超次元ゲイムネプテューヌ 夢のヒーローを目指して 番外編 作:ホタチ丸
昨日投稿すると言ってできなくて申し訳ないです。
それでは、 彼女達の事情 はじまります
――時間は少し遡り、場所は箱庭の世界。
ペリベッド通りの噴水広場前に構える箱庭2105380外門を通り抜け、“世界の果て”へと伸びる街道を少し脇道にそれた森の中。
コミュニティ“ノーネーム”のメンバーである女子3人組プラス猫2匹は、不自然に空中に浮いている“穴”を見つけた。
「なんて言うか、その――センスないわね」
「お約束、とも言うかも」
「あ、あはは、2人ともバッサリだね」
無言のまま“穴”を見つめていた3人であったが、眉間に深いしわを寄せて呆れたように言葉を発した飛鳥を皮きりに、思い思いの感想をぶちまけた。
三毛猫とコルルの嗅覚を頼って姿の見えなくなった十六夜を探していた3人が辿りついた場所が、この“穴”のある場所であった。
そのあからさまな入り口――もしくは出口とも言える“穴”の存在に、3人は脱力してしまったのだ。
普通の感性ならば、目の前にある異様な“穴”に近づこうとは思わない。
何が起こるかわからない、危ないかもしれないものに近づかないことは、人間が持つ当然の防衛本能である。
無暗矢鱈に面倒事や事件に巻き込まれたくないと思うのが、普通の人間の常識とも言えるだろう。
――だが、彼女達が探している人物は“普通ではない”人物である。
それこそ刺激を求めて自分から危険な場所へと躍り出るような思考の持ち主だ。
彼女達も少なからず十六夜の気持ちがわかる部分はある。
何故なら彼女達もまた“普通ではない”からこそ、箱庭の世界にやってきたのだから。
しかし、同類とも言える彼女達の中でも十六夜は特別“普通ではない”人間である。
だからこそ、この場所に来て“穴”を見た段階で十六夜が何をしたのかを悟ってしまったのだ。
――十六夜は“穴”の中に入って行ったのだと。
「はあ、もうちょっと何か捻りがあるような事件かと思ったら、何のことはなかったわね。確かに、これじゃ黒ウサギも見つけられないわよ」
ため息をつきながら、飛鳥は指で髪を弄りだす。
元々、暇つぶし程度に面白いことがあるかもと始めた十六夜探索だったが、その呆気ない顛末に不満を感じているのだ。
結局のところ、騒いでいた黒ウサギが大袈裟だったと言うだけで、十六夜は平常運転だったのである。
せっかくわざわざここまで歩いた労力と時間を無駄に浪費しただけと、飛鳥は思ってしまう。
「まあまあ、十六夜君がどうなったのかわかっただけでも十分でしょ? でも、コレっていったい何なんだろう?」
「もしかして誰かのギフト?」
不満をあらわにする飛鳥を宥めつつ、エルと耀は不思議そうに“穴”を観察していた。
“穴”に触れないギリギリを指でつつくようにしていた耀であったが、次の瞬間に何を思ったのか、足元にいた三毛猫を抱き上げる。
そして、耀は三毛猫を“穴”へと近づけながら口を開く。
「どう? 何か見える?」
『いいや、なんも見えやせん。この“穴”、底なしと違いますか?』
尋ねられた三毛猫は耀の腕から身を乗り出して“穴”を覗き込むのだが、その瞳でも何も捉えることができなかった。
その答えを聞いた猫の言葉がわかる耀とエルは、揃って首を傾げてしまう。
“穴”のことが何ひとつわからないからだ。
どうやって発生し、どのようなものなのか、どこに繋がっているのかもまったくわからない。
唯一わかっていることも、十六夜が中に入ったかもしれないと言う推測だけ。
このままただ眺めていても何もわからないと思い至り、2人はそろそろ帰ってしまおうとも考える。
「――ねえ、せっかくだから私達も中に入ってみない?」
――そう、飛鳥に提案される前までは。
2人が振り返ると、そこには軽く頬を緩めて唇に人差し指の第2関節を添えている飛鳥の姿があった。
飛鳥は目をパチクリとさせている2人を見て、にやりと口角を上げる。
「このままただ十六夜君に振り回されただけで、時間を無駄にしたと思うとすごい癪なのよ。それにせっかくここまで来たんだから、その“穴”のことも気になるじゃない? だから、私達も中に入って何があるのかを確かめてきましょうよ」
「……うん、いいよ。私も中がどうなってるのか興味がある」
『お嬢が行くならワシもついていきやす』
「まあ、ここまで来て手ぶらで帰っちゃうのもつまらないよね。エルも一緒に行くよ」
『ご主人様が行くなら自分も~』
飛鳥の提案に少し逡巡したが、すぐに賛成する2人と2匹。
“穴”の中に入ることに反対意見が出なかったことに満足そうに笑みを浮かべながら、飛鳥は1歩足を踏み出して宣言する。
「それじゃ、行きましょうか――十六夜君を探すと言う建前で」
後半を敢えて強調するように飛鳥が発言した内容を聞くと、2人はプッと噴き出してしまう。
柔らかくなった空気の中、3人と2匹は“穴”の中へと足を踏み入れるのであった。
* * *
「――足りねえ」
1人の少年が両手をズボンに入れたままボソリとつぶやいた。
人ごみの中を歩きながらも、少年は1人だけ異質だった。
周りが楽しそうに笑顔を浮かべている中で、ただ1人つまらなそうに目を細めている。
すると、突然道の真ん中で立ち止まり、少年は青く澄んだ空を見上げ始める。
「なんか足りねえんだよな」
誰に聞かせるわけでもなくこぼれた言葉の意味は、少年にしかわからない。
ただ、少年の顔には不満がありありと映し出されていた。
気にする通行人もいたが、少年の近寄りがたい雰囲気に誰も彼もが見て見ぬ振りをしてしまう。
しばらくすると、少年は大きく肩を落とし、再び当てもなく歩き始めようとした――が、風に乗って聞こえてきた音にピクッと耳を反応させた。
音のした方向を向くと、少年は先ほどまでのつまらなそうな顔を一変させ、楽しげに口元を歪める。
「へえー、ようやく見つけたってわけか」
そう言いながら、少年はまた人ごみにまぎれて歩きだす。
その足取りは先ほどまでと比べものにならないほど軽やかになっていた。
* * *
「……ねえ」
「……なに?」
「……どうかしたの?」
「私達、なんで寝てるのかしら?」
『さあ?』
春日部さんとエルさんに尋ねたけど、私の求めている答えは返ってこなかった。
えっと、私達が十六夜君が入ったと思う“穴”の中に入った所までは覚えてるわ。
“穴”の中に足を踏み入れた瞬間、急に視界がブレ始めて奇妙な浮遊感に襲われた。
その気持ち悪さに目を閉じたら、今度は突然背中がひんやりとしたのよね。
冷たさに驚いて目を開けると――そこには青々とした空が広がっていた。
気が付けば、私は草原っぽいところで横になっていたんだ。
顔を横に向けると、左右に私と一緒に“穴”の中に入った春日部さんとエルさんも寝転んでいた。
わけがわからなくなった私は思わず2人に問いかけたのがさっきの質問。
……と言うより、ここはいったいどこよ?
“穴”の中に入ったら、草原で寝転んでいたってどう言う状況なの?
「ここ、どこだろう?」
「少なくとも、エル達の知っている箱庭の階層じゃないよね?」
上半身だけを起こして辺りを見渡すと、これまたお手本通りの緑一面の草原が広がっていた。
箱庭に常識は通用しない――“穴”自体が空間移動とかのギフトだとしたら、2人の言う通り私達がまだ到達していない階層とも考えられる。
はたまた、もしかして箱庭の外とも……
「ぬら~」
「……はあ?」
少ない情報で考えを巡らせていると、何とも気の抜けた声が聞こえてきた。
声のした方を向くと、そこには形容しがたい青いプルプルした何かがいた。
……いやいや、コレ何よ?
箱庭で色々な生物に会ってきたけど、コレはまたなんかちょっと異質な感じがするわ。
明らかに幻獣と思えない間抜け面――敢えて例えるなら犬面?
手も足もない体全体が頭でできている饅頭みたいな姿――と言うより、このプルプル震えてるのは何なの? ちょっと気持ち悪くない?
「ちょっと可愛いかも」
「うん。ほら、ちょっとおいで」
「えっ!? なに言ってるの!? ってか、それって抱いても平気なの!?」
「平気だよ。飛鳥も触ってみる?」
謎の近寄りがたい生物から距離を取ろうと考えていると、何を思ったのか2人は瞳を輝かせて抱き上げてしまった。
2人はツンツンと指で突いたり、感触を確かめるように謎の生物の体を揉みだした。
そうしていると、2人の間に挟まれた謎の生物は照れているのか、青い体に若干朱色が差して目がトロンと蕩け始める。
エルさんがわざわざ私の目の前にそいつを差し出してくれたんだけど……
「――うん、ごめん。私、そいつ無理だわ」
即座に拒否した。
だって、何だか生理的に受け付けないんですもの。
「残念、飛鳥ならこの可愛さがわかってくれると思ったんだけどな」
「うんうん、それにこの子ちょっと泣きそうになってるよ? ここは飛鳥が撫でて慰めてあげなきゃ……」
「嫌よ」
残念そうに眉根を下げる春日部さんには悪いけど、私の感性は間違ってないと思うわよ。
それに、その謎生物がいくら瞳をうるうるさせて見上げてきても、絶対に撫でたりなんてしないわ。
だから、エルさんが勝手に慰めてね。
「あ、あははは、まあわかってたけど――って、あれ? 三毛猫はどこに行ったの?」
私の返答に苦笑を浮かべていたエルさんだったけど、ここに来て一緒に“穴”の中に入ったはずの三毛猫がいないことに気付いた。
と言うより、私も今気付いたわ。
そう言えば、足元にいるコルルも随分と静かね。
『その~、ご主人様達がそいつに夢中になっている間にあっちの方を探索してくるって行っちゃったんですよ』
「えっと、三毛猫があっちに行っちゃったみたいだから、とりあえず追いかけようか?」
ナーナー鳴くコルルに頷きながら、エルさんは三毛猫が行ったらしい方向を指さして提案した。
……まあ、私は2人みたいにコルルの言葉がわかるわけじゃないから、本当かどうかわからないけど、こんなどこかもわからないところで三毛猫を1人にさせておくわけにはいかないわよね。
十六夜君? ……ああ、アレはいいのよ、別に。
だって、彼なら1人でもいつも通り平気でヤハハと笑ってそうだもの。
「仕方ないわね。早く追いかけて捕まえましょう……それと、春日部さんはそいつを持って行っちゃ駄目よ」
「……残念」
「……ぬら~」
謎生物をギュッと胸に抱いたまま持っていこうとする春日部さんに釘を刺し、私達は三毛猫を追いかけるために歩き始めた。
……後、そんな風に俯いても謎生物を連れてくことは許可しないから。
謎生物もそんな捨てられた子犬のような目をしても駄目なものは駄目だからね。
* * *
三毛猫を追いかけるためにしばらく歩いてみても、やはり草や木や岩以外は何も見つからない。
ここは本当にどこなのかしら?
「ねえ、飛鳥」
「何よ?」
「あの子、ついてきてるよ」
「――はあ!?」
後ろから春日部さんに肩をちょんちょんと叩かれ、慌てて振り向いて確認すると……
「ぬら~」
……そこには置いてきたはずの謎生物がいた。
私がその姿を見つけたとわかると、謎生物はまるで喜びを表しているようにその場で跳びはねる。
いやいや、何よあの動き?
どうやったらあんな風に跳びはねられるのよ?
「――ジー」
「な、何よ?」
「あの子は仲間になりたそうな目でこちらを見ている」
「仲間にする? 仲間にしない?」
跳びはねる謎生物に呆然としていると、春日部さんとエルさんがジト目で私のことを見つめながら意味のわからないことを棒読み加減で言ってきた。
……と言うより、意味はこの謎生物を連れて行けってことよね?
2人とも、そう言う意味で私に言ってるのよね?
「仲間にしないわ」
だったら、当然選ぶのは後者よ。
この謎生物が何なのかもわからないのに、連れていけるわけが……
「あの子は仲間になりたそうな目でこちらを見ている」
「仲間にする? 仲間にしない?」
「って、あなた達私の意見聞く気ないわよね!?」
私が答えると、2人は1度顔を見合わせた後にさっきと同じことを繰り返してきた。
もうこの子達、そんなに私にこの謎生物を仲間にするって言わせたいわけ!?
そんな風にされても、絶対に仲間になんてしないわよ!?
――その時、私が2人と謎生物から強引に視線を戻して振りかえると、草むらの一画がガサガサと動いていたのを見つけた。
不自然に揺れ動く草は他よりも大きい岩の横を通り過ぎると、動きが見えなくなった。
「っ、ふざけたことしてないで、三毛猫がいたわよ!!」
ハッとなった私は慌てて草むらを揺らした原因――おそらく三毛猫――捕まえるために2人の返事も聞かずに走り出す。
……まあ、これ以上ふざけたことを繰り返させるわけにもいかないからね。
そして、岩の近くまで来ると誰かの話声が聞こえてきた。
もしかして誰かいるかもと思って、岩の横を通り抜けると……
「ようやく追いつい……って、あら?」
……うん、そこには三毛猫も誰だか知らない女の子達もいたんだけど、私はそれ以上に驚いたことがあって固まってしまった。
「うむ? 誰だ、貴様ら?」
――岩だと思ったのは、変なトカゲみたいな化け物だったんだもの。
え、犬みたいな謎生物の次はトカゲなの?
と言う訳で、今回はここまで!
まあ、今回は問題児側がどのような経緯でやってきたのかと言う話でしたね。
次回からようやく交流パートに入りますよ。
そして、少年の方にも動きが……
それでは、 次回もお楽しみに!