超次元ゲイムネプテューヌ 夢のヒーローを目指して 番外編 作:ホタチ丸
最近花粉が酷くてティッシュの消費量がヤバいです。
毎年のことだけど、この時期は本当に辛いですよ。
それでは、 異世界交流 はじまります
せっかく面白いことが起こりそうな予感に従ってここまで来たのに、どうして俺はどうしてこんな正義の味方みたいなことをやってんだ。
「ありがとうございました! 本当、何てお礼を言っていいのか……」
「あー、別に気にしなくてもいいっての」
俺はちょっと撫でるつもりで拳を振り上げただけで、ひったくり犯が勝手にゴロゴロと地面を転がっただけなのによ。
ポーチの持ち主の女はしきりにお礼を言ってくるし、周りは称賛するしと、いい加減鬱陶しくなってきた。
いや、別にお礼を言われて悪い気になってるわけじゃねえんだよ。
でもな、俺はこんな3文芝居の演出にも劣る正義の味方ごっこをするためにひったくり犯の前に出たわけじゃねえんだよ。
――俺はただ、こうすりゃ何か面白いことが向こうの方からやってくるんじゃねえのかって思っただけなのに。
「ちょっといいかしら?」
「あん? ――ヒュー」
適当にお礼やら称賛してくる声を無視していると、それ以外の言葉が聞こえてきた。
興味を引かれて振り向くと、そこには胸元を大胆に露出した妙な服を着た女が立っていた。
その胸の大きさが黒ウサギに勝るとも劣らずの迫力を持っていたことを瞬時に悟った俺は思わず口笛を吹いてしまう。
「私はここの警備をしている特命課のケイブよ。犯人の逮捕に協力してくれて感謝するわ」
「……別に大したことはしちゃいねえっての」
はあ、何だこの女も俺にお礼を言うために近づいてきた口かよ。
周りの連中とは違う反応をしてくれると思ってたいたのによ。
がっかりだぜ。
「でも、できることならもう少し穏便に済まして欲しかったわ。あなたにやられたひったくり犯、完全に伸びちゃってすぐに事情聴取が行えるような状態じゃないのよ」
「へえへえ、そりゃ大変だなあ」
「……はあ、今回は注意だけにしておくけど、今後は今回のような過剰に攻撃を加えて事態を鎮静化させる真似は控えてちょうだい。例え、相手が悪人でも過剰防衛としてあなたが罪に問われることもあるわ」
「へいへい、わぁーったよ」
ケイブの小言も聞きながし、俺は適当に相槌を打つ。
まあ、特命課ってことは警察の一種なんだろうし、公僕に喧嘩売るわけにもいかねえよ。
そんなことしちまったら、俺も伸びちまっているらしいひったくり犯と同じつまんねえ奴になっちまうからな。
さて、それじゃもう1度何か面白いことがねえかを探しにでも……
「おーい、ケイブ」
「夢人、犯人の方は?」
「一応、頭もぶつけているみたいだから病院の方に搬送されたよ。もちろん、警察にも連絡して事情を説明しといたし、後は任せてくれってさ」
「分かったわ。手伝ってくれてありがとう」
さっさと退散しようと思ったのだが、どうにも妙な男がケイブに近づいてきた。
会話だけ聞くとケイブと親しい間柄にいる奴ってことは分かるんだが、そいつの腕には何故か小さいガキが抱かれている。
ガキ連れて警備の仕事をしている訳もねえだろうし、偶々はち合わせた知り合いで善意の協力をしたってところか?
「一先ず、これで事件は解決ね。すまないけど、大会が始まる前に少しだけ時間を取らせてもらえないかしら? 簡単にだけど、調書を作らないといけないのよ」
「は、はい、分かりました」
「夢人もそろそろ行かないと皆に怒られるわよ」
「あっ、そうだな」
騒ぎも終わったし、今度こそ立ち去ろうとした俺の目に不思議な物が映り込んだ。
被害者の女を連れて行こうとするケイブ? ――違う。
ケイブに軽くほほ笑まれて頬を染めている女? ――違う。
ガキを抱いている男? ――ビンゴ。
正確にはその右手首に巻かれているブレスレットだがな。
ひと目見て分かった。
あのブレスレットは男のようなパッとしない普通っぽい奴が持っているには異常過ぎる。
ブレスレットの放つ意味の分からねえ存在感に気付いた途端、俺は自然と口の端が吊り上ってしまう。
ハッ、この俺がガキの方にばかり目が行っていて気付かなかったなんてな。
アレだよ、アレ。
ようやく見つけたぜ、面白そうなもんをよ。
「それじゃ、ケイブも警備を頑張って……」
「おい、アンタ」
「え、俺?」
ケイブに労いの言葉をかけて行ってしまおうとする男を俺は呼び止めた。
せっかくここまで来たんだ。
ここで逃がすわけねえだろ。
「そうそう、アンタだよ。ちょっとそのブレスレットを見せてくれねえか?」
「これを?」
「ああ、随分と珍しいもんをつけてんだなあって思ってな」
ちょっと鎌をかけてみたが、男は変わらずきょとんとした顔をしている。
どうやらブレスレットの価値を正確には理解してねえみたいだ。
「そんなに珍しいか? それと別に見せるのは構わないけど、ちょっと事情があって取り外せないんだよ」
「今まで見たことないくらい珍しいと思うぜ、俺は。別に盗ろうとしているわけじゃねえし、そのままでも構わねえよ」
首を捻りながらブレスレットを眺める男に、俺は近づく。
そして、もっと近くで見せてもらおうと思い、ブレスレットへと手を伸ばして……
「がぶっ!!」
――ガキに手を噛まれてしまった。
* * *
「そっちは相変わらずみたいだね。嬉しいのやら、呆れていいのか分からないけど」
「まあ、簡単に変わるなら箱庭なんて行かなかったわよ。そう言うファルコムさんの水難も相変わらずかしら?」
「あ、あはははは……残念ながらね」
アタシ達が呆然としている前で、ファルコムと飛鳥はのほほんと会話をしている。
ネプギアほど頭が固いわけじゃないけど、飛鳥の行動にはアタシも思うところがある。
いなくなった人を探すよりも、自分の楽しみを優先するのは絶対におかしい。
飛鳥とそのいなくなった人の関係を詳しく知っているわけじゃないけど、何だか冷たいなあって思う。
「あ、あの! やっぱり、早く探したほうがいいと思うんですけど! いくら平和になったからと言って、危険なモンスターがいなくなったわけじゃありませんし……」
「いいのいいの。モンスターに襲われて喜んじゃうような人だから、焦る必要なんてないわ」
「ちょっと! それはないんじゃないの!」
控えめに提案するネプギアと違って、アタシはやる気のない顔をしている飛鳥にカチンと来て怒鳴ってしまった。
「アンタがその人をどれだけ信頼しているのかは分からないけど、探す気もないなんて薄情すぎるんじゃないの! ゲイムギョウ界はアンタ達が考えているほど、安全な世界じゃないのよ!」
「別にこの世界のことを甘く見ているわけじゃないわよ。ただ、十六夜君なら何があっても平気だろうって、彼の実力だけは信用しているし」
「それでも普通は心配するでしょ! 信用している程の相手がいなくなったのに、どうしてアンタはそんなに平気な顔をしていられるのよ!」
「だから、何度も言っているでしょ? 十六夜君はこっちが心配するだけ無駄な奴なのよ。世界が明日終わると言われても、笑っていられるような人なのよ」
「でも……」
「――はい、そこまで!」
まったく態度を変えない飛鳥に、アタシは頭が熱くなってしまった。
ファルコムに割って入られるまで、周りがまったく見えていなかった。
「落ち着いて、ユニちゃん」
「熱くなりすぎだよ」
「……ごめん」
両肩を掴むネプギアとナナハの言葉に、アタシは項垂れてしまう。
正直、ドッと後悔が押し寄せてきた。
詳しい事情も知らない初対面の相手の人間関係にアタシの勝手な思いをぶつけてしまった。
「今のは飛鳥が悪い」
「いくら飛鳥がツンデレだからって、十六夜君を心配していないわけじゃないんだよ? そこのところは勘違いしないで欲しいな」
「……そのツンデレ? って言うのは分からないけど、そうね。私も言い方が悪かったわ。ごめんなさいね、ユニさん」
「……アタシの方こそ、勝手に騒いでごめんなさい」
同じように耀とエルに宥められている飛鳥が、アタシに頭を下げてきた。
そんなことをされたら、騒いだ自分が余計に惨めに思えてくるじゃない。
うぅぅ、自己嫌悪でしばらく顔も上げられないわ。
「よし、何とか話もまとまったみたいだし、ちょっとお互いのことについてゆっくり話してみるのはどうかな?」
アタシが沈んでいると、ファルコムがそう提案してきた。
でも、急に話し合えと言われても、このアタシが悪くした空気の中じゃ……
「ネプギア達も今のままだとスッキリしないでしょ? 飛鳥達だって、別に十六夜君のことを嫌って探そうとしていないわけじゃないんだよ」
「そう言えば、ファルコムはその人のことを知っているんだよね?」
「うん、彼は天真爛漫と言うか、自由奔放と言うか……とにかく、癖の強い子だからね」
「アレを癖の強いの一言でまとめるには、結構勇気がいるかも」
「まあ、それについては否定できないけどね」
ファルコムやフェル、エルの会話を聞きながら、アタシはその十六夜って人のことを考えていた。
正直な話、飛鳥達の強さの基準も分からないので、アタシは勝手に夢人のことを重ねていたのかもしれない。
別世界から来た人間なんて夢人以外にいなかったから、無意識のうちに比較対象にしていたのだろう。
ファルコムが慌てて探そうとしないのは、その人が強いってことを知っていたからだと言うことを今更ながら理解する。
そう考えると、アタシってすごく恥ずかしいことをしたんじゃないかしら。
先走って自爆しただけじゃない。
うぅぅぅ、本当に馬鹿なことを言っちゃったなぁ。
「飛鳥達だって、誤解されたままは気分が悪いでしょ? ユニが熱くなったのも理由があってね、あたしも知り合いがお互いに勘違いをしたままでいて欲しくないんだよ」
「分かった。私もできれば皆と友達になりたいし、もっとこの子のような子達のことも知りたいからね」
「ぬら~」
「だったら、わたしもその箱庭って世界のことをもっとよく教えて欲しいな! ねえ、ロムちゃんもそう思うよね?」
「うん。わたしも知りたい(わくわく)。それに、わたし達はもう友達だよ」
「――ありがとう」
少しだけ顔を上げてみると、ロムとラムにはにかみながらお礼を言う耀の顔が見えた。
……あーもー、夢人みたいにうじうじしてても仕方ないか。
ここはファルコムの厚意に甘えて、アタシも飛鳥達の話をちゃんと聞かないとね。
「それなら、お菓子とお茶も用意しないとね。トリックは持ってきたシートを敷いてくれるかな?」
「はあ? なんで吾輩が貴様の言うことなどを聞かなければ……」
「お願い、トリックちゃん(きらきら)」
「任せておけ! すぐに準備をしよう!」
苦笑しながらお菓子とお茶を用意するナナハの指示に、トリックは最初難色を示した。
でも、ロムが上目遣いで頼むと、すぐさま前言撤回してシートを用意し始める。
……相変わらずロム達の言うことだけは素直に聞くのよね。
本当、呆れるほどに自分の欲望に素直な奴――ん? ちょっと待った。
飛鳥も今のアタシと同じ気持ちなんじゃないの?
もしかして、十六夜って人はトリックみたいな人なのかも……
「準備万端! さあ、ロムとラムは吾輩の膝の上に……」
「わぁーい! それじゃ、早く座りましょ! ほらほら、耀はこっちよ!」
「エルちゃんはこっち(くいくい)」
「うん、よろしくね」
「いっぱいお話ししよう」
大きく手を広げて待つトリックを無視して、ロムとラムは耀とエルと一緒に4人で並んで座ってしまう。
無視されて固まっているトリックを見て、ファルコムは苦笑しながら口を開く。
「それじゃ、改めてネプギア達に紹介するよ。彼女達のことや箱庭について。そうだね、まずは……」
落ち込むトリックを除いて、アタシ達はファルコムの話に耳を傾ける。
飛鳥達のこと、箱庭のこと――そして、十六夜って人のことを知るために。
という訳で、今回はここまで!
さて、これで話も次の段階に移れそうですね。
お互いにファーストコンタクトが終わり、いったい何が起こるのか。
それでは、次回をお楽しみに!