へ帰る途中なのだ。
「…………ごめん。調整に集中したい。明日」
「ん~、そっか~……それもそうだよね~。残念だけど仕方無いね~」
予選と本戦の間には1日の空白があり、その後は1回戦、2回戦(準決勝)、3回戦(決勝)が1日ごとに行われるため、実質明日が最後の調整期間となるのだ。
無論、現在の状態ですでに万全だという自信があるならば、しっかり休んで英気を養っても良い。時間の使い方は自由である。
だが、実際に休むだけで過ごすトレーナーはほぼいない。
皆少しでも勝てる確率を上げるため、予選での経験も踏まえてこの機会を技の構成や、ポケモンのコンディションの調整に費やすのだ。
考えるべき要素は山ほどありキリが無いが、決して悔いの残らぬ大会になるよう、その中で自分達にできる事は全てやるのである。
「しかし、決勝ト~ナメントか~。勝ち抜いてきた他の6人はどんな人なんだろ~? やっぱり凄く強いんだろうな~」
「……他の6人か……確かに強者揃いだろうな」
ボックの素朴な疑問にイソラが相槌を打つ。
すると、突然ツバキが目を見開いて夜空を指差した。
「……あっ! 流れ星!」
4人が同時に空を見上げると、たくさんの光が暗い夜空の中を流れては消えていく。
「………………綺麗。レックウ座流星群」
「レックウザ?」
「ああ、ほら、あそこからあそこの間の星を結ぶと、伝説のポケモン・レックウザに見えるだろう?」
イソラはポケモン図鑑に表示したてんくうポケモン『レックウザ』の姿と比較しながら夜空を指差す。
「で、この流星群はその口に当たる部分から出てるように見えるからレックウ座流星群というわけだ」
「へぇー! ……あっ、お願い事しなきゃ!」
なるほどと手を打ったツバキは、思い出したように慌てて両手を合わせて目を閉じ、空に念を送るように祈り始めた。
他の3人もそれに倣い、目を閉じて空を流れる星達に願う。
彼女達がそれぞれ何を願い、祈ったのか。その答えは本人達の心の中にある。
「……ふむ……今回は新進気鋭のトレーナーが多いな……情報が少ない」
翌朝、ポケモンセンターのロビーでパソコンのキーを叩きながらイソラが呟いた。
画面に表示されているのは、予選突破を果たしたトレーナー達の過去大会における活躍……の一部だ
「(……エイセツシティのスノウ。通称『
髪も肌も透き通るように白く、青いガラス玉のような瞳が美しさを際立たせる。
予選ではユキノオーを使用していたが、並んだ姿はまさに雪男と雪女だ。
「(キンセツシティのロウィー。通称『
常にポケモン図鑑とノートパソコンは肌身離さず持ち歩き、平時は双眼鏡片手にポケモンの生態調査に励んでいるという。
長めの茶髪を首筋の辺りで束ねて眼鏡をかけた、いかにも知的な青年だ。
「(そして、コニコシティのガラム。自称『ロイヤルマスクの一番弟子』。アローラリーグベスト4。この前のアローラリーグに参加していたが、あれからすぐにこちらへ来てバッジを集めたのか……やるな)」
イソラはアローラリーグで彼のバトルを見たが、ともかくパワー重視のバトルスタイルが自慢のトレーナーで、スピードとパワーを駆使するスカーレットとは異なり、屈強なポケモンで相手の攻撃を受け止めて反撃を行うのを得意とするようである。
筋肉質な身体に、炎が揺れているかのような髪型と髪色が特徴的な男性だ。
ちなみにロイヤルマスクとは、アローラ地方で人気のバトルロイヤルというバトル競技での王者である。
「(……今回の参加者でわかっているのはこのくらい……いや、肝心な奴の事がまだか)」
正直彼女の記録は大会の度に見てきたのだが、再度確認しておく事にする。
「(ズイタウンのスカーレット。通称『
いつ見てもその実力のほどが窺える経歴だ。
敗れこそしているものの、チャンピオンのポケモンとも善戦し、ラスト1体まで追い込む事がほとんどである。
イソラの知る限り、ジムリーダーや四天王、チャンピオンを除いた一般トレーナーでは最強クラスの実力を備えた強敵と言えるだろう。
「お姉ちゃんおはよう。いないと思ったらポケモンセンターに来てたんだね」
「ん、おはようツバキ」
挨拶してきたツバキに対し、イソラはパソコンをシャットダウンして挨拶を返す。
スカーレットの経歴を見てしまうと、ツバキが尻込みしてしまう恐れがあるからだ。
今のツバキならば大丈夫だとは思うが、余計な不安は与えないに限る。
「……あれ? ねぇお姉ちゃん、あれゲントさんじゃないかな?」
突然パソコンを閉じてしまったイソラに一瞬疑念を抱いたツバキであったが、透明な自動ドアの向こうに見えた見覚えある人物の方に意識が向いたようだ。
どうも道行く人々に何か尋ねているようだ。
「……くっそー……誰も持ってねえかぁ……」
「ゲントさん」
背後から声をかけられ、飛び上がらんばかりに驚いたゲントは、ギギギと音がしそうな動作で振り向いた。
「……よよよ……よぉ、ツバキにイソラ……」
「さっきから何してるんだ不審者」
イソラは相変わらずゲントへの警戒心と敵意に満ちた棘のある言い回しである。
「誰が不審者だ! …………な、なぁツバキ。こんな事を聞くのもアレなんだが……」
「ツバキとの交際なら認めんぞ」
「そんなんじゃねぇよ! お前はツバキの父ちゃんかよ! じゃなくて……雷の石を持ってないか聞きたかったんだよ!」
イソラの横槍に顔を真っ赤にするゲントに、ツバキはキョトンとした表情で答えた。
「雷の石……? えと……持ってますけど……」
「はぁ、やっぱそうだろうなぁ……わりぃ、今のは忘れt…………ぇ、持ってんの? マジで?」
「はい」
ツバキはバッグから黄緑色のピカピカした石を取り出して見せる。
「おぉぉ…………頼むツバキ! そいつを俺に譲ってくれないか!?」
「あ、はい。良いですよ」
「マジか!? あっさりだな!?」
あまりにもあっさり快諾されてしまったためか、欲しいと言いつつも驚いてしまった。
「おい、良いのかツバキ? モグリューからもらった石だが……」
「うーん……残念だけど、今のわたしには使い道が無いし……。このままだと宝の……えっと……あ、そう、『宝の持ち腐れ』になっちゃうでしょ? それなら欲しがってる人に使ってもらった方が良いんじゃないかなって」
「むぅ……まぁ、お前がもらった物だし、お前がそう言うのなら……」
イソラはまだ不満がありそうだが、ツバキの持ち物である以上はしぶしぶながら引き下がるしかない。
「ありがてぇっ! ……っと、もちろんタダでもらおうなんて思っちゃいねぇ。えぇっと、アレはどこだったかいな、と」
ゲントは差し出された雷の石を喜んで受け取ると、背負っていたリュックを下ろして中を探り始めた。
「お、あったあった。ほら、代わりにこれをやるよ」
ゲントが渡してきたのは、2枚のディスク……技マシンであった。
「そいつは防御技の代名詞“まもる”と“みがわり”の技マシンだ。どっちも隙のある技なんで使いどころがムズいけど……お前なら使えるんじゃねぇか?」
「わぁ……! 良いんですか!?」
雷の石1つを渡して技マシン2つを受け取る事になり、さすがに少し気の引けるツバキだが、ゲントは歯を見せて笑う。
「気にすんなよ。俺にとっちゃこの雷の石は、そいつを渡してもまだ足りないくらいの価値があるんだからな」
「……はいっ! ありがとうございます!」
「……っ!!」
ツバキの屈託の無い満面の笑みを返され、ゲントは顔が熱くなるのを感じながら立ち上がる。
「じゃ、じゃあな! 助かったぜ! できれば決勝で会おうぜ!」
リュックを背負い直すと、そのまま背を向けて走り去ってしまった。
「……ロリコンめ」
小声でイソラが毒づいたが、その声がツバキの耳に入る事は無かった。
「……皆様。いよいよ始まります。……トージョウリーグ! 決勝トーナメントぉぉぉぉーーーーっっ!!」
ハイテンションな実況者のアナウンスに負けないほどの歓声がセキエイスタジアム・センタードームに響き渡る。
ついに始まるのだ、予選を勝ち抜いた8名による決勝トーナメントが。
「この決勝トーナメントの試合は持ち物ありとなります。形式は全てシングルバトルで、1回戦は3対3、準決勝となる2回戦は4対4、そして決勝たる3回戦は6対6のフルバトル! バトル中のポケモン交代は各トレーナーごとに1回戦が2回、2回戦が3回、3回戦が4回まで可能であり、持ち物、技、特性による交代は回数にカウントされません!」
「(持ち物ありのシングル……)」
実況によるルール説明を、ツバキは選手控え室で聞き、頭の中で反復する。
前日の内にLSDに通知が来ていたので把握はしていたが、確認は何度しても無駄にはならない。
「それでは! いよいよスタジアムにお越しの選手ならびに観客の皆様、そしてカメラの向こうの皆様に発表いたしましょう! 決勝トーナメント1回戦を戦う8名の強者と、その試合の組み合わせを! スクリーンをご覧ください!」
観客の視線と無数のカメラが一斉に巨大スクリーンへと向けられ、半分に分かれた画面の左右に8人の姿が次々に入れ替わり立ち替わり映し出される。
徐々にその速度が遅くなり……2人の選手の姿がはっきりと映された。
「記念すべき第1試合! ……マユリ選手VSスコーピオ選手!」
黄緑の髪をした少女と仮面を付けたトレーナーが映り、その後も次々とトレーナーが映し出されていく。
「第2試合! ツバキ選手VSゲント選手!」
「第3試合! ロウィー選手VSスカーレット選手!」
「そして第4試合! スノウ選手VSガラム選手!」
対戦の組み合わせが発表される度に、客席からは大歓声が上がる。
広い会場の空気に当てられたところに、いよいよ決勝トーナメントが始まるという興奮も相まって、観客達はまだ試合が始まってすらいないのにテンションが上がりっぱなしで騒がずにはいられないのだろう。
当然過去のポケモンリーグも観戦したりテレビで見ていた者などもいるため、少し名の知れた選手が映されると大騒ぎである。
一方、やたらやかましいガラムを除き、選手控え室は静まり返っていた。
「……ゲントさんと……」
「……決勝で会おうって言った矢先にこれか。ったく、締まらねぇなぁ。……わりぃなツバキ。あいにくとお前の快進撃はここで終わりみてぇだ」
両者残念そうな表情を浮かべるも、ゲントのこの言葉でツバキの闘志にも火が点いた。
「……いえ、わたしは負けません。負けたくありません!」
「……それは俺だって同じさ。……お前には恩も借りもあるが、手加減しねぇからな」
「わかってます……!」
メラメラと闘志を燃やす2人。
クチバジムから始まる因縁で結ばれた2人は、ついにポケモンリーグという大舞台で激突する……。
つづく
今回も駄文雑文落書きにお付き合いいただきありがとうございました!
バトルが無いと退屈だとは思いますが、ご容赦のほどを……。
後から見たらスノウとスカーレットのポーズ被っとるやんけorz
話は変わりますが、次回からの決勝トーナメント…正直な話、ツバキの試合以外の描写はどうしようかと迷っております。
主人公たるツバキのバトルのみ細かく書くか、せっかくの決勝トーナメント進出者同士のバトルなので、そちらも書くか…。
…と、自分だけではとても決めきれないのでアンケートを用意しました!ぜひご協力お願いいたします!
なお、アンケートを表示するのはポケモンリーグ開催期間中の第85話以降のみとなります。
追記:アンケートへのご協力ありがとうございました!
【挿絵表示】
結果は上記の通り『できれば見たい』が8、『見なくても良い』が2となりました!
後者を選んだ方には申し訳ありませんが、全試合を描写する方向で進めてまいります!