超次元ゲイムネプテューヌ 夢のヒーローを目指して 番外編 作:ホタチ丸
土日から上手く執筆する時間が取れず、遅くなってしまい、申し訳ないです。
それでは、 これから始まる物語 はじまります
「……おい……きろ」
……何よ、もう。
人がせっかく気持ちよく眠っているのに。
あれ? 何で私寝てるんだっけ?
「……いい加減に……さっさと……」
えっと、確か……そうよ! さっきまでネプテューヌに変な機械を被せられて、それから……
「ええい! いつまで寝てるんだ貴様は!!」
「きゃあっ!?」
私が眠る前の記憶を思い出していると、突然大きな声と共に体全体に冷たい風が吹きこんできた。
思わず悲鳴を上げて上半身を起こして見ると、私はどうやら誰かのベッド眠っていたらしいことがわかった。
おそらく誰かが私にかけられていた布団を引き剥がしたんだと思う。
「やっと目を覚ましたか。やれやれ、手間のかかる奴め」
「ここは……って、きゃああああああ!? あうっ!?」
先ほどから声をかけていたのであろう、布団を引き剥がした人物の呆れているように聞こえた声の方を振り向くと、私の理解を越えた生物がいた。
……何よこいつ!?
いったい何なの!?
その生物から距離を取るため、座ったまま後ろへと体を移動させたのだが、私は自分がベッドの上で眠っていたことを忘れていて、背中から床へと落ちてしまう。
「お、おい。いったいどうした?」
「ば、ばばば、ば……」
「ば?」
心配そうな声を出しながら、未知なる生物はベッドから落ちた私に向かって手を伸ばしてきた。
恥ずかしい話、私にはそれが私を捕食するための予備動作にしか見えなかった。
恐怖のあまり目尻に涙が浮かび、腰が抜けて逃げることすらできない。
できることは、震える口でその生物を形容する名称を叫ぶことだった。
「ば、バケモノオオオオオ!?」
「誰が化け物だ!?」
……これが私の黒歴史から生まれた映画の世界の人物とのファーストコンタクトであった。
後で冷静になってわかったことだけど、私の目の前にいる生物……いや、人物の名前はマジェコンヌ。
私の世界では古の魔女やら犯罪神と名乗った銀髪の小人。
そしてこの世界では小人でなく、体の半分だけが私の知っているマジェコンヌの姿をしている大人の女性である。
……そして、もう半分は肌の色からまったく違う濃い化粧をしているようなオバサンみたいな姿をしていた。
まるで別人同士の体を繋ぎ合わせたような風貌をしていたのである。
* * *
「まったく、私だって好きでこんな姿をしているわけじゃないんだぞ! これもすべてアイツの……っ!」
「お、落ち着いてください、マジェコンヌさん。今はその、もう1人の私の話を聞く方が先ではないのでしょうか?」
苛立ちを隠さずに顔をしかめるマジェコンヌは、自分を今の姿にした原因とも言える国王トリックと魔法少女キセイジョウ・レイを思い出していた。
マジカルヴィーナスノワルンのおかげで、魔法少女キセイジョウ・レイは倒され、そのネガティブパワーの全てはマジカルワールドから消えてなくなった。
しかし、どう言うわけかマジェコンヌの体から完全にネガティブパワーが消えることはなかったのである。
そのため、マジェコンヌは体の半分だけが元の姿に戻り、もう半分が濃い化粧をしたオバサンのような姿のままであった。
この中途半端な姿のせいで、最近は余計に飲む酒の量が増え、付き合うマジックの体重はさらに増えていた。
そんなマジェコンヌを宥めるのは、白いブレザーと青いスカートを穿いたノワールである。
今まで眠っていたノワールを国王トリックに運ばせたマジカルヴィーナスノワルンになれるノワールである。
「……はあ、それもそうだな。単刀直入に聞く、貴様はいったい誰だ?」
この世界のノワールの言葉を聞き、マジェコンヌは眉間をぐりぐりと指でほぐすと、威圧するように今まで眠っていたノワールへと尋ね出す。
その言葉には言外に虚偽は許さないと迫力が込められており、マジェコンヌの容姿と合わさってノワールは軽く息をのんで怯んでしまう。
「わ、私は、その……」
「ん? どうした? 何で答えられないんだ?」
「だ、だから、私は……」
「私は? 貴様はいったい誰なんだ?」
迫力に押されたこともあるが、ノワールはマジェコンヌの視線から逃げるために顔を俯かせてしまう。
そんなノワールの態度を怪しく思い、マジェコンヌは警戒の度合いを強め、語尾を強めに発言しながら質問を続ける。
しかし、ノワールはマジェコンヌに対して正直に答えることを躊躇っていた。
何故ならば……
(ここは私の黒歴史が元になった世界で、私は現実世界から来ました……なんて、信じるわけないわよね!? どう答えたらいいのよ!?)
ノワール自身理解が追いついていないが、ネプテューヌの話が本当ならば、ここは創作物の世界であるとわかっている。
それはもう1人の自分と会ったことで否定しようがないことは明らかである。
しかし、それを正直に口にしたところで、信じてもらえるはずがなく、何より質問してくるマジェコンヌの強烈な圧迫感にノワールの頭はパニックに陥っていた。
(誰でもいいから助けてよ!? お願い!? 私を元の世界に戻して!? 夢なら早く覚めて!?)
「遅くなってすみませ……どうかしたんですか?」
ノワールの祈りが通じたのか、ノックの音と共に扉が開かれ、女王イストワ―ルが姿を現した。
女王イストワ―ルは3人の様子を見て、首をかしげながらマジェコンヌへと尋ねる。
この時、マジェコンヌの視線が外れたことで、ノワールはようやく重い緊張感から解放され、大きく息を吐くことができた。
そして、見上げた女王イストワ―ルの背後に後光が差しているように見えたのは、きっとノワールの目尻に涙が浮かんでいたせいだけではないだろう。
女王イストワ―ルの登場は、ノワールにとって救い以外の何物でもなかったのである。
「それで何かわかったのか?」
「はい。あの変態国王から事情を聞いたところ、ノワールさんによく似ている彼女はどうやら封印された“魔法女神”らしいのです」
「“魔法女神”って、私と同じ?」
「ええ、その通りです」
マジェコンヌが鋭い目つきで尋ねると、女王イストワ―ルも顔を引き締めて国王トリックから聞きだした話を語りだす。
今までマジェコンヌの雰囲気にのまれていて、口出しができずにオロオロしていたこの世界のノワールも驚いたように目を瞬かせて、涙を浮かべている自分にそっくりな少女を見つめる。
「変態国王の側近の人達からも話を聞いたところ、彼女はあの魔法少女キセイジョウ・レイを封印した“魔法女神”らしいのです」
「そ、そうなんですか!? で、でも、何でそんな人が私とそっくりなんですか!?」
「これは私の推測なのですが、封印が解けた時にノワールさんがその場にいたからではないかと思われます。おそらく鏡に自身の力を封印していた“魔法女神”は、その場にいた現代の“魔法女神”であるノワールさんの姿を真似ているのではないでしょうか?」
(そんなわけないじゃない!? 元から私はこの姿よ!?)
真実を知っているノワールは、間違っている女王イストワ―ルの仮説にツッコミを入れたかったが、それを口にすることができなかった。
否定すれば、当然それは何故かと理由を聞かれてしまうからである。
上手い言い訳が未だに見つからないノワールは、耐えるように唇を強く噛んで口を閉じていることしかできなかった。
「え、えっと、そう言うことなら……は、初めまして! 私の名前はノワールです! あなたと同じ“魔法女神”をしてます!」
(違うから!? 私はただの女神だから!? “魔法女神”なんて者じゃないから、そんなキラキラした目で見ないで!?)
自分のことを期待しているようにキラキラしながら頬をわずかに上気させて見つめてくるこの世界のノワールを、ノワールは直視することができない。
(しかも、この子は本当に私なの!? 明らかにキャラが違……って、この子は私じゃなかったんだ!? ネプテューヌが言っていたもう1人の私……え、もう1人の私ってこんなキャラなの?)
ここに来て、ノワールはこの世界がネプテューヌ達の手によって作られた映画の世界だと言うことを思い出した。
その話が本当なら、目の前にいるこの世界のノワールはもう1人の自分と言うことになる。
そこまで思い至ると、ノワールの額からぶわっと汗がにじみ出てきた。
(そんな……ネプテューヌの話が本当なら、別世界の私はこんな……)
「あ、そろそろお薬を飲まないと」
「って、ちょっと待って!? あなたなんて物を飲もうとしているのよ!?」
ちらっと様子をうかがうように視線を向けた先で、この世界のノワールがおもむろに取り出した瓶の中身を見て、ノワールは思わず叫んでしまう。
瓶の中身は、ノワールにとって忘れもしない忌まわしい黒い粒……がすと謹製のB.H.C.であった。
「え、これはビタミン剤なんだけど……」
「そんなわけないじゃない!? それは……もがっ!?」
「いいや、それはビタミン剤さ。ノワールは早くそれを飲むといい」
いきなり叫び出したノワールを見て、不思議そうに首をかしげて瓶からB.H.C.を1錠取り出すこの世界のノワール。
B.H.C.を飲むと言う凶行を阻止しようとしたノワールだったが、いつの間にか背後に回っていたマジェコンヌに口と体を押さえられてしまった。
「……いいから黙ってろ。いいな?」
マジェコンヌにドスの利いた声で耳元でささやかれ、ノワールは涙を浮かべて頷くことしかできない。
未だにその容姿に恐怖を覚えていることに加え、ぎろりと至近距離と睨まれている状況で、ノワールに拒否権などあるはずがなかったのである。
そうとも知らないこの世界のノワールは、マジェコンヌとノワールの様子に気がつかず、B.H.C.を飲み込んでしまう。
そこでようやくノワールは、この世界のノワールもB.H.C.の……ひいてはノワルンの被害者であることを知った。
ネプテューヌのNギアから聞こえてきた恨みごとの理由を悟ることができたのである。
「お、おほん! それで彼女をこれからどうするかの話なのですが……」
「あ、あの!」
「どうかしましたか?」
マジェコンヌの拘束が解かれても尚、涙目になっているノワールを見て、女王イストワ―ルは咳払いをして話の流れを変えようとした。
だが、女王イストワ―ルの軌道修正した話の内容に、この世界のノワールは意見があるようですぐさま腕をピンと伸ばして口を開く。
「彼女を私の学校に留学させるのはどうでしょうか?」
提案された内容に、2人のノワールは対照的な反応を示す。
提案したこの世界のノワールは当然にこやかな笑顔を浮かべており、それを聞いているもうすでに元の世界に帰りたいと思っているノワールは顔面を蒼白とさせてしまう。
……この世界に降り立ったノワールの受難は始まったばかりであった。
* * *
その頃、ノワールが現れた古ぼけた鏡があった城の地下で異変が起きていた。
ノワールが現れると同時に割れてしまった鏡の欠片が光出し、暗い部屋を不気味に照らしていた。
やがて、鏡の欠片はノワールが現れた時とは違い、暗い光を、それでも不思議と目を覆ってしまうような眩しい光を発生させる。
「……うふふふふ」
光が緩やかに収束していくと、部屋には今までいなかった人の影ができ始める。
くぐもったように響き渡る笑い声は、女性が無理をして低い声を出しているように聞こえる。
「私の封印を解いたのはあなた……って、あれ?」
完全に光が消えうせ、光と共に現れた少女が目を開けるが、突然今までの雰囲気をぶち壊してしまう程の軽い声を漏らして首をかしげてしまう。
少女は目の前の状況にきょとんとしてしまい、左へ右へと視線を向ける。
(あ、あれ? おかしいな。確か、ここでノワールさんと出会うはずなんじゃ……)
少女は事前に聞いていた状況との違いに焦りを感じてしまい、終いにはおどおどと自分の後ろを振り返ったりもしてしまう。
……しかし、そんなことをしたところで、この部屋には少女の姿しかない。
いくら脇に置かれている木箱の箱を開けたところで、中からノワールが出てくることはない。
埃が被らないように掛けられた布を捲ったところで、出てくるのは国王トリックの銅像だけである。
その際、埃が目に入り、少女が涙を浮かべてせき込んだとしても、誰も心配してくれなかった。
「だ、誰かいませんかー!? 誰かー!?」
いよいよ不安になってきた少女が声を上げても、その声は虚しく壁に反響するだけで、誰の返事も返ってこない。
「誰かー!? お姉ちゃーん!? ノワールさーん!? 夢人さーん!? ……誰でもいいから返事をしてくださいよ!?」
涙声で必死に呼びかけても、少女の声は誰にも届くことなく、城の地下で響くだけであった。
……この世界に現れた少女の受難も静かに始まりを告げていた。
と言う訳で、今回はここまで!
今回短めにしたのは、ノワルンで書きたいことがまだまだいっぱいあるためです。
……はい、ノワルンもう1話追加ですよ!
ノワルンワールドの皆を出したいので、もう1話だけお付き合いください。
それでは、次回もお楽しみに!