超次元ゲイムネプテューヌ 夢のヒーローを目指して 番外編   作:ホタチ丸

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はい、皆さんこんばんわ!
予定よりも遅くなりましたが、一周年記念の最後の作品を投稿します。
それでは、 夢で会えた奇跡 はじまります


夢で会えた奇跡

「……きて」

 

 誰かに肩を掴まれて体が小刻みに揺すられている。

 何かを言っているような気がするけど、よく聞き取れない。

 目を開けようとしても、妙に瞼が重くて失敗してしまう。

 頭もぼんやりしていて、気を抜くとすぐに意識を飛ばしてしまいそうになる。

 

「……きて!」

 

 肩を掴む力と揺する力が強くなった気がした。

 呼びかけてくる声も、さっきよりも聞こえやすくなった。

 それでもまだ何を言っているのかわからない。

 だけど、そのおかげで段々と頭が働いてくる。

 何を言っているのか聞き取ろうと集中すると、私は今の自分が横たわっていることに気付いた。

 

 ……あれ? もしかして、私寝てたのかな?

 妙に体がポカポカして上手く動いてくれない。

 えっと、確か昨日の夜はギョウカイ墓場に泊ったんだよね。

 久しぶりにアカリちゃんが一緒に寝ようと言ってきたので、同じベッドに横になった所までは覚えてる。

 それから初めて会った時の夜にされたみたいにおでこをアカリちゃんに叩かれたら、急に意識が遠のいて……駄目だ。そこから先を思い出せないよ。

 でも、だったら私を揺すっているのはアカリちゃんなのかな?

 

「……きてっ! ……でしょっ!」

 

 でも、肩を掴んでいる手がアカリちゃんよりも大きいような気がする。

 それに私が寝惚けているせいかもしれないけど、いつもより声が低く聞こえる。

 だけど、私が一緒に寝たのはアカリちゃんで間違いないはずだし――あっ、もしかして起こしに来てくれたマジックさんかも……

 

「起きろって言ってんでしょうがっ!!」

 

「うひゃっ!? 何々っ!? いったい何――えっ」

 

 揺すっているのが誰なのかを考えていると、いきなり耳元で怒鳴り声が聞こえるとともに突き飛ばされてしまった。

 驚いた私は今まで感じていた倦怠感が嘘のように吹き飛び、慌てて目を見開いて周りを確認し出す。

 

 ――そこは何もない真っ白な空間だった。

 天井も床も壁もない、ただ白いだけの空間が広がっていた。

 ちゃんとベッドの上で寝たはずなのに、いきなり違う場所にいたことに混乱してしまう。

 でも、それ以上に私を驚かせることがあった。

 

「やっと起きたわね。さて、早速聞きたいんだけど――どうして私はここにいるのかしら?」

 

 投げかけられた質問が上手く頭の中に入ってこない。

 それよりも“あの子”が目の前にいることが信じられず、私は瞬きも呼吸も忘れて黙って見つめ続けてしまう。

 

 ――フィーナちゃん。

 私達の目の前で消えたはずのもう1人の娘がいるんだから。

 ……不機嫌そうに眉を吊り上げて仁王立ちしながら。

 

 

*     *     *

 

 

 目の前で驚いた顔で固まっている母様を、私は睨むように見つめる。

 その様子から母様が自分から私に会いに来たのではないことを悟り、ここにいない黒幕に怒りが募ってくる。

 

 ――私はあの時、ギョウカイ墓場で姉様に『再誕』の女神としての情報をすべて渡して消滅した。

 女神の卵に入っていた『再誕』の女神の情報は1人分だけ。

 元々、姉様の願望によって生まれた私が消えるのは当然のことだった。

 心残りがなかったわけじゃないけど、父様に母様に姉様の幸せを願う気持ちの方が独りよがりな自己満足よりも強くなったのよね。

 ……だって、私はずっと欲しかった私だけの名前をもらえたのだから。

 初めてデルフィナスから取った“フィーナ”ではなく、父様達の娘の“フィーナ”と呼ばれた時に自分が本当に欲しかった物を理解したの。

 私は“私”を認めて欲しかったのよ。

 姉様の願望で生まれた“架空の妹”でも、『再誕』の女神でも、ましてやデルフィナスでもない“私”のことを。

 姉様の謝罪や母様が諦めずに私を説得してくれたことも、今ではすごく嬉しく感じる。

 でも、犯罪神によって体を“再現”し続けるのも困難だったことも後押しして、私は最後に父様と姉様にシェアエナジーと『再誕』の女神としての情報を託して消えたはず……だったのよ。

 

 そんな私がここにいる理由は1つだけ――姉様の仕業に違いない。

 おそらく託した情報の中に私の人格が残っていたのだと思う。

 これは理論上では父様にも同じことができるけど、普通の人間に『再誕』の力を制御することは不可能だから除外される。

 ……まったく、姉様は私と母様に何をさせるつもりなのかしら?

 

「フィーナちゃん、なんだよね?」

 

「……何よ、私がフィーナ以外の誰に見えるって言うの?」

 

 恐る恐る尋ねてくる母様に、私はぶっきらぼうに答える。

 自分でも可愛くないとわかっていながらも、どうしても理不尽に母様に会わせた姉様に対する怒りが隠せそうにない。

 

 ……私は消えたままにしておいて欲しかった。

 だって、今の私は所詮残りかすの集合体。

 いずれ姉様の体にすべて取り込まれ、完全に消えるのを待っているだけの不純物なんだから。

 会うだけ辛くなるって、どうしてわからないのよ。

 何を考えているのかわからないけど、本当に余計なことをしてくれるわ。

 

「――ねえ、これって夢なのかな?」

 

「ええ、そうよ」

 

「そっか」

 

 私が複雑な思いを抱いていると、母様が真剣な顔で尋ねてきた。

 肯定すると、母様はふわりと柔らかく口元を緩めて私に手を差し伸べてくる。

 

「だったら、私が起きるまでお話ししよう?」

 

「……そんなの意味ないわよ。どうせ起きたら、ここでのことなんて何も覚えてないわ」

 

 母様の提案を断ると、私は顔を俯かせた。

 自分で言った言葉に傷ついたことはもちろん、これ以上私の“家族”に対する未練を増やしたくないからである。

 

 話をしたら、きっともっと一緒にいたいと思ってしまう。

 ずっと――そう、ずっと家族4人で……

 

 唇を噛んでこのまま母様が目覚めるまで遠ざかろうとすると――急に温かな腕に抱き寄せられる。

 すとんと柔らかい場所に頭がぶつかる。

 驚いて目を丸くしながら顔を上げると、そこには優しくほほ笑んでいる母様がいた。

 

「それでも私はフィーナちゃんとお話ししたいなあ。私は夢人さんやアカリちゃんみたいに、フィーナちゃんのことをよく知っているわけじゃないから教えて欲しいんだ――私と夢人さんの子どもで、アカリちゃんの妹のフィーナちゃんのことを」

 

 抱きしめている手を振りほどこうとは思わなかった。

 ただ、耳に聞こえてくる声が優しくて……温かくて……嬉しくて……

 

「……うん」

 

 気が付けば、私は頷いていた。

 例え、少しの間しか感じられない温もりだとして、初めて感じる母様の腕から離れたくないと思って……

 

 

*     *     *

 

 

「――そして、私は帰って来たジャッジに言ったのよ。【御苦労。これからもその忠義を私に示しなさい】ってね」

 

「ああ、あのホットケーキを買って来てくれた時の話だね。確か、その後にジャッジさんがいなくなったことを確認してから喜んで食べて……」

 

「なんで知ってるのよ!? ――って、違う!? 誰がそんな嘘を教えたのよ!?」

 

 2人で並んで座ると、フィーナちゃんは甘えるように私の肩に寄りかかって来た。

 そのまま上目遣いで楽しそうに話すフィーナちゃんに、私は顔をほころばせる。

 

 ……こんな風にフィーナちゃんと話すことができて嬉しいなあ。

 これが夢でも――目を覚ましたら忘れてしまうことだとしても、フィーナちゃんが私の隣にいてくれることに幸せを感じてしまう。

 

「隠さなくていいよ。エヴァさんの記録しておいてくれた映像に全部残ってたから。あの時のフィーナちゃん、美味しそうにホットケーキを頬張ってたよね」

 

「エヴァアアア!? アイツ、いったい何やってるのよ!?」

 

 顔を真っ赤にして吠えるフィーナちゃんが可愛くて、私は自然と頬がにやけてしまう。

 私は宥めようと、フィーナちゃんの頭を優しく撫で始める。

 フィーナちゃんは恨みがましく見上げてくるけど、撫でている手を振り払おうとはしない。

 それどころか、恥ずかしそうにしながら私の肩に顔を埋めようとしてくる。

 

 ……それだけでフィーナちゃんが私達のことを、もう恨んでいないとわかって嬉しくなってくる。

 ギョウカイ墓場で悲しくなるくらい必死になって私やアカリちゃんになろうとしていた姿を知っているだけに、今のフィーナちゃんが本当の“フィーナ”ちゃんなんだとよくわかる。

 今までエヴァさんの記録映像でしかフィーナちゃんのことを知ることができなかったから、余計にそう感じるのかもしれない。

 見栄を張ろうとして失敗するところなんて、ちょっと夢人さんに似てるかもしれないね。

 

「も、もういいわよ!? それで、次の話なんだけど――っ!?」

 

 恥ずかしさが限界に来たのか、フィーナちゃんがガバッと勢いよく私の肩から離れて再び話し始めようとするのだが、その顔は突然凍りついたように固まってしまった。

 何が起こったのかわからず首を傾げる私に、フィーナちゃんは目を伏せながら口を開く。

 

「……もう、お終いみたいね」

 

「お終いって、どう言う――っ!?」

 

 フィーナちゃんに言われて、私は初めて自分の体が透け始めていることに気付いた。

 ゆっくりと透け始めている私から距離を取ると、フィーナちゃんは悲しそうに笑う。

 

「ちょっとの間だけでも話せて楽しかったです。母様、1つ姉様に伝言を頼んでもいいですか? 覚えていたらでいいんですけど、ありがとうって」

 

「え、そんな……私、まだフィーナちゃんと一緒に……」

 

「もう無理ですよ」

 

 さっきとは打って変わり、敬語で話すフィーナちゃんに私は戸惑ってしまう。

 まるで無理やり自分の気持ちを押し隠そうとしているように思えて、私は悲しくなってくる。

 もっと一緒にいたいと伝えようとしても、フィーナちゃんは首を横に振るだけだった。

 

 ――でも、フィーナちゃんが我慢できたのはそこまでだった。

 私のことを真っ直ぐに見つめるフィーナちゃんの顔には、堪え切れない涙が流れ始める。

 

「最後にもう1度、母様から抱きしめて名前を呼んでください……っ! 私のことをフィーナって……っ! 母様達の子どもだって思わせてよお……っ!」

 

「フィーナちゃんっ!!」

 

 止めどなく涙を流してお願いしてくるフィーナちゃんを、私は強く抱きしめた。

 

 もう少しでお別れだとしても、最後の瞬間まで私もフィーナちゃんを感じていたい!!

 だって、フィーナちゃんは私達の大切な家族の1人なんだから!!

 

「――ありがとう、母様」

 

 嬉しそうに聞こえてきたフィーナちゃんの声を最後に、私の意識はゆっくりと遠のいていく。

 でも、この手に抱きしめているフィーナちゃんの温もりは確かに感じていた。

 

 ――私もありがとう、フィーナちゃん。

 夢でも会えて嬉しかったよ。

 またいつか会おうね。

 今度は家族4人で……




という訳で、ここまで!
いやあ、本当に一年なんてあっという間でしたね。
予定が押して遅くなってしまったので、本編の更新は明日になります。
最近投稿が遅れがちですけど、これからも私の作品を楽しんでもらえたらと思います。
それでは、次回の投稿をお楽しみに!
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