超次元ゲイムネプテューヌ 夢のヒーローを目指して 番外編   作:ホタチ丸

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はい、皆さんこんばんわ!
誰を出すのかを悩んでいたら、だいぶ遅くなってしまいました。
それでは、 友情の行方 はじまります


友情の行方

「……でさ、今更だけど何でアタシはここにいるわけ?」

 

 作業の手を止め、ユニはジト目で自分をここに呼んだ人物、ナナハへと尋ねる。

 ナナハはユニからそんなことを尋ねられるとは思っていなかったらしく、目を丸くして首を傾げていた。

 

「何となく、かな?」

 

「……アンタね」

 

 恍けたように返すナナハにユニは顔を俯かせて眉間に寄せたしわを指でほぐし始める。

 

 ……事の発端は、ナナハから届けられた1通のメールであった。

 ユニはナナハからのリーンボックスに来て欲しいと言うメールに深く考えず了承した。

 犯罪組織が壊滅した後、それぞれの国に戻ってからは今までと違ってなかなか会う時間が取れずにいたこともあり、ユニはナナハに会うのを楽しみにしていた。

 だが、蓋を開けてみれば、ユニはリーンボックスに来て早々、ナナハから言われるがままにとあることをさせられていた。

 別にそのことについて不満に思っているわけではない。

 勝手な推測でネプギア達もいるんだろうなと思っていたのに、ナナハに呼ばれたのが自分1人だったことでちょっとさびしく感じていたが、それも仕方ないと割り切ってもいる。

 

 疑問に思っていることはただ1つ、何故自分がナナハと2人で料理を作っているのかであった。

 

 リーンボックスの教会に到着したユニは有無を言わせぬ勢いでナナハからエプロンを手渡されたと思ったら、強引に手を引かれて厨房に連れ込まれた次第である。

 流されるままに包丁を握ったり、ぐつぐつと煮える鍋の中身が焦げ付かない程度に確認したり、必要のなくなった調理器具を洗って片付けてもいた。

 そんなこともあり、ナナハと協力して料理も一通り完成したことで、ユニは洗い終えた調理器具の水を布巾で拭きとりながらナナハへと疑問をぶつけたのである。

 だが、当のナナハからはふざけているとも受け取れる答えが返って来たことで、ユニは少しだけ苛立ちを感じていた。

 

「だいたい、人を呼び出しておいて何で料理なんて……」

 

「それはできるなら手料理を食べてもらいたいから、かな」

 

「……ん? ちょっと待ちなさいよ!? もしかしてこれって夢人が食べるの!? そんなこと聞いてないわよ!?」

 

 いつものことだと思いこみ、ナナハに振り回されっぱなしの様子にうんざりして力なく口にしたユニであったが、その言葉を最後まで発することはできなかった。

 わずかに頬を染めながらはにかむナナハの姿を見てしまったからである。

 同時に手料理を食べてもらいたい相手……ユニの中ではナナハがそんなことをしようとする相手は1人だけであるため、すぐにその人物の姿を思い浮かべて声を荒げた。

 そんなユニを見て、ナナハは一瞬不思議そうに首を傾げたが、すぐに納得したように手を叩いて頷く。

 

「ああ、そう言えば言ってなかったね。そうだよ」

 

「最初に言っておきなさいよ!! 知ってれば、もっと……」

 

「もっと、何?」

 

「もっと気合を入れて……あっ」

 

 小声でつぶやいた言葉をナナハに尋ねられ、反射的に答えてしまったユニは顔を赤くする。

 ユニが失言だと気付いた時にはすでに遅く、目の前にはにやにやと笑みを浮かべるナナハがいた。

 

「ふーん、そうなんだ。ユニは夢人のためなら気合を入れて料理をするんだ」

 

「ち、違うわよ!? べ、別に夢人のためだから特別に気合を入れるってわけじゃ……」

 

「あ、そうだよね。入れるのは気合じゃなくて、愛情だもんね」

 

「ちっがーう!? このっ……ぐぬぬっ」

 

 ナナハにほほえましい者を見る目で見つめられるユニは次第に顔をどんどんと赤くさせる。

 だが、ユニが否定すれば否定するほど、ナナハにはそれが照れ隠しにしか見えず、余計に笑みが深まっていく。

 ユニ自身もナナハに弄られていることを自覚しているのだが、どうしても過剰に反応してしまう自分の性格を恨めしく思い、最終的には低く唸りながら睨むことしかできない。

 

「ごめんごめん、ちょっとからかい過ぎたね」

 

「……ふーん、だ」

 

「そんな拗ねないでよ、まったく」

 

 言い返してこなくなったユニに困ったように笑みを向けながら、ナナハは謝罪した。

 しかし、ユニの機嫌はすぐに直らずに、ナナハからプイッと顔をそむけて唇を尖らせてしまう。

 そんなユニの仕草が可愛らしく思えてしまい、ナナハは苦笑しながら近づく。

 近づいたナナハは拗ねているように見えるユニをあやすようにポンポンと頭を軽くなでる。

 まるで子供扱いされているように感じられたユニはぎろりとナナハを睨むのだが、効果は薄く涼しげに受け流されてしまう。

 

「……だいたい、どうしてアタシだけなのよ。ネプギア達は呼ばなかったの?」

 

「ロムとラムには連絡入れたんだけど、2人だけじゃ危ないからって理由でブランさんに止められたって」

 

「……じゃあ、ネプギアは?」

 

「アカリの所だって……だから、今日は私とユニの2人で夢人を独占できるね」

 

「ど、独占!?」

 

 せめてもの抵抗とばかりにユニが口にする疑問にナナハは淀みなく答えていく。

 因みに、ロムとラムの2人が来れなくなった理由にトリックの暴走が含まれているのだが、そのことをナナハはユニに知らせようとしなかった。

 ロムとラムがリーンボックスに行くのなら保護者が必要だと、ハアハアと鼻息を荒くして立候補したトリックのことを教えるのも考えるのも疲れると判断したからである。

 

 だが、ナナハが意味あり気に目を細めて言った言葉にユニは肩をびくりと跳ねあがらせて顔を赤らめた。

 先ほどまでの不機嫌な雰囲気など微塵も感じさせることなく、ユニはナナハの口にした“独占”と言う言葉に思わず生唾を飲み込んでしまう。

 

「そうだよ。食べる時はさすがに3人で、って言うのは無理だけど、その後は私の部屋に夢人を連れてくるか、もしくは私達で夢人の部屋に押し掛けちゃえば一晩中一緒にいられるよ」

 

「そ、そそそそんなことできるわけないじゃない!? 一晩中だなんてそんな……」

 

「別に一緒に寝るわけじゃないよ。ただちょっと夜更かしして、おしゃべりしながら3人で1夜を共にするだけだし……」

 

「い、言い方ってもんがあるでしょ!? わざと!? わざとなの!?」

 

 ナナハがほほ笑みながらしようとしていることを話すと、ユニはバッと彼女から飛び退って距離を取った。

 両手や真っ赤に染まった顔を忙しなく左右に振るユニに対して、ナナハは夜のことを想像してほんのりと頬を赤らめながら目を閉じる。

 その仕草が余計にユニの想像力をかきたててしまい、ナナハから発せられた言葉が無性に恥ずかしく感じられる。

 堪らず、ユニは眉を吊り上げてナナハを指さして叫んだ。

 

「あはは、私もユニが妄想している所まではさすがにいけると思ってないよ……でもね、途中で眠くなってウトウトしちゃったら夢人によりかかっちゃうかもしれないよね。もしかしたら、そのまま一緒に……」

 

「アンタねえええ!! ……ぐっ」

 

 体を横向きにして、わざとらしくちらちらと視線を送りながら話すナナハに、ユニは叫びながら詰め寄った。

 ユニはナナハの両肩をガシッと掴み、無理やり自分と向かい合わせにさせた。

 しかし、にやにやと笑うナナハの顔を見て、やはり自分がからかわれていただけだと思い至ったユニは、歯を食いしばって口を開くのを我慢する。

 

 何か言ってしまえば、またナナハにからかわれてしまう。

 だが、何も言わずに睨んでいても、ナナハに乱されたペースを元に戻すことができない。

 むしろ、ナナハが何か口にする度にユニの心の平穏は遠ざかっていく。

 打開策も思い浮かばず、言い返してやりたい気持ちを押しこめるため、ユニは固く唇を閉ざしていることしかできない。

 

(落ち着け、アタシ。コイツにからかわれるのはいつも通りなんだから、これくらい受け流さないと余計に……)

 

「それとも、ユニは夢人と2人っきりで甘えたいのかな?」

 

「ぶっ!?」

 

 心を落ち着かせようとするユニの決心は、ナナハの言葉で簡単に崩れてしまう。

 しかも、ユニはその一言で夢人との思い出を鮮明に思い出してしまった。

 何気にユニは夢人と2人っきりの時に色々と大胆なことをしていたので、そう言う状況になってしまった場合、自分がどのような行動を取るのかを考えがついてしまう。

 具体的には背中から抱きついたり、特に理由もなく手を繋ごうとするなど、肉体的なスキンシップを取ってしまうのではないかと、ユニは一瞬のうちに思い浮かんでしまった。

 そのまま流れに流されてしまえば、いくら夢人がネプギアのことを好きでも自分のことを……と、そこまで考えて、ユニはハッと正気に戻り、煩悩を振り払うように激しく頭を振る。

 だが、ユニの思考は冷静になれず、頬の火照りはさらに増していく。

 

 ナナハからすれば、ユニはただ恥ずかしがっているだけにしか見えず、苦笑することしかできない。

 今何か火種を入れてしまえば、先ほどのようにへそを曲げてしまうのではないかと思い、ナナハはユニにどう話しかけようかと悩んでいた。

 好きでナナハはユニを虐めているわけでなく、友達であり恋のライバルであるからこそ、その気持ちを性格的に素直に表に出すことがない彼女の背を押そうとしているだけである。

 何もせずに、ただ流されているだけでは何も始まらないことをナナハは自己の経験で知っている。

 『転生者』であること、ベールの妹になったこと、女神候補生になったことなど、自分を取り巻く状況に置いて行かれ、本当の自分を見失ったことがあるナナハだからこそ、からかい交じりにユニの本音を引き出そうとしているのだ。

 これは全てが純粋な気持ちから来る行動でなく、夢人がネプギア以外の女性に魅力を感じてくれたのなら自分にもチャンスがあるのではないかと、打算的な面が含まれているからこそ、ナナハはユニに罪悪感を感じているので、冗談のようなことを言いながらでないと自分の恋も応援できないことに歯がゆさを感じていた。

 

 一方で、ユニもナナハのそんな思惑を何となく察しているからこそ、からかわれても本気で怒れずにいるのだ。

 1度、ギャザリング城で自暴自棄になって飛びだした姿を見てから、余計にナナハにもそう言う危うさがあることをユニは知ることができた。

 理由は違えど、ユニもかつて姉であるノワールになろうと、自分のことを否定して自暴自棄になったことがある。

 だからではないが、ユニはネプギア達よりもナナハに強いシンパシーを抱いていた。

 自分とは性格も容姿も生まれも何もかも違うはずなのに、同じ人物に恋をして共通の悩みを抱いているナナハ。

 そんなナナハとのコミュニケーションは、いつも主導権を奪われっぱなしだけど、ユニはこれを自然な形で受け入れている自分がいることに既に気付いている。

 自然と自分の気持ちをさらけ出すことができる相手であると、ユニ自身もナナハとの会話は居心地の良さを感じていた。

 

 ……しかし、何度もからかわれていてはその気持ちも吹き飛んでしまうもので、ユニの目つきは険しくなっていた。

 さすがにやり過ぎたかと悟ったナナハが、ユニをどう宥めようかと悩んでいると、厨房の外が騒がしいことに気付いた。

 

「ん? 夢人達が帰って来たのかな?」

 

「……はあ、どうかしらね?」

 

 ユニも外が騒がしくなったことに気付いたので、重いため息をついてナナハの疑問に同調をする。

 話題が変わったことにより、気持ちをリセットするいい機会だと判断したからだ。

 何時までもグチグチと文句を言ったところで、何の解決にもならないし、ユニも本気でナナハを困らせたいわけでないので、ここら辺で手打ちにしようと考えた。

 

 それでもやや不機嫌そうな雰囲気を纏いつつ、ユニがナナハよりも先に厨房の外に出ようとするのは仕方のないことである。

 散々からかわれたので、ナナハよりも先に夢人と話す権利くらいあるだろうと、ユニは騒がしくなっていた廊下に顔を出す。

 

「なーに騒いでいるの……よ?」

 

 久しぶりに愛しい人物の顔を見ることにドキドキしながら、それを隠すように呆れを滲ませようとした言葉は不自然に区切れてしまう。

 

 ユニの目線の先には、確かに夢人がいる。

 別に日本一やがすと、ネプテューヌにベールともう1人見知らぬ男性と小さなドラゴンのような存在が浮いているのは、特にユニの関心を引くものではない。

 しかし、ある一点だけが先ほどまで抱いていたドキドキも、ナナハに対する怒りも吹き飛ばしてしまう程の衝撃をユニに与えてくる。

 それは……

 

「ぐすっ……ちくしょう……」

 

「そ、そのさ、このことに関しては色々あってだな……」

 

「うるせえ、このハーレム野郎!! 俺なんて……俺なんて……」

 

 悔しさのあまり血の涙を流して、見知らぬ男性に食って掛ろうとして落ち込み始める情けない夢人の姿に、ユニは本気の声色で口を開く。

 

「……何やってんのよ、アンタ」

 

 その声は演技することなく、純度100パーセントの呆れが含まれていた。

 

 

*     *     *

 

 

 時は遡ること、ガペイン草原で不可抗力によって気絶した夢人が目を覚ました時のことであった。

 お互いにどことなく話が繋がらないことを疑問に思ったことにより、夢人達はそれぞれ自己紹介をし始めていた。

 

「えー、では僭越でありますが、まずはわたしから……アーアー、ただいま喉の調子をテスト中……ねぷっ!?」

 

「真面目にやれ」

 

「ひ、酷いよ真司!? こう言う時のトップバッターは次の人が緊張しないように冗談を交えて場を温める役目が……」

 

「いいから、さっさとしろって」

 

 微妙な距離感を保ち、全員が異様な緊張感に苛まれている中、ネプテューヌが片手を上げたかと思うと、一歩前へと踏み出していた。

 わざとらしく喉に手を当てながらやや上向きに顎を上げたネプテューヌの背後から、真司はチョップを振り下ろす。

 突然の痛みに驚いたネプテューヌが振り返って抗議するが、話が進まないと真司は肩をすくめて続きを促した。

 

「ぶー、まあ気を取り直して……わたしはネプテューヌ。知ってると思うけど、プラネテューヌの女神だよ」

 

「では、続いてわたくしはベールと申しますわ。ここ、リーンボックスの女神ですわ」

 

「えっと、それで俺は加賀美真司。こっちは相棒のドラゴニック・ハートだ」

 

『よろしく頼む』

 

 ネプテューヌに続いてベール、真司とドラゴニック・ハートが夢人達へと簡単に自己紹介をした。

 すると、次は自分達の番だと夢人達も顔を見合わせると、まず最初に日本一が先ほどのネプテューヌと同じようにピンっと腕を伸ばして前に出る。

 

「じゃあ、まずはアタシから! 闇あるところ光あり、また悪あるところ正義あり、ゲイムギョウ界を守る正義のヒーロー、アタシが噂の……」

 

「コイツの名前は日本一で、見ての通りの奴だ。後、俺は御波夢人って言って……」

 

「ちょっとちょっと!? 何で邪魔をするの!? ヒーローの名乗りは絶対に邪魔しちゃいけない暗黙の了解になっていることを夢人は知らないの!?」

 

「今は名乗りを上げる必要がないだろ! だいたい今までどこに行ってたんだよ! 最後の美味しいところだけ持っていってかっこつけるのがお前の考えるヒーローなのか!」

 

「ち、違うよ!? 仲間のピンチに颯爽と現れ、敵をやっつけるヒーローだったじゃん、アタシ!? それを言うなら、夢人だって勇者のくせにさっきまで気絶してたじゃないの!」

 

「し、仕方ないだろ!? 俺だってあれぐらいで気絶するなんて思わなかったさ!? ってか、今の俺は勇者じゃ……」

 

「はいはい、そこまでにしておくですの」

 

 ポージングを取っていた日本一であったが、気だるげにつぶやかれた夢人の一言に遮られてしまったことでガクッと体を傾けてしまう。

 すると、せっかくポーズまで考えてあった口上を邪魔された日本一は慌てて夢人に詰め寄った。

 そのまま2人で言い合いが続いていくのをポカンと見ていることしかできないでいた真司達とは違い、がすとは呆れたように眉根を下げながら仲裁をするために2人の間に割って入る。

 

「2人のせいで何時までも状況の確認が終わりませんの……がすとはがすとと言いますですの。今日はリーンボックスの教祖であるチカさんに頼まれて、この2人のお目付け役を任されたんですの」

 

〔そう言う役割では……いや、あながち間違いでもないか〕

 

「おい、それってどう言う……」

 

〔私の名はワンダーと言う。こっちは私の弟分に当たるプロトだ〕

 

〔ヨロシク……オネガイ、シマス〕

 

「って、聞けよ!?」

 

 やれやれと肩をすくめながら夢人と日本一を見やるがすとにワンダーは曖昧に言葉を濁す。

 先ほどまでの2人の様子を考えると、否定しきれないところがあるため、ワンダーは夢人の言葉を意図的に無視して真司達へとプロトともども自己紹介を完了させた。

 声を荒げる夢人のことなど、当然無視である。

 

 だが、そんな些細なことよりも自己紹介を終えたことで、ある疑念を抱いたベールががすとへと質問をする。

 

「ちょっと待ってくださいませんか。わたくしはチカからワンダー、さん達のようなロボットが開発されたことなど一言も聞いておりませんでしたわ」

 

「え、何を言ってるんですかベール様? ワンダーのことならベール様も知って……」

 

「やっぱり、そう言うことでしたの」

 

「がすと?」

 

 ワンダーを訝しげな目で見つめるベールに、日本一は目を丸くする。

 戸惑う日本一、言葉にしないが驚いている夢人とは異なり、がすとはどこか納得したように頷いて見せた。

 そんながすとに自然と夢人達の注目は集まり、次の言葉を静かに待つ。

 

「おそらくそちらのネプテューヌ様達や加賀美さん達は、こことは違うゲイムギョウ界から来たんですの」

 

 紡がれたがすとの言葉に、夢人達は全員耳を疑ってしまう。

 普通に聞けば、荒唐無稽で突拍子もないことなのであるが、夢人達も真司達も否定の言葉を出せずにいた。

 何故なら、自分達のいるゲイムギョウ界と異なるゲイムギョウ界の存在を、経緯は違うがどちらの側も知っているからだ。

 

 夢人達はレイヴィスとフェルの知っている、この世界のオリジナルとも言える夢人やナナハの存在しないゲイムギョウ界を。

 真司達はマーベラスAQL達の知っている次元、プルルートとピーシェが本来いる次元の2つのゲイムギョウ界を。

 

 だからこそ、夢人達も真司達も安易にがすとの言葉を否定できない。

 それで納得してしまえば、噛みあわない話の祖語も解決する。

 

「……とりあえず、教会に戻りながら話をしないか? 簡単だけど、お互いに知ってるゲイムギョウ界についてを」

 

「あ、ああ」

 

 沈黙を続ける全員に夢人はそう提案して、真司へと視線を向ける。

 真司はその視線に込められた意味を何となく察することができた。

 厳密にいえば、自己紹介で名前を聞いた時から感じていた強い思いが2人の胸にある。

 

 ……もしかしたら、自分と同じ世界からやって来たのではないかと。

 

 

*     *     *

 

 

 それから夢人達と真司達は、これまで自分達のいるゲイムギョウ界で何が起こったのかをお互いに話しあっていた。

 夢人達は犯罪組織の台等、女神達が囚われたことから始まり、勇者として夢人がゲイムギョウ界にやって来たことを。

 真司達は女神達がそれぞれ収める4つの国が友好条約を結ぶ式典の最中、ドラゴニック・ハートによって呼び出された真司がゲイムギョウ界にやって来てからのことを。

 同じ名前と顔をしている人物がいるのに、違った歴史を辿ったそれぞれのゲイムギョウ界のことを簡単にだが、知ることになった夢人達と真司達の間に言葉はなかった。

 お互いの話を信じていないわけではない。

 別次元の存在と邂逅したことで戸惑っているわけでもない。

 

 ……ただ、ネプテューヌ達の関心は自然と夢人と真司のことに傾いていたのである。

 お互いに姓と名がある日本人、本人の意思とは関係なくゲイムギョウ界にやって来たという似たような境遇に合っている。

 

「……しかし、驚いたな。まさかゲイムギョウ界で仮面ライダーに会えるなんて思わなかったさ」

 

「……それを言うなら、俺だってまさかあの人型のロボットの中から人が出てくるなんて思わなかった」

 

 最初に口を開いたのは夢人であった。

 冗談めかしたように頬を緩ませてお互いの第一印象を伝えあう2人の間に険悪な雰囲気はない。

 むしろ、初対面だと言うのに親しみがあるように見えた。

 お互いに立場は違えど、同じ世界かどうかわからないが、似たような境遇の元でゲイムギョウ界にやって来たという経歴に2人は親近感を覚えていたのである。

 そんな2人の姿を見て、ネプテューヌ達もホッとして奇妙な緊張感から解放されて胸を撫でおろす。

 

「仮面ライダードラゴニック・ハートってかっこいいな。どんなことができるんだ?」

 

「ウィザードのようなスタイルチェンジと魔法、龍騎とディケイドのようなカードを使えるんだぜ」

 

「マジか!? じゃあ、ブレイドのようなコンボは?」

 

「うーん、カードがラウズカードみたいになってないからな……それより、ワンダーの方はどうなんだよ?」

 

「ふっふっふ、聞いて驚くなよ? 武器の類はないが、腕を飛ばす遠距離兵装があるのさ」

 

「ま、まさかロケットパンチ!? ロケットパンチなのか!?」

 

「……いや、ごめん。ワイヤー付きなんだ」

 

「ちょっ、そこは空気を読んで無線式だろ!?」

 

 同い年ぐらいの見た目が幸いしたのか、2人はお互いに遠慮することなく笑いながら話を続ける。

 お互いに盛り上がれる共通の話題があることは、何よりも強く2人の仲を急速に縮める燃料となっていた。

 

 ……だが、そんな2人の仲を裂くようにとある一言が投入される。

 

「そう言えば、真司とネプテューヌ達の関係ってどうなんだ? 2人と結構親しいみたいだし、もしかして恋人なのか?」

 

「ああ、2人とも俺の大事な恋人だ」

 

「……へ?」

 

 冗談のような軽口のつもりで夢人は言ったのだが、真司ははにかみながら答えてしまう。

 夢人にしてみたら、ただ悪戯心が刺激されただけだったのに、真面目に返されてしまい、どうしていいのかわからず間抜けな顔で口をポカンと開けたままネプテューヌ達へと視線を向けた。

 そこには、夢と同様に驚いている日本一とがすと、照れたように笑うネプテューヌとベールがいた。

 ネプテューヌ達の態度が真司の言葉を真実だと、何よりも証明していた。

 しかし、ここでさらに夢人達を襲う発言をネプテューヌがしてしまう。

 

「そうだよ。わたしやベールの他にも、ノワールやブラン、ネプギアとユニちゃんやマベちゃんに5pb.ちゃんも真司の恋人なんだよ」

 

「っ!? なん……だと……っ!?」

 

 ネプテューヌの言葉を事実だと裏付けるように、真司はどこか居心地が悪そうにしながら夢人から視線をそらして後頭部を掻きだす。

 対して、多大な衝撃を受けたようによろめいた夢人は顔を伏せてしまう。

 

「いや、これにはちゃんとした理由が……」

 

「……ちゅう」

 

「は? 夢人? 何を言って……」

 

「天誅!!」

 

「うわっ!? ちょっ、急にどうした!?」

 

 真司が説明しようつしたのだが、夢人はぶつぶつと何かをつぶやくだけだった。

 さすがに心配になった真司が顔を覗き込もうとした時、夢人はギラリと目つきを尖らせて顔を勢いよく上げた。

 同時に叫びながら、真司の鳩尾めがけて突きを放つ。

 突然の夢人の凶行に驚きつつも、仮面ライダーとして散々扱かれた真司は難なく体を少しずらすだけで突きを避けた。

 しかし、それは余計に夢人の激情に油を注いでしまう。

 夢人はまるで血の涙を流しているように、唇を強く噛みながら憎い敵を睨むような目で真司を見つめる。

 

「いくら仮面ライダーと言えども、お前は男の敵だ!! イケメンで強いからって……ぐっ!?」

 

「ま、待て待て待て!? ちょっと待て夢人!? 話を……」

 

「問答無用!! うりゃああああ!!」

 

「うわっと!?」

 

「って、うわああああああああ!? げぶっ!?」

 

「あっ……」

 

 自分で言った言葉に胸の痛みを感じながら、夢人は真司を糾弾する。

 慌てて説明するために宥めようとする真司だったが、それよりも早く夢人は再び殴りかかってくる。

 咄嗟の判断で真司は合気道のように、夢人の勢いを利用して投げ飛ばしてしまっていた。

 気付いた時には受け身を取ることができずに痛みに悶える夢人の姿があり、真司は冷や汗をかきながらどうしたものかと頬を掻いてしまう。

 

「あ、あははは……」

 

「……ちくしょう」

 

 乾いた声で笑うことしかできない真司と、悔しさと痛みに涙を浮かべる夢人。

 同じ境遇でいながら、2人の間に生まれた格差は芽生え始めた友情に簡単に罅を入れてしまったのであった。




と言う訳で、今回はここまで!
こんな感じで交流パートの幕開けです。
本格的な交流は次回に持ち越しです。
それでは、次回をお楽しみに!
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