超次元ゲイムネプテューヌ 夢のヒーローを目指して 番外編 作:ホタチ丸
何とか年内中に完成しました。
今年最後の投稿です。
それでは、 願う未来は はじまります
願う未来は
――大晦日。
1年の最後の日であり、明日から始まる新年を気持ちよく迎える準備をする日でもある。
大掃除やお節作り、他にも国民に向けて1年の抱負をスピーチするための原稿作りなどの、新年に向けての準備に不備がないかを最終確認する大事な日なのだ。
そう、とても忙しい日なのよ。
今日から明日まで、気を抜くことが許されないスケジュールがびっしり詰まっている。
……だったはずなのに。
「うわあ、もう結構人がいるな。どこが最後尾なんだ?」
隣を歩く夢人が驚きの声を上げ、きょろきょろと人の波を見渡す。
しかし、列の最後尾はどこにも見当たらない。
やがて、夢人は困ったように後頭部を掻き始める。
「参ったな。まさかこんなに人が来ているなんて思わなかった」
「ごめん。アタシもこんなに人がいるなんて思わなくて……」
「いや、ユニのせいじゃないだろ。とにかく、もう1度最後尾を探してみようぜ」
謝って俯くアタシの手を引っ張り、夢人は人の波の中に突入していく。
手を握られて引っ張られた瞬間、単純だと思いつつもトクンと胸が高鳴った。
外気に触れて冷たくなったはずの頬に熱がこもる。
変装しているとはいえ、周りの人達にアタシが女神候補生だと言うことがばれないように顔を伏せながら、夢人のリードに従って歩く。
――べ、別に手を繋がれたくらいで恥ずかしくなったわけじゃないわよ!?
顔が熱くなったのは不可抗力って言うか、突然の事態に動揺してしまったと言うか、アタシの心の準備が出来てなかったと言うか……あーもう!? 全部夢人のせいよ!?
大晦日の今日、急にラステイションにやって来た夢人が悪いのよ!?
* * *
「はあ? 2年参り?」
目の前でユニが呆れた表情で俺を見ていた。
遂に頭でもおかしくなったかと言わんばかりのジト目に心がくじけそうになるが、俺は諦めずに今日ラステイションに来た目的を話す。
「そうなんだ。どうしてもラステイションでお参りしたくてさ。だから、神社の場所を教えてくれないか?」
「それは別にいいんだけど……アンタって、一応プラネテューヌに住んでいるのよね?」
「まあ、ちょっと街から離れているけどな」
「それなのにわざわざラステイションまで来てお参りしたいって、そこまでする必要ないでしょうよ」
ため息をついて呆れるユニの言葉は正論だった。
確かに、俺がわざわざラステイションまでお参りに来る理由なんて1つもないように思うかもしれない。
――しかし、俺にも譲れないものがある。
「いや、どうしてもラステイションでお参りがしたいんだ! 頼む、神社の場所を教えてくれ!」
「……そんなこと言って、どうせ無職のままネプギアと会うのが気まずいだけでしょ? それなら、リーンボックスやルウィーでもいいじゃない」
拝むように頼み込むが、ユニはそっぽを向いてしまう。
咄嗟に口から出そうになる愚痴を抑えこみ、心の中でユニに反論する。
まあ、ネプギアに会うのが気まずいのは事実だ。
偉そうにギョウカイ墓場で宣言した手前、気軽に会ったり早々に頼るのは男として情けない。
そう思ったからこそ、教会を出て1人暮らしを始めたんだしな。
アカリが絡まない限り、なるべく会うのは避けたい。
次にちゃんと2人で会う時は社会的地位を確立してから――端的に言えば、就職してからと決めている。
言わば、願掛けのようなものだ。
会いたい気持ちを抑えることで、就職活動に対するモチベーションの維持をしているのである。
……まあ、実際は教会に行っても門前払いを喰らうだけなんだけどな。
前にネプギアに会いたい気持ちを抑えきれず、恥を忍んで教会に行った時、思いっきり不審者扱いをされてしまった。
いくら新しい自分を始めると言っても、悪評がなくなるわけじゃないからある意味で当たり前ですよね!?
顔見知りの職員さんに中に入れてもらっても、毎回他の人に呼び止められるんだよ!?
その度に不審者扱いで、ネプギア達の説明を聞いても納得していない職員が多いからなあ……
リーンボックスやルウィーでも同じ扱いを受け――いや、扱い的にはプラネテューヌよりも酷いかもしれない。
リーンボックスでは元犯罪者で、ルウィーでは幼女誘拐犯だしな。
俺をまともに客として扱ってくれる教会はラステイションしかない。
……それでも、ユニの奴隷扱いなんだけどな。
「それじゃ駄目なんだ! 俺はどうしてもラステイションでお参りしたいんだよ!」
必死に頼み続けると、そっぽを向いていたユニの耳がピクッと反応した。
「へ、へぇ、アンタはそんなにラステイションでお参りしたいわけね? プラネテューヌでもリーンボックスでもルウィーでもなく、ラステイションで年を越したい――つまり、そう言う意味なのよね?」
「そうだ! 急に押しかけたのは謝る! だから、どうか神社の場所だけでも教えてくれないか?」
ツインテールにした黒髪の毛先を指で弄りながら、ユニは俺に確認するように尋ねてきた。
その問いかけにはっきりと答え、俺はユニに頭を下げて頼み込む。
「――いいわよ。神社くらい、アタシが案内してあげる」
「っ、ほ、本当か!? ありがとう!」
「だ、だから、その……今日は泊って行きなさいよ!? ほ、ほら、プラネテューヌまでは結構離れているし、アンタもお正月くらいゆっくりと過ごしたいでしょ!? ……あ、アタシも、夢人と一緒に……」
「よしっ、これで就職祈願ができるぞ! そして、今年こそ就職してネプギアに告白するんだ!!」
「――はあ?」
ユニからいい返事がもらえたことで、俺は嬉しくてはしゃいでしまった。
思わず口から来年の目標まで飛び出してしまう。
そう、何を隠そう俺がラステイションに来た目的は就職祈願をするためである。
イストワ―ルさんによれば、ラステイションは4国で1番就業人口が増加したらしい。
ネプテューヌへのお説教をしている時に言っていたことだけど、信憑性は高いと思った。
教会に来る前にギルドに寄ってアヤにも聞いてみたけど、ラステイションの就業人口が増加しているのは間違いないと裏付けも取れた。
――つまり、俺もこの流れにあやかりたいのだ。
言ってしまえば、少しでも内定がもらえる可能性を上げるための神頼みである。
別に神頼み自体にあまり意味はない。
悪評が消えたり、就職ができるとか根本的な解決には繋がらないだろう。
しかし、気持ち的には随分と前向きになれる。
今の俺に必要なのは、どんな悪評にもめげない不屈の闘志。
例え、何十何百の企業で落とされようとも必ず就職してやると言う気持ちを持ち続けることだ。
そして、胸を張ってネプギアに会い、俺の気持ちを……
「ふんっ!!」
「イッターッ!?」
祝福の鐘が鳴り響く中でネプギアと抱き合っている所まで妄想していた俺の意識を呼び覚ますように、足に猛烈な痛みが走った。
何度も感じたことのある痛みであり、ユニが俺の足を踏み抜いたのだと瞬時に理解できた。
そして毎度の如く、ユニは不機嫌そうに鼻を鳴らしてスタスタと歩いて行ってしまう。
「……夢人の馬鹿」
* * *
……まあ、そんなことがあっても結局アタシは夢人を神社に案内したのよね。
仕事で忙しいことを理由に断ろうとしても、お姉ちゃんやケイ、それにブレイブが気を回してアタシの逃げ道を塞いでしまった。
その気遣いは嬉しいんだけど、こんな形で夢人と2人っきりになるのには納得がいかない。
ラステイションでお参りをしたいって言われた時、ちょっとだけ期待していたのに……
「いやあ、本当にありがとうな。ユニのおかげで無事に就職祈願ができたよ」
「……はいはい、それはよかったわね」
「こ、これなら今年こそ就職できるかもな! よーしっ、絶対に内定を取ってみせるぞ!」
「……勝手に頑張ればいいじゃない」
「うっ」
今は神社からの帰り道、アタシと夢人は誰もいない公園のベンチで休憩していた。
思っていた以上の人ごみに疲れてしまったからだ。
しかし、いくら休憩したところでアタシの機嫌がよくなるわけじゃない。
わざとらしく会話を振ってくる夢人に、アタシは素っ気なく返していく。
さすがに気まずくなったらしい夢人のうめき声が聞こえてきた。
「そ、その……ごめん」
「何を謝ってるのよ?」
「いや、だって、ユニが拗ねているのは俺が何かしたからじゃないかって思って……」
「……アタシは別に拗ねてないわよ」
謝ってくる夢人の言葉を一蹴し、アタシはふんと鼻を鳴らす。
まったく、アタシがどうして機嫌が悪いのかすら分からないなんて。
本当にネプギア以外眼中にないって言われているみたいで腹が立ってくるわ。
誰のせいでこんなに苛ついていると思ってるのよ。
「あー、そのー……ユニって変装すると、ネプテューヌ達と違って結構印象変わるよな。あれだけ人がいたのに、誰も気づかないなんてさ」
取りつく島のないアタシに、夢人は話題を変えることで場を繋ごうとしたのだろう。
さっきまでアタシがしていた変装について取り上げてくる。
誰にも気付かれなかったと言っても、変装自体は大したことをしていない。
ただまとめていた髪を下ろして眼鏡をかけただけだ。
気付かれなかったのも、きっと人ごみの熱気のせいで眼鏡が曇って顔が隠れていたせいだろう。
……はあ、何をやってるんだろうな。
理由はどうあれ、夢人に会えて嬉しかったはずなのに、どうしてアタシはこんな可愛くないことばかりしているんだろう。
犯罪組織との戦いが終わった後、夢人と会える機会なんて滅多になくなってしまった。
アタシは女神候補生としての仕事があり、夢人にも就職活動をするという目的があったからだ。
しかも、夢人が積極的に就職活動をしている国はプラネテューヌ。
ネプギアと離れたくないって考えているのが丸わかりだ。
だから、今日だって久しぶりに会えてドキドキしていたのよ。
それなのに夢人はネプギアのことばっかりで……はあ、もっとアタシのことを見てよ。
「――はあ、アタシも馬鹿よね」
「え、今なんて……」
「何も言ってないわよ」
自然と口から出た本音に、アタシの頬は緩んでしまう。
何を言ったのかを聞いてくる夢人の言葉を遮り、アタシは話を終わらせる。
こんなに不満を感じながらも、アタシは夢人を嫌いになれない。
恋愛は好きになった方が負けって言うけど、本当にその通りだと思う。
特に、夢人を見ていると言葉の重みを実感できる。
ネプギアのことを思いながらゲイムギョウ界中を駆け回った夢人――悔しいけど、かっこよかったもん。
今はちょっと情けなくなってるけど、ネプギアのことを思っている限り、夢人はまた駆けだしていける。
一生懸命に前へと進んでいく――そんな夢人だからこそ、ずっと隣にいたいと思ったんだから。
……まあ、ネプギアのことばかり考えているのは気にくわないけど。
でも、それが夢人らしいって納得しちゃいそうになる自分がいるのよね。
本当、アタシもどれだけ夢人のことばかり考えてるのよって話よ。
「ちょっと寒くなってきたわね」
「あ、ああ、そうだな。それじゃ、そろそろ……って、ユニ!?」
「何よ? これは寒いから仕方ないことなのよ」
ずっとベンチに座っていたせいで体が冷えてきてしまった。
体を震わせて白い息を吐くアタシを見て、夢人はベンチから腰を上げようとする。
しかし、アタシは夢人の腕を引っ張り、無理やり座り直させる。
驚いている夢人に構わず、アタシは一気に距離を詰める。
今日ぐらい……2人っきりの時ぐらいは、もっと近くにいさせてよ。
恥ずかしいけど嬉しい――そんな複雑な乙女心を理解して欲しいなんて言わない。
今は一方通行なアタシの恋を押し付けるだけだから。
「そ、そうなのか?」
「そうよ」
「そ、そっか。そうだよな」
緊張しているのか、声が上ずっている夢人にアタシは上機嫌になる。
距離を詰めた時に抱きしめた夢人の片腕をギュッとしてみる。
面白いようにビクッとする夢人が可愛くて、自然と笑みがこぼれてしまう。
夢人の肩にちょこんと頭を寄せて見た空は、綺麗な星空だった。
――来年こそは、アタシの恋に気付いてね。
という訳で、今回はここまで!
主役はユニちゃんでした。
こういう番外編って、ネプギアやナナハばかりでしたからね。
今年も1年、読者の皆様の応援のおかげで執筆活動を続けてこれました。
来年からも、どうかよろしくお願いします。
それでは、次回をお楽しみに!