超次元ゲイムネプテューヌ 夢のヒーローを目指して 番外編   作:ホタチ丸

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はい、皆さんこんばんわ!
何だかんだ言いつつ、今回もまた交流パートです。
それでは、 語られる男達 はじまります


語られる男達

「ほ、本当に行くの?」

 

「今更だよ、ユニ。ほら、早く夢人の部屋に行こう」

 

「う、うぅぅぅ……」

 

 俯いて尻込みしているアタシの手を引きながら、ナナハはにこにこと笑っている。

 

 食事を終えたアタシ達は順番にお風呂に入り、後は寝るだけの状態になっていた。

 まあ順番と言っても夢人と真司さんの2人が入った後に皆で一緒に入っただけなんだけどね。

 全員がゆったりとできるほど広くて、快適で気持ちよく1日の汗を流せる……はずだった。

 一緒に入っている皆との格差を認識するまでは……

 くっ、ナナハや2人のベールさん、それにチカさんもどうしてそんなに胸が大きいのよ!?

 一緒に入った8人のうち、4人の規格外の胸の大きさにアタシは自分の胸が余計に小さいものに思えてしまった。

 4人を見ていると、自然と自分の胸の方を見てペタペタと触ってしまっていた。

 あのぷるぷると震える立派なものに比べて、何と自分の平べったいことか。

 ないわけじゃないわよ!? ちゃんと柔らかく盛り上がってるわよ!? アタシのはただ慎ましいだけなの!?

 そんな風にアタシが劣等感を感じているのをよそに、日本一と真司さんのいた次元から来たネプテューヌさんが泳ぎ始めたり、2人のベールさんがナナハに背中を洗ってもらおうとして火花を散らしていたり、その隙をついてチカさんが漁夫の利を得ていたりなんかした。

 そうなると、自然とアタシはがすとと一緒にいることになったのだが、慰めるように肩を優しく叩かれて不覚にも泣きそうになってしまった。

 ……ぐすっ、アタシだってきっと大きくなるもん。

 

 そんなアタシの心に大きな打撃を与えた入浴が済んだ後、脱衣所で少し涼んでいるとナナハがおもむろに夢人の部屋に行こうと誘ってきたのだ。

 一瞬、ナナハが何を言っているのかがわからずに頭の中が真っ白に染まったが、すぐに厨房で話していた会話のことを思い出して気持ちよく涼んでいたアタシの体が再び熱を噴き出した。

 ちょっ、アレって本気で言っていたのかと思ってしまったアタシは多分間違ってないと思う。

 戸惑っていたアタシは何も抵抗できずにナナハに手を引かれて脱衣所を後にしていた。

 そして、もうすぐ夢人がいる部屋に着いてしまいそうになっているのが、今の状況だ。

 

「ね、ねえ、夢人は明日もプロトの実験があるんだし、やっぱり部屋に押し掛けるのは……」

 

「大丈夫だよ。お風呂に入る前に夢人に後で部屋に行くからって言っておいたから」

 

 アタシの抵抗はナナハの用意周到な根回しによって見事に無駄になってしまった。

 ナナハはそこまでして夢人と1夜を共にしたいの!?

 夢人も夢人でネプギアのことが好きなら、そうポンポンと夜に女の子を部屋に……って、相手がナナハだからか。

 アイツ自身ネプギアのことが好きだけど、ナナハの告白は嬉しかったみたいなことを、前に聞いたことがある。

 優柔不断だけどちゃんと真剣に向き合って答えを出したいとナナハは前にラステイションに泊まった時に惚気ていたわ。

 あの時は捕まっていたお姉ちゃん達を助ける前だったから、夢人もゆっくりとナナハと向き合える時間が取れなかったのは理解している。

 その後も夢人が消えたり、女神の卵の欠片を集めたり、ブレイブとの決闘やアタシとネプギアの失踪、ナナハのデート……って、コイツ夢人とデートしてたじゃない!?

 甘い雰囲気じゃなかったことは監視していたからよくわかっているけど、デート中と後では明らかにナナハの雰囲気が変わっていた。

 2人を見失った後、ネプギアを含めた3人に何があったのかはわからない。

 でも、あの日を境にナナハは精神的に追い詰められていたんだと思う。

 その発端になったのはアタシとネプギアの一騎打ち……あの時のことを考えると、夢人に対して積極的にアプローチしようとするナナハの気持ちもよくわかる。

 今でこそ笑っては流せないものの、少し懐かしく思えるくらいには心に余裕が持て、アタシ達の関係も良好になっただろう。

 だからこそ、ゲイムギョウ界に平穏が戻りつつある今に恋に積極的になるのもありかな、とはアタシも思うわ。

 

 ……でも、だからって湯上りに突撃しようとすることないじゃない!?

 胸に大きな衝撃を与えてくれた入浴の傷を癒すために涼んでいたのが仇になってしまった。

 アタシの髪の毛はまだ充分に乾いてないため、変にボリュームができて波打っている。

 いつものようにリボンで縛ればいいのだけど、この生乾きの状態で縛ると妙な癖ができたり、髪の毛自体が痛んでしまう。

 だから、入浴後は丁寧に髪の手入れをするのが習慣だったのだが、不覚にも今日のアタシは涼むことを優先してしまい、軽くタオルで水気を切ってゆったりとしてしまっていた。

 しかも、今着ている服はアタシのパジャマとしてナナハから借りている薄着なのだ。

 別に肌が露出するようなものではないのだけど、下着が透けて見えてしまう程薄い素材でできているのが問題なのよ!?

 さすがに下は大丈夫だけど、上はうっすらと見えてしまっている。

 こんな姿で夢人の前に出られるわけないじゃない!?

 ナナハもそんなワンピースのようなネグリジェで恥ずかしいとは……駄目だ。多分コイツは夢人なら、とか言って恥ずかしそうにするだけだ。

 どうにかしてナナハを止めないとっ!?

 アタシはそこまで大胆になれないわよ!?

 

「あれ?」

 

「わぶっ!? 急に立ち止まるんじゃないわよ!?」

 

「あっ、ごめん。でも、あれ」

 

 俯いていたせいでアタシは突然立ち止まったナナハにぶつかってしまった。

 痛みはなかったけど、ちょっとびっくりしちゃったじゃない。

 目尻を吊り上げて抗議したんだけど、ナナハはただ指を指すだけだった。

 

 ……夢人がいる部屋の前で何故か難しい顔で唸っている真司さんを。

 

「う、うーん、どうするかな……」

 

「どうかしたんですか?」

 

「いや、実は……って、ナナハちゃん!? それにユニちゃんも!?」

 

 ノックしようかしまいか悩んでいるようで、所在無げに持ち上げた腕を揺らしていた真司さんにナナハは臆することなく声をかけた。

 こう言う時のナナハの行動力は素直にすごいと思う。

 アタシだったら、あんな風に悩んでいる真司さんに自然と声を掛けられそうにない。

 

「真司さんも夢人に用事があるんですか?」

 

「う、うん。用事って言うより、聞きたいことがあるんだ」

 

「聞きたいこと?」

 

 真司さんが気まずそうに頬を掻きながら視線をさまよわせているのに対して、ナナハは不思議そうに首を傾げている。

 ナナハがあまりにも自然体だから忘れてしまいそうだけど、よくまあそのネグリジェ姿で話を続けられるものね。

 アタシなんて恥ずかしくて胸の前で腕を組んでちらちらとしか真司さんのことを見れないって言うのに。

 

「ああ、デルフィナスって女神のことを……」

 

「っ、真司さんちょっと来てください!!」

 

「ちょっ、どこへ!?」

 

 それを聞いた瞬間、アタシとナナハは何も言わずに真司さんを連れてこの場から離れようとした。

 驚く真司さんを無視して、できるだけ早く……夢人のいる場所から遠ざかるために。

 

 

*     *     *

 

 

 真司さんを連れて夢人のいる部屋から離れたアタシ達は夕食を食べていた部屋にまで戻って来ていた。

 訳がわからないと言った感じで混乱している真司さんに事情を説明するため、アタシとナナハは互いに顔を見合わせて頷き合う。

 

「真司さんはデルフィナスのことを誰から聞いたんですか?」

 

「え、えっと、夢人から俺の次元にいるのかって聞かれただけなんだけど……」

 

「それで、真司さんの次元に彼女は居るんですか?」

 

「いいや、少なくとも俺は会ってないよ」

 

 アタシの問いかけに真司さんは首を振って答えてくれた。

 その答えにアタシとナナハは安堵の息を漏らす。

 話がわからなくて困惑している真司さんには失礼だと思うけど、夢人に尋ねる前にアタシ達で止められたのはよかったと思う。

 もし夢人が聞かれたら、真司さんの疑問にちゃんと答えただろう。

 ……きっと辛い気持ちを隠しながら。

 

「なあ、知っているなら教えてくれないか? 実はそのことを聞いた後の夢人の様子がおかしかったんだ。デルフィナスっていったい……」

 

「いいですよ。デルフィナス……いいえ、フィーナのことについてアタシの知ってる限りでお話しします」

 

 真司さんが興味本位で聞いているわけでないことがわかったアタシは、夢人に代わってフィーナのことを話してもいいと思った。

 ナナハも同意見なようで、横目で見やると頷いて応えてくれる。

 

「フィーナは……夢人とネプギアの娘なんです」

 

 

*     *     *

 

 

『ふむ、なるほど。元々ワンダー殿は、そのハードブレイカーなるものだったのだな』

 

〔その通りだ。幸運にも2度目の死を覚悟した私のAIは、小型シェアエナジー増幅装置のモニターをしていたおかげでなんとか生きながらえることができたのだ〕

 

 リーンボックスの教会に着いた後、私は真司達と別れてずっとワンダー殿と話をしていた。

 いやはや、ワンダー殿も私と同じで夢人殿と言う相棒がいるおかげなのか、妙に話の馬があって時間も忘れてずっと語り合ってしまった。

 お互いの相棒に対する思いやこれまで何が起こったのかを。

 

〔ふっ、機械が死ぬと言うのは少しおかしかっただろうか?〕

 

『そんなことはない。ワンダー殿はすでにただの機械ではなく、立派な人格を持った御仁ではないか。そう自分を卑下するものではない』

 

〔そう言ってもらえると素直に嬉しいな、ありがとう〕

 

 自嘲するように尋ねてくるワンダー殿に私は異を唱えた。

 確かに見た目はバイクそのものだが、ワンダー殿が立派な考えを持つ御仁であることは少し話しただけで疑いないものだとわかった。

 その考えはある種の美しささえ感じさせるものだ。

 

『心の大切さ、ワンダー殿にそれを諭した夢人殿もきっと立派な御仁なのだろうな』

 

〔……どうだろうな〕

 

 素直に礼を伝えてきたワンダー殿に私は少し気恥ずかしさを感じた。

 何故かはわからないが、私が話を続けるために夢人殿を褒めると、ワンダー殿の反応がおかしくなった。

 相棒が褒められるのは、普通嬉しく思うのではないのだろうか?

 まあ、私も昼間に真司に殴りかかった夢人殿のことを思うと、ワンダー殿の話の通りの御仁なのかと首を捻らざるを得ないのだがな。

 さすがに突然泣き出しそうな顔で真司に殴りかかるのはどうかと思ったぞ。

 

〔夢人は……そうだな。ドラゴニック・ハートの言う立派な御人では決してないな。奴はどうしようもなく弱くて情けない人間に過ぎない。例え、奴が真司のように強くなろうとも絶対にその一線だけは越えられないだろう〕

 

『むっ、そうなのか?』

 

〔ああ。だが、そんな奴だからこそ、私は心の大切さを知ることができたのだろう。そんな夢人との出会いは、私にとって奇跡であり誇りに思うことができる〕

 

 ワンダー殿の言い回しに少し引っかかりを感じるのだが、無理に尋ねることは無粋だな。

 今の言葉だけで、ワンダー殿が夢人殿をどう思っているのかは簡単に察することができる。

 

 そんな会話を続けていると、ふと誰かが近づいてくる足音が聞こえてきた。

 この場はワンダー殿の整備にも利用するらしく、広い空間であったため足音がやけに反響して聞こえてくる。

 誰が来たのかと疑問に思った私が視線を向けた先には……

 

「おっ、よかった。ここにいたんだな」

 

〔夢人か? どうしてここに?〕

 

 やって来たの話題になっていた夢人殿であった。

 わざわざここに来たことを不思議に思ったワンダー殿が質問すると、夢人殿は曖昧にほほ笑みながら私へと顔を向け……私に?

 

「いやな、ドラゴニック・ハートに聞きたいことがあるんだ」

 

『私にか?』

 

 夢人殿の雰囲気はどこか躊躇っているように見え、どこか言い辛そうに思えた。

 だが、1度瞬きをすると迷いが消えたようで真っ直ぐに私を見つめながら口を開く。

 

「ああ……ドラゴニック・ハートはどうして真司をゲイムギョウ界に呼んだんだ?」

 

 

*     *     *

 

 

「……そうか。だから、夢人はあんな……」

 

 私達が知っている限りのフィーナのことを話し終えると、真司さんはどこか納得したように……それでいて辛そうに顔を歪めた。

 

「でも、何で夢人は彼女のことを俺に……」

 

「きっと真司さんが羨ましかったんだと思いますよ」

 

「え……羨ましい……?」

 

 きっと無意識に零れた疑問だったんだろうけど、ユニはそれを拾い上げてはっきりと答えた。

 まさか答えが返ってくるとは思っていなかったのだろう、真司さんは目をパチクリとさせてユニを呆然と見つめている。

 

「はい、アイツはそう言う奴なんです。もしも、自分じゃなくて真司さんが女神の卵に選ばれて勇者になっていれば、フィーナも救えたんじゃないかって思ってるんですよ」

 

 自信満々に胸を張って口にするユニの意見は間違ってないと思う。

 

 夢人がまだフィーナのことを引きずっているのはすぐにわかる。

 時折、ボーっと右手首に嵌められているブレスレットを見つめているんだ。

 そんな態度を取られれば、嫌でも夢人がフィーナのことを気にしているのがわかってしまう。

 

「だから、真司さんはあまり気にしなくてもいいですよ。あの馬鹿が勝手に羨んでるだけなんですから」

 

「いや、でも……」

 

「あっ、そんな風に見られるのが鬱陶しいと思うんでしたら、殴っちゃっても構わないですよ。むしろ、殴り飛ばしちゃってください」

 

「しないから!? そんなバイオレンスなことはしないからな!?」

 

 渋る真司さんだったけど、ユニのあんまりな言葉に慌てだした。

 

 ……と言うより、ユニ。

 殴り飛ばしちゃってくださいって、その発言はどうかと思うよ。

 いくらツンデレだからと言って、そんな夢人に暴力的にならなくても……あれ? ツンデレってそう言う意味だっけ?

 

 私が1人、ベール姉さんから教えてもらった単語の意味を思い出そうとしていると、ユニは優しげに表情を崩して真司さんに言う。

 

「夢人だって本当はわかってるんです。フィーナは他の誰でもない、夢人だからこそ生まれたんだって……だから、うじうじして鬱陶しかったら殴ってでも目を覚まさせてあげてください」

 

「……分かった。その時は遠慮なく殴らせてもらうよ」

 

「はい!」

 

 ユニのお願いに真司さんは苦笑しながら了承してくれた。

 すると、ユニはまるで自分のことのように笑みを浮かべて喜んでいる。

 

 ……とりあえずは、これで問題ないよね?

 真司さんもフィーナのことは納得してくれたみたいだし、後は夢人の心の問題だ。

 でも、こればっかりは時間が解決してくれるのを待つしかないのかもしれない。

 だから、私はいつも通りの私で夢人と一緒にいようと思ってる。

 フィーナのことで悲しんでいる夢人が新しい生活の中で小さな幸せを見つけられるように。

 もちろん、ネプギアでなくて私に気持ちを向けて欲しいと言う打算もあるけどね。

 この恋が続く限り……ううん、夢人がいてベール姉さんやチカ姉さん達と一緒に過ごす毎日が私の幸せに繋がる。

 この幸せを夢人にも伝えられたらなぁ……

 

「ふふ、ちょっと恥ずかしいな」

 

「ん? 急にどうしたの?」

 

「ううん、何でもないよ」

 

 抑えられなくなった気持ちが言葉になって溢れると、私の頬は自然と緩んでしまっていた。

 急に意味のわからない独り言をつぶやいた私を不思議に思ったらしいユニに首を横に振りつつ答える。

 

「2人は随分仲がいいみたいだな」

 

「はい、お互いに同じ目的を持った親友ですからね」

 

「っ、だから、アンタは何でそう恥ずかしいことを……っ!?」

 

 生温かい目で私達を見つめる真司さんの前で、私はユニの背中に抱きついた。

 肩に顎を乗せたせいで頬はピッタリとくっつき、ユニが照れて赤くなってくるのがすぐにわかった。

 目線だけ動かしてみると、憎まれ口を叩きつつもユニの口の端は微妙に緩んでいるように見える。

 表情も怒っているかのように眉を吊り上げようとしているけど、同時に私に見られないようにそっぽを向こうとしていた。

 そのくせ、抱きつく私を引き剥がそうとしないのはユニも親友だと思ってくれている証拠のようで、純粋に嬉しいと思う。

 ……だからだろうか、このユニの反応が可愛いと思った私はちょっとした悪戯心が芽生えてしまい、そっと耳元で囁いてみた。

 

「……ユニは私のこと嫌い? 私はユニのこと、大好きだよ」

 

「っ、アンタいい加減に……」

 

「ほら、ちゃんと言葉にして欲しいな。ユニは私のこと、どう思ってるの?」

 

「ぐっ…………よ」

 

 悪乗りに気付いたらしくユニはきつく睨んできたのだが、私が優しく耳元で問いかけると、顔を真っ赤にさせて目を伏せてしまう。

 完全に見えなくなった口からか細く何かが紡がれるが、私の耳には届かない。

 

「……私も……大事な友達だと思ってるわよ」

 

 頭から湯気が出てしまうんじゃないかと心配になるくらいに顔を真っ赤にさせたユニが発した言葉を聞いて、私は肩から抱きつくために回していた腕をきつく引き寄せる。

 ユニって普段は強気なんだけど、こう言う風に素直に自分の気持ちを吐きだす時の弱気な態度って可愛いと思うんだ。

 今だって抱きつく力を強めたのに、ユニは何の抵抗もせずに、私にもたれかかって来た。

 ……これが前にノワールさんから教えてもらった男の人を魅了する方法、女の弱い部分の見せ方って奴なのかな?

 女同士って趣味がない私でも、このユニの反応には胸に来るものがあるよ。

 保護欲って奴かな? それとも、私に妹がいたらこんな気持ちになるのかもしれないね。

 なんて言えばいいんだろうか……そう、ほほ笑ましい気持ちになってくるよ。

 

「ハハ、ユニちゃんは俺の知ってるユニちゃんよりも恥ずかしがり屋みたいだね」

 

「そうなんですか?」

 

「うん、俺の次元のユニちゃんは素直でいい子ってイメージなんだよ」

 

 朗らかに笑いながら語られる真司さんの次元にいるユニの姿を想像してみる。

 ……うん、ちょっと想像できないや。

 ちょっと失礼だけど、私にとってユニは素直と言う言葉がラムと同じくらい似合わない気がする。

 

「ネプギアと一緒で俺のことをお兄ちゃんって呼んでな」

 

「お兄ちゃん……ぷふっ」

 

 その一言に思わず吹き出してしまった。

 真司さんの話をまとめると、素直でいい子のユニが真司さんのことをお兄ちゃんって呼んでいるってことになる。

 

 ……ごめん、本当に無理。

 そんなロムみたいな性格のユニなんて想像できないよ。

 真司さんのことをお兄ちゃんって呼んでいるのなら、夢人のことも……ふふふ、駄目だ。考えるだけでお腹が痛くなってきちゃう。

 

「ちょっ、何笑ってんのよ!?」

 

「んぷっ、別に……ふふふ、笑ってなんて……」

 

「嘘つきなさいよ!? アンタ隠す気もないじゃないの!?」

 

 密着していた状態で大人しくしていたユニだったが、さすがに別次元とは言え自分のことを話題にされていては黙っていられなかったらしい。

 私の腕から抜け出そうともがいて暴れ出したけど、逃がすつもりなんてないからギュッと抱きしめてしまう。

 

「ねえ、真司さん。もっと真司さんの次元のユニのことを教えてくれませんか?」

 

「え、いや、別に構わないけど……」

 

「や、やめ……ムグッ!?」

 

 私の頼みごとに真司さんは未だに暴れているユニを気まずそうに見つめる。

 何かを訴えようとするユニの口を塞いで、私はにっこりと真司さんに言う。

 

「真司さんはユニの恋人なんですよね? どう言った経緯でそんな関係になったのかを教えて欲しいんです」

 

「う、うーん、でも俺は別に特別なことなんて何もしてないし……」

 

「でしたら、ネプテューヌさん達8人と付き合うきっかけみたいなことを教えてください」

 

「ふぁっ!?」

 

 言い淀む真司さんだけど、私はこの話題から逃がすつもりがない。

 真司さんの話は、きっと私達の恋にも役に立つはず。

 ただでさえ、夢人はネプギアの夢中なのでどうやってアプローチすればいいんだかわからない。

 本来ならネプテューヌさんかベールお姉ちゃんに聞いた方がいいのかもしれないけど……前者は主観たっぷりな惚気になりそうで、後者はまともに話を聞けるかどうかも怪しい。

 あ、別にベールお姉ちゃんが嫌いなわけじゃないよ?

 ……ただ聞こうとした場合、高確率でベール姉さんが邪魔してきそうな気がして。

 だから、ここは私達視点ではなく、男の人から見た恋愛と言うものをこの機会に学んでおきたい。

 夢人と真司さんとでは立場も状況も違うだろうけど、きっと参考になることが聞けると思う。

 そのために複数の女性から好意を持たれると、男性がどんな風に思うのかを詳しく教えてもらいますからね。

 

 

*     *     *

 

 

『……と言うわけだ。私は真司の女神達を思う心、命を懸けて他者を守ろうとする勇気を認め、彼を後継者として選んだ』

 

〔なるほど。つまり、ドラゴニック・ハートは真司の心に惹かれ、彼に自身の力を授けたのだな〕

 

『その通りだ』

 

 私の伝えたいことはワンダー殿がまとめてくれたが、上手く夢人殿に伝えられたのだろうか?

 夢人殿は先ほどから何を考えているのかわからないが、黙ったまま目を閉じている。

 

「……心、か」

 

『ああ、ワンダー殿の言葉を借りるようだが、私は真司の心のあり方が眩しく思えたのだろう。彼ならば、きっと私の力を正しいことに使い、女神達と共にゲイムギョウ界を平和に導いてくれると』

 

 ぽつりと夢人殿の零した言葉に、私は付け加えるように真司に抱いた希望を語る。

 

 最初は失敗したと思った。

 いくら私の力の一部が選び抜いた人間だったとはいえ、真司は至って普通の青年だった。

 格闘術に優れていたわけでもなく、魔法が使えるわけでもない。

 言ってしまえば、優しいだけの青年だろうか。

 ただそれだけのゲイムギョウ界にいる普通の人間と大差のない異世界からの来訪者。

 私は早々に真司をゲイムギョウ界に招くきっかけの一端を担ってしまったことを後悔した。

 ……あの時、私はすでに諦めていたのかもしれない。

 私の力を受け継ぐ後継者が現れることを。

 何百年、何千年、何万年と待ち続け、肉体を捨てた私は魂だけの存在としてずっとゲイムギョウ界を見守ってきた。

 だが、いくら待とうと私の力を受け継ぐにふさわしい人物を見つけることができなかった。

 私の心は絶望しかけていたのだろうな。

 心が疲弊し、摩耗しかけていた。

 ただ惰性で後継者を待ち続ける日々が長すぎたせいで、私は希望を忘れていたのだ。

 ……そんな私の希望になったのが真司だ。

 持ち前の優しさが女神達との友愛を深め、確かな絆を育む姿に私はいつの間にか目を離すことができなかった。

 ゲイムギョウ界の各地を巡り、真司は己のできる何かを掴もうと努力していた。

 特に知らないはずの私の力を引き出し、使いこなすまでに至ったのは驚きの一言に尽きる。

 極めつけは、女神達がマジェコンヌに囚われた時だ。

 真司は女神達を救うため、守るために恐怖しながらも立ち向かうための勇気を振り絞った。

 誰にでもできるものではない……だが、誰しもが持ちえる力。

 真司の心に灯るわずかな勇気が、私の目には大きな炎となって希望を照らしてくれたのだ。

 だから、私は真司に賭けてみたくなった。

 私の力を受け継ぐべき後継者として……ゲイムギョウ界を愛し守り抜く守護者になってくれることを。

 その期待に真司は見事に応えてくれ、私の長年の思いはついに報われた。

 私は真司に救われたのだ。

 

『夢人殿、私の話は参考になっただろうか?』

 

「……ああ、真司が強い理由がわかった気がする。2年もネプテューヌ達を助けるためだけに強くなろうとしていたんだな」

 

『正確には約2年だ』

 

「ちょっとした誤差だろ? ……でも、そうか。そんだけ長い間思い続けてたんだな」

 

 私が尋ねると、夢人殿は目を開き柔らかく頬を緩めた。

 その瞳が憂いを帯びているように感じられ、私がおどけたつもりで訂正すると、夢人殿は苦笑してしまう。

 その口元はゆったりとした波の形を描いており、目は優しく細められている。

 

「色々と教えてくれてありがとうな、ドラゴニック・ハート」

 

『気にする必要はない。私も改めて自分の気持ちと向き合えるいい機会を得た気分だ』

 

〔そうだな。案外、言葉にしないと自分の気持ちを確認することは難しいものだからな〕

 

 お礼を言われる傍ら、私は夢人殿に真司のことを語れた満足感を味わえていた。

 当たり前のことでもこうして改めて自覚すると、なんだか新鮮な気分になるものだ。

 私がワンダー殿の意見に賛成して頷いていると、夢人殿は乾いた笑い声を上げる。

 

「あ、あはは……バイクとドラゴンがそんなことを言っていると思うと、なんだか少しおかしな気分になるな」

 

〔ふっ、確かにな〕

 

『そう言われると、何も言えなくなってしまうな』

 

 ワンダー殿と私は自嘲するように夢人殿の言葉に同意する。

 別に自分のことやワンダー殿のことを卑下しているわけではない。

 ただ、私も人間のように悩んでいたのだなと思ってしまったからだ。

 聖龍神ドラゴニック・ハートと呼ばれた私が、だ。

 私はこの気持ちを嬉しく思う。

 ゲイムギョウ界の伝説として語り継がれる龍神ではなく、真司達と共に同じ次元に生きる1個の存在として悩める今が堪らなく愛しい。

 もはや、私を装飾する過去の威光など微塵も価値はない。

 これから真司達と共に作っていくゲイムギョウ界の未来にこそ、私の希望があるのだ。

 だからこそ、過去を懐かしみ、今を幸せに感じられ、未来へと思いを馳せることができる、真司達との出会いによって芽生えた思いを大切にしたい。

 

「さて、それじゃ俺はそろそろ戻るな。ワンダーとドラゴニック・ハートはどうする?」

 

『うむ、では私も真司の所に戻るとしよう』

 

〔今日はとても有意義な時間を過ごせたな。また機会があれば、こうして語り合いたいものだ〕

 

『同感だ。私ももっとじっくりと話したいと思う』

 

 3人での会話を終える言葉が夢人殿の口から出ると、何だか寂しさを感じてしまう。

 できることなら、もっと語り合っていたいと言う思いが強く残っている。

 だが、まあまだ私達が帰れる目処が立っていないので、こうして話をする機会にも巡り合えることだろう。

 今日の所はお開きと言う形で終わらせようと意見がまとまり、夢人殿はワンダー殿にシートを被せ始める。

 

「じゃあ、明日もよろしくなワンダー」

 

〔ああ、お休み夢人、ドラゴニック・ハート〕

 

『ワンダー殿もゆっくり休んで下され』

 

 私が言い終えると、夢人殿がシートを完全にワンダー殿に被せてしまう。

 何やら休眠モードとやらに移行するためにシートを被せる必要があったらしい。

 ワンダー殿が休眠モードに入るのを確認した後、私と夢人殿は休むために割り当てられた部屋へと向かって行く。

 

 ……途中、照れくさそうに何かを話す真司と、顔を真っ赤にしたユニ殿に抱きついてにこにこと相槌を打っているナナハ殿がいて、私と夢人殿は揃って首を傾げた。

 いったい真司達は何を話していたのだろうか?




と言う訳で、今回は以上!
さて、コラボも予定では後2話。
書きたいことが多くなると、予定を越してしまう私ですから自分でもあまり期待はできないのですが。
と、とにかく、コラボが終わり次第、本編の再開も始めていきたいと思いますので、そちらの方も期待しておいてくださいね。
それでは、次回もお楽しみに!
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