超次元ゲイムネプテューヌ 夢のヒーローを目指して 番外編   作:ホタチ丸

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はい、皆さんこんばんわ!
遅くなりましたけど、お正月記念の特別編の投稿です。
それでは、 初夢は正夢に? はじまります


初夢は正夢に?

 厳かな鐘が鳴り響く白い建物。

 唯一の入り口である茶色の扉は大きく開かれ、中から赤い絨毯が道のように続いている。

 その脇を埋め尽くすようにたくさんの人が正装をして何かを待ち続けていた。

 

「あ、あれ? ここ、どこ?」

 

 そんな人の群れの中、ハッとして周りを見渡す女の子が1人いた。

 女の子が状況を把握できずにいると、周りの人達が急に拍手をしだす。

 ビクッと体を震わせると、女の子は恐る恐る周りの人達が見ている方へと顔を向ける。

 

 ――そこには、女の子がよく知っている男女が赤い絨毯の上を歩いていたのである。

 

 男の方は白いタキシード姿に淡い緑色のネクタイを、女の方は白いヴェールに薄い桃色のドレス姿であった。

 2人はお互いに腕を組みながら、ゆっくりと赤い絨毯を歩いている。

 そこはまるで2人の世界であるかのように、お互い顔を見合わせて幸せそうにほほ笑みながら。

 

「……う、そ」

 

 ヒューヒューとはやし立てる者や祝福の言葉を投げかける者がいる中、女の子は1人呆然と男女を見つめることしかできなかった。

 目は大きく見開かれ、唇はわなわなと震えて声すら出せない。

 女の子は目の前の光景に頭が真っ白になって混乱してしまっていたのだ。

 

(え、なんで? どうして? だって……)

 

 女の子の中で答えの出ない疑問が繰り返されていく。

 そうしているうちに、男女は1度立ち止まる。

 まるで狙ったかのように女の子の前で立ち止まり、男女は互いに幸せそうに見つめ合う。

 

「絶対に幸せにする――愛しているよ、ナナハ」

 

「嬉しい。ずっと一緒に居ようね、夢人――ううん、あなた……んっ」

 

 優しくとろけるような甘い声で愛を囁く男――夢人に、はにかんで見せた女――ナナハは何かをねだるように瞳を閉じて顎を上げる。

 それを見て夢人も目を細めながら、ゆっくりとナナハの顔に自分の唇を近づけていく。

 この後何が起こるのかを理解している周りの人達が温かい目で2人を見つめているのに対して、女の子は青ざめた顔で頭を抱えていた。

 

(嘘!? こんなの嘘だよ!? こんなのって……こんなのって……!)

 

 弱々しく首を左右に振る女の子に構わず、2人の唇の距離は徐々にゼロへと近づいていく。

 すると、我慢できなくなった女の子は固く目を閉じて頭を抱えて縮こまった。

 ――だが、無情にも周りから沸き上った黄色い声に、女の子は2人がどうなったのかを理解させられてしまうのであった。

 

 

*     *     *

 

 

「いやあああああああああああ!? ……って、あれ?」

 

 叫びながらガバッと上半身を起こした私の目の前に映った光景は、夢人さんとナナハちゃんが誓いのキスを交わしている姿ではなく、いつも見慣れた部屋の壁だった。

 何が起こったのかわからない私は混乱してしまい、きょろきょろと周りを見渡してしまう。

 しかし、見渡しても何も珍しいものは何もない。

 強いて挙げれば、空がまだ薄暗いことくらいしか分からなかった。

 

 ……え、えっと、あれ?

 結婚式は?

 バージンロードを歩く夢人さんとナナハちゃんは?

 誓いのキスは?

 

「……もしかして、夢?」

 

 しばらく混乱していた私の頭だったけど、やがて1つの答えを導き出した。

 ――あの結婚式は夢だった、と。

 

「な、なーんだ! 夢! 夢だったんだよね!」

 

 理解すると同時に、頬が急に熱くなってきた。

 恥ずかしさを誤魔化すように、私はわざとらしく大きな声を出して自分に言い聞かせる。

 

 もう、新年早々嫌な夢を見ちゃったなあ。

 せっかく新しい1年が昨日始まったばかりだって言うのに、あんな夢を……

 

「――夢、なんだよね?」

 

 そう考えていると、不意に私の中の不安が膨らみ始めた。

 紅潮していたはずの頬から熱は完全にひいてしまい、代わりに背中が凍えるように冷たくなる。

 

「いや、でも、そんなこと……」

 

 私は頭を抱えながら左右に小さく振り、さっき見たばかりの夢を否定しようとする。

 でも、そうなる可能性があることも否定できないため、私は夢の内容を忘れることができない。

 

 ……ま、正夢になったりなんか、しない、よね?

 年賀状と一緒に、夢人さんとナナハちゃんの結婚式の招待状なんか届いちゃったりしない、よね?

 

 

*     *     *

 

 

 厳かな鐘が鳴り響く白い建物。

 唯一の入り口である茶色の扉は大きく開かれ、中から赤い絨毯が道のように続いている。

 その脇を埋め尽くすようにたくさんの人が正装をして何かを待ち続けていた。

 やがて、2人の男女が建物の中から姿を現す。

 集められた人達の歓声と拍手を受けながら、2人はゆっくりと赤い絨毯の上を歩き続ける。

 

「ほら、いつまでも恥ずかしがってないで顔を上げたらどうだ?」

 

 2人のうち、白いタキシードを着ている方が薄桃色のドレスを着ている方へと小声で声をかける。

 しかし、ドレス姿の人物は白いヴェールで顔を隠したまま俯いているだけで何も答えない。

 すると、タキシード姿の人物が苦笑しながら強引にドレス姿の人物のヴェールを捲ってしまう。

 

「あっ……」

 

 ドレス姿の人物が驚いて顔を上げると同時に、タキシード姿の人物はその隙を逃さずに顎をクイッと持ち上げて固定してしまう。

 恥ずかしそうに頬を染めて目を逸らすドレス姿の人物を見て、タキシード姿の人物はにやりと笑った。

 すると、そのまま耳元に顔を寄せる。

 

「ふっ」

 

「ひゃん!? ……もうっ!?」

 

 耳に息を吹きかけられ、ドレス姿の人物はそのくすぐったさに思わず悲鳴を上げてしまった。

 だが、すぐに恨めしそうに顔を真っ赤にしながらタキシード姿の人物を睨みだす。

 

「ごめんごめん。でも、悪いのはそっちだろ? 今日は一生に1度の記念日なのに、ずっと俯いたままじゃないか」

 

「……分かってる」

 

「分かってないな――仕方ない。そんな悪い子には、お仕置きが必要みたいだ」

 

 軽い調子で笑いながら、タキシードの人物はドレス姿の人物の態度を責めた。

 ドレス姿の人物は心当たりがあるため、バツが悪そうに目を伏せてしまう。

 しかし、タキシード姿の人物はそんなドレス姿の人物の態度を許せず、顎だけでなく頬にも手を添えて自分の方へと向くように完全に顔を固定してしまった。

 ドレス姿の人物はこれから何をされるのかを理解し、期待に瞳を潤ませ始める。

 

「ふふっ、何をされるかはもちろん分かってるな?」

 

「は、はい! ――お、お仕置きしてください……っ!」

 

「素直で嬉しいよ」

 

 期待に満ちた目で見られていることに気付き、タキシード姿の人物はわざと意地悪な質問をした。

 だが、ドレス姿の人物は頬を染めて恥ずかしがりながらもはっきりとタキシード姿の人物に懇願する。

 それを聞いたタキシード姿の人物は笑みを深め、ゆっくりとドレス姿の人物の顔に自分の顔を近づけていく。

 

「さあ、覚悟はいいかい? 目を閉じて」

 

「は、はい……お、お願いします……っ!」

 

 甘く囁かれる命令にドレス姿の人物は逆らわずに従い、固く目を閉じたまま少しだけ突き出した唇をぷるぷると震わせる。

 そんなドレス姿の人物の動作が可愛らしく思えてしまい、タキシード姿の頬はさらに緩んでしまう。

 

「今日から私がご主人様ですからね――夢人さん……いえ、ユメ子ちゃん」

 

 タキシード姿の人物――長い髪の毛を後ろで束ねて男装しているネプギアは、ドレス姿の人物――女装した夢人にそう言いながら唇を……

 

 

*     *     *

 

 

「なんで逆なの!? ……って、あれ?」

 

 ガバッと起き上がって1番最初に見たのは、女装した夢人さんの顔――ではなく、いつも通りの私の部屋だった。

 きょろきょろと周りを見渡しても、どこにも正装をしている人達は見当たらない。

 私の服装も白いタキシードではなく、ちゃんとお気に入りのパジャマのままだった。

 

「夢、だったんだよね……よ、よかったあ……」

 

 2度目ともなると、私は何が起こったのかをすぐに理解することができた。

 そして、心の底から安堵の息を漏らしてしまう。

 

 本当によかったあ。

 なんで夢の中の私は少しも疑問に思わなかったんだろうと思うくらいツッコミどころ満載な状況だったもんね。

 私が新郎で夢人さんが花嫁だなんて……

 

「――ま、正夢には、ならない、よね?」

 

 自分で言ってても自信が持てず、私の声は震えてしまった。

 なにせ、夢人さんには前科がある。

 あの時はちゃんとした理由があったけど、何かの拍子で目覚めてしまう可能性もないとは限らない。

 後でケイブさんに聞いた話だけど、夢人さんも女装にあまり抵抗がない様子で普通に過ごしていたみたいだし……

 

「よし、行こう」

 

 現実味があるように感じられる2つの不安に後押しされ、私は即座にベッドから降りて着替え始める。

 冬だと言うのに背中にびっしょりと汗をかいていたことに驚きつつ、私は手早く準備を整える。

 

 ……信用していないわけじゃないんだよ?

 でも、何だか居ても立ってもいられなくなっちゃって……し、仕方ないんだよ!?

 

 必死に頭の中で言い訳を並べながら、私は部屋を飛び出して目的の場所へと向かう。

 窓から見える空はようやく白み始めたばかりであった。

 

 

*     *     *

 

 

「お、お邪魔しま~す」

 

 私は小声で断りを入れながら恐る恐る部屋の中に入って行く。

 いけないことをしている罪悪感――ううん、それ以上に恥ずかしさのせいで私の心臓はドキドキしっぱなしだ。

 

 ううぅぅぅ、やっぱりこんなことしちゃ駄目だよね。

 でも、気になって仕方ないし……

 でもでも、こんな時間にお邪魔するなんて……

 でもでもでも、やっぱり……

 

 ここまで来ておいて、弱気な私はグルグルと答えの出ない自己弁護と申し訳なさの積み重ねに押し潰されてしまいそうになる。

 帰らなきゃと思いつつも、足はその考えに反して動いてくれない。

 目の前で眠っている夢人さんの横に座ったまま、私は立ち上がれないでいた。

 

 ――そう、私が今いる場所は夢人さんが住んでいる街外れの元アパート。

 その1室を改装して寝泊まりできるようにした部屋にいる。

 元々、この部屋の鍵は夢人さんから預かっているので問題なく入ることができた。

 ほら、アカリちゃんのこともあるし、夢人さんも多分そう考えたんだと思う。

 ……本当は私だから、って理由だと思いたいけど、そんな訳ないよね!?

 うん、だって、夢人さんがまだ私のことを好きでいてくれるのかわからないんだもん!?

 アカリちゃん!? アカリちゃんのことを考えて私に鍵を渡しただけだよ!?

 

「う……うぅ……」

 

「っ!?」

 

 脇道に逸れた思考で私が頭を沸騰させていると、夢人さんが寝返りを打った。

 起きてしまったのかと思い、思わず私は体をビクッと震わせてしまう。

 ただ寝返りを打っただけらしく、起きる様子のない夢人さんを見て、私はホッとする。

 

 ……やっぱり、帰ろう。

 さすがに無理やり起こしたくはないよ。

 夢のことだって、今なら冷静になって振り返ることができる。

 あの時は寝惚けていたから不安に思っただけで、普通に考えて夢人さんが好きで女装をするような人じゃないことは聞かなくても分かる。

 まあ、ナナハちゃんとのことはどうなるかわからないけど……

 と、とにかく、夢は結局夢。

 あまり気にし過ぎないようにしよう。

 

「……ネプ……ギア」

 

「っ!? こ、これはその……」

 

「ウェへへへへ……」

 

 短慮な自分の行動を反省しながら立ち去ろうとすると、寝ているはずの夢人さんの口から私の名前を呼ぶ声が聞こえた。

 慌てて弁解をしようとした私が振り向くと、夢人さんはだらしなく頬を緩めて眠ったままだった。

 寝言だったらしく、不法侵入がばれたわけじゃなかったことに私は安心する。

 ――でも、それ以上に夢で見た不安が消えていくように、私の胸の中が温かくなった。

 

「夢人さん……」

 

 私はもう1度座り直し、そっと眠っている夢人さんの手を握った。

 すると、夢人さんは眠っているはずなのにギュッと私の手を握り返してくれる。

 

 ……夢人さんは、今でも私のことを好きでいてくれていますか?

 確かめる勇気は――まだないけど、私と同じ気持ちだったらいいな。

 私は今年もこの手をずっと握っていたい。

 離さずにずっと、これからも……




という訳で、今回は以上!
あまりお正月とは関係なくなってしまいましたよね。
お正月要素が初夢だけとか……
ま、まあ、改めまして、今年も一年よろしくお願いしますね。
それでは、次回をお楽しみに!
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